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ゲームマスターと言う概念に転生していた

 俺は真っ白な光の中で意識を取り戻した。


あたり白一色で上も下も解らない、ここはどこだ?いったい何が起きた?


そして五感が無い自分の体を感じる事ができない。


ただ意識だけがある。

これは夢なのか?


そこで俺は思い出した。


そう俺は自宅の倉庫を整理していた、棚の上に古いテーブルゲームのガイドブックの分厚い塊を見つけた、つい懐かしさからそれを降ろそうとして。


そこで倉庫の中身が盛大に崩壊した・・・


バランスを崩し何かに捉まった、それがまずかったのだろう、周りの棚から崩れかかるあらゆるモノの雪崩を見た、それが自分に向かって落ちてくる瞬間をコマ送りの動画の様に思い出した。


俺は死んだのか?



『そうだ君は死んだ』


「うああっっっっっっ!!」

突然声をかけられれば誰でも驚く。


しばらく動転していたが落ち着いてきた、だが声はすれど先程の声の主の姿は見えない。


『落ち着いたかね?』

そうだ落ち着け、まずこの様な場合に聞くべき事は5W1H、誰が、何を、どこで、いつ、なぜ、どのように、だっ!!


焦ったり慌てている時でも必要最低限な質問を投げる事ができる。


「貴方は誰ですか?」

『私はこの世界のルーラーである、神の如き者と考えてもらっても差し支えない』

「貴方はここで何をしているのですか?」

『ここは私が管理する世界の最高存在の部屋だ、神の座とも呼ばれている、ここで全てのルールが創られ調整される』

「といいますと、この部屋の外に世界とやらがあるのですか?」


『外という表現は不適切だが、君のいた世界によく似た世界の高次元領域に位置している』

どうも理解が追いつかないが、神や天使のいる天国のような場所なのだろうか?

それに聞き捨てにできない事を言ったな『君のいた現実界によく似た世界』とはなんだ?

ここは死後の世界ですら無いとか?


「死後!?」

『どうした?』


「やはり私は死んだのでしょうかッ!?」

『そうだ君は死んだそれが現実だ』


「・・・・・・」



「先程から体を感じない、たしかに死んだようですね」


『なんとか落ち着いたようだね』


俺も次第に自分の死を受け入れ始めている、しかしルーラーは今だに声だけで姿を見せないのはなぜだ?


そうだ『なぜ』を投げなければ。


「私はなぜここにいるのでしょうか?」

『私が君をゲームマスターとして召喚したのだ』

「はっ?」


俺が知るゲームマスターと言えば、テーブルトークロールプレイングゲーム(TTRPG)の脚本を創りゲームの進行を管理する役割だ、ただしゲームマスターもまたマスターをプレイして楽しむ立場であり奉仕者でも運営でもない。


TTPRGはコンピューターPRGやオンラインMMOPRGの元祖とも言えるテーブルゲームなんだが、それがなぜ神の口から出てくるんだ?


『私がこの世界の理の代理人であるとするならば、その理に従い幾多の運命の糸車を回し脚本を織る執行者を必要としている、それがマスターだ』


さっき自分の事をルーラーと言っていたな・・・


『そうだ、あらかじめ言っておくが私がお前を殺したわけではない、それはお前の運命だったのだ』


「あ、そうですかい」


「しかし神のルールに従いゲームマスターをやれと?ですがいまいちわけがわかりません」

『そうであろう、ではこれを見てもらおうか』


眼の前に原色、中間中間色の色とりどりの薄い本の山が現れた。だがそれらには非常に見覚えがある。

それは古典的な伝説のTTPRGダンジョン&エピック(D&E)のガイドブックの山だ。

各種マスターガイドとプレイヤーガイド、各種拡張ルールとサンプルシナリオ、モンスターブックなども数冊ある、クラシックから改定版まで漏れなく完全フルコンプしているわ。

それも新品同様の美品でオークションでどれだけの値段がつくのか想像できない。

物置の棚から降ろそうとして死因になったのがこれなんだが、あちらは不完全でよれよれで傷だらけだった。


「で、これがどうかしましたか?」


『それはこの世界の理を簡略化し遊戯化したものだ、これをお前たちの世界のゲームデザイナーの意識に干渉し長年に渡り広めてきたのだ』


「なぜそんな事を?」


『この世界は生まれたばかりで日々拡大し複雑化している、マスターの資質を持つ者をその死後マスターとして召喚する為だ』


「しかしこのガイドブックだけで世界の総てをカバーできるのですか?」


『これらはあくまで原初の理、現実は遥かに複雑だ、考えて見たまえ現実にはターン制など存在しない、君達の文明の進歩により、現在鋭意開発中のオンライン・ダンジョン&エピックによりリアルに反映する事が可能になったのだ』


いやまて!?開発中なのかよ!?


ゲームマスターとは運営側のテスターではないだろうな?


その時、周囲の白い世界が一変し、色鮮やかな地球によく似た美しい風景に転じた、建造物やそこを行き交う人々の服装が欧州の中世風だが、微妙にそれとは異質な世界だった、恐竜のような爬虫類が空を飛んでいる、まるでファンタジーゲームの舞台のような世界だった。

道を行き交う人々の中には、典型的なエルフやドワーフの様なデミヒューマンらしき者達までも行き交っている。


それが360度全周スクリーンの球体の部屋の真ん中に居るような感覚に襲われた。


『これがゲームマスターモードだ』


『ゲームマスターは遍在的な存在だ、いずれは君もこの世界に時空を越えて干渉する事ができるようになる』

「あなたも遍在的な存在なのですかね?」


『当然だ、今この瞬間にも多くのマスター達の行動を追跡している』

「さようですか」


『ゲームマスターモードは神の視点で世界を俯瞰し干渉する事が可能になる、具体的な説明は後で行う、ゲームマスターは長いのでこれからはマスターと略させてもらうぞ』


俺はその風景にしばらく見惚れていた、その町の特徴のあるランドマークから、D&E公式キャンペーンシナリオで出てくる迷宮都市の名を思い出した、だがこれは現実なのだ。


今の技術なら十分オンラインゲームにできるよな。


『わかってきたかな?』

「こうして見ているだけで多くの人々がいますよね?すべての人々のシナリオを作るのですか?」

『彼らには自我も有り意識もある、それぞれが自由意志で生きているのだ、だがこの世界には極めて重要な運命を持って生まれて来た者達がいる』

「あれですか、某国民的RPGに出てくる伝説の勇者のようなものですか?」

『不適切だが、今はそう理解してもらってもかまわない』

「その伝説の勇者の為に脚本をつくれと?」

『まあその通りだ』


そうだ具体的に『どのように』を投げなければ。


「具体的にマスターとしてどうすれば良いのでしょう?」

『その為にマスターとしてのチュートリアルを用意してある、D&Eの経験がある君達ならばすぐ理解できるだろう、ではこのままマスタープレイヤー用チュートリアルを進めて行こうか』



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