勇者、どうする
場所は変わって、食堂。
「勇者殿、大変申し訳にくいのだが、勇者殿には近々旅立ってもらわねばならなくなった」
「ふ~ん?なんで?」
心なしか嬉しそうな勇者の態度に驚きつつ、説明をセバス・チャンに促す。
「実は、魔王城周辺にて、魔力が急激に集結種初めており、魔王復活の兆しを確認しました。そして、国王陛下は、勇者の早急な力量の底上げと、実践投入についてのご命令を授かっております。つきましては、我が家に存在するダンジョンの一つを攻略していただきます。勿論、ダンジョン内でのアイテム、コアなどはすべて、勇者様にお譲りします」
これは、非常に破格の条件だと言える。
通常、冒険者がダンジョンを攻略しても、ダンジョンの半分は、国、ギルド、冒険者組合によって持っていかれる。
そして、残った半分をパーティーメンバーで分けることにより、最後に手元に残るのは、最初いあったものよりか少ない。
故に、今回の条件は破格なのだ。
「いかがですかな?」
「俺は良いぜ?」
まさかの二つ返事。
「待ってほしい、まだ、勇者殿は本調子ではない。もう少し、こちらで英気を養ってからでも…」
そんな悠長なことを言う赤髪の剣士風美女は、恐らく公爵家の令嬢だろう。
しかしながら、昨今の帝国侵略を防ぎ、領内全ての土地を消化したビンラット家は今、公爵以上の発言権を持っていると言ってもいい。
ただ、舞踏会などに呼ばれないのは、単純に嫌われているのだろう。
他にも、王都への技術提供など、国王陛下の覚えヤ印象は悪くないだろう。
故に。
「貴女が決めることではない。これは、私と勇者殿の話し合いなのだ。申し訳ないが、少し黙っていてほしい」
「ぐっ」
悔しそうに顔を歪める彼女。
一方、これを一際驚いたように見つめる勇者。
「おい、リリーの家って公爵じゃなかったか?国で二番目とか言ってたような」
まあ、そこは今の陛下に感謝するべきなんだろう。
こんな成り上がりでも貴族と認め、正統に評価してくださった。
「とにかく、勇者殿、ダンジョン攻略、受けていただけますね?」
「あ、ああ。いいぜ」
良し、これで少しは強くなって、そしたら他の領主に押し付けよう。
「ありがとうございます」
こうして、勇者の強化特訓が始まった。
アルフレットは、勇者が死なないようにと、自領の兵士に、稽古をつけるよう言った。
そして、勇者とアルフレットはこの時、思いもしなかった。
これが、勇者の地獄の始まりであり、アルフレットの予想外の強さを身に着けることを。
それでも、勇者は魔王に勝てるのか。
今だ、不安定な世界で今日も生きていく、アルフレット・フォン・ビンラットであった。




