第九話
お弁当の時間が終わると、また授業が始まった。
今度の授業は、食品学。担当は、眼鏡をかけた、長い黒髪を一つに結わえた30代の磐山ロロナである。今日は、食品の主要成分について学ぶ。
「炭水化物は、C、H、Oの3元素からなる化合物。単糖は、酸によってそれ以上加水分解できない糖質の最小の単位である。炭素数によって、三炭糖、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖に分けられる。天然には、果実、はちみつなどを除いて、少糖や多糖の構成糖として存在している」
磐山教師の声が聞こえる。
「単糖の構造と性質は...」
『貴方達は、勇者なの』
ラーノットの声が聞こえた。
『一緒にこの国を救って』
-キーンコーンカーンコーン
授業の終わりの鐘が鳴るのに気がついた私。
いつの間にか眠ってしまっていた。
「ノート、後で貸すね」
隣の鏡田巫女子がウインクした。
「御の字だ」
と私は、感謝する。
鏡田巫女子と移動教室をしている時に、後ろから声がした。
「ここにいた」
そこにアルヴァさんが立っていた。
「今が、君たちの出番だよ。君の妹は、もう呼んだ」
「え?山吹の友達?」
赤髪の美青年が現れた事に驚く、鏡田。
アルヴァさんは笑って流す。
「そう。ちょっと山吹さんに用があるから、いいかな?」
鏡田は、淡褐色の目で見つめられてただ頷く。
アルヴァさんの後について行く私に、
「遅れないようにね」
と山上蒼が注意した。
隣の空き教室に入ると、大きな鏡があった。
アルヴァさんが、謎のスペルを唱える。
鏡が光出して目が眩む私。
光と共に、気がついたら、アルヴァさんの国にいた。
「突然ごめんね。占い師から呼んで欲しいと連絡があったから」とアルヴァさんと人参畑を歩く。
暫く歩くと、ミリーさんの家に着いた。
-今日は、早い。
「急ぐから」
私が考えた事を見透かしたように言うアルヴァさん。
「おかえりなさい」
とミリーさんとラーノットさんが出迎える。
「ただいま」
アルヴァさんが答える。
「お姉ちゃん」
と鈴桐が手を振る。
私も振り返して、鈴桐に話かける。
「授業中じゃなかった?」
「ううん、休み時間」と鈴桐。「でも、皆驚いてた」
「急で悪いけど、仕事よ」とラーノットさんが言う。「占い師アステールの所に行くわ」
ラーノットさんが、上着を羽織り、また外に出る。
それに私、鈴桐、アルヴァさんが続く。
「いってらっしゃい」
ミリーさんの言葉に、
「いって来ます」
と大きな声で返す私と鈴桐。
前を見ると、アルヴァさんが、剣を取り出し、
「占い師アステールの元へ」と言うと、光が飛び出した。そうして、目の前には、エキゾチックな美女が立っていた。
「私が、アステールです。急を要します」
私と鈴桐は「こんにちは」と挨拶した。