316 受け入れる
私事でゴタゴタが続き、UPする時間が取れなかったり、気力が萎えたりですが、
何とか走り続けますので、生暖かく見守って頂ければ幸いです。
ケフに帰ってからネアたちの生活は慌ただしいものになった。職人級の裁縫技術や騎士並みの戦闘技術、諜報活動の基礎から実践、接客技術などを、これでもかと言うぐらい叩き込まれていた。
「うちらが何か悪いことしたって言うのよ」
エルマに容赦なく叩きのめされ、踏みつぶされたカエルの様に大地に横たわっているフォニーが唸った。
「悪い事? 強いて言うなら、弱い事だな。ぶっ倒れている暇があるなら立ち上がって、剣を構えろ」
大地に這いつくばっているフォニーを醒めた目で眺め吐き捨てた。
「地稽古を朝からぶっ続けで夕方までやってぶっ倒れないヤツなんているわけない」
木製の短槍を杖の様にしながらネアが恨みがましくエルマを睨んだ。
「寝言は寝てから言え。相手を変えるんだ。はい、はじめっ」
お館の裏庭の訓練場にはネアたち侍女見習い4名、レヒテ、パルとメムの主従コンピ、そして残念トリオがフラフラと幽鬼のように蠢き、エルマの号令で何とか武器を構え、互いに打ち込みを始めた。
「精が出ておるのう」
腕組みをして幽鬼同士の打ち合いを睨んでいるエルマの背後から杖を手にしたラールがそっと声をかけた。
「バーセンで生き残るために力をつけさせています」
「聞いておる。南からのあぶれ者が面倒なようじゃな」
エルマはラールの言葉に黙って頷いた。
「あの子たちには普通の少女として過ごさせてやりたいんですよ。でも、時期が時期ですから」
「厳しいもんじゃな」
ラールは見えぬ目をネアたちに向けながら静かに頷いていた。
「沁みるよー」
大浴場で風呂に浸かりながらレヒテがうめき声を上げた。
「私も赤タンに青タンの痣だらけ。妙なプレイをしたのと勘違いされそう」
お湯の中で痣の付いた腕をさすりながら、バトがため息交じりに呟いた。
「心配しなくてもそう見られていますから」
湯船の中で身体を伸ばしながらつまらなそうにルロが応じた。その態度があまり気に入らなかったのかバトはむすっとした表情を浮かべた。
「疲れとストレスが溜まるとギスギスしてきますからね。キツイですけど、自制が必要になってきますね」
ネアは身体に付いた泡を流しながら、前の世界での出来事を思い返して注意を促した。
「バーセンに行くまでの我慢です。これがずっと続くわけじゃありません」
「それまで身体が持てばの話だね」
ネアの横で身体をさすりながらラウニが己に言い聞かせるように呟くとフォニーが皮肉じみた言葉を発した。
「こんな事でくじけてちゃダメ・・・です。アイツをこの手で・・・」
湯船の隅っこでアリエラに抱きかかえられたティマが自分の小さな手を見つめながら呟いていた。
「師匠もガンバルからね。アイツは強いけど、それ以上に強くなればいいんだから」
アリエラはぎゅっとティマを抱きしめていた。
「アイツをやっつけるためには好き嫌いなく食べて、良く寝て身体を作らないとダメだよ。睡眠不足は成長にも肌にも良くないんだから」
バトは強張ったふくらはぎを湯の中でさすりながらティマに注意した。
「バトさんの言うとおりですね。身体を鍛えるのも大切ですけど、成長させるのも大切ですから」
ネアがバトの言葉にうんうんと頷いた。
「成長ねー、最近、ネアの胸一段と大きくなっているように思うんだけど」
レヒテがネアの胸をジロジロと見つめながらニヤッと笑った。
「そうですかね」
ネアは己の胸に手を当ててレヒテの言葉通りか確かめた。
【そう言えばそうかな・・・】
「そう言えば、ネアって最近エロい身体つきになって来たよね。えいっ」
いやらしい目つきでバトがネアににじり寄りネアの胸をワシっと掴んだ。
「うわっ」
いきなりの事と慣れぬ感触にネアは悲鳴を上げた。
「なにをやっているんです」
ネアが悲鳴を上げると同時にルロの拳が綺麗にバトの後頭部にさく裂し、船が沈むようにバトは湯の中に崩れ落ちて行った。
「・・・育ってますね」
「うちよりあるかも」
ラウニとフォニーは己が胸とネアの胸を見比べた。
「お嬢も姐さんたちも立派なカッコいいのになりますよ」
少し刺激的だった胸の感触を振り払うように胸を隠しながらネアは根拠のないことを口にした。
「持てる者の余裕ね」
レヒテは胸を押さえるネアに嫌味たっぷりに応じた。
「私の手元からネアたちが居なくなるのは寂しい感じです」
奥様は寝室で寝酒を嗜むお館様にそっとこぼした。
「レヒテよりネアたちか」
奥方様の言葉にお館様は笑い声を上げた。
「レヒテが居なくなって寂しいことは当然の事、あの子は少し自分の力で生きることを学ばないと、年齢を重ねても、どこまで行っても暴れ姫のままになります」
奥方様は自らコップに葡萄酒を注ぐとそっと口をつけた。
「あの子は誰に対してもフラット、これは良い事ですが。時と場所に応じて郷主の娘として振舞わなくてはなりません。時には人を切ることも学ばなくてはなりません」
「そうだな。あの子は優しい、そのやさしさに付け込まれ、領の民が不幸になる事の怖さを知らなくてはな。その為に、時には心を鬼にし、人から恨まれることもしなくてはならない事もな」
お館様はそう言うと少し悲し気な表情を口元に浮かべた。
「バーセンでの生活はあの子に厳しい選択や悲しい行動を強いて来るでしょうね」
「レヒテとともにこれからの世代を担っていく子たちを選んだわけだ。特にあの凸凹コンビは良い人選だよ」
お館様はいつもどつき漫才のようなやり取りをしているバトとルロを思い返して笑みを浮かべた。
「あの子たちは人より長く生きる。ハリークやエルマの様にケフの中心でレヒテの子どもや孫たちを支えてもらいたいものだ」
「できればあの子たちの子孫にも」
「そうなれば、この郷は末永く賑やかになりそうだ」
お館様と奥方様は小さな笑い声を上げ
「賑やかな未来のために」
「笑いの絶えない未来のために」
2人はグラスを重ねた。
「腹痛ぇ・・・」
まだ夜も明けきらぬ早朝、ネアはお腹の痛みに目を覚ました。
「・・・」
冷えや食いすぎとは違う腹痛に戸惑いながらネアはそっとベッドから這い出るとトイレに向かった。
「ふーっ」
ネアは便器に腰を降ろし身体の力を抜いてため息をついた。そして、小自然の要求を満たすとふと己のパンツに視線を移した。
「っ! 」
パンツの重要な部分が赤くなっているのを目にしてネアは悲鳴を上げそうになった。
「ゆ、夢だよな」
気を取り直してもう一度確認する、しかしそこには現実が沁みついていた。
「夢なんだ、これは夢・・・」
ネアはブツブツ言いながら自分のベッドに潜り込み、目を閉じた。
「おはよ・・・、ネ、ネアっ! 」
目を覚ましたラウニは表情を無くし、ベッドの上に半身を起こして座っているネアを見て彼女に駆け寄った。
「どうしたんですか? 」
ラウニはネアの両肩を掴んで強く揺すった。ネアはそんなラウニに全く反応を示さず、死んだ魚の眼でぼーっとしていた。
「朝からうるさいよ。何が・・・、え、ネアどうしたの? 」
ラウニの声で目を覚ましたフォニーが不機嫌そうに声の主と声をかけられた対象を目にして驚愕の表情を浮かべた。
「何かあったの・・・ですか? 」
ラウニとフォニーが慌てふためているのを寝起きの眼をこすりながらティマがネアのベッドの横に立ち、ネアを見上げ息を飲んだ。
「大変な事が・・・あった? 」
「そうみたいです。ひょっとして・・・、ティマ、バトさんたちを呼んで来て下さい」
ラウニはティマに指示を出すと、さっとネアのシーツを捲り上げた。
「そう言う事だったんだ」
巻き上げられたシーツの下、ネアの寝間着の下の方が赤くなっており、その赤はシーツにまで及んでいた。それを確認したフォニーが少し安堵しながら呟いた。
「初めての時は結構びっくりしましたが、ここまでびっくりすることなかったと思います」
ラウニは自分の経験を思い出しながら首を傾げた。いつも落ち着いているネアがここまで放心しているとは俄かに信じられない事だった。
「成程ね。おーい、ネア起きてるかい? 」
ティマに呼ばれたバトがベッドの上のネアの状態を見ると、ネアの目の前で手を振って彼女の視線の動きを確認した。
「結構重症みたいですね」
バトの言葉に何の反応も示さないネアを見てルロが少し声を落としてバトに話しかけた。
「ネアも赤ちゃんが産めるようになったんだね」
アリエラがネアを安心させるように優しく話しかけそっと背中を撫でようとした。
「嫌だっ。嫌だ、嫌だ。こんなの間違ってる・・・。くそっ、なんでオレが」
アリエラの言葉にネアが悲鳴のような声を上げ、そのまま泣きだした。
「これ、ちょっと重症だよ。ドクターの所に連れて行こう、この手の事ならレイシーさんが適任かもしれないから」
バトはそう言うとネアを無理やりベッドから引き起こして抱き上げ、ドクターの診療所まで走り出した。
「ここまでショックを受ける子なんて初めて見ました」
診療所のベッドで死んだ魚の眼のまま横たわっているネアを見ながらレイシーが心配していた。
「常にしっかりしておるだけに、こういう姿と言うのは信じがたいものじゃな。肉体的には全く問題ないが、精神的に参っとるからのう、薬や外科的な治療で何とかなる物じゃないからのう」
ドクターは顎髭を扱きながら困り顔になっていた。
「さて、どうしたものかのう? 」
ドクターは何の反応も見せず只横になっているネアを見つめて肩をすくめた。
「ドクター、邪魔するよ」
腕を組んで思案しいるドクターにご大奥方様が軽い調子で声をかけて来た。
「悪いけど、関を外してくれないかい。ちょっと入り組んだ話をしなくちゃならなくてね」
「何かとワケがある子じゃからな。行くぞ、レイシー」
ドクターは心配そうな表情を浮かべているレイシを促して病室から出て行った。
「話は出来るね」
「・・・」
だまったままネアは大奥方様の問いかけにこくりと頷いた。
「この取り乱しようは一体どうしたんだい? ネア、お前さんらしくないね」
病室のスツール腰かけると大奥方様はネアの顔をじっくりと見つめた。
「覚悟を決めたつもりでしたが、甘かった・・・、決意した気持ちになっていただけでした」
ネアは顔も上げず、ボソボソと大奥方様に答えた。
「覚悟を決める? 何を寝ぼけた事を言っているんだい。そんなもの決める必要もない事さ」
「え? 」
奥方様の言葉にネアは顔上げ、生気のない顔に驚きの表情を浮かべた。
「あの鳥たちは、鳥になる覚悟したのかい? 」
奥方様は昼下がりの明かりの中飛ぶ土鳩に似た鳥を指さした。
「鳥たちは生まれた時、この世界に来た時に既に鳥なんだよ。ネア、お前さんがこの世界に来た時に既にネアなんだよ。お前さんの身体はお前さんの気持ちなんて関係なく成長していくよ。お前さんも気づいているだろ、その胸さ」
大奥方様はネアの胸を指さした。周りからもからかい半分で言われることもあるが、ネアは自分自身でも胸の成長が著しいことに気付いていた。しかし、ネアはその事を敢えて見ない事、気づかない事にしていた。
「その内、男どもが鼻の下を伸ばすような身体つきになるね。女として魅力があるってことだよ。お前さんの意思に関係なく、男どもが群がって来る。そして、その身体は男を受け入れ、子を成すことができる」
大奥方様はネアが今まで目を伏せてきた事を淡々と口にした。その言葉を聞いてネアは拳をぎゅっと握りしめ、目を堅く閉じた。
「そんなモノになりたくない。俺はずっと男として生きてきた。この世界でもそんなに簡単に切り替えられないよ」
ネアは身を覆う毛布を両手で抱きしめながら絞り出すように唸った。
「今の自分の姿を良く見てみな」
大奥方様は病室に会った手鏡をネアに向けた。そこには泣きながら毛布を胸に抱いている可愛らしいネコ族の少女の姿があった。
「大の男が胸の前で毛布を抱きしめるんだい? この泣きはらした目が男の眼かい? 私の目の前には少なくとも男はいないね」
大奥方様は冷たくネアに言い放った。
「前の身体がどうだったかなんて関係ないよ。ここに居るのは獣人の女のネアだ。どんだけお前さんが否定しようが覆らない事実だむ。決めるんじゃない、受け入れるんだよ。受け入れるしかないんだよ」
大奥方様の言葉にネアはただ俯き、時折頷くだけだった。
「いつかは来ることが分かっていた。それから目をそらしていたのはお前さんなんだよ。確かに慣れない事だらけだと思うよ。この世界に来てからの自分の行動を見返してみな。前の世界と意識も違うはずさ」
大奥方様はそう言うとスツールから腰を上げ、再度じっくりネアを見つめた。
「身持ちは固くしておくれよ。誰から構わず股を開くなんてことはナシだよ。誰の子か分からない子を産む羽目にならないように注意するんだね」
大奥方様は悪戯っぽく言うとネアに背を向け手を振り病室から出て行った。
「前とは違うところ・・・」
残されたネアは病室で一人呟いた。
「ついに、私も大人になれたんだ」
大奥方様に現実を突きつけられるも、まだ現実を受け容れかねているネアの夢に久しぶりにこの身体の元の持ち主の少女が立った。
「・・・そうだね。君がこの身体に戻ることは出来ないのかな」
彼女と同じ姿のネアが疲れ果てた様子で話しかけた。
「それは、無理だよ。私はもう新たな環として動いているから。心配しなくても、その身体はあなたの物。私は無理だったけど、元気な赤ちゃんを産んでね。その身体は安産できるし、ミルクも充分に出るはずだから」
少女はクスクス笑いながらネアに話しかけた。少女の笑顔と反対にネアの顔に恐怖や不安や嘆きなどの表情がごった煮状態で浮かんでいた。
「良い表情。その身体のポテンシャルは凄いからね。余すことなく引き出してね。あ、・・・悪いけど、おじさんがその気にならなくてもそうなるからね」
少女の言葉を聞いてネアは完全に顔色がなくなった、と言うか鼻先が真っ白になった。その様子を見た彼女は口に手を当てて「やらかした」という表情になった。
「気にしなくていいから。うん、でもきっといいお嫁さんになれるし、お母さんになれるよ」
少女はフォローしようとしたが、ネアにさらに追い打ちをかけてしまった。
「はははははは、そうだね。そう言う女性を俺の世界では良妻賢母って言うんだよ。俺が良妻賢母になるって、なんの冗談だよ・・・」
ネアは虚ろな表情で笑い声を上げ、それを見た少女はあからさまに半身を引いて怯えたようにネアの様子を見ていた。
「イロイロあると思うけど、ガンバってね」
少女はひきつった笑みを浮かべ早口でそう言うとすーっと消えてしまった。取り残されたネアは暫くその場で乾いた笑い声を上げ、その後大声で泣きだした。
「ようこそ、大人の女の倶楽部に」
翌日、泣きはらした目で病室から出てきたネアに残念トリオがニコニコしながら取り囲んだ。
「うちらはちょっと先に入ったけどね」
「コレでネアも子供から大人になったのですよ」
残念トリオの背後からフォニーとラウニが顔を出した。
「ありがとうございます」
ネアは感情を全く現さず事務的に頭を下げた。
【大人か・・・、子供のうちは性別何て二次的なモノだと思っていたけど、完全に彼女らと同じになったんだ】
ネアは暗澹たる思いで彼女らの笑顔を眺めていた。
「これから毎月こんな目に遭うんだな・・・」
「妊娠すれば大丈夫だよ」
ポツリと漏らした言葉にバトがにこやかに答えてくれた。バトの何気ない一言がさらにネアの表情を暗くした。
「随分と参っているみたいですね。お仕事できますか? 」
俯き加減になっているネアを覗きこむようにルロが尋ねてきた。ネアはそれに黙ったまま頷いて答えた。
「イロイロとダメージはありますが、仕事に影響はないと思います」
ネアは無理やり笑顔を作って答えると、顔を上げさっさと職場に向けて歩き出した。
「無理しちゃって」
「あの子らしいよ」
そんなネアを見て、バトとアリエラは優しい笑みを浮かべた。
「良い根性をしている。あれは、立ち上がろうとしているヤツの眼だ」
ネアの行動に感心している残念トリオの背後から、エルマがいきなり声をかけて来た。
「キツイ時に歯を喰いしばって耐える事も必要だが、もっと重要な事がある。お前ら、耳の穴かっぽじって良く聞け」
エルマはネアの背後を見送っている残念トリオたちに傾聴するように指示した。
「本当に強い奴は、自ら助けてくれと仲間に言える奴だ。何でもかんでも抱え込むと、どんなに優秀な奴も潰れるからな。良く肝に銘じておくんだな。おしゃべりはここまで、さっさと仕事に向かえ」
「Yes,Ma’am!」
バトたちはその場で気を付けの姿勢をとると弾かれたように職場に向けて走り出した。
「ネアも素直に助けを求めてくれればいいんだけど、あのこ強情なところがあるから心配ですね」
バトたちの背中を見送りながらエルマは心配そうに呟いた。
「ネア、もう平気? 」
職場に入ると奥方様が少し心配そうな表情で優しくネアに尋ねてきた。
「ナプキンの違和感がキツイですけど、それ以外は概ね問題なしです」
ネアは奥方様に気をつかわせまいと出来るだけ元気よく答えた。
「ネアお姐ちゃん、もう大丈夫・・・ですか? 」
作業用のスツールにそっと腰を降ろしたネアにティマが近づいてきてネアを見上げるようにして尋ねてきた。
「うん、何とか大丈夫だよ」
ネアはティマに心配させまいと出来るだけ明るく答えた。
「気分が悪くなったらすぐに言うんだよ」
ネアの後から急いで駆けつけてきたフォニーが軽くネアの肩を叩くと、先輩の余裕を見せつけようとした。
「慣れないうちは、キツイですからね。それと身体を冷やさないように」
ラウニはそう言うと手にしていたひざ掛けをネアの膝の上にかけた。
「ありがとうございます」
ネアはラウニにそう言うと深々と頭を下げた。その時、不意にネアの目に涙があふれてきた。
「ネア!? 」
ラウニがネアの両手を持って呼び掛けるとネアは涙を流しながらはにかんだような笑みを浮かべた。
「こんなに、皆さんに心配して貰えて、私って幸せ者なんだなって思うと、嬉しくなって・・・」
ネアは涙で濡れた目でラウニや奥方様を見まわすと取り敢えず身近にいたラウニにしがみつき、久しぶりの大泣きをし始めてしまった。
【前の世界じゃ、自分がどうなろうが、知った事ではない。が普通だったんだけど。神様がいたなら、感謝を申し上げます】
ネアはボロボロと涙を流しながら、あまりにも無味乾燥だった前の世界、人間関係を思い出して改めて自分の置かれた位置が如何に恵まれているのかをどこの世界ともつかぬ神に心の隅で感謝の祈りを捧げていた。
ネアのアイデンティティーの危機wです。
中身おっさんには非常にヘヴィなことで、敢えて目を背けてきた事でもあります。
今までがある意味、モラトリアムだったのです。
これを機にネアは変化を受け容れざるを得なくなりました。
今回もこの駄文にお付き合い頂きありがとうございます。
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