表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第22章 焦りと求めるもの
329/342

307 愚考と愚行

暑い中の暇つぶしの一助となれば幸いです。

 もし、この世界に人権団体が存在していたなら、ケフの郷の全域で行われた犯罪者の取り締まりの苛烈さに抗議の声を上げただろう。仮にその様な団体がコデルの郷等の南方で行われていることを目撃すればケフで行われている事なんて児戯に等しいと言い出してしまうだろう。

 この世界では特に珍しくもない事なのであるが、元々平和だったケフは現在、少々異様な空気が漂うようになっていた。


 ヴィットはならず者たちの最後の姿を確認するため郊外の刑場に足を運んでいた。そして、その光景を見て少しここに来たことを後悔していた。

 「随分と絞首台が低くなったもんだ」

 絞首台の上で風に吹かれて傍から見ると気楽そうに揺れている罪人だったモノを腕組みしながら眺めていたヴィットが自嘲気味に呟いた。

 「裏でも処理が厳しくなっているようで・・・、時折、大荷物を背負った連中を配下の団員が目撃しておりますが、見ていないことにさせております」

 ヴィットの横に控えていたコーツがそっと囁いた。

 「・・・中には無罪の者もいたかもしれない、それを考えると・・・な」

 仮面の奥のヴィットの眼が辛そうに歪んだ。そんな彼を見もせずコーツはため息をついた。

 「一つの郷を守るには綺麗ごとだけではやっていけませんよ。少なくともあの連中はこれから先、誰も害することは出来ません。これからの犠牲者を考えると・・・、罪は我々が被ればいいのです。治安に当たる者はは恨まれて初めて一人前ですぞ」

 コーツはヴィットに口角を上げて見せた。それを見たヴィットも髭に隠れた口元を歪めた。


 仕事が終わった奥方様の工房で、ネアたちは先日、マーケットで手に入れた布などを使って自分のための服を縫っていた。

 「ここの縫い方の要領がよく分からないんです」

 ネアはデニアに、この夏自分で着るワンピースのネックの部分について尋ねていた。

 「ここは・・・」

 口下手なデニアは訥々としゃべりながらネアから受け取った縫いかけのワンピースのネックを見やすいようにゆっくりと大きな動作で数針縫ってみせた。

 「そうやるんですね。分かりました。ありがとうございます」

 ネアはデニアから自分の縫いかけのワンピースを返してもらうとさっさと作業を再開しだした。

 「こうやって見ていると、貴女たちはお針子に見えるんだよね」

 針を動かしている手を休め、ネアたちをじっと見つめていたホレルが不思議そうに呟いた。

 「私たちの本職はコレですよ」

 ネアは手を動かしながら顔も上げず、当然の事のように言い放った。

 「多分ね」

 「そうだと思いますよ」

 しかし、フォニーとラウニの歯切れは良くなかった。

 【そこは、自信をもって答えてもらいたいんだけど】

 ネアは小さなため息をつくと、苦笑を浮かべた。

 「そう言う事にしておくよ」

 ホレルはくすっと笑うと軽く頭を振って作業を続けた。

 「・・・そう言う事にしておいてください」

 ネアがそう言うと工房に笑い声が響いた。


 「バト、最近、エルフ族はブレスを吐くと言う噂を耳にしたのだが、心当たりはないか」

 ネアたちが裁縫に励んでいる頃、バトはエルマの小さな執務室で直立不動の姿勢で立たされ、目の前のデスクに肘をついて手を組んでいるエルマに尋問されていた。彼女はここから如何に脱出しようかと脳みそに喝をいれながら、その手段の案出に励んでいた。

 「私は耳にしたことがありません」

 パトは元気よく溌溂とエルマに応えた。その言葉を聞いてエルマの表情が険しくなった。

 「耳にしたことがない、か。なかなか面白い耳を持っているようだな。私が聞いたところだと、エルフ族がブレスを吐けると認知されると下手に襲われない、そうだが。え、どうなんだ」

 エルマは立ち上がるとドンと机を叩いた。バトはエルマの行動に思わず身体を固くした。

 【あの時の会話を知っているの? 】

 「シモエルフと言う新たなジャンルを作るだけでは飽き足らず、エルフ族は反吐を撒き散らすと言うイメージを持たせたいようだな? 」

 エルマはバトに迫りながら壮絶な笑みを浮かべた。その表情を見た時、バトは自分が希望を捨てる状態に陥っていることを悟った。

 「お前に尋ねたいのだが、反吐を撒き散らすことは、加齢臭を撒き散らす事よりマシな事だと思うか? 」

 エルマの言葉にバトは固まってしまった。そして、何故、あの時、自分が口にした言葉をエルマが知っているのか考えだした。

 【え、どこで聞かれたの? ルロかアリエラが漏らした? 】

 「早く答えろっ」

 固まるバトにエルマが怒声を発するとバトにくっつくぐらい顔を近づけて睨みつけた。

 「何故、私が言った言葉を知っているの? って面をしているな。私は全てお見通しだ。バト、貴様の言動なんぞ筒抜けだと思え。で、この我らエルフ族に泥を塗った落とし前をどうするつもりだ」

 エルマはバトに詰め寄ると脅すように低い声で語りかけた。その言葉を聞いたバトの足は小刻みに震えだした。

 「・・・今後、エルフ族に対する妙な噂を立てるような事をしてみろ、生まれてきたことを後悔させてやるからな。・・・シモエルフは我々を巻き込まない限り名乗ることを許してやる。これは最後通牒だ。分かったな」

 エルマはバトの耳元で怒鳴るように因果を含めた。

 「Yes ma’am! 」

 バトは直立不動で正面をじっと見たまま大声で返事していた。

 「分かったならさっさと出て行け」

 エルマはバトに怒鳴りつけると執務室のドアを指さした。

 「Yes ma’am! 」

 バトは叫ぶように言うと回れ右して執務室から出て行った。


 「生還しましたね」

 「取りあえず、生還おめでとう」

 虚ろな目で自分たちの居室に戻ってきたバトをルロとアリエラがぞんざいに労った。

 「他人事だと思って・・・」

 パトはそう言うと自分のベッドにどさっと身体を投げ出した。

 「そもそもの始まりはバトが身体の事を考えもせずにお酒を飲んだからだよ。自業自得ってやつ? 」

 アリエラはベッドに横たわったままでバトに視線を向けた。

 「加齢臭のこと、エルマさんに言ったよね」

 バトはベッドに俯けになったままくぐもった声を上げた。

 「口が裂けても言いません。言ってなくても巻き添えを喰らうのは明らかでしょ」

 ルロが小さなため息をつきながらバトを睨みつけた。

 「誰が、言ったのよ・・・」

 バトはそう言うとベッドに突っ伏したまま動かなくなった。

 「・・・エルマさんの手駒ってブレヒト君だけじゃないと思うんですよね」

 ルロが暫く考えてからぽつりと呟いた。

 「ビケット家に先々代様からお仕えされているんです。ビケット家の裏の裏、私たちのお尻の穴のしわの数まで把握されているはずですよ」

 「・・・それは充分に考えられる。そして、私らはその駒がどこにあるか、どんな形なのかすら分からない。私らに出来ることは言動を慎むことぐらいだよ」

 そう言うとアリエラは深いため息をつき、暗くなった窓の外を眺めた。

 「私らが気づかない所に耳や目があるんだよね・・・」

 「迂闊な事を口走らないように注意ですね」

 ルロも暗くなった窓の外に目を向け、その暗闇の影に何者かが潜んでいるような感覚にとらわれぶるっと身震いした。


 「ミエルちゃん、クーナちゃんこんにちはーっ」

 クーナの手を引いて、お館の警備に任じているケイタフとヘルムに弁当を届けに来たミエルにお使いから帰ってきたフォニーが元気よく声をかけた。

 「こんにちはー」

 「・・・こんにちは」

 ミエルはいつもように元気よく挨拶を返したが、クーナは少し元気がなかった。

 「・・・クーナちゃん調子が悪いのかな」

 フォニーは少し俯き加減のクーナを覗きこむように見ると心配そうにミエルに尋ねた。

 「・・・」

 クーナは答えるかわりにミエルのスカートをぎゅっと握み、悲しそうな表情を浮かべた。

 「仲の良かったお友達が遠くに引っ越すことになったんだって」

 ミエルはクーナに代わってフォニーに答えた。その答えにフォニーは軽く頷くと腰を落としてクーナと視線を合わせると彼女を安心させるように小さく微笑んだ。

 「お友達がいなくなるって寂しいよね。でも、その子も寂しいはずだよね。つらいよね」

 「フォニーちゃんはいなくならない? 」

 優しく語り掛けるフォニーにミエルは涙を浮かべた目で尋ねてきた。

 「うちらはいなくならないよ。ずっといるよ」

 フォニーはそう言うと優しくミエルを抱きしめていた。

 「・・・クーナちゃんのお友達が引っ越す先って? 」

 「南の方だよ。向こうには、働く場所も家もなにもかもあるって話みたいだよ。そのからくりは何となく察することは出来るけどね・・・」

 フォニーの問いかけにミエルは目を伏せて首を振った。

 「真人のお友達だったんだね・・・」

 フォニーが独り言のように呟いた言葉にクーナは静かに頷いた。そしてミエルもそのとおりであると頷いていた。

 「・・・」

 彼女らの行動で察したフォニーは歯を喰いしばるような微妙な表情を浮かべながらもクーナの頭を優しく撫でてやっていた。


 「・・・それって、あたしが住んでいた所に別の人が勝手に入って来るってこと・・・ですか。そんなの、そんなの・・・」

 夕食後、居室でフォニーからクーナのお友達の話を聞いたティマがぶつけようのない怒りを感じてか、拳を震わせながら呟いた。

 「こんなケフにも人が流れて来ているんですから、南の方は当然、人が足りなくなっているんでしょうね」

 ラウニが今作っているワンピースのためのポーチを縫いながら、やるせない表情を浮かべた。

 「どこかのバカがつまらないことをするから、どれだけの人が迷惑している・・・、迷惑どころじゃないか・・・」

 ベッドに腰かけ、拳を強く握りしめているティマの肩を抱きながら心底つまらなそうに呟いた。

 「働く人がいなくなることぐらい分からないのかな、あの人たちは」

 フォニーは王都で見た正義と秩序の実行隊員たちを思い起こしながら呟いた。それを聞いたネアは小さくため息をついた。

 「自分の命より、主義主張が大事なヤツがいたじゃないですか。お祭りの時に暴れたバカみたいに」

 「あー、いたいた、今思い返してもムカつくヤツ」

 フォニーは、絞首台の露として人知れず去って行ったヒンメルを思い出して顔をしかめた。

 「クーナちゃんのお友達には悪いけど、向こうでの生活って厳しくなると思います。多分、ケフみたいに自由なことはできないでしょうね」

 ラウニは素直に自分の心に浮かんだことを口にした。それを聞いたネアは心中で「そのとおり」と声を上げていた。

 「聡いクーナちゃんの事だから、その辺りの事も何となく理解しているから、余計に悲しいんでしょうね」

 ネアは自分に寄り添ってくるティマの頭を撫でながらやり切りない思いを感じていた。

 「正義の光はバカの巣窟なのかしら」

 フォニーが理解しがたいと首を傾げた。

 「自分たちの主義や思想のためには命も惜しくないってヤツらがいるんですよ。教義のために命を捨てる、これが美談となって、憧れるバカが湧いてくる」

 ラウニがまずいモノを口に入れたような渋い表情で吐き捨てた。

 「・・・それを言うなら、お館様、奥方様、そのご家族のために命を投げ出す覚悟を決めている私たちも同類ですよ」

 ネアはむすっとした表情を浮かべているラウニに二っと笑いながら尋ねた。

 「アイツらと私たちは違います」

 ラウニはカッと牙を剥きだして噛みつくようにネアの言葉を否定した。

 「ふふ、そう言うと思っていましたよ。では、どこが違うんですか? 自分の命よりお館様たちの命が大事ながある私たちと、自分の命より教義を優先するアイツらと」

 「そ、それは・・・」

 ネアの言葉にラウニは詰まってしまい、歯を喰いしばるようにして俯いてしまった。

 「そうだ、アイツらは自分たちの教義に合わない人を爪らわずに殺します。そして、その教義を人に強制します。でも、私たちはお館様に忠誠を誓っていますが、他の人にそれを強要しません。他の郷でそこの郷主様に忠誠を誓っている人たちを敵だとは思っていません。それだったら、デニアさんやホレルさんと一緒に仕事なんてできないじゃないですか」

 ラウニは喰いしばった口を開けると、自分の思いを一気にまくし立てた。ネアはラウニの言葉を聞いてにっこりと笑みを浮かべた。

 「ラウニ姐さんの言うとおりです。私たちの力は守るため、アイツらの力は自分の思いを押し付けるために使われているんです。でも・・・、お館様も人です。どこかで道を誤ってしまわれるかもしれません。もし、罪のない赤ん坊を殺せと命じられて、殺せますか? 私はできません。でも、それを躊躇わずにできるのがあの趣味の悪い鎧の連中なんです」

 「お館様がそんな滅茶苦茶な事を命ぜられるはずはありません。仮にあったとしたら、命じたのはお館様に化けた偽物です」

 ラウニはそう言い切ると、作りかけのポーチをテーブルの上に置き立ち上がった。

 「私はケフの郷のお館に勤める侍女見習い、それ以上でもそれ以下でもありません。私の全てはお館様のためにあるんです」

 ラウニは自分に言い聞かせるように強い口調で言い切った。それを聞いたフォニーの口角が少し上がった。

 「それは違うね」

 「違いません」

 フォニーはいたずらを仕掛ける子供の様にニヤッと宣言するのに対して、ラウニはムキになって反論した。

 「仮面の紳士の分がないよ」

 フォニーはそう言うとクスクスと笑い声を上げた。

 「あ、あの方は、その・・・、えと、えと、別と言うか」

 ラウニはフォニーの言葉にいきなりあたふたとし始めた。それを見たフォニーは安心の溜息をついた。

 「それだよ。アイツらは迷わないし、考えることもしないと思うよ」

 「そうですね。判断も選択も教義や上位の者に任せておけばいいんですから。迷うことはありませんから。楽なもんですよ。こちとら、お昼は何を食べるか、何を買うか、手掛けているワンピースのデザインはって、なんだかんだと考えることがあるんですからね」

 フォニーの言葉にネアは肩をすくめて同意した。

 【自分の判断を他者に委ねるってのは、慣れれば楽なんだよね】

 ネアは知らずのうちにあの鎧の連中の眼を思い出して苦笑していた。


 「お前らも、エルフのオバさんなんかの手下やってないでよ。それだけの腕があるなら、絶対に採用されるぜ」

 エルマの命で街の警備と情報収集にあたっているブレヒトに以前の悪ガキ仲間の1人が声をかけて来た。

 「・・・」

 街の広場のベンチに腰掛け、昼飯のホットドッグを食べていたブレヒトは、その手を休めてその少年を見上げた。

 「南の方じゃ、人手が足りないようだぜ。山賊や野盗も多いみたいだからよ、傭兵になって一旗揚げようって、そんな連中を今集めているんだ。お前もどうだ? 」

 希望に目を輝かせている少年を見てブレヒトは深いため息をついた。

 「お前、獣人だろ」

 「そうだ、俺はお前たちより力のある熊族だからな。腕っぷしは真人なんて目じゃないぜ」

 あまりにもツッコミどころが多い少年の言葉にブレヒトは頭痛を覚えた。

 「南じゃ、俺たち穢れの民が追われているんだぜ、そんな所に行っても仕事も何もないぜ。最悪、とっ捕まえられて毛皮剥がれるぞ」

 「俺たちには力がある。傭兵として一旗あげられる。真人なんて目じゃないからな」

 少年はブレヒトの言葉を全く理解していないようで、彼との会話は平行線であった。

 「大体、最近、ここは厳しすぎるんだ。カツアゲしただけで10日の強制労働、盗みに入ったら普通に犯罪奴隷に堕とされちまう。こんな話聞いたことがない。だから、自由な傭兵になってこんな郷からおさらばするんだ」

 熊族の少年は最近の犯罪取り締まりが苛烈であると不満をぶちまけた。

 「そもそも悪さをしなけりゃ良いだけだろ」

 「俺たちは力があるからな。強盗もできるが、ありゃその場で斬り殺されちまっても不思議じゃないからな。どうだ、こんな不自由なところに居たくないだろ」

 自分たちの仲間にブレヒトを入れたい熊族の少年は現在のケフの息苦しさを少ない語彙で訴えたが、どれもブレヒトの心に響かなかった。

 「お前のやりたいことは山賊か野盗か? 俺はお前らと一緒に絞首台にぶら下がる趣味はない。ましてや犯罪奴隷になんかなりたくない。それ以前に、穢れの民が追われている南になんて行きたくない。お前には理解できないだろうけど、やめておけ。自殺行為だぞ」

 ブレヒトはバカがどうなろうと知った事ではないが、目の前にいるバカが敢えて死地に飛び込むことを看過できなかった。

 「心配しすぎだぜ、なんせ俺たちには力がある。ひ弱な真人どもとは違う。しかも俺は、熊族の中でも最も力のあるヒグマ族だからな」

 少年は毛むくじゃらの腕をぐっとまげて力こぶを作り、ブレヒトにこれでもかと見せつけた。

 「・・・親でなくても心配するぞ。ここまでのバカが存在するなんてな・・・、メラニ様も失敗されることもあるんだ」

 ブレヒトは神の過ちが存在するかもしれないということに少なからずショックを受けていた。熊族の少年はブレヒトの心中の葛藤には全く気付くことも無く。南の方で暴れて成功するという、暴力のビジョンのみはっきりして、その他はもわっとぼやけた計画をとうとうと話し出した。

 【コイツ、脳みそあるのか? 】

 「お前らは獣人と言っても力がないからな。力がある俺と組めば怖いものなしだぜ」

 熊族の少年はそう言って笑い声を上げた。

 「・・・俺は、お前より強い熊族を知っているぜ。心配しなくてもその人は大人じゃない俺らと同い年だ」

 「誰だ、ソイツは? 力のある俺より強いのか? いい加減な事を言ってると、尻尾を引き抜くぞ」

 熊族の少年は吠えるように喚いた。

 「お館の侍女、ラウニさんだ。あの人から比べるとお前はくすんで・・・、比べることもおこがましいな。今の俺でもお前には勝てるぜ」

 【ラウニ姐さん、すみません。バカでも自ら死地に飛び込むヤツを見捨てる訳にはいかないんです】

 ブレヒトは目の前のバカの考えを通うとしてその名を口にしたことを、心の中でラウニに両手を合わせて謝罪していた。

 「イヌと喧嘩して勝ったとしても自慢にもならねぇよ。ラウニか、女らしいが、お前が言うくらいなら、それなり何だろうな。旅立ちの前の手土産に痛い目に合わせてやるよ」

 考えの足りない熊族の少年は、これからのサクセスストーリーの序章としてラウニを叩きのめすことを決心した。そして、お館に向けて歩き出そうとした。

 「おい、どこに行くんだよ」

 「お館に乗り込んで、ソイツを叩き潰す。俺には力があるからな、簡単な事さ」

 「門で撮っ捕まるぞ。それすら理解できないのかよ・・・」

 ブレヒトは目の前の存在がこの世のものではないような気がしていた。

 【想像を絶するって、この事なんだ】

 彼は、目の前で力こぶを見せつける熊族の少年を眺めながら、頭を抱えたくなるのを必死に堪えていた。

エルフブレスはエルフ族特有のスキルではなく、誰でもできることなのですが、バトがやらかした場所とタイミングが良かったため、エルフ族はブレスを吐く、と言うあらぬ噂が流れてしまいました。

エルマはこの件について、エルフ族を貶めたと立腹しているようです。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ