忘却の先
なぜここにいる?
周囲は見渡す限りの荒野。ここは、どこだ?
気がつけばここにいた。
目の前に転がっているのは、仲間達。
名前はわかる。どんな奴らかも知っている。
でも装備が違う。最後に見た姿とは違っている。
まぁ、まずは叩き起こしてみるか。
軽く揺すると起きた。
中には少々手荒に叩き起こしたせいでダメージを負った者もいたがこの際気にしないことにした。
心地よい寝覚めとはいかなかったが、何はともあれこの場の全員の無事は確認できた。
順番に記憶を追うとしよう。
1人目はドワーフと呼ばれる種族の女性だ。
種族を通して鍛冶を得意とし、火や熱に耐性を持つ。
男性は若くして見事な髭を生やし、女性は逆に比較的年老いても若い、というか幼い見た目のままという特徴がある。
彼女の名はライカ・シルサリス。
種族柄、珍しく色白で、大人しい性格かと思いきや動かない表情筋の下に静かな激情を抱く。
年齢は14歳。約200年の寿命を持つドワーフとしてはまだ未成年と言える。
武器は斧。ヘビーアックスと言う片手半斧を持ち、その小さな体よりも大きな盾が目を引く。
彼女は魔物に村を焼かれ、その時に行方不明になった婚約者を探している。
冒険者酒場で、ほぼ普段着にボロボロの斧と小さな盾を持って依頼書を眺めていたのが気になって声をかけたのが最初だ。
2人目はミアキスと呼ばれる種族の女性。
猫のような人、ではなく、人の姿になれる猫だ。
猫の姿に戻ることもできる。猫と人双方の言葉を理解できたりするが、人に合わせているだけで行動は基本的に猫だ。まず目を離すと寝ている。
名はアイシャ・アルミーリオ。まだ猫の姿を見たことはないが、きっと黒猫なのだろう。頭髪や尾の毛は黒く、艶やかな光を放っている。
15歳で、平均60年という短い寿命の種族としてはそこそこ生きてきたほうだろう。人間に直すと20歳くらいだ。
彼女の武器はその肉体だ。練体士といって、自身の肉体を強化する術に長け、拳闘士として名を馳せている。
爪や牙など、猫本来の武器も使えるため、相性は良いのだろう。
彼女は生粋のトレジャーハンターだ。というか、元はシーフ。盗賊で、守銭奴だ。
盗人稼業を働いていた彼女を討伐せよ、と依頼を受けた私が彼女を気に入ってしまい、正式な戸籍を与えた後にスカウトしたのだ。
利害の一致もあり、彼女は旅の仲間となった。
3人目
最後は私、人間だ。
ちなみに女性である。見た目はたしかにボーイッシュというか、男っぽくはあるが、正真正銘女性だ。
このお話の語り手でもある。
名はシャルル。シャルル・マーロット
茶色の髪と茶色の目が特徴と自負している。おい誰だ没個性とか言ったの。
技師をしていて、その関係上「魔導銃」という武器に通ずる。
私の武器はこの魔導銃だ。一応弾は出るが、火薬ではなく、魔力で飛ばす。
弾に属性を付与したり、貫通力を強化したりできる。熟練であるなら、普通の弾丸を炸裂弾に変えることだって可能だ。
まぁ、そこまでは私にはできないが。
前述で戸籍を与えた、というのがあったが、一応それができるだけの地位にある名家の娘だ。
なぜ旅をしているのか、と聞かれれば、魔導技師に憧れ、本来嗜むはずの真言魔法ではなく、機械いじりばかりをしていたのもあるだろう。
書置きを残して家を飛び出して来てしまった。名前?もちろん家名は伏せているとも。即バレてしまうからな。
さて、この3人で旅をしていたところまでは覚えているのだが、なぜここにいるのかは不明だ。それもこんな荒野のど真ん中で。
初めましてこんにちは。おはようございます。それともこんばんは。
紅月アイネと申します。
今回、ちょっとだけ小説を書いてみたくなり投稿に至りました。
異世界に転生するのは正直飽きたので、最初から異世界です。
ファンタジーって最高ですよね。今回「剣も魔法も」といいつつ、両方出てきませんけど。
そんな小さな、たまに大きなお話です。