勇者今、何してる?
なんだかんだで、勇者が着て一か月がたった。
その間、特に何もなかった。
勇者は生きてるのか分からないくらい部屋に閉じこもっており、他六名は勇者の部屋と自分の部屋を行って帰ってをするだけ。
勿論、部屋に穴をあけてるのでは?なんて考えもよぎって、外から確認させた。
ただでさえ堅いこの屋敷の壁破るとかマジぱねー、とか思ってたけど、特に変化は見られず、魔法を使用した痕跡すらなかった。
騎士に、それとなく確認してこさせると、首をかしげて帰ってきた。
その時の報告が、
「あの、勇者って、あんなホッソリしてましたっけ?なんか、来た時より痩せてるんですよね。毎日三食食べているんですが、どうも足りないみたいなので、食事を増やすのが良いかと思われます」
なんて、言われたので、自分でも確認してみた。
すると、なんと、顔や背丈、しゃべり方まで勇者なのに、なぜかホッソリしている。
逆に、連れの六人がみるみる若返っている気がしてならない。
まぁ、もう少し様子を見ようと思う。
そんなただなかでも、家の領は相当発展した。
ついに、高層タワーが完成したのだ。
高さは凡そ我が城の二倍。
この世界の技術では到底無理な代物のはずだった。
しかし、俺が持ち込んだ異世界の知識、技術が魔法を応用して、これを可能にさせた。
タワーには、六つの柱が地下30mまで埋められ、金属はファンタジーよろしくの真っ黒い鉱石をふんだんに使っての、とても頑丈なタワーだ。
と言っても、100メートルづつの合間に比較手柔らかく、しかし、崩れない鉱石、マジックタイトを使っているため、たぶん耐震はしてある、と思う。
詳しい話は、分からん。
そして、そのタワーが我が屋敷?から見える、祐逸の我が領の建物だった。
他の分野についても恙無く発展している。
異世界に転生したことを思い出したときは、どうなるかと思ったが、何とかやっていけるものだなと思った。
そんなこんなを追憶していると、目の前のセバス・チャンに声を掛けられる。
「アルフレット様、いかがしましたか?」
「いや、俺の仕事も随分減って、暇ができ始めてきたなとおもってな」
そう、ここ最近の仕事量が妙に楽になったのだ。
それもこれも、最初のころに建てた教育機関のおかげだろう。
今は、そこにいた生徒たちが育って、屋敷で働いていたり、騎士団に入ったりしてくれている。
他の家臣たちは、報告をするだけで、特に話に着たりはしないので、暇ができるようになった。
「でしたら、ご趣味をお持ちしてはいかがですかな?」
「趣味?」
「はい、私の記憶によりますと、どこぞの帝国の伯爵は、毎晩、女性を集め、一夜を共にすることを趣味としているなど、他には畑仕事を自ら行う貴族もいるそうで」
「へ~、貴族ってみんな暇なの?」
「私にはお答えできません」
しかし、そうか、皆趣味を持ってるのか。
趣味、趣味、しゅみねぇ。
「ん?ていうかさっきの話で思いだしたけど、勇者ここで足止めていいの?」
「と言うと?」
「いや、勇者君が召喚されたってことは、魔王の復活も近いんじゃない?ていうか、勇者強くならなくていいの?世界滅びるよ?」
「・・・・・・・・・・まずいですな」
「だよね」
っていうか、勇者今何やってんだ。
「ちょっと、勇者呼びに言ってくんない?」
「かしこまりました」
セバス・チャンがそれだけ言うと、部屋から出て行った。
俺は、一人、震えていた。
え、勇者まだ何もやってなくない?
伝説の剣も手に入れてないし、ダンジョン攻略も、そんな話は来ていない。
あれれ?これ、詰んだ?
いやいや、まだ焦るには早い。
まだ魔王だって、
そんな、現実逃避しているところに、汗をびっしょりと掻いた執事が部屋に飛び込んできた。
「お仕事中、失礼します!ただいま王都より使者が参り、魔王復活の兆しありとの言伝を受け取りました!!」
この時、俺はこの世界にいる誰よりも蒼白になり、誰よりも驚いたという自信がある。
勇者、ダメじゃん。
世界終わりじゃん。
女神、何やってんの?
意識が暗転する中、そんな考えがよぎった。




