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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第20章 将来
294/342

274 開始前

誤字の指摘ありがとうございます。感謝、感謝です。

こんなお話が、暑さで何もする気がしない時の暇つぶしの一助となれば幸いです。

 「お嬢、ルシア様、お着替えをお持ちしました。舞踏会で食事も提供されますが、立食形式みたいですので、軽い食べ物もあわせてお持ちしました。食べるのは舞踏会が終わってからですよ。舞踏会前に食べると、リバースする危険性がありますからね」

 大きな荷物を抱えたマイサを従えたアリエラが今日の講義を終えて、ぐったりしているレヒテとそんな彼女が空腹で暴れ出さないようにクッキーを少しずつを与えながらご機嫌を取っているルシアに恭しく頭をさげながら話しかけた。

 「お針子姫謹製のドレスですよ。ルシア様とは色違いのお揃いです。他の郷がうらやみますよ」

 アリエラはにこやかに言うと、ルシアに餌付けされているレヒテをたたせてドレッシングルームに連れて行った。


 「なんか、雰囲気悪いよね」

 護衛などの控室で辺りをさっと見回したカイがそっとクゥに訴えると彼女は頷いてカイの言葉を肯定した。彼女らの周りには、舐められないために凶暴性を敢えて強調した護衛が必死で強面の表情を作って「俺は機嫌が悪い」と訴えていた。その連中が無言で買ってほしくない喧嘩を売っていて、微妙な平和な空間を作っていた。彼女らはその張り詰めた空気を不快と感じていた。

 「張り詰めてやすねー」

 ハチが椅子に深く腰掛けて欠伸をしながらのんびりした口調でカイとクゥに自分も不快であると、彼女らの意見に同意した。

 「皆、刺激しちゃダメだよ。ここは息を殺して大人しくしていた方がいいよ」

 ヘルムはハチやカイ、クゥに口を慎むように求めた。

 「バトさんやルロさんがいれば心強いのに」

 カイがため息をつきながら宿で待機と言う名のもと惰眠と酒を貪っているであろう凸凹コンビについてぽつりと漏らした。

 「そりゃ、ダメですぜ。あの姐さんたちをここに連れてくりゃ、戦力と言う意味じゃ頼りになりやすが、他の郷に喧嘩を売る口実を作る事になりやすからね。バトの姐さんの判断は間違っちゃないですぜ」

 「うん、ハッちゃんの言うとおりだよ。ここに真人以外、穢れの民はどこにもいないから、悪い意味で目立っちゃいますよ」

 ハチの言葉をヘルムはそのとおりであると肯定した。カイは改めて周りを見回してヘルムの言葉が正しいことを知り、またため息をついた。

 「何事もなく終わってくれればいいんですけど」

 クゥは両手を合わせて祈るように呟いた。その様子を見ていたカイの表情が曇り、そして警告するようにクゥに囁いた。

 「それは、何事かを呼び寄せる布石になると思うよ」


 「似合ってますよ。まるで、お姫様みたいですよ。・・・と言うか、郷の姫君なんですけど」

 マイサがドレスに着替えたレヒテとルシアを見て感動と戸惑いの声を上げた。レヒテは青を、ルシアは緑を基調とし、お針子姫の仕事らしく、華美さを排除し、その仕立てと全体のラインが下手な宝飾品以上に優雅さを醸し出していた。さらに、ダンスをすると言う目的に合わせ着ている者に不自由さを感じさせない、バケモノみたいなドレスで、あろうことか、舞踏会のために作られたものではなく、過去の試作品の手直しであった。

 「ふふん、この分野ではケフに追いつける郷はいないのですよ」

 アリエラは周りのドレスを見回してから、ケフの郷を代表したかのようなドヤ顔をしてみせた。

 「そのドレス、見せてください」

 そんな彼女らにいきなり声がかかった。声の主はフレーラであった。彼女はトラブルを回避するため、侍女であるケネラとデニアを宿に残し、1人で舞踏会の会場に来ていたのであった。その彼女が真剣な様子でレヒテのドレスを凝視していた。

 「素人の私にも何となく分かります。このドレス、別の世界です」

 フレーラはじっとドレスを見てから、レヒテの前に跪いた。

 「お願いします。そのドレス、舞踏会が終わった後で、デニアに見せてやってもらえませんか。あの子は、侍女の皆さんの仕事着を見て、とても感動していたんです。それに、お針子姫から直接ご指導を頂いている方から、お褒めの言葉を頂いたことにとても喜んで、ますます裁縫に専念しようとしています。だから、あの子の勉強のために見せてやって頂くことはできませんか」

 フレーラの真剣な表情にレヒテは一瞬たじろいだが、彼女はフレーラの手を取ってそっと立たせた。

 「家臣を思う優しい心、響きました。お友達になっていただいて間違いはありませんでした。ドレスを見せるぐらいいつでも言ってくれていいんだよ。お友達同士なんだから堅苦しい事はナシ」

 レヒテは笑顔でフレーラに言うと、フレーラはひたすらレヒテに感謝を述べた。

 「アリエラ、マイサ、フレーラさんの着付けを直してあげて、さっきので少し、はだけたみたいだから」

 レヒテの言葉でアリエラとマイサはフレーラの着付けを直し始めた。どうしても一人では難しく、いい加減に止められたホックやボタンをしっかりととめなおし、ズレたリボンを直し、挙句の果てには髪までセットをし直しだした。

 「ここまでして頂いて・・・、ありがとうございます」

 すっかり、小ざっぱりとしたフレーラが改めてレヒテに礼を述べると、レヒテは少し恥ずかしそうに

 「実際に手を動かしたのは、アリエラとマイサだから。その仕事に対する礼なら彼女らに言ってあげてね」

 と言うと、アリエラとマイサの背中をポンと叩いた。

 「アリエラさん、マイサさん、ありがとうございます。感謝します」

 フレーラは侍女2人に礼を述べると頭を下げた。

 「勿体ないお言葉、感謝致しますが。私たちは、これが仕事で、命じられたからしたんです」

 「これは、私たちの仕事で、お礼を頂くようなことは何も・・・」

 それを見たアリエラとマイサは慌ててフレーラの前に跪いた。

 「いいえ、いくらお仕事とは言え、主人でもない、他の郷の者にして頂いた親切に礼を持って応えるのは普通の事です」

 「しかし、その・・・、私どものような下賤な者に・・・」

 アリエラは恐縮し、この事態を巻き起こした元凶たるレヒテを睨みつけた。

 「私は、偶々郷主の娘に生まれただけです。自分では着付けすらロクにできない者です。身分ではありません。そのお仕事に対して礼を述べているのです。ご迷惑でしょうが、私の精一杯の礼、お受け下さい」

 フレーラはそう言うとアリエラとマイサの手を取って改めて礼を述べた。あまりの出来事にアリエラとマイサは暫くその場でキツネにつままれたように立ちすくんでいた。

 「レヒテお姐様、音楽が始まりましたよ」

 その時、静かながら軽快な音楽がホールから聞こえてきた。この曲はそろそろ舞踏会が開始されるという、合図の曲であり、この曲が終わると主催者の挨拶などがあり、そして舞踏会が開始されるのである。この開始までの間に、それぞれがイイ感じの立ち位置を確保したり、仲間と合流したりするのである。

 「さっさと行って、さっさと終わらせよ。食べる物は食べてさ」

 レヒテはパンと己の頬を叩くとルシアとフレーラに声をかけると戦場に赴く兵士のように勇んで出て行った。


 「レヒテ殿、こちらへ」

 声をかけて来たのは、レディンであった。彼は、様々な料理が乗ったテーブルに近く、なおかつ目立ちにくい所に陣取っていた。レヒテたちはレディンの声に従い、彼の近くに集まった。

 「こんばんは、今日は一段と美しいですね。皆さん、ドレス、とてもお似合いですよ」

 レヒテとルシアのドレスは服飾に関して明るくないレディンにもその素晴らしさが何となく分かった。その横で少し居心地が悪そうにしているフレーラの衣装は、郷の豊かさに比例したモノで、きっちりと着こなし、綺麗な姿勢を保っているからこそ、この場で浮かない程度であった。

 「この衣装を準備するのもミーマスでは精一杯なんです。このドレスも・・・、お母様の物をデニアが手直ししてくれた物なんです」

 己の衣装の事を知っているフレーラは恥ずかしそうに俯いた。

 「素敵じゃないですか。親子を通して物を大事にする。豊かではない我が郷も是非見習わなくてはなりません。実の所、このジャケットも父上のお古なんですよ」

 レディンは明るくフレーラを励ますと、己のちょっと古いデザインのジャケットを指さして微笑んだ。

 「そうですよね。服飾の郷と比べることもおこがましいですよね」

 フレーラは眩しいモノを見るようにレヒテとルシアのドレスを眺めた。

 「あの、これね。確かに私らのサイズに調整はしてあるけど、一昨年の試作品の手直しだよ。ケフの郷は、春と秋に隣のワーナンまで出向いて注文を取って、注文の服を納品するってことをしてお金を稼いでいるんだよ。お針子姫って私の母様だよ。普通、郷主の妻って、自らお金稼いだりしていないでしょ。ケフはそうでもしないと、結構きついんだよね」

 レヒテは自分たちの着ているドレスもこの時のために作られたものではなく、試作品の手直しであることを告げ、ケフの郷もそれなりに懐事情が苦しいことを打ち明けた。

 「お、そんな所に居ったかー、探したぞ」

 小さな郷同士が互いに懐事情の苦しさを分かち合っていた時、豪快な声が響いた。

 「あ、脳筋・・・否、アカス様」

 レヒテは声の主を確認して思わず声を上げた。アカスは「脳筋」と言う言葉を聞いて嬉しそうに顔をほころばせた。

 「ああ、俺は鍛えに鍛えて、脳みそまで筋肉にしたような男だからな」

 彼は、レヒテの言葉をポジティブに受け止めてガハハと豪快な笑い声を上げた。

 「そろそろ、挨拶が始まりますよ」

 音楽がやみ、レディンがレヒテたちに注意を促すと楽団がいるステージに神経質そうな痩せたいかにも官吏という男が登壇した。

 「お勉強ご苦労様です。疲れを今夜の舞踏会で吹き飛ばしてください。自己紹介が遅れましたが、私は王都の政策の一翼を担っている立場にいる、ドラフ・ラウドと申します。君らが郷主になる時に顔を合わせることになるものです。もう、この勉強会もあとわずかです。この機会を利用して是非とも親交を深めて頂きたいのです。では、良き夜を」

 ドラフ・ラウドと名乗った男は偉そうに告げると、さっさとステージを降りて会場から出て行った。彼が会場から出て行くのを合図にしたように楽団が軽快な音楽を奏で始めた。

 「お嬢、料理をお持ちしました」

 音楽を合図にしたかのように、アリエラとマイサが小皿に綺麗に取り分けられたタレを沁み込ませた肉を焼いたモノをレヒテとルシアに差し出した。それに続いてティッカ、ハープ、ルッチが主であるレディン、侍女を連れて来られなかったフレーラ、そして侍女を置き去りにして暴走しようとしているアカスに同じものを差し出していた。

 「ありがとう、ちょうど小腹が減っていたのだ。うん、美味いぞ」

 アカスは小皿の上の料理を流し込むように口に突っ込んでから嬉しそうな声を出した。

 「レヒテ姐様も結構豪快ですが、上には上がいるんですね」

 そんなアカスの様子を見ていたルシアが小声でレヒテに話しかけた。レヒテはその言葉に少しむっとしたような表情になった。

 「・・・そうだね、ちょっと悔しい・・・」

 「今日は、お淑やか路線で行くんですよね。悪目立ちはケフのためになりませんよ。ヤヅも巻き込まれるんですからね」

 明後日の方向に突っ走りそうになるレヒテにルシアはしっかりと釘を刺した。


 「お嬢を皆で迎えにいきましょうか。その前に、外でいい感じの食事をして、イイ感じの人を見つけて、イイ感じになって。ベッドの上でイイ感じになれたら・・・、うん、この手で行きましょう」

 そろそろ舞踏会が始まるかと言う時刻にバトが宿に残っているネアたちに声をかけてきた。

 「王都の物価は高いから、うちらのお小遣いじゃ、お茶とクッキーが精一杯だよ」

 バトの呼びかけにフォニーが財布を盗りだして中身を確認しながらため息をついた。

 「ふふふ、こんな時のために、お館様から特別のお小遣いを頂いているのです」

 フォニーの言葉を耳にしたルロが中身が詰まった巾着袋をポケットから取り出して掲げて見せた。

 「それなら、お嬢やアリエラさんたちと一緒に行きましょうよ。その方が楽しいですよ。アリエラさんたちも遊びに行っているんじゃなくて、お仕事をしているのですから」

 ネアがルロが掲げる巾着袋を見ると優等生のように凸凹コンビに提案した。

 「それは、打ち上げ用に別にお金がついているのですよ。太っ腹です。このお金は、ここで堅苦しい思いをしている、私たち真人以外の者へのお小遣いです」

 ネアの言葉を聞いてルロはふふんと笑ってみせた。その言葉を聞いて、フォニーが歓声を上げた。

 「そんなに堅苦しい思いをした覚えはないですよ。フベナ商店ではおまけまでしてもらいましたよ」

 いつも買い出しに行っているミエルが首を傾げた。

 「それは、下町だからだよ。ちょいと山の手に行くとさ、店に入ると、いきなり「帰っておくんなはれ」だよ。あれには参ったよ」

 バトが何かを思い出しながら苦笑した。そんな様子を横から見ていたルロが大げさにため息をついた。

 「高級ランジェリーのお店で、大声で「男の理性を吹き飛ばすようなパンツ」なんて言ったら当然の事でしょ。殺されなかっただけでもマシだと思いなさい。もし、これがエルフ族の人たちに知られたら、大変な事になるんじゃないですか」

 ルロは心配そうな表情を浮かべてバトがヒルカから言われたことを仄めかした。ルロの言葉を聞いてもバトは首を傾げるだけであった。

 「シモに走ったら、エルフ族として制裁するって言われたでしょ」

 「ああ、それね。あの程度は、エルフ族なら普通だから」

 ルロの心配をよそにバトはしれっと答えると、彼女の興味は今夜どこの店に繰り出すかになっていた。

 「エルフ族なら普通? 」

 バトの言葉にラウニが思わず言葉を返していた。

 「ラールさんならやりかねないですよ。その前に剣精様はパンツを穿かれませんけど」

 ネアはラウニに少し考えてから小声で答えた。ラウニはネアの言葉に深く頷いていた。

 「細かい事はいいから、さっさと準備して、さっさと繰り出すよ。ミエルちゃんも一緒だからね」

 待て、が聞かなくなってきたバトはネアたちにさっさと外出の準備をするように促した。


 「こんなにいたんだー」

 下町に区分される飲食店街には、多くの穢れの民が繰り出していた。それを見たティマが思わず声を上げた。王都に来てからは、目にする種族の7割が真人であったためであった。

 「うちらみたいな人も、それなりに重宝されているんだよね」

 フォニーが少し嬉しそうな表情で行き交う人々を眺めていた。様々な使用人たちが「鬼の居ぬ間に洗濯」のつもりか、伸び伸びと束の間の空き時間を楽しんでいるようにネアには見えた。

 「確かに、私たちみたいな人が多いけど、それでも半分ぐらいですよ。やっぱりケフは異常なんですね」

 ラウニは改めてケフやケフがある北方地域の人口比が普通ではないことを思い知らされていた。少なくともケフでは、街行く人々の半数以上が穢れの民であり、真人を探す方が難しいぐらいであったからである。

 「郷主様にお仕えするとなると、それなりの出自が求められる場合が多いからねー。特に大きな郷や南の方だとそうだよ。騎士団にすら入団できない場合があるからね」

 「雇われたとしても、直接お顔を合わせるようなことはないですね」

 バトが当然のようにラウニに言うと、ルロもその言葉を肯定するように重ねてきた。

 「あたしたちみたいな人、誰もお勉強会にいなかった・・・です」

 ティマもレヒテに付いて行って見た風景を思い出しながら、凸凹コンビの言葉に頷いていた。

 「この辺りなら、私たちでも入れるお店ばかりですよ」

 良く買い出しに行っているミエルがあちこちに掲げられている様々な形や色の看板を眺めながら、この辺り店は自分たちにも安全であると口にした。

 「お店に入るにも、注意しないといけないなんて、不便ですよね」

 ネアは前の世界の事を思い出しながらため息をついた。完全とは言えないか、前の世界でここまで露骨な対応はなかった。もし、そんな事があれば、やらかした店は大炎上となり、廃業に追い込まれても不思議はなかっただろう。そんな事を思いながら、ネアは今いる世界が前の世界とは全く異なった場所であると改めて認識していた。

 「お子様には悪いけど、今日はお酒も飲める店にします」

 獣人の子どもを引率するように歩いているルロがビシッと後ろに続くネアたちに宣言した。

 「私は、いい男がいるお店がいいなー」

 バトが吠えるように言うと、すれ違った人たちが驚いて振り返った。そんなバトにティマやミエルまでが敢えてそのままスルーしていた。

 「いろいろなお店があるんですね」

 「聞いたことがないような料理のお店もあるね」

 ラウニとフォニーはまるで田舎から出てきた、実際はそのとおりであるが、観光客のようにあちこちを忙しなく視線を動かしていた。

 「食材はイロイロあるけど、知っている物については、ケフほどおいしくないんだよね」

 ミエルがちょっと首を傾げて呟いた。それを聞いたネアはちょっと考えてから口を開いた。

 「ここまで運んでくる時間が関係しているのじゃないかな。時間がかかると新鮮さがなくなるからじゃないかな」

 「そうだよね。うん、そうだと思う。はじめはさ、王都に来てから大地の気の吸収が難しいから、それ関係かなって思ってたけど、王都で扱う食材って王都で作っていないから、多分、ネアさんの言うとおりだと思う」

 ミエルはネアの答えに何となく納得したようであった。しかし、彼女の言葉にネアは、はっと気づいたように目を見開いた。

 「そう、大地の気、あれがここに来てから急に吸収ができないんですよ。海の上でも大丈夫だったのに、それって私だけじゃなかったんだ」

 ネアは当初騙されたと思ってラールの言う大地の気の吸収を試してみたのであるが、それが思いのほか効果があるように感じられたのでエルマの目を盗んで実践していたのであった。しかし、王都に着いた途端、大地の気の吸収ができていないように感じられていたのである。

 「あ、それ、うちもだよ」

 「私だけじゃなかったんだ」

 「あたしも」

 ネアの言葉を耳にしていたフォニーたちがネアとミエルが感じていることと同様の事を感じていたようで、口々に自分たちも大地の気の吸収ができていないことを口にした。

 「そう言えば、そうですよね。アリエラもカイさん、クゥさんも言ってたし、ルシア様も不思議がられたようだから」

 ネアたちの言葉を聞いてルロが腕組みをしながら難しい表情になった。

 「それって、種族とか、健康とかの問題じゃないよね。この王都の土地に何かあるのかな。緑が少なくてちょっと息苦しいところはあるけど。どうしてなんだろ? 」

 バトもうーんと考えだし、暫く難しい表情になっていた。

 「考えても埒が明かないことは、考えても無駄。さ、お食事に行くよ。いいお酒があって、いい男が来て、しかもお子様にも安心、安全なお店をリナさんから聞いているんだよねー」

 バトは答えの出ない疑問を速やかに手放すと、さっさとリナから聞いた目当てとしている店を目指して歩き出した。



 

舞踏会の食事は立食形式ですが、食事の取り分けはお付きの侍女たちの仕事になります。郷主のご子息がたは只、差し出されたものを口にしていればいいのです。しかし、お付きの侍女がその料理を口にすることはできませんが、陰でこそっと食べているのは敢えて誰も見ないことにしています。この事について、口やかましく言い立てると、使用人が去って行ったり、雇おうにも誰も来なくなったりすることがあります。食べ物の恨みは怖いですから。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

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