貧乏って何?
『じゃあ、頭がよくなるようなスキルってありますか?』
『う~ん、賢者とかですかね?それか普通に『天才』ていうのもありますが』
女神に、どんな能力が欲しいか聞かれてそう答える。
『何故、そんなに頭の良さにこだわるんですか?』
『いえいえ、前世ではそれなりに勉強で苦労したので、来世ではしたくないな~と』
女神が、ちょっと引いた感じの顔をしていた。
『でしたら、転生する体に元からそうしますから、他のでどうです?』
『う~ん、じゃあ、前世の情報と異世界での情報が見れる、ああ、スマホとか?どうかな』
『スマホですか?分かりました』
そうして、異世界に送られる時だった。
『あ、あとついでに高性能なマジックアイテムと、あなたの服は後で届けてあげます!ふふん!感謝してくださいね?』
何やら自慢げに語っていたのが鼻についたが、そこで意識がなくなった。
==========
と言う感じで、異世界に来て現在、領主をしている。
そのマジックアイテムなのだが、どういう原理かは分からないが、中に物を入れると、その時間が止まる。さらに、どれだけ入れても重さも大きさも変わらないという、優れ物だ。
後、なぜか防御力が一万もあるスーツとネクタイ。
どんなに歩いても足が痛くならない革靴まであった。
記憶の片隅にあった場所に穴を掘ったら見つけた。
これ、他の奴が運悪く見つけたらどうするつもりだったんだ?あの女神め。
さて、前世での物は回収したし、辺境の貧乏貴族になった。
だが、ここで諦められるほど楽な人生を生きていない。
「と言うことで、何か案はないだろうか?」
目の前の背筋がまっすぐ伸び、白いひげをきれいに整えた執事、セバスチャンに聞く。
セバスチャンって、なんか定番だな。
「そうですな、これだけ広大ですと、様々なことが出来ると思いますよ?別段干乾びているわけではありませんし、唯魔物が多いいだけで」
「そうなんだよな~」
土地としての条件は悪くない。ただ、魔物が多いいのだ。
また、土地が広いので壁を築くにしても膨大な費用が掛かる。
「…とりあえず、堀を作るか」
「堀、でありますか?」
「ああ、掘るだけなら後で埋められるし、魔物も簡単には入れない。どれだけ小さい範囲でも、魔物の侵入が出来なくなれば、他のところにも労働力を避けるしな」
「…なるほど。では、早々行いましょうか」
「ああ、場所は、この辺りをぐるっと掘る感じで」
俺は地図を指しながら言う。
「なるほど。ではそのように致しましょう」
セバスチャンが部屋を出て行く。
本来、堀を作っても魔物の侵入はあまり防げない。
陸上の魔物には飛行型も数多く存在するからだ。
しかし、この領地は広大な土地と同時に、多くの面が海に面しているため、飛行型の魔物がいないに等しかった。
「あとは、その中に住居を建てて、領民を受け入れして、労働力を手に入れる。そうして徐々に広げればいいと思うが、それでは金銭が持たないな」
はあ、とため息を吐く。
お金さえあれば、どうとでもなりそうなのだが、何分貧乏貴族だ。
と、そこで、異世界から送られたカバンを思い出す。
「あれ、売ればどれくらいだろ」
引き出しからカバンを出し、手にもつ。
中に手を入れ中身を確認すると、何やら瓶らしきものが十本と、袋が入っていた。
「ん?なんだ?」
出してみると、家の様な絵が描かれたラベルが貼ってある瓶だった。
「………いや、何でワイン?え?祝い品?しかも同じ種類が二本づつ?」
違う種類の五本のワインが二本づつ入っていた。
袋の方も開けてみると、数枚の金貨と、封筒があった。
『拝啓
こんにちは、異世界の生活はいかがですか?
いや~、感謝感激なんて、とんでもない、私はただ義務を果たしたまでです!
と、冗談はさておき。
すみませんでした。
ハイ、手違いです。なので、お詫びに地球で最も高いワイン五本と、お金を送ります。
お金、必要ですよね?貧乏ですもんね?
と言うわけで、謝ったので怒らないでください。
後は、頑張って生き残れ!!!
以上です。
敬具
追伸
そのマジックバックですが、設定を変えないと中にある物を量産してしまうので、お気を付けを。」
あの、つっかえない女神め。
「はあ、で、量産したのがこれか。ってことは一時間に一個づつ増やしていくのか。ん?」
俺は、拾ったのが一時間前なのでそう考えてながら袋をまさぐる。
そこでふと、瓶の他に、袋の二個目が入っているのに気が付く。
中を開けると、同じく金貨が入っていた。
「………いやマジ女神様感謝だわ」
これで、金銭的なものが解決されそうな気がした。
一時間に一個。
と言うことは、二時間に四個。
これを一日続ければものすごい大金になるのでは。
俺は執務室で只々、不気味に笑うのだった。
「ふっふっふ、っはっはっはっは、ふぁーっっふぁっふぁっふぁっふぁっふぁ!!!!!1!!!!」