表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

第一話

「お腹減った」

机の上で参考書片手にへばる私。さっきから、問題が解けなくて、困っている。

エアコンは、セットした。音楽をかけている。ペンもノートも買ってきた。

それなのに、全然進まない。

「そろそろ、休憩しようかな」

私が時計を見ると、時刻は11時になる所だった。

私、浦井山吹。18歳。今年、専門学校に入った私は、なかなか忙しい。学科は、調理で、趣味は料理。料理は作りたがりなのに、料理の腕はからきしで、両親泣かせの腕である。

今日は、父と母が、結婚記念日で出かけている。

ーそろそろ、お昼時だ。

私は、少し早めの昼食を食べることにした。

1階へ降りて、誰もいないキッチンに入った。

冷蔵庫を開けると、人参、小松菜、林檎、パン。卵と砂糖、しょうゆ、マヨネーズだけ。

私は、食器棚から、フライパンを取り出して、それを、IHクッキングヒーターの上に置くと、

電源を入れて、加熱のスイッチを押した。

卵を割り入れ、砂糖大匙1、しょうゆ大匙1加える。

オリーブオイル大匙1杯入れてなじませ、卵を割り入れておいたのを、フライパンに半分流しいれる。

固まってきたので、半分卵を折り曲げると、残りの卵を全部入れ、それも固まってきたら、卵を上手く巻いていく。

それから、出来上がった卵焼きをマヨネーズをくっつけたパンにはさんで、卵サンドの出来上がり。

ジューサーの方は、人参、小松菜、林檎をセットして、回すと、よく撹拌して、タンブラーに入れるだけ。

こうして、お昼ごはんが完成した。

「いただきます」

きちんと礼をして、食べ始める。

味の方は、私にしては、まあまあ。できれば、もっと材料が欲しい。

10分ほどで、全部食べ終え、2階の自分の部屋に戻る。


部屋の前まで来た時、部屋の中から冷気が出ているのに気が付いた。

ーさっき、消したはずなのに。

消したはずのエアコンが稼働している。

ー泥棒かもしれない。

私は、恐る恐るあとずさりをする。

その時、扉が開いた。

「あ、おかえり」

そこに立っていたのは、私の妹だった。

☆☆☆

「なんで、今ここにいるのよ」

私は、麦茶を妹に差し出した。

「今日、早かったんだ、学校」

妹は、麦茶をすすった。

中学2年の妹は、名前を鈴桐りんどうといった。目が大きく、幼い顔立ちをしていて、身長が低いので、よく小学生に間違えられる。妹と私の部屋は同じで、部屋の中央には、テープが貼られ、それで仕切っている。

「どうやって入ったの?」

鈴桐は、可笑しそうに笑った。

「ベランダから」

「よじ登ってきたの?」

私が、驚いて尋ねた。

「ううん。外にあった梯子かけてきた」麦茶を置いて鈴桐は答えた。「お姉ちゃんは、今何やってるの?」

「お昼ごはん食べてきた。鈴桐は、どうするの?」

私がそう言うと、彼女は床に置いた、プラスチックの袋を指し示した。

「さっき、コンビニで買ってきた。おにぎりとサラダチキン」

「そう。じゃあいいんだけど」

そうして、私はさっき取り残したノートの前に座った。

次の問題は、ベーキングパウダーだった。

ベーキングパウダーは、炭酸水素ナトリウムを主成分としたものだ。衣に、ベーキングパウダーを使うと、ふんわりと膨らみ、やわらかい食感になるのだ。

「ところでさ、さっきコンビニでお姉ちゃんの友達に会ったんだけど」

「誰?」

振り返らずに、尋ねる。

「友達の、田多たださん」

「本当?残念だな、久しぶりなのに」

私は、顔を上げずに、独り言を言った。

田多理利(ただりり)は、私の小学校時代の友達である。中学校に入って、学区外だった為、理利は別の学校だった。

顔は丸顔、目は大きくて、眼鏡をかけていた。違うクラスだったが、身長は、私と同じくらいだったので、並び順でいつも顔を見合わせていた。

「そういえば、もう一人女の人いた。すごい美人の」

妹は、食べながら話しているようである。

その時、下から電話の呼ぶ音がした。

私は、急いで階段を下りる。

「ただいま、留守にしております」

間に合わずに、留守電に入った電話に、声が聞こえた。

「もしもし、私、理利」驚く私に、電話越しの花実の声が続く。「相談したいことがあるんだけど、今度会えない?」

私が、慌てて受話器を取る。

電話はツーツーと空しい音を奏でていた。

「どうしたんだろう」

私はなんとなく不安になって、受話器を見ている。

ぼんやりしていると、妹が下りてきた。

「お姉ちゃん、誰から?」

「うん、理利から」私は、妹の顔を見つめた。「相談したいことがあるんだって…」

「ふうん」と鈴桐。「お姉ちゃん、ところで…」

その時、2階からガタッという音がした。

―まさか

私たちは顔を見合わせて、こっそり、テーブルに歩み寄り、布を上げると、その下に隠れた。

音の主は、段々、階段を下りてきたようだ。

「まったく、手間かけさせやがって」

低い女の声である。

「まあまあ」男の喋る声が聞こえる。「さてと、何処にあるのだろう?」

不審な2人は、1階を物色しているようである。

私たちは、どきどきしながら、静かにしている。

「おっと」男が何かに気が付いたようである。「これだ、これだ」

人が動くような音がして、2人はドタバタと出て行く音が聞こえる。

そっとテーブルの下から出る、私と鈴桐。

「よかった」

女の声がして、見上げると、私の見知った顔でない男と女が立っていた。

「2人とも早くして」

男の方に手を引かれる。

「どなたですか?」

私は吃驚して、尋ねる。

「君の近所の小説家」彼は時計を見た。「時間がない、とりあえず、君らも来てもらおう」

私と妹は顔を見合わせた。

「分かった」と私。

彼らの話にのることにしたが、いったい何が目的なのだろう。

そんな謎をよそに、私たちは家を出て行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ