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チュートリアルクエストが始まる(4)

 彼らは隠れながら洞窟の正面入り口に接近して行く、洞窟の入り口はそれなりの広さで二人が並んで戦えるだけの広さがあるようだ、だがその奥がどうなっているかはまだわかっていない。


入り口の周囲は半径30メートルに渡って樹木が切り払われ、コボルドの見張りに見つからずにそれ以上接近するのは不可能だろう、予想通り入り口にいたコボルトの見張りが騒ぎ始めた、一匹が奥に慌てて走り込んでいく。


「発見されたぞ!!」


ヘルベルトが警告を発した。


その時セアドが片手でサインをだす、事前の打ち合わせに従い全員が走り始めた、洞窟の入り口まで一気に駆け上がるのだ。


仮想マスターのコンソールが洞窟マップに切り替わった、コボルトの伝令とともに戦える総てのコボルトが迎撃に動き始めていた、洞窟の王の間からコボルトキングが悠然と出口に向かって移動していくのが確認できる。

入り口を固めていたコボルトは腰が引き気味で入り口の奥に下がっていたが、通路の奥から仲間たちが押し上って来る気配を知ると気を持ち直して武器を構える。


セアドが左側、右側をコスタスが固め、少し下がった所でステッラが中央の隙間を埋め二人の戦闘の邪魔にならない位置を取る、その後ろにカビー、ヘルベルトが待機した。


「奴らが来る、へルベルト頼んだぞ」

「わかっている!!」


間を置かずに洞窟の奥から騒音が向かってくる、見張りのコボルト達の表情が勝ち誇った様に変わっていく、そぐにヘルベルトが詠唱を始めた、そこに武装したコボルトの集団が殺到してきた。


「奴らを後ろに抜けさせるな!!」


コスタスが盾でコボルトを一匹弾き飛ばし、セアドは目の前のコボルトの頭を剣で叩き割った。

その瞬間眼の前のコボルトの集団がまとめて崩れ落ちた、ヘルベルトがスリープを行使したのだ、それにより巻き込まれ倒れた敵の数は8匹程だ。


「前に!!」


セアドと詠唱を終えたへルベルトが倒れたコボルトを無視して前に出る、ヘルベルトはコスタスと場所を変わり抜剣した。

ステッラとカビーが倒れたコボルトに次々にトドメを刺していく、すでにコボルトの血糊で床は濡れていたが、パーティー全体が前に押し出す事で足場を確保したのだ。


マスターコンソールでコボルトの状況を確認すると、この時すでに10匹のコボルが斃され残りは14匹にまで減っていた。

ここまでは彼らの事前の打ち合わせ通りであった。


「すぐ次がくるぞ!!」


前衛がセアド、へルベルト、その後ろにクレリックのコスタス、ステッラとカビーが後衛だ。

ヘルベルトはもう魔法は使えないがまだ戦士として闘う事ができる、そして通路が広いためカビーは後衛から余裕で魔法を行使できる。

ステッラは松明の準備を始めた、これ以上奥に進むためには松明が必要になる。


セアドの警告どおりに奥の方から多くのコボルトが向かっくる騒音と耳障りなコボルト語の叫び声が伝わってきた。

やがて暗闇からコボルトの集団が現れた、松明に火を着けたステッラがそれを高く掲げると、その集団の一番後ろに非常に大柄なコボルトが武装して周囲を睥睨(ヘイゲイ)していた。

大柄と言ってもセアドと同じ程度だ、コボルトは小人の例えに使われる程小さい種族なのだ。


その大柄なコボルトは鎖帷子の音を響かせながら前に出てきた、鎖帷子は整備がされておらず錆や泥で塗れ汚れていた。

その大柄なコボルドの顔がセアド達の後ろに血まみれで倒れ伏している仲間のコボルト達の死骸を見つけ憤怒に歪んだ。


「奴がコボルトキングよ!!」


クリーチャーに博識なカビーが警告する。


それと同時にコボルトキングの号令ともに敵が襲いかかる。

セアドとエルベルとがコボルドと激突、一匹が二人の間に割り込みコスタスがそれを防止した。

その瞬間ふたたびコボルトの集団が纏めて倒れる、カビーがスリープを行使したのだ、倒れたのは5匹程だった、コボルトは亜人の中でも特に知能が低く学習力も乏しく同じ手が通用しやすい。

だがコボルドキングはこのスリープに耐えた、目の前のコボルドを叩き切ったセアドが前に出てコボルトキングと激突した。


仮想マスターがマスターコンソールからコボルトキングのステイタスを確認した。



エフベルト

種族:コボルドキング


力 :6(+2)

体力:7

知性:4

賢さ:3

速さ:5

器用:7

魅力:5

運 :6

HP :15

AC :3

Chaos

Exp 20


コボルトは力が弱いために力に-1の種族補正を持つが、こいつはキングであるため+2の補正を持っているその為に力は差引+1となるのだ。


一般のコボルトと比較するとステイタスはかなり高いが強力なクリーチャーではない。


すでにステッラとカビーが倒れたコボルトに次々にトドメを刺し始めた、そしてヘルベルトがスリープの範囲から漏れたコボルトに襲いかかる、エルフのヘルベルトはコボルトと同様に赤外線ビジョンを持っている、このような場所でも単独で動きやすいのだ。

僅かに残ったコボルト達は戦うかキングを見捨てて逃げようか迷っているようだ、そんな彼らを躊躇なく切り裂いていく。


コスタスはコボルトキングを牽制すべく動く、キングは既に他のコボルトが全滅したことに怒ったがそれ以上に焦り始めた、セアドを負傷させたが残ったコボルドを始末したへルベルトがカバーに入り、その間にコスタスがセアドを治療してしまった。


コボルドキングはセアドとへルベルトの挟み撃ちを避けている内に壁を背にする羽目になり、逃げ場がなくなっり絶対絶命だった。

コボルドキングは負傷が積み重なり弱っていた、そして右目をも失明していた、このときセアド達は少し油断した。


コボルドキングはへルベルトに捨て身の体当たりを食らわした、ヘルベルトの剣がキングを切り裂いたがそれに構わずぶつかってきた、彼はそれを盾で受け止めたが、コボルドキングの力と体重で突き飛ばされてしまった、セアドと較べて体格的に華奢なエルフのへルベルトを狙ったのだ。

だがコボルドキングの真の狙いはへルベルトではなくその後ろにいたカビーだった。


コボルドキングは剣を振りかぶりカビーを狙う、他のものは声をだす間もなかった、カビーがとっさに血にまみれたダガーで身をかばう、そして血しぶきが上った。


「キャアアアァァァー」


カビーが叫び腕を庇いながら崩れ落ちた、カビーに追い打ちをかけようとしたコボルトキングの頭にコスタスがメイスを叩き込む、コボルドキングは鎖帷子の音を響かせながら倒れ伏す。


「カビー!!」

「大丈夫?」

セアドとステッラがカビーに駆け寄る、そこに素早くコスタスが走り寄る。


コボルドキングは片目を失っており攻撃が不正確になっていたのだろう、カビーは腕の負傷で済んだが出血が酷いようだ。


「慌てるな腕を負傷しただけだ、神の癒やしの御手よ!!」


コスタスが小さく呟やくとコスタスの手が僅かに光りカビーに注がれた、やがてカビーの出血が止まり彼女の表情が次第に和らいでいく。

立ち直ったヘルベルトがカビーに寄り添いながら詫びていた。


セアドはその間にコボルドキングに剣で念入りに止めを刺していた。


「これでおわったのかしら?」

ステッラが誰ともなく話しかけた。


「わからぬ、我らの任務は洞窟の地図を作成すること、総てのコボルトの掃討だ」

コスタスがそれに答えた。


「ねえコボルドキングには報奨金が出るのかしら?」

ステッラがふと気が付いた用にセアドに質問した。

「たしかに、首を持ち帰れば報奨金がでるかもしれないな」

セアドは剣でコボルドキングの首を落ち落とし、麻袋に入れて持ち帰る事にする。


「みんなありがとう、私は大丈夫よ」

痛みが消え傷も癒えたカビーが礼を言う。


「とにかく内部にいるコボルドを掃討する、小休止後に進もう」

セアドは僅かな休息を取り洞窟内部の調査を始める事とした。


カビーが松明を取り出し、ステッラの松明から火を受けとった。

前衛がセアド、コスタス、中央がカビー、ステッラで、後衛がへルベルトの隊列だった。

「進むぞ!!」


仮想マスターがマスターコンソールから地図を開いた、残りは二箇所の抜け道の見張りが4匹、戦闘能力の無いコボルドが19匹いる、そして王の間にはガラクタが宝物として積まれているが、一段高い岩の棚の上にアイボリーペンダントが眠っているのだ。


パーティは地図を作成しながら、残ったコボルドを掃討していった、やがて内部の異変に気が付き戻ってきた見張りのコボルドに遭遇、巣の惨状に激怒したのか無謀な攻撃をしかけて来たそれらを総て打ち倒した。


彼らはコボルドキングの部屋に到達した、彼らはそのアイボリーペンダントを容易に見つける事ができた、そこには小さな美しい女性の肖像画がはめ込まれ、その高価そうな戦利品に全員に笑みが漏れる。


やがてコボルドのねぐらになっている大洞窟に到達した。

部屋の内部は光を放つ苔が一部にあるが、非常に暗い、内部にはまだ数匹のコボルドが残っていたが、それらすべてを一掃していく。

彼らは繁殖力が強く一匹一匹は弱いが集団となると侮れない、洞窟周辺地域の人々の安全のために全滅させなければならないのだ。


「ステッラ、まだ未探索な場所があるかい?」

「ええ、もうないわね」

「わかった正面から外に出て、外側に残っている奴を見つけて掃討しよう」


そしてアセド達は外部にもコボルドの姿が無い事を確認し街に帰還したのだ。






「非常に簡単なクエストでしたね」

ルーラーに向って語りかける。


『そうだ、あくまでも初歩的な知識と経験を得るためのクエストだ、めったに失敗はない』


「これで終わりですか?」


『ギルドに帰還してすべてが終わる』


「経験値などはどうなっているのでしょう?」

『キャラクイターリストとクエスト情報の両方で確認できる』

仮想マスターがクエストメニューから今回のクエスト状況を確認する。


経験値の結果が表示されていた、コボルド 5×29、コボルドキング 20×1、

合計 165P

モンスターキル分の加算のみとなっている。


クエストの報酬


掃討報酬 10GP

地図の作成 5GP

コボルドキングの討滅 5GP


【備考】

アイボリーペンダント 3GP

アイボリーペンダントを持ち帰りギルドに提出した場合 20GP


☆ 報酬の100倍を経験値として受け取る。


しかし古いTTRPGをベースにしているらしく戦闘自体の重みが軽くクエスト達成が占める比重がやたら高い、雑魚を数多く殺しまくる事をまったく評価していないのだ、賢いプレイこそ至上な設計になっている。

むしろ雑魚を大量に発生させる事の可能なコンピュターRPGならではの雑魚狩で経験値ゲットなのだ。





五人は初めてのクエストが無事成功した事を喜んでいた、成功した事より戦死者が出なかった事が嬉しかった、彼らは無事を喜びながらギルドにてクエスト完了の申請を行った。


そこからクエストの査定が始まる、地図の精査を行い、明日の早朝クエストの依頼者とギルドが調査人を送り込み結果を確認して終わる。


更にアセドがギルドの受付にコボルドキングを倒した事を告げる。

その受付代理の女性はアセドの持ってきた麻袋を嫌悪の篭った目で眺めた。

「それは!!そのまま鑑定人のところへ持っていって!!」


最終的に彼らは、掃討報酬と地図の作成とコボルドキングの討滅により20GP、アイボリーペンダントを手に入れ売却し3GPを手にいれた。


マスターコンソールのプレイヤーリストでは 2300 + 165 = 2495の経験値を獲得し各人に分配されていく、これが基本EXPでそこに種族補正やクラス補正やステイタス補正などが加わるのだ。

だがこれはアセド達の知るところでは無かった。

だがこの程度ではあと2~3回クエストをこなさないとレベルは上がらないだろう。

もしアイボリーペンダントのクエストを達成していたら4165の経験値を手にいれていたはずだ。


ちなみにこのパーティのヘルベルトの魔法戦士のクラスはレベルアップに必要な経験値が高い、成長させにくいのだ、カビーの魔法使いクラスの2倍は必要になる。魔法のスペシャリストとしてはカビーの方が早く成長する、さらにエルフの種族特性として成長が遅い、ただし赤外線ビジョンや知力補正やカリスマ補正や魔法戦士特典などメリットも多い。

戦士として強力な防具や武器を装備できる為、苦労して育てれば非常に強力なキャラに成長する。

アバターのエレーネは高レベルの魔法戦士で装備もチート級である。




二日後の良く晴れた日、アセド達は次の街を目指して旅立って行った、新しい冒険が彼らを待っているだろう、それを祝福するように気持ちの良い風が吹いていた。


だが突然すべてが静止する、人も鳥も雲も川の流れも総てが止まった、まったく動きのない静寂、そしてしだいに世界の総べてが薄暗くなっていく、日没の夕暮れの美しさはない、世界の総てが均等に暗くなって行く、やがてすべてが暗闇の中に閉ざされる。



『チュートリアルクエストは終わった』


ルーラーの宣告で俺は我に返った。





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