313 知らない事と知ろうともしない事
全開からまた時間がたちましたが、何とか続けています。
気長にお待ちいただければ幸いです。
【昨日、裏と表って話をしていたけど、これも裏と表がある事だよな】
ネアは奥方様の工房で新たに服を作ってもらおうとしているちょっとケバ目の有閑マダムの採寸をしながら心の中で苦笑していた。
表向きは田舎の小さな郷の奥方の道楽の様に見える商売であるが、その裏には決して安くはない衣装を購入できる、それなりの富裕層の奥方たちの口からこぼれる噂話や「ここだけの話」を収集する事にあった。
「獣人の人ってさ、種族によって仲が悪かったりするの? ご主人様の飼い犬は猫をみると大騒ぎしたりするから」
ちょっと色々と大き目なご婦人の採寸を終え、一息ついているネアにそのご婦人の侍女が興味深そうに聞いて来た。
「そんなモノないですよ。私たちの見てくれがこんなのでも、人ですからね」
【気の短い獣人が聞いたら殴られるぞ】
ネアはぶっきらぼうにその侍女答えると、敢えて大きめの溜息をついた。
「気を悪くしたのかなー、私たちが住んでいる所には穢れの民があまりいないから」
彼女は取り繕うように笑みを浮かべたが、ネアはそれに敢えて答えることはせず、次の採寸のためにメジャーなどを綺麗に整理しだした。
「本当に猫みたいに愛想がないのね」
ネアに尋ねた少女はつまらなそうにネアが淹れてくれたお茶飲んで、仕返しとばかりに大きな声でため息をついた。
【この子の主人は、確か最近、南方から来てバーセンに居を構えたという事だったよな。やっぱり南の方は俺達みたいなのに理解がないんだなー】
ネアは横目でため息をつく少女を見ながら苦笑を浮かべた。
「ここのお客様、失礼です」
今日の仕事は睡眠だけとなった夜、ベッドに腰かけながらティマがむすっとした表情で呟いた。
「ここ最近、酷くなってきたらしいからねー。で、ティマは何をされたのかな? 場合によってはアリエラさんに報告しなくちゃならないからね」
枕を抱えたフォニーが身を乗り出すようにしてティマに尋ねた。
「あたしのこと、ネズミだって・・・」
栗鼠族のティマを敢えて鼠族とワザと種を間違えて呼ぶのは失礼な事に当たる。獣人に対して種族をワザと間違えて呼びかけることは喧嘩を売るのと同意でもある。ただ、豹族と米豹族みたいな判別が難しい場合は、その限りではない。
「どこの誰かしら、私の可愛いティマちゃんを鼠族と間違えるなんて、このフワフワの尻尾やこのピンとしたお耳を見落とすなんて、その方の眼は節穴に違いないわ」
ティマの事なら些細な事でも聞き逃さないと自負しているアリエラがいきなりティマの横に湧き出て、ティマが腰掛けているベッドにすっと腰を掛け、そっと彼女の肩に手を回した。
「・・・」
ティマは自分を鼠族と言った豪商の娘の顔を思い出し、彼女の名をアリエラに告げようかと思ったが、首を振って思い直した。
【あの子の名前を言ったら、絶対にお師匠は潰しに行くから・・・】
ティマの脳裏に昼間に嫌味を言ってきた豪商の娘の顔が血に染まる姿が浮かんだ。
「あたしの器はそんなに小さくない・・・です。言わせたい奴は吠えさせればいいんです。その内、器が小さくて、気の短いヤツにボコられますから」
ティマはつまらなそうに呟くと、ニタッとアリエラに笑顔を見せた。
「そうだよね。私の器も小さくないよ。でもね、これ以上、可愛い弟子を愚弄する奴がいれば、この器、何時まで持つか分からないからね」
アリエラは優しくティマの頭を撫でると自分のベッドに腰を降ろし、飲み残した葡萄酒をちびりちびりとやりだした。
「アリエラ、分かっていると思いますけど、やっちゃダメですよ」
琥珀色の蒸留酒の詰まった酒瓶で喇叭を吹きながらルロが注意した。
「やっちゃダメって、何を? 」
「白々しい事を言いなさんな。ティマちゃんの敵は物理的に黙らせるつもりだよね。アンタの理由が何であれ、世間一般ではそれを犯罪って言うんだよ」
パトは謎生物の浸かった酒を小さなコップに注ぎくいっと一口で飲み干した。
「当たり前でしょ。そんな事が犯罪になるなら、法律が間違っているんだよ」
アリエラはバトの言葉にムッとして反論すると、バトは無言で肩をすくめた。
「・・・ティマ、ナイス判断だよ」
アリエラたちのやり取りを離れた場所から観察していたネアはティマの頭を撫でながら、彼女のモフッとした耳にそっと囁いた。
「? 」
ティマはネアの言っている言葉の意味が分からないらしく、首を傾げた。
「アリエラさんにティマに失礼な事をほざいたバカについて、それの名前とかを教えたら、絶対にあの人ならヤるでしょ」
「うん、それは断言できるよ。きっとヤられた方は原形をとどめていないね」
ネアの言葉にフォニーがうんうんと同意した。アリエラは、ティマが関わらない限り、残念トリオ内でも良識派なのであるが、少しでもティマに関わるといきなり過激派に転じてしまう事は周知のことだった。
「前にはこんな事は無かったのに・・・、このバーセンにも嫌な感じの空気が漂ってきたのかしら」
ネアたちの会話にラウニが深刻そうな声音で混じってきた。
「正義の光とか正義と秩序の実行隊が嫌で来た人たちだから、私たちを排除しようなんて考えていないでしょ。ただ、私たちの事を知らないだけ、尻尾のない人に嬉しい時はどうやって表現するのって尋ねる様なモノですよ。ワーナンの空気とは違いますよ」
ネアは不安そうなラウニに明るく言い放った。しかし、種族に対する嫌悪などの悪感情が無知から生ずることも知っていた。
「うちらのことを知らないって、あり得る事なのかなー」
フォニーはうーんと唸って首を傾げた。
「ケフがおかしいんですよ。普通の郷なら、種族ごとに住む場所が違ったり、そもそも真人以外の比率がケフが異常に高いんです。だから、私たちの姿なんて滅多に目にする事がないんです。王都で多くの郷が付き人が真人だったでしょ」
ラウニがため息をついた。
【時々耳にするけど、やっぱりケフは異常なんだ。ケフじゃない郷で拾われていたら奴隷になっていても不思議じゃなかったんだ】
ネアはラウニの言葉に改めて自らの港運に感謝した。
「移動してくる人たちが増えると、穢れの民について知らない人が増えて、その事でいらないトラブルが増えるんでしょうね。猫族の獣人は犬族の獣人と仲が悪くなければならないそうですから」
ネアは昼間の事を思いだしながら皮肉な笑みを浮かべた。
「あほらしい、そんな連中の事なんて無視すればいいんだよ」
フォニーは吐き捨てるように言うとベッドに仰向けに寝転がった。
「毛皮と尻尾が羨ましいんだよ。そう言う事にしておく」
フォニーはそれだけ言うと彼女は目を閉じた。それを見たラウニも同じようにベッドに横たわると
「明日も忙しい日になります。身体を休めるのも仕事の内です」
と、ネアとティマに告げるとそっと目を閉じた。
「あのお客は出禁にしまょう」
いつもほわほわした感じの奥方様がむすっとした表情を浮かべていた。彼女の言う「あのお客」と言うのは南方で穢れの民に奴隷労働をさせ、莫大な資産を形成していたのであるが、正義と秩序の実行隊やら正義の光の思想にかぶれた連中のため、労働力である穢れの民排斥運動が激しくなり、経営が成り立たなくなり、北の方に流れて来た豪農の細君だった。
「こっちで南のやり方ができるなんて考える頭の中が見てみたいわ」
奥方様がここまで立腹しているのをネアは初めて見た。そして、彼女が怒る原因となった行動もしっかりと見ていた。と言うか、当事者の1人だったからである。
「確かに腕は良いようだけど、獣臭いのが沁みついているんじゃなくて」
奥方様とネアたちを見たご婦人は顔をしかめ、敢えて周りに聞こえるように声を張り上げた。その客の名はクラーナ・クラクス、穢れの民の酷使とどこかに置き忘れて来た良心のおかげで財を成したゲェイメ・クラクスの妻であり、その人となりは、下と見れば真人ですら酷使し、良心が壊死している
など、本来人が隠したがる面を隠すことなくさらけ出せる人物であった。彼女以外にゲェイメの妻に相応しい人物がないと言われるぐらいであった。
そんな彼女が奥方様の出張工房を見て何も言わない方が不自然だった。
「うちの子たちはそこらの真人より清潔ですよ。少なくとも体臭を香水で散らすようなことはしてませんよ」
奥方様はニコニコしながら言葉の刃を彼女に投げつけていた。奥方様の言うように目の前のご婦人からは真人の鼻でさえ分かるぐらいの香水の臭いが漂ってきていたからだ。
「ふん、貧乏郷主の妻となると香水も安物をチマチマとつけなきゃならないでしょうからね。貧乏郷主の妻でも良い物作らるらしいから、作らせてあげる」
彼女は、まるで奥方様が自分より格下と見ているように手にした日傘で彼女を指す傲慢な態度で言い放った。
「貴女の注文が無くても、それなりに食べていけますから。貴女も獣臭いドレスなんて着たくないでしょ」
奥方様は顔面に笑みを張り付けたまま、やんわりと彼女の注文は請けないと伝えた。
「それなりを豪勢な食事にしてあげるの。それに私が着るドレスは貴女が全部つくればいいでしょ。こんな小汚い獣なんかを使わずに」
彼女はたまたま通りかかったネアに蔑みと嫌悪を混ぜた視線を投げつけた。
「? 」
ネアはさっきから何かと突っかかる物言いをしているクラーナがどんな顔をしているか拝みたくなっていたため、ついでにとばかり彼女の顔をしっかりと見つめた。
「なに、この気持ち悪いっ、躾がなってない、躾けられていない獣は」
クラーナは言うが早いか、手にした日傘をネアに叩きつけようとした。
「良い傘が壊れますよ」
確かに猫の頭を強かに打ち付けるつもりであったが、彼女の傘は硬い床を叩きくぐもった音をたて、目を丸くしているクラーナにネアはにっこりしながら話しかけた。
「お前が避けたからよ。今度は避けるな。真人様の命令だよ」
クラーナは再び傘を構え、ネアを睨みつけた。
「避けませんよ。その前に一撃を入れられますから」
自分の攻撃をよけられたことに苛つくクラーナにネアは挑発するように応え、にっと口角を上げた。
「アンタ、飼育している畜生にどんな躾をしているのよ。こんなのは殺処分しなさい」
クラーナは怒りを隠すことなく奥方様に怒声を浴びせかけた。
「聞き捨てなりませんね。貴女が勝手に喧嘩を売って、そして負けた、それだけの事でしょ。この子は私たちの郷の大切な住人なんです。家畜ではありません、人です。この子に謝罪してください。それが嫌でお気に召さないのであれば、さっさとお引き取りください。特別サービスとして郷主の妻に対する無礼に関しては、見逃してあげますから。次はありませんが」
奥方様は凛とした姿勢で感情を表すことなく冷たく彼女に告げると扉の近くにいたアリエラに扉を開くよう命じた。
「田舎者のくせに」
「お帰りはあちらですよ。少なくとも貴女よりこの辺りについては存じていますよ」
捨て台詞を吐くクラーナに奥方様は取り付く島もない態度で言い放った。
「ありゃ、近いうちに刺されるね」
クラーナが退出してからフォニーが小声でネアに話しかけてきた。
「北で南のやり方が通用なんてしないことも考えられないようですから、残念な結果にならないことを軽くお祈りします」
ネアはフォニーにニヤッとしながら答えた。
「そうね、心配しなくても残念な事になりますよ」
奥方様はネアたちの会話を聞いていたようで、にこやかにこの件について締めくくった。
「田舎者の癖にエラそうにして」
奥方様に追い出されたクラーナは怒りを隠すことなく顔に浮かばせ、足取りも荒々しくなりながら唸っていた。彼女の頭の中には、穢れの民は家畜と同じであることが常識となっていた。その家畜が真人に対して口答えするなんてあり得ない事であった。
「こんな街、さっさと出て行きたいわ」
街の中は穢れの民が嫌と言うほど出歩いているし、商店や露店で商いをしているのも穢れの民が目立つ、そんな風景を目の当たりにすると虫唾が走るのを感じてしまう。
「見苦しいったらありゃしない」
彼女はそんなバーセンの日常に舌打ちをする。こんな街さっさと出て行きたいのだが、次に行くあてがない、夫が再び農園を営む計画を立てているが、いまの所、土地も働き手も確保できていないのが現実であり、持ってきた財産も現在音をたてて減っているという情けない体たらくなのである。
「あれはなに? 」
彼女は視界に飛び込んで来た妙な頭巾を被った露天商についてお付きの少女に尋ねた。
「ケイジャの郷から来ている、と言う噂しか・・・」
「用をなさないわね」
「申し訳ありません」
自分の背後に影のように付いてきているお付きの少女に苛立ちながら、彼女はその妙な頭巾が開いている露店に注目しその品ぞろえに眉をひそめた。そこにあるのは、気持ち悪い小動物が串に刺さったもの、見たことがないようなキノコが干からびたもの、妙な臭いが漂ってくる薬草らしきモノなど、どれも彼女が欲しいとは思わないものばかりだった。
「気持ち悪い」
彼女はあからさまに顔をしかめた。そして、ニヤッと笑みを浮かべた。
「目障りだから、排除しなさい。警告は与えてやってもいいわ」
彼女は背後に控える、歴戦の傭兵らしき鍛え上げられた体躯の大男2人に命じた。彼らは、彼女に一礼すると速やかに行動しだした。
「メメヤモリの黒焼きってコレの事かな? 」
ルーカが露天の日よけからぶら下げられた黒い物体を指さしながら頭巾を深くかぶった露天商に尋ねた。
「ケイジャのメメヤモリは他の郷とは一味も二味も違う。卵から丹精込めて育てているからな」
深くかぶった頭巾のおかげで表情こそ見えないものの、その声は誇らしげだった。
「ルーカ、見てみて、この黒焼き質がイイですよ。これ作るのってすっごい火加減が難しいんですよ。すごいの一言です」
タミーが目を輝かせてじっと吊るされている黒焼きを見つめた。その横でマイサが顔をしかめた。
「バトが言ってたとおりだね。これは質が良いよ。これなら、たまった疲れも、お肌の荒れも吹っ飛ばせそうだよ」
ルーカが黒焼きを買おうと手を伸ばした時、いきなり巨大な人影が割り込んできた。
「我らがご主人様が、お前らが目障りだと仰られておられる。よって、排除する。素直に従わない場合、痛い目を見ることになる。この警告は我らがご主人様の御慈悲である。この場で跪き感謝を示せ」
大男の1人が頭巾の露天商に自分たちの言葉異界に選択肢がないと宣言するように静かに言い放った。
「それは、納得できない。俺はここで商う事ができる許可も持っている」
「そんなモノ関係ないっ」
大男は露天商に一喝すると腰に佩いた剣に手をかけた。
「穏やかじゃないねー」
「こっちは買い物中なんですけど」
ルーカとタミーが露天商と大男の間にすっと入り込むと彼を睨みつけた。
「穢れの侍女風情が出しゃばるな。痛い目にあいたいなら別だがな」
「侍女風情が口ごたえするな。獣は別として、お前ならベッドの上で優しく礼儀を教えてやってもいいぞ」
大男たちは下卑た笑い声を上げた。その時、耳が良いものならプチっと何かがキレた音を耳にしたかも知れない。
「言いたいことはそれだけかい? 」
「息が臭い」
ルーカがムカついていることを隠すことなく尋ね、その横でタミーが顔をしかめた。
「どうやら痛い目にあいたいらしいな」
「畜生が他人様に逆らうとどうなるか調教してやる」
大男たちは吠えるより先に手加減無しの拳をルーカとタミーの顔面に叩きこんできた。場慣れした傭兵の鉄拳である、露天商は2人の侍女が顔面を砕かれ、石畳の上に横たわる姿を想像して身震いした。
「遅いよ」
露天商の想像はルーカの声と共に消え去った。彼女は自分の顔面に向けて放たれた拳を横にいなすと同時に素早く手頸の関節を固めた。
「うっ」
男が次の行動にうつるに前にルーカは男をその場に引きずるように倒すとその脇腹に強烈な蹴りを見まった。
「げっ」
一方、タミーに向けて放たれた拳は見事に彼女の頭部に突き刺さっていたが、妙な悲鳴を上げたのは拳を放った男だった。タミーは男の拳を額で受けるとニヤッとしながらその手首を両手でつかんだ。
「本気出そうよ」
驚愕の表情を浮かべる男にタミーは何事もなかったように話しかけ、男の手を取ったままくるりとその場で男を背負うような体制に持ち込み、そのまま力任せに石畳に投げつけた。大男は石畳の上に横たわったまま動かなくなった。
「次は、アンタかい? 」
襲い掛かった大男を強かに蹴り抜いたルーカがクラーナを睨みつけながら身構えた。
「な、何よ。侍女風情が生意気に、どこの家の者か調べて二度と日の目を見られなくしてやるから。その日を待ってなさい」
彼女は部下である大男たちをそのままにさっさとその場を後にした。
「マイサ、後を追って」
「承知」
ルーカは揉め事が起きた時、さっと身を引いたマイサに小さな声で命じると彼女は煙のように人ごみの中に消えて行った。
「あれ、多分南から来た小金持ちだよ。南出のやり方がこっちでもできるって勘違いしたバカだよ」
「あの調子だと、すぐに持ってきたお金を使い果たしますよ。私たちを見つけてどうするつもりですかね」
ルーカとタミーは互いに見合って笑い声を上げた。
「君らのおかげで助かった。ありがとう」
フードを被った露天商が立ち上がり、ルーカとタミーに丁寧に頭を下げた。
「若様、ご無事でしたか。我々が離れた時に・・・、申し訳ありません」
ルーカとタミーが丁寧なお礼に同じく丁寧に笑顔で応えようとした時、ドタドタとフードを被った連中が3人走り込んで来た。
「彼女らに助けてもらった。こいつら通行の妨げになるから、あっちの路地裏に捨てて来てくれ」
露天商が駆け寄ってきたフードを被った連中に命じると、彼らは素早く大男たちを引きずって行った。
「若様って? 」
タミーが首を傾げながらルーカに小声で話しかけた。
「自己紹介が送れたようですまない。私はケイジャの郷主ジョム・ケイナンの長男、ヨルン・ケイナンだ」
ヨルン・ケイナンと名乗った男はすっとフードを外した。その中から黒髪を肩の有りまで伸ばした、少し線の細い青年の顔が出てきた。
「ケイジャの若様とは知らず、失礼な事を・・・申し訳ありません。我ら、ケフのお館様に仕える侍女、私は「野辺の花」のルーカ、この者は「綿の花」のタミーと申します」
思わぬ郷主の息子の出現にルーカとタミーは慌てて恭しくその場で頭を下げた。
無知から来る、相手に対する相手に対する尊重や思いやりの欠如は新たな火種の元となるようです。
今回のバーセンでのキャラバンの規模と期間は少しばかり大きくなっています。
今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。