現状把握の第8話
男女比の偏りは元の世界とそれ以外の観念についても差を作る要因であった。さもあらん、この世界では太古の昔に狩に出ていたのはメスなのだ。逆転とまではいかずとも大きな差があることくらいは簡単に想像がつく。ついこの前までは想像すらしていなかったが。
小学生男子が気になる女の子にかけるちょっかいとしてスタンダードなのはスカートめくりなどであるが、ではこの世界では女子が男子のズボンを下すのかと言えばそうではない。男女比を考えればわかる事だが男子は貴重なのである。
もしそんな物理的に嫌がらせに近いちょっかいなど出せばたちまち村八分、下手をすればいじめどころかリンチにすら発展したという話は正直創作であってくれた方が精神衛生上よかったのだが、鉄拳制裁などという言葉は女子の為にあるとかいう世界には無理な話だろう。
女に媚を売る男など前世では情けなさの代名詞であったわけだが、割と切実に男女比から考えられる競争の激しさ、更には近代に技術の発達で安全で安定した人工授精が可能になり、故に男性側の負担を軽減するために結婚の最低限度を法的に減らしたことはそこに拍車をかけた。
つまり、媚を売る程度で結婚できるならいくらでも媚を売るのが正義の社会というわけである。無論小学生がそれをどれだけ理解しているかなどは知らないが、親に関しては自分の子供に恐ろしいほど教育していることだろう。
更には、ストレスの低減のために特別にクラスを設けて接触の機会が少ない筈の男子がもし同じクラスで生活する事になればどうなるか。火を見るより明らかな事実は弁明するならばその選択をした当初の私には想像もつかなかったのだ。
純粋に交友関係を築こうという女子は居らず、今まで見たことのない珍生物に対する好奇心からなる一派、刺激しないように若干遠巻きに見る一派、そして積極的に深い仲を育もうとする強かな一派に分かれた。
生憎と私は小児性愛といった嗜好を持っていないので特にどうということは無いのだが、果たして同年代に好意を抱かないというのはそれはそれで倒錯した性的嗜好ではないかという疑問が首をもたげる。持つとすれば父性愛になってしまうのだが。
この場合父性愛というのが前世的な父性愛なのか母性愛なのか微妙に混合しているという実に厄介な事実からは目を瞑るものとする。……もしかしてだが、以前私をパパと呼んでいたのは……やめよう、想像したところで幸せにはなるまい。
因みに旧題はバブみを与えておギャらせろ! とかいう頭のおかしいタイトルだったり。でもそれだけだとパンチがあれなので。