現実に気づく第6話
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます」
つらつらと歓迎の挨拶をする校長先生は、やはり大人なんだという風格を放ちながらも何かを警戒している様子を見せていた。時稀視線が合うが、そんなにちらちらとこちらを見てもよいのかと疑問に思うことはない。
他の新入生や在校生とは更に別の席、かといって保護者席からも離された特別席に座る私に、挨拶をしている校長先生にではなく視線を向けてきている大多数を考えれば確かに今までに私は世間の常識を知らなかったのかもしれないと思わざるを得ない。
詩的な表現をするのであれば、異世界に迷い込んだようだといったところであろうか。現状を簡潔に述べるのであれば、入学式が行われている体育館に存在する性別オスは私一人しかいない。しかもVIP席もかくやといった有様だ。
今すぐに世間一般の常識について纏めたマニュアルが必要だと思った。きっと前世との違いは他にも多くあるはずで、のほほんと過ごしている場合じゃないことは明らかだった。というか今までの数年間を後悔するレベルである。
「ところで、気が付いている人も居るでしょうが、今年は男の子も入学しています」
ガッと、遠くの席で立つ音が聞こえる。ガタリ程度ではない。校長先生の挨拶中だぞ座ってろという思いは恐らく届かないだろう。親御さんは自分の子供の晴れ姿を見てなくていいんでしょうか?
「そして、当初予定では一般クラスに入る予定です」
一瞬の静寂、それは嵐の前の静けさにしてはあまりにも短く、儚いものであった。騒音と呼ぶほかない騒ぎは、一部絶叫するほどの興奮具合を否応なく鼓膜に叩き付けてくる。音が聞こえなくなるほどではないが非常にうるさい。
ドンッと、舞台の方から爆発音のようなものが響く。さすがにお腹に響くような轟音に肝を抜かれたのか、全体的に静かになる。見れば、般若がそこに居た。
「皆さん、くれぐれも注意して生活してくださいね?」
果たして、首を横に振れる人間はいるのだろうか。それほどの迫力で脅しつける必要は、多分あるのだろう。
やったね優君、君以外女子しかいないハーレムだよ!
というわけで一捻りの正体はそんな感じです。