うんどうかいだよ11話
雲一つない素晴らしい天気は絶好の運動会日和、というやつなのであろう。入学してそれほど期間が経ったわけでもないが、体感時間としてはそこそこ長かったように思える。内一週間ほどは病院のベッドでのんびりくつろいでいたけれども。
わざわざ男子生徒用に特別設置されている天幕だが男子は私一人。本来この学校にはもう一人男子がいるそうだが、どうも炎天下の外が悪いのか運動会などという行事そのものかは知らないが参加するわけがないとのこと。公然と罷り通るのが今生の常識である。
むしろ私が運動会に参加するという事の方が異常事態らしく、参加競技は徒競走のみである。団体競技に参加しないのはまだしも一人でレースとかそれを全校生徒や保護者に見られてるとか最早いじめの領域にあるのではないだろうか。
まあ騎馬戦などは低学年が参加しないのは当然であるし、玉入れ一つとっても万が一再度事故が起きれば、それも公衆の面前でともなれば今度はどんな事態になるか想像もつかないので仕方ないと言えば仕方ないのだが。
というわけで私の今日の大半は一人室外にもかかわらず異様に快適な天幕でのんびり他の種目を眺めるというスケジュールであった。そこはかとなく厳重な警戒態勢は目に入らない。気にしたら負けな気がする。黒スーツにグラサンとか絶対暑い……見えてないから気にならない。
よくよく思い返せば登下校の際などに視界の端にちらちらと映り込んではいたが、SPが護衛するとかどんな待遇なのか。精神衛生上よろしくない事の多い一日である。精神衛生上最もよろしくないのは傍に控える少女の存在な訳だが。
退院して初日を思い返す。子供の無邪気さ故の残酷さなどと語られることも多いわけだが、そこに種の本能的なものが加わればどうなるか。女子の苛めは陰湿などという言葉は前世の物だと投げ捨てておいてほしかった。
腕の痣などはどこで出来たものか、わざわざ聞くほどのことも無く。目を離せば、ふとした拍子に周囲から暴行を受けかねない環境は放置できる人間がいるとしたら多分精神科に行くことをお勧めしなければならないだろう。
私の盾という名目、建前での私の傍から離れないという事は、彼女を守るためには必須だという事である。止めるべき大人がむしろ率先垂範しかねない世界観は確実に私の精神を削ってゆく。全人類がこの境地に至れば戦争など起こるまい。
とかく常に目の届くところに居てもらうべく私の我儘でクラスの応援場所からこちらに来てもらっているわけである。ついでに言えば現在の住所も私の家になっていたりするわけであるが最早些事である。気にしていたら本当に胃に穴が開きかねない。
「一ちゃんも出るの徒競走だけでしたっけ? 頑張ろうね」
「は、はいっ」
元々は粗忽な元気っ娘だったはずが今では丁寧語を使う小心者と化している。私の一挙手一投足に逐一反応する様を見て喜べたら多分私の精神面は大分楽になるだろう。




