妖怪小噺集 出張版 〜妖猫への鎮魂歌(レクイエム)〜
神谷ネコ丸氏に捧げる鎮魂小説…
安らかに新天地ではっちゃけて下さい!
今日は一つ目小僧が一人で妖世界をプラプラと歩いています。
「あぁーあ。ろくろ首もみずちも今日は人間界で人間驚かせてんのかぁー。一緒に行けば良かったなぁ。ちょっとヒマ!」
あぁ、どうやらろくろ首もみずちも人間界にいて、一つ目小僧だけが妖世界に残っているようですね。
と、そこに一人の妖怪が近付いてきました。
「にゃんだ?今日は一つ目小僧だけにゃのか?」
彼は妖猫の『神谷ネコ丸』。
猫の妖怪で、白いもっさりブリーフを愛用しているともっぱらのウワサになっている童顔イケメンの半ズボンが似合う美少年?です。
妖世界で一つ目小僧と一二を争う程のトラブルメーカーで、不動明王さんの頭痛の原因TOP3に入るイタズラっ子です。
「おー、ネコ丸じゃん♪そうなんだよー。今日はろくろ首もみずちも人間界なんだよー」
「お前は行かにゃかったのかにゃ?」
「この前人間界でピンポンダッシュして、ワザと見つかって顔を見せて驚かすってイタズラしてたら不動明王にめっちゃ怒られてさぁ!今人間界に出禁なんだよ」
「にゃはは!相変わらずアホだにゃ!」
ネコ丸は一つ目小僧を指さして爆笑してます。そんなネコ丸に向かって一つ目小僧が反論しました。
「いや、お前もアホじゃねぇか!聞いたぞ!この前人間界で猫の振りしておっぱいの大きな女の子に近付いて、じゃれる振りしておっぱい揉んでたって!それが不動明王にバレて反省文書かされたそうじゃねぇか!」
「う…それは、ちょっとしたイタズラにゃ!それで怒る不動明王がひどいのにゃ!」
「オレだって軽いイタズラじゃん!でも、確かに不動明王が厳しすぎんだよなぁ」
「そうにゃ!不動明王が頭固すぎにゃ!」
二人が自分達の事を棚に上げて、不動明王のせいにしています。
「そうにゃ!この前人間界で面白いマンガを見つけたのにゃ。今、そのコスプレが流行ってるみたいなのにゃ。一つ目小僧は知ってるかにゃ?」
「え?なんだよそれ?」
「変態マスクって言うのにゃ!このマンガ見てみるのにゃ!」
そう言って、ネコ丸は懐からマンガ雑誌を取り出して一つ目小僧にそのマンガを見せました。
「ギャハハハハ!なんだよこの『それは私のおいなりさんです!』ってセリフとこの姿!ブリーフはいて両サイドを肩にかけてるし、女物のパンツを頭に被ってるじゃねぇか!」
「人間界ではこのコスプレが人気らしいにゃ!こんな恥ずかしい姿を出来るって事で、逆に勇気があってスゴいって女子高生に人気らしいにゃ!」
「マジで!?確かに勇気が無いと出来ないな…」
「だろ?そうにゃ!一緒にコスプレして人間界に行って見ようにゃ!」
ネコ丸は一つ目小僧に一緒に変態マスクのコスプレしようと提案を持ちかけました。
「でもオレ、不動明王に人間界の出禁くらってるからなぁ」
と、一つ目小僧は断ります。
「ふふふ…それは心配要らないにゃ!なにせ、コスプレしてるから正体がバレないハズにゃ!」
「っ!そうかっ!!!確かにネコ丸の言う通りじゃねぇか!」
「ふふふ…しかも、ここにブリーフと女物のパンツが2セットあるのにゃ!」
そう言って、ネコ丸はポケットからブリーフと女物のパンツを取り出しました。
「おぉ!準備良いな!でも、なんで女物のパンツなんて持ってたんだ?ブリーフは普段から愛用してるってウワサだから良いけど…」
「それは気にしなくて良いにゃ!たまたまこの前人間界に行った時に下着泥棒したけど、たまたま、偶然なのにゃ!」
…どうやら女性のおっぱい揉んでただけでなく、下着泥棒までしていた様ですね。そりゃ不動明王さんも怒りますね。
「まぁ良いか。じゃあ貸してくれ。コスプレしないとな!」
「そうにゃ!細かい事は気にしなくて良いにゃ!」
ネコ丸は持っていたブリーフと女物のパンツを一つ目小僧にわたし、二人は変態マスクのコスプレをしました。
「じゃあ人間界に行くにゃ!」
「おー!」
…人間界…
女子高生が友達と二人でおしゃべりしながら学校から帰っていると、曲がり角で誰かとぶつかりました。
「あっ!すみません!」
女子高生達は慌てて謝って頭を下げると、下げた頭に暖かくて柔らかいモノが当たりました。
「あれ?何か暖かくて柔らかいモノが…」
「それは私のおいなりさんです!」
ネコ丸と一つ目小僧が女子高生の頭に股間のおいなりさんを当てているではありませんか!?
「「え…?っ!キャー!!!変態!変態がいるー!!!おまわりさーん!!!」」
そう言ってものすごい勢いで逃げていく女子高生。
呆気に取られていた一つ目小僧は、そのあまりの逃げっぷりに呆然としていました。
しばらく理解が出来なくて呆然としていると、一つ目小僧の肩が叩かれて、一つ目小僧が振り返りました。
するとそこには鬼の様な怖い顔の不動明王が立っています。
「一つ目小僧。お前は確か人間界にしばらく出禁だと言っていたハズだが?」
「ヒィッ!い…いや、私は変態マスク!ただのコスプレイヤーだ!」
一つ目小僧は必死に誤魔化そうとしています。
「お前はアホかぁー!!!そんなんで騙される訳ないだろう!それに、それはコスプレじゃなくてただの変態だ!」
「え?ウソだ!だってネコ丸が人間界で流行ってて、コスプレしたらモテるって!なぁ!ネコ丸!」
一つ目小僧はネコ丸に助けを求めようと辺りを見回しましたが、そこには不動明王以外誰もいません。
「え…?あれ?ちょ…?え?ネコ丸?ネコ丸さん?あれ?」
一気に冷や汗でびしょびしょになって行く一つ目小僧。
「不動明王さん?あのですね?妖猫の神谷ネコ丸がですね?」
「ふむふむ。とりあえず、一旦私の詰め所で話を聞こうか。…すぐに帰れるとは思わんことだ」
不動明王はそう言ってニッコリと一つ目小僧に微笑みます。…まぁ表情はニッコリとしていますが目が全然笑ってませんけど。
「違う!違うんだ!オレは騙されたんだ!コレはネコ丸の罠なんだ!違うんだー!」
「はいはい、言い訳は詰め所で聞くから」
「にゃはははは!簡単に騙されてやがるにゃ!やっぱアイツアホだにゃ!」
遠くの屋根の上で不動明王と一つ目小僧のやり取りを見ているネコ丸。
「あー、面白かったにゃ!」
そう言ってパンツを被ったまま妖世界に帰って行きました。
後日、全てをゲロった一つ目小僧の情報で、一人の妖怪が不動明王にしこたま怒られたとかなんとか。
合掌。
と言うわけで、ネコさんの登場でした!