315 篩い
仕事やら、気温やら、身の回りのことなどの何だかんだがあって、UPが滞りました。
決して、挫けたわけではありません。多分。
これからも、生暖かく見守って頂けたら幸いです。
「こいつら・・・」
ワラルの私兵たちは侍女程度ならそんなに苦労することも無く痛めつけられるだろうと踏んでいたが、エルフ族の女と1合打ち合った瞬間その考えを改めた。
「見くびるな、只のガキじゃねぇ」
彼の横で猫族の子どもを切り捨てようとして、手痛い一撃を喰らった私兵は脇腹を押さえながら声を張り上げた。
「何だ、こいつらは? 」
少しばかり痛めつけてやれば相手が折れる、と勝手に思っていたワラルは事態が己の読み通りに進んでいない事に焦りを覚えていた。
「ちょっと訓練した素人? 」
「黒狼騎士団を基準にしてはダメです」
「剣精様が どんな敵にも敬意を持て と仰ってたよ」
残念トリオは互いに軽口をたたきながら、如何に怪我をさせず相手の心をへし折るかに苦労していた。
「意識を刈り取るしかありません」
ネアが降り降ろされる剣を手にしたシャフトで反らすと素早く身体を反転させ、屈みこんだ形になった相手のうなじにシャフトの柄を叩き込みながら叫んだ。
「ネア、それ意識以外のモノも刈り取ってしまいますよ」
ネアの戦いを見たラウニが彼女に注意をしながら、躊躇いもせず正面に立った男の鳩尾に正拳をめり込ませていた。
「お嬢っ、それ以上やったら死んじゃうよー」
久しぶりに剣を手にしたレヒテがワラルの私兵2人と打ち合っているのを見たフォニーが血相を変えた。
「死なないようにするよーっ。えいっ」
私兵たちは絶対に殺すという意思を顔面に浮きだたさせてレヒテに斬りかかっているが、どれもこれも躱されたり、いなされたりで、戦いは彼らの思う通りに全く進んでおらず、その状態を作り出しているレヒテは上機嫌だった。
【まるで、猫が獲物の止めを刺さずに弄んでいるみたい・・・】
冷静に襲い掛かって来る剣を捌きながらネアは苦笑していた。
「ええいっ、お前らにどれぐらいの金を払っていると思っているっ。払った銭の分ぐらい働け」
ワラルは目の前に展開されている光景に我慢できず、怒声を張り上げていた。
「穢れの小娘どもに良いようにあしらわれおって、情けない」
彼は、怒りでワナワナと唇を震わせながら吐き出すように呻きながらも打開策を得ようと辺りを見回した。
【この手があったわい】
彼の視界に浣熊族の母子が入ってきた。彼は母親に駆け寄ると、彼女の腕に抱かれている幼い娘を奪い取りその小さな首にナイフを突き当てるとニヤっと笑みを浮かべた。
「この畜生を屠殺して欲しくなかったら、武器を捨てろ」
我が子を取り返そうとする母親に蹴りを入れながらワラルは大声を張り上げた。突然の事と大声に恐怖を覚えた幼い娘は大きな泣き声を上げた。
「畜生が五月蠅いっ」
彼は思わず腕の中で蠢く生物を大地に投げつけようとしたが、その存在が人質である事を思いだして何とか踏みとどまった。
「その子を放しなさい」
「その前にお前ら武器を捨てて、その場に跪け」
レヒテはワラルに怒鳴りつけたが、彼はへらへらと笑いながらナイフをさらに幼子に突きつけた。
「この大きさなら帽子にするにはちょうど良いかも知れん」
「久しぶりにカスを見た気がしますね」
ネアはワラルの醜悪な笑みを見て唾を吐いた。
「皆、武器を置いて。無手でもおもてなしできるよね」
「この程度なら十分ですよ」
レヒテの命令にバトが軽口で答えると、ネアたちはそれぞれ足元に武器を置いた。
「船についての事なら、あっしにお任せくだせぇよ」
ハチが嬉しそうに半歩前を歩くパルに話しかけた。
「ご隠居様をケフに置いたままでいいんですか」
「ご隠居様からお嬢やパル様を迎えに行けって言われやしてね。取る物も取り敢えず馳せ参じた次第でやすよ」
ハチは日光を反射する日に焼けた頭を恥ずかし気にかいていた。
「泣き声・・・、尋常じゃないですよ。お嬢様」
ふと首を傾げたメムがパルに吠えるように訴えた。その表情はいつものどこかピントのずれているようなメムのものではなかった。
「穏やかじゃありやせんね」
「確認に行きましょう。あの声は赤ちゃんよ。何か大変な事が起きている」
パルは耳を動かし音を拾い上げ、この事態は急を要すると判断した。
「厄介ごとに自ら飛び込むなんて、無謀ですよー」
走り出したパルとハチの後をメムが泣きそうな声を上げながら付いて行った。
「旨く調教したもんだ」
ネアたちが武器を置くさまを見ていたワラルはニタニタしながレヒテに話しかけた。
「調教って」
「畜生は調教されて人の役に立つようになる。調教されていない獣など害でしかない」
ワラルは当然の事の様に言い捨てると、ゴミを見るような目つきでネアたち穢れの民を見た。
「姉さん、押さえて、ここで暴れると奴らの思うつぼになっちゃうよ」
レヒテの怒りで震える手をそっと押さえてギブンは落ち着いた声で囁いた。
「さ、さっさと手をついて儂への非礼を詫びろ。儂は寛容じゃから、ひょっとするとお前らの非礼を許してやるかもしれんぞ」
ワラルは抱えた幼子にグイっとナイフを突きつける、毛皮で見えないがその刃先はその子の皮膚を傷つけているようで、泣き声が一層高くなった。
「五月蠅い獣じゃ、汚いだけでも許しがたいのに、その上五月蠅いとは・・・」
ワラルが抱えた幼子をゴミの様に扱いながら愚痴っているその背後にぬっと大きな影が音もなく現れた。そして、ハチはネアを見つめると指を3本かかげ、そして1本ずつ折って行った。
「いい歳の爺様が孫みたいな子をいたぶっているっていうのは、感心しやせんね」
指を全部折った後、ハチはいきなり背後からワラルに声をかけその薄くなった頭の上に自分のゴツイ手をドンと置くとボールを掴み上げるようにワラルを持ち上げた。
「っ! 」
その瞬間、ネアはワラルに飛び掛かりその腕から幼子を取り上げた。
「人質を奪還しました。ご命令を」
ワラルの腕からもぎ取った幼子を母親に手渡しながらネアはレヒテに吠えた。
「おい、放せ、儂を誰と・・・」
ハチに頭を鷲掴みにされぶら下げられているワラルはもがきながらかすれた声を絞りりだしていた。
「小っちゃい子を人質にする下衆野郎だと存じ上げておりやすぜ」
ハチはぶら下がったワラルにつまらなそうに言うと、まるで赤子が飽きた玩具を放り投げるように彼を投げ捨てた。
「素敵なご挨拶をされたから、こちらも精一杯 おもてなし をして差し上げましょう」
レヒテの言葉に全員が一斉に武器を手に取りワラルの私兵に襲い掛かった。
戦いは一方的で、完全にワラルの私兵たちの心をへし折っていた。
「責任者が逃げちゃダメですよ」
ハチに投げ捨てられたワラルがこそっと立ち去ろうとしているのを見つけたネアが彼の前に仁王立ちして逃走経路を塞いだ。
「糞猫がっ」
ワラルは相手が子供だと踏んでネアに掴みかかろうとした。今までのネアの戦いを見ていれば、目の前にいるのは只の子どもではない事を普通は理解するのであるが、現実を受け止めたく無い思いか、彼自身の考えの足りなさか、彼はそこまで考えられなかった。
「身体で思い知って頂きますよ」
ネアは襲いかかるワラルの脛をシャフトで骨折させないように慎重にかつ迅速に打ち据えた。
「うぐっ、年寄りを敬えっ、この糞猫がっ」
足を抱えて転がりながらもワラルは悪態をついていた。
「敬えるようなことをしなさったのかい? ご老体」
転がるワラルの頭を掴んで、自分の顔面の前に彼の頭を引きずり上げるとハチが噛みつくような勢いで尋ねた。
「敬われる年寄りってのはな、うちのご隠居様のような方を言うんですぜ。アンタは只の老害、只長く生きただけってやつ。いんや、その年まで散々悪さをしなさったようだから、さっさとくたばるのが世のため、人のためってやつですぜ」
苦痛に身をよじりながら何かを言おうとしているワラルにハチが怒りを滲ませながら言葉を投げつけた。
「騒ぎがあったと聞いたが・・・、成程ね」
戦闘が終わって野次馬たちが散り始めた頃、やっとバーセンの衛士がやって来て、心も体も傷つけられ、石畳の上に転がっているワラルの私兵を眺め、そして怒りがまだ冷めやらぬレヒテを見ると肩をすくめた。
「遅いですね。コイツら、私たちに無理難題を吹っかけるために、そこの子を人質にしたんですよ。可愛そうにまだ怯えていますよ」
アリエラが衛士たちに文句を垂れていたが、よくある事なのだろう衛士たちは「はいはい、ご尤も」と簡単に流していた。
「遅れて来たくせに、何? あの態度」
衛士たちは、うめき声を上げているワラルたちを手際よく縛り上げると、無蓋の荷車に荷物の様に積み上げて行った。その様子を見ながらレヒテは憤懣遣る方なしであった。
「衛士さん、そいつらボクたちがケフの郷主の子どもだって言ったのに、襲ってきて、人質を取って跪いて許しを請うように言ったんだよ。誘拐罪と不敬罪に該当するよね」
ギブンがやって来た衛士のリーダーに事の顛末、ワラルたちの悪辣さを少しばかり脚色しながら手短に説明した。
「相手が郷主の子どもとあれば外交問題になりかねない重要な案件です。詳しく取り調べ、それなりの罰を与えます」
リーダーはギブンに事務的に答えるとうめき声を上げる荷物を満載した荷車を部下たちに曳かせ、現れた時とは打って変わって速やかにその場から立ち去って行った。
「いきなり人が増えると、衛士の質も落ちるんだ」
「一人前に仕上げるには時間も手間もかかりやすからねー、なんせ人手が欲しい船の船乗りがロクなもんじゃないってのと同じことでやんすね」
溜息をつくギブンにハチが頷いていた。彼らの横をネアがさっと通り過ぎてむすっとしているレヒテに正対した。
「お嬢、負傷者なし。武器等の破損なし。異状なし」
ネアは戦闘後の状況を確認し、異状がないことをレヒテに報告した。
「よかった・・・、ありがとう。ネア、さっきの衛士の態度、どう思う? 私はあんな奴らがこの街を護って行けるなんて思えない」
レヒテが憤懣やるかたなしといった表情でむくれていた。その様子を見たネアは小さなため息をついて肩をすくめた。
「ハッちゃんが言っていたとおりですよ。急激に大きくなるといろんな所にひずみが出るんですよ。あのじじぃや、昨日のおばさんみたいなのも入って来るし、犯罪も増えますけど、それに対応している時間も人もない状態になりますからね。順調に増えるのは犯罪やらトラブルぐらいですよ」
「仕方ないと言えば、そうなんだけど、何か納得いかないよね」
「納得いかないついでに言うと、さっきのワラルとか言ったご老体、ボクたちに乱暴を働かれた、と言って訴えてくるかもしれない」
腕を組んで頬を膨らませるレヒテにギブンが懸念していることをため息交じりに吐き出した。
「お嬢、私が目撃者の氏名などを押さえておきました。法廷で証言してもらえるようにお願いしておきました」
ギブンの言葉に法の力ではなく物理的な力で決着をつけようか、と考えだしたレヒテにパルが落ち着いた声で話しかけてきた。
「流石パル様ですね。お嬢、良くも悪くも役人の質が下がっていますから、あの老いぼれがごねて面倒ことになればいいんですよ。質の下がった役人なら金にもならないような訴訟を受け付けないでしょうし、カスター様が出張るぐらい騒いだら、その方が私たちにとって好都合です」
「そうだね。カスター様はあの手の連中が大嫌いだからね。あのご老体が思っている以上の厳しい裁きにあうだろうね」
ネアの言葉にギブンは笑みを浮かべた。
「冥途への良い土産話になりますよ」
「随分と黒い笑顔だね」
ギブンはニヤッと黒い笑みを浮かべたネアに聊か呆れたような表情になった。
「さて、お出かけの続きをしようよ。パル様も来られたんだし、楽しもうよ」
どことなくさえない表情を浮かべているケフの一行にバトが明るい声で呼びかけた。
「港街は美味い物がたくさんありやすからね。早く動かねぇと売り切れるかも知れやせんぜ」
「お小遣いもあるからね。さ、憂さ晴らしよ」
ハチの言葉に頷くとレヒテは先頭をたって元気よく歩き出した。
「お嬢、どこかアテがあるんですか? ないですよね。私がイイ感じのお店を案内します」
「パル様が自らの眼と鼻で吟味したお店ですよ」
先頭に立つレヒテにパルとメムが呼び掛けると、ケフの一行はパルを先頭にぞろぞろと動き出した。
「そんな事があったんですね。そのワラルとか言う男、厳しく取り調べさせてもらいますよ」
その夜、カスターは奥方様から話を聞いて暫く考えてから口にした。言葉にはしていないが、多分ワラルは生まれてきたことを後悔するような目にあうことは確かだろうと思わず奥方様は会ったことも無いワラルと言う男に小さな小さな同情に似たような感情を持った。
「多分、あの男は氷山の一角、今回の商いでもその手のご婦人が来られましたからね。私たちと相いれない存在でしたよ。ネアたちを家畜の様に思っているのが手に取るように見えましたから」
「南から逃げて来た、ちゃちな荘園経営者どもが、自分たちの流儀を変えようとしないからね。でも、ここに居る間、宿代、護衛代と様々な必要となる経費は必要だけど、稼ぐ手段がないからその内自滅すると思っているんだがね」
カスターは「自滅」という言葉を薄い笑みを浮かべながら発した。
「自滅は良いんだけどさ、それまで暫くかかるのが問題だねー。早く干からびさせるために物価を上げる訳にもいかないし」
大奥様はため息交じりに言うと、上手く行かないもんだとぼやいた。
「こちらも何もしていないわけじゃないんですよ。高級ホテル、高級レストランなどの連中が使いそうな施設には贅沢税を課しているから、何もしないより早く干上がると思っているんですけどね」
カスターは額に浮いた汗を手で拭きながら苦笑を浮かべた。
「・・・カス殿、これからの話は内密にお願いします」
大奥様は居ずまいを正し、カスターに正対した。大奥様の態度にカスターは思わず身構えた。
「とても失礼な事なんだが、私たちはバーセンをケフのための防波堤にしたいと考えているんだ」
「防波堤・・・? 」
大奥様の言葉にカスターは怪訝な表情を浮かべた。
「カスター殿のワーナンの郷での立場は勿論知っているさ」
「私の考え方と、郷主様の考え方バーセンに左遷されましたからね」
「そうだね。ワーナンの主流は正義の光にかぶれた連中ばかりだからねー」
カスターは以前、ワーナンの都で宰相的立場にあったが、穢れの民に対する偏見がなかったため、台頭してきた選民思想の連中から追い出され、港街の一つでしかなかったバーセンに流されたのである。そして、皮肉な事に彼の誰に対しても偏見を持たない姿勢が功をなしてバーセンが栄え、ワーナンの経済を支えている事態になってしまったのである。
「防波堤という表現より、篩いと言う表現の方がいいかも」
奥様は怪訝な表情を浮かべるカスターをじっと見つめた。
「バーセンは、真人を至上とすることをしない北の地方への入り口でしょ。ここで、正義の光とその考えに同調する人たちを堰き止め、逃げてきた御郷に帰らせてあげたいと考えているの。帰りたくない人は、あっちの世界に行ってもらうつもり」
奥方様はいつものほわほわした表情でそう言うとそっと天を見上げた。
「我々としても正義の光にかぶれた連中は歓迎しませんので、表裏から締め上げましょう。あの連中がのさぼればバーセンの良さがなくなり、あっという間に没落するのは明らかですから」
「豊かになるには、いろんな力を合わせなきゃならないのに、正義の光の連中ときたら、真人だけで何ができるって言うんだ。あの手のバカは見つけ次第潰していくのが得策なんだろうけどね。と、言って潰して回ると厄介な事になるからね」
大奥様はふーっとため息をついた。
「正義と秩序の実行隊、ですか」
「噂じゃ、狂信者の集団だそうだよ。そいつらが刃物を手にしている。しかも手練れと来ている」
「死を恐れぬ者は厄介ですからね」
白と赤鎧の集団のことを想像して一同は思わず身震いしていた。
「また来るまで、暫しの別れだ。バーセンよ」
馬車の乗り込む時、レヒテはお道化て役者の様な動きと台詞をはいた。
「心配しなくても、またすぐに来られるよ。そして、暫く居続けることになるよ」
そんな姉をギブンは醒めた目で見るとため息をつきながら馬車に乗り込んだ。
「お前たち、悪いが、あっちの馬車に乗ってくれるかい? 」
大奥様は馬車に乗り込んで来たレヒテとギブンに乗合馬車のような使用人たちの馬車を指さした。
「あっちの方が賑やかで楽しいから、行ってくるよ」
「僕は寝られるのならどこでもいい」
ごく普通の郷主の子どもたちならここでひと悶着あるのだろうが、レヒテとギブンは文句の一つを言うことも無く、逆に楽しそうな表情を浮かべ使用人たちの馬車に向かおうとしていた。種族やら身分にそんなに拘らないケフならではの風景であった。
「ついでにネアを呼んできてくれるかい。あの子と少しばかり話がしたいんだ」
「分かった」
大奥様の言葉にレヒテは元気よく応えながら使用人たちの馬車に駈けて行った。
「準備ができ次第、バーセンに連絡官を置こうと思っているんだよ」
馬車が動き出すと大奥方様はネアに語りかけてきた。
「その連絡官がお嬢なんですね」
「あの子もいつまでも子供でいてもらうと困るからね。カスター殿に鍛えてもらおうと思ってね」
「いつまでも暴れ姫いられたら、郷の未来も荒れそうでしょ」
大奥方様と奥方様はレヒテに成長の場を与えようとしていることをネアは理解し、暫く顎に手を当てて考え、そして徐に口を開いた。
「私がその補佐をすることになるのでしょうか? お付きは誰をお考えですか? 」
「基本は王都組だね。そこにルッブとパルとメムだね」
「あの子と年齢が近い子たち、これから郷を背負っていく子たちを鍛えたいのよね」
ネアは連絡官とその補佐やらお付きの顔ぶれを想像して、少し顔をしかめた。
「バーセンが随分と賑やかになりそうですね」
「賑やかな事は良い事さ」
ネアの心配をよそに大奥方様は気楽そうに言うとニヤッと笑みを浮かべた。
バーセンは穢れの民への迫害が強くなりつつあるワーナンの郷において、穢れの民への差別などがない街です。街を運営しているカスターは誰に対しても丁寧な姿勢を貫いているため、自ずと人が集まって来るようです。この姿勢が彼をワーナンの中央から左遷される原因となりました。
今回も、この駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。