261 我慢
これから、暦上しばらくお休みがありませんが、夏のお休みを楽しみに日々耐えている今日この頃です。
このお話が、ちょっとした休憩と退屈しのぎの一助になれば幸いです。
「美人薄命とはこのことなのですね・・・、もっと恋をしたかった、ステキな人と結婚して、赤ちゃんも産みたかったなー」
海を渡る風号が港から出て暫くするとルロは激烈な船酔いに襲われていた。それ以来、彼女の定位置は、医務室のベッドの上であった。そして、定期的に彼女は、天井を見つめ、えずきながら呟くと涙を流していた。
「お嬢さん、大袈裟だよ、船酔いでは死ないよ。ドワーフ族には海はキツイですか・・・」
彼女は、海を渡る風号の船医ですら見たことがないような激烈な船酔いに見舞われおり、その症状と彼女が何かと悲劇のヒロインになりたがることに呆れながらも面白いと感じていた。
「本来なら、船酔いぐらいなら、自分の船室で療養してもらうんだけどね・・・」
若い船医はその端正な顔をしかめながら、ルロがリバースした朝食の成れの果てが入っているバケツを見た。この状態で船室にいたならば、同室の者が全員臭いやら、音やらで体調が不良になることを見込んで、早々に彼女の隔離を判断したことは誤りではなかったと、船医は己の判断の的確さに自画自賛していた。
「二日酔いよりキツイ・・・、助けて・・・」
ルロはすがるように涙目を船医に向けると、船医は端正な顔に困ったような笑みを浮かべた。
「そろそろ薬が効いて来ますから、ゆっくりと眠ってください。眠っている間は不快感を感じる事はないですから」
船医はルロを安心させるように言うと、そっとベッドを隠すようにカーテンを引いた。
「もう、目を開けることはない・・・のですね・・・」
カーテンの向こうから聞こえるルロの呟きに船医は苦笑を浮かべた。
「さぁ、甲板の掃除にかかりますよ」
朝食の手伝いをバトたちに任せ、起床後、ラウニは、まだベッドの住人である侍女見習いたちの健康状態を確認すると、彼女らの眠気なんぞ気にせず、元気よく声をかけた。
「うう、乗り物酔いの女王は馬車限定だったんだ」
「限定解除しなくて良かったですよ」
フォニーは目をこすりながら仕事着に着替えだした。その横でネアはさっさとベッドを整え終え、ティマの髪に櫛を入れながら、ずいぶん昔に免許を取った時のことを思い出していた。
「清掃道具はもう準備していますからね。ラウニさん、バトさんに異常なしって報告してきました」
既に着替えを終えたミエルが船室に入ってくると元気よく声をかけた。
「ありがとう、さ、急いで」
ネアたちはラウニに急かされるようにして甲板に上がって行った。
「今日もいい天気」
「帆がイイ感じに風を受けてます」
甲板でラウニは雲一つない空を見上げ、ミエルはパンと張った帆を見上げそれぞれの感想を背伸びしながら口にしていた。
「さ、はじめましょ、お腹もすいてきましたから」
ネアは倉庫から繊維の塊のような木の実を半分に切ったモノ、それはどこまでも椰子の実に似ていて、どことなく椰子の実としては違和感があるモノであったが、彼女はそんな事は気にしないと甲板清掃の初日に心に決めていた。違和感があろうがなかろうが、清掃のしんどさに違和感がなかったからである。
「嬢ちゃんたち、今日もありがとうな」
「こうでもしないと、身体が鈍ってしまいますから」
「これも良い経験だよ」
「きれいだと、気持ちいい・・・です」
既に甲板清掃をはじめていた船員たちが笑顔でネアたちに声をかけてくると、彼女らは元気よく応えいた。
「陸に残してきた娘もアレぐらいなんだろうなー」
そんなネアたちを見て船員の1人が陸に残してきた家族の事を思ってポツリと呟いた。
「そうだな、無事に戻ることが何よりの土産だぜ」
彼より少し年嵩の船員が寂しそうにしている船員の肩をポンと叩いた。
「おはようございます。朝ごはんは、一日の活力の源ですよ」
食堂でバトがにこやかに並ぶ船員たちのトレイに朝食をよそいながら笑みを浮かべていた。
「おう、おはよう」
バトから給仕を受けた船員たちはどこか嬉しそうな、恥ずかしそうな表情を浮かべてテーブルについていた。
「エルフ族のお嬢さんに給仕てもらえるなんて、長年船に乗ってきたが、初めてだ」
「ああ、余程の客船じゃない限り、そんなことはありゃしねぇからな」
船員たちはバトの姿を眺めながら、鼻の下を伸ばしていた。
「バト・・・」
そんなバトを横目で見ているアリエラは心中に戸惑いの感情が質の悪いデキモノをかきむしった後のように徐々に広がっていくのを感じていた。シモネタを口にしないと死んでしまう呪いにかかっているのではないかと思わせるバトが乗船してから一言もシモネタを口にせず、多くの人々がエルフ族に抱くイメージのままに振舞っているのである、バトの常日頃の言動を知っているアリエラは心中穏やかではなかった。
「バト、どこか具合が悪いの? 」
アリエラは小声でバトに尋ねた。
「いいえ、とても調子がいいぐらいよ」
バトはどこかのお姫様を思わせるような笑顔で彼女に答えた。
「おかしいよ」
「憑かれましたか」
バトのあまりの変わりようにカイもクゥも戸惑っていた。
「疲れてなんていませんよ、体調は完璧です。勿論、海の悪霊なんかにも憑かれてませんからね」
バトはにっこりと彼女らに答えた。そのあまりにも変化にそこに居た3人は互いに顔を見合わせた。
「バトがおかしいの・・・ですか・・・、あの人がおかしくなかったことがありましたか・・・」
ベッドの上に横たわるルロにアリエラがバトの変わりようについて尋ねていた。
「ルロが一番、バトとの付き合いが長いでしょ」
アリエラは血色の失せた顔で得ずいているルロにぐっと顔を近づけた。
「あの人は、極端なんです・・・、ここだけの話・・・、一生、秘密は守れますか。守れなかったら、私は一生バトから恨まれることになります・・・」
ルロはリバース臭のする息をしながらアリエラをじっと見つめた。
「ええ、守ります。貴女たちからすると真人の一生なんて短いものですからね」
アリエラの答えにルロは少し表情を暗くすると、暫く考えてから小さな声で話し出した。
「寂しい事を言わないで・・・ください。長生きする種族でも事故や病気であっという間に死ぬのは真人とかわりません。・・・バトはエルフ族が抱える問題の解決の一つとして、シモエルフになったのです・・・」
「エルフ族が抱える問題? 」
アリエラはルロの口にした言葉を繰り返して首を傾げた。
「エルフ族は種族の特性・・・として、真人から見ると美しい姿をしています。・・・しかも、その姿はある一定の年齢から長い寿命が尽きるまでそんなに・・・変わりません。真人の女性としてどう感じます・・・か? 」
ルロは吐き気に耐えながら切れぎれにアリエラに問いかけた。彼女の問いにアリエラは少し考えてから小さな声を出した。
「羨ましい・・・かな」
「そうです。・・・羨ましいと思われるんです。いつまでも初恋の人の姿をしていられる、それがエルフ族で・・・す。その羨ましいという感情は、いつ・・・のまにか、嫉妬に変わるんです。他の種族とともに生活するエルフ族はいつも嫉妬の的に・・・される・・・のです。この事は、彼女が酔っぱらった時に聞きました・・・」
ルロはアリエラの答えに頷くと小さな声で続けた。
「確かに羨ましいと思うけど、妬ましいなんて思ったことはないよ。寿命とか、姿とかどうしようもない事だよ」
「その言葉、嬉しいです。バトも喜ぶと思います・・・よ。でも、言わない方が良いと思います。・・・アリエラ、貴女は未婚のエルフ族、特に女性を見て・・・、何か感じませんでしたか・・・」
「え、・・・」
ルロの問いかけにアリエラは顎に指をかけ暫く考えると、言いにくそうに口を開いた。
「私が知っているのは、エルマさん、剣精様・・・、どっちも灰汁が強い? 」
「・・・そのとおりです。意識しているのか、・・・、彼女らは敢えて灰汁を強くして、真人の男たちから見向きされないようにしていると思うの・・・です。嫉妬にさらされないため、今のバトは、ひょっとすると本来の姿かも知れません・・・」
「そんなことを・・・」
アリエラはルロの答えを聞いて手を口に当てて言葉を詰まらせた。
「バトが・・・言ったわけではありませんが、シモエルフは真の姿ではない・・・かもしれません」
「無理をして、シモエルフを演じているのかしら、そうだとすると、悲しいことだよね」
アリエラがバトの事を思って悲しそうな表情を浮かべるのを見たルロは首を横に振った。
「それは、絶対にあり得ません。これは断言できます。あれは、シモエルフを楽しんでいます」
ルロはこの事だけは力強く彼女に訴えると、アリエラは暫く考えてから腑に落ちたように大きく頷いた。
「坊ちゃん、稽古に行きましょうぜ」
船室のあちこちの掃除を終えたヘルムに同じように一仕事を終えたハチが剣を振る仕草をしながら稽古に誘ってきた。
「そうだね。さぼるとあっという間に錆びてくる」
「なんせ、海の上でやすからね」
ヘルムとハチが他愛のないことを話しながら船室に戻る時、船内を見回っていたブレンとであった。
「船長、お疲れさまです」
「お疲れでやんす」
ヘルムとハチはにこやかにブレンに挨拶をした。ブレンはそれに軽く返しながら、ハチを見て目を見開いた。
「あ、あな・・・」
何かを言おうとするブレンにハチは少し困った表情で口の前に指で「それ以上言うな」のサインを示した。
「そう・・・だな。自分の船だと思って自由にしていってくれ」
何かを察したブレンはそう言うと、ハチと目を合わさずにその場から去って行った。
「? 」
ヘルムは船長の態度に少し疑問を感じたが、ハチが稽古に行くのを急かしたので、その疑問についてはお蔵入りすることになってしまった。
船の上の穏やかなような、そうでもないように日々は過ぎ、海を渡る風号は朝早く王都の港に着いた。船から荷物を桟橋に卸し終えて暫くすると、荷馬車が3台やって来た。
「レヒテ様、お待ちしておりました。日程とおりに到着されるとは驚きました。噂には聞いておりましたが、流石「海を渡る風号」と申すところでしょうね」
荷馬車とともに現れた男は、レヒテを見つけると恭しく頭を下げた。
「ケフの王都連絡管、ノバク・フォストと申します。これから、宿泊される宿へご案内させて頂きます」
「素早い手配に礼を言います。では、案内を頼みます」
レヒテは暴れ姫の二つ名を思い起こすさせることもなく、ノバクと挨拶を交わした。
「バトさんもだけど、お嬢も船に乗ってから変わりましたよね」
お淑やかに振舞うレヒテを見てネアはラウニにそっと囁いた。
「お嬢も場と言うものを心得ておられるのです。私たちも恥ずかしくない行動をしなくてはいけませんね」
ラウニは見事に郷主の娘として振舞うレヒテを眩しそうに見ながら答えた。
「お嬢もお姫様みたい・・・、でも少し寂しいです」
そんなレヒテを見ながらティマは複雑な表情を浮かべていた。
「揺れない大地、足元はこれじゃないとダメです」
そんな中、乗船中ずっと船酔いに苦しめられたルロは久しぶりの大地を上等な酒を味わうように踏みしめていた。
「船の中の無様は許されますが、王都での無様は許されませんよ」
バトはノバクとともに宿に向けて歩き出すレヒテから目をそらすことなく、はしゃぐルロに呟いた。
「わ、分かってます」
バトの言葉に、ルロは気まずそうに答えるとレヒテの後を追うように歩き出した。
「レヒテ様は、随分無理されています。だから、皆さん、そっとしておいてあげてくださいね。レヒテ様の愚痴やら文句は私が引き受けますから」
レヒテの変りぶりに感心しているネアたちにルシアがそっと声をかけた。
「そのような事は我々の仕事・・・」
「いいえ、郷主の娘としては、悲しいけれど使用人に本音は話せません。王都にいる限りですけどね。私が付き添いとして来たのも、その事が少し関係しているんですよ」
ルシアは少し寂しそうに笑みを浮かべた。
「うちは、こんなの何か嫌だなー、全然ケフらしくないよ。仕方ないけど・・・」
どことなくレヒテに対して他人行儀になっている自分たちのことにフォニーが寂しげに文句を言った。
「・・・それは、レヒテ様に次いで私が痛いほど思い知っています。この手の痛みは、どこまで行っても痛いだけです」
寂しげにしているネアたちにバトはそっと近づいて呟くと、何食わぬ顔でレヒテの後を追って行った。
「無理しているんだ」
「少し、地が出ているみたいでしたけど」
シモモードを封印しているバトを見送りながらカイとクゥは納得したかのように言葉を交わしていた。
「あのバトがあそこまでやっているんです。私たちも負けていられませんよ。でも、ティマちゃんは可愛いままでいいからね」
アリエラは自らに喝をいれるようにネアたちに告げるとバトの後追うようにその場から去って行った。
「このままだと私たちが置いてけ堀になってしまいます。さ、急ぎましょう」
様々な事の変化を完全に受け入れられていないネアたちにラウニが行動を促した。
【一番ヤバいのは、アリエラさんだな】
ネアはアリエラの背中を見て少しばかりの不安を感じながらも、自分たちの王都滞在間の住処となる宿に向けて足を踏み出した。
「鯨の溜息亭へようこそお越しいただき、感謝の極みです」
若い真人の宿主は満面の笑みを浮かべ、レヒテたちを歓迎した。ケフとヤヅの一行が着いた宿は宿主の歓迎を鼻先で笑っているような質素すぎる木賃宿であった。
「お化け出ないよね」
その宿の佇まいにフォニーは小声でネアに聞いてきた。
「私は、お化けについては何にも知りませんよ」
ネアは心配そうなフォニーにつまらなそうに答えた。
「なに、それ酷いよ」
「じゃ、何かいますって、言えばよかったのですか。それも気に入らないでしょ。何もないと言って、何かあったら、それもダメでしょ。私が答えられるのは知らない、分からないしかないんです」
ネアの答え方にムッとしているフォニーにネアは冷静に答えた。その態度がまた気に入らなかったのかフォニーはむすっとふくれっ面になった。
「長年住んでいるけど、お化けなんて滅多に出ないよ。一月に1回くらいかな。だから、心配いらないよ」
ネアとフォニーの会話に割り込んできたのは、歳の頃15・6歳ぐらいの褐色の肌に明るい栗色の髪をした少女であった。
「月に一回は出るんじゃないですか。というか、どちら様で・・・」
そんな少女にネアは思わず突っ込んでいた。
「私は鯨の溜息亭の前の宿主の娘、「丸窓」のリナ、で、あれが番頭から宿主に進化した「鵞ペン」のダブ。宿の事とこの辺りのことなら私に聞いてね」
リナが親し気にネアたちに話しかけているのにダブは気づくと、さっと表情をきつくした。
「お嬢様、お客様に失礼な事はしてはいけないと、あれほど言っておりますのに・・・」
ダブはまだ何か言いたそうなリナの手を取ると
「我々は受付に控えております。お部屋はこの宿はケフの郷のレヒテ様ご一行に貸しきりになっておりますので、一応部屋の割り当てはさせて頂きましたが、ご自由にお使いください」
と言い残して宿の中に入って行った。
「ケフの郷に持って来いの良い感じのお宿でしょ。こんな見てくれの木賃宿ですが、立地はお勉強会の会場にも市場にも近いので最高ですよ。それに格式ばらないざっくばらんな宿ですので、ゆっくりくつろげますよ」
ノバクはニコニコしながらレヒテに宿の説明をした。
「その気遣いに感謝します。では、皆、宿に入りましょう。ハチたちは荷物を運び入れてくださいね。ミエル、夕食はいつもと同じ時間で、献立に凝ることはありませんよ」
レヒテは宿の前にずらっと並んでいる一行ににこやかに指示を出すとルシアを引き連れて宿の中に入って行った。
「思ったより、暗くないし、綺麗で気持ちいいね」
案内された大部屋のベッドに腰かけたフォニーが周りを見回して満足そうに呟いた。
「古いですが、綺麗に清掃されていますね」
ネアは清潔なシーツを撫でながら関心たように呟いた。
「廊下も明るかったよ。おトイレもきれいだった・・・です」
トイレにミエルに連れてもらっていたティマが部屋に戻るなり自分のベッドにダイブしていた。
「今日は、携行食を主にお食事を作りますね。携行食と言っても帰りまで持たすと味がもっと悪くなりますからね」
ティマを送り届けたミエルがネアたちに声をかけると自分の荷物からエプロンを取り出すと、厨房の方に駆けて行った。
「私たちも、ラゴで習ったことを実践しましょう。行きますよ」
「言われなくても行くよ」
ラウニの呼びかけにフォニーが答えると同時に部屋から飛び出して行った。
「行かない、って選択肢はないな」
「・・・です」
ネアはティマの顔を見て苦笑すると、ティマも肩をすくめて答えた。2人して小さなため息をつくと部屋から飛び出して行った。
「レヒテ様、私と2人きりの時は、いつもの暴れ姫でいいんですよ」
ゆっくりとした部屋着に着替えたレヒテに同じように部屋着に着替えたルシアがそっと話しかけた。
「・・・」
レヒテはルシアの言葉に答えることもなく、小さなドレッサーの前のスツールに腰かけると髪に櫛を入れ整えだした。
「気を使ってくれてありがとうございます。でも、これぐらいで音を上げるわけにはいかないのです。ケフを貶めることは何が何でも避けなくてはならないから」
ルシアに返すレヒテの言葉にはどこか力が感じられなかった。
「船に乗ってから、いえ、お館を出る前からずっとレヒテ様は自分を殺しています。抑えることは大切ですが、いつもそんな状態だと、切れちゃいます。紐をピーンと張りすぎると切れるのと同じ、時には緩めないと、張り詰めたままお勉強会の途中で潰れたら、それこそ、ケフの名を貶めることになります。そうならないためにも、私が付き添い出来ているのです。私たちはお友達、私はレヒテ様をお姉さまのように思っているんです。かわいい妹分のためにも力を抜くときは抜いてください」
ルシアは生気のない表情のレヒテに懸命に訴えかけた。そんなルシアの言葉を聞いているうちにレヒテの両目から涙がこぼれてきた。
「ルシアちゃん、ありがとう。この、暴れ姫、可愛い妹分のためにも、抜くときは抜いて行くよ。もー、疲れたよー」
レヒテは一言叫ぶと、己のベッドに飛び込むと俯けになり、顔面を枕に押し当てて、肩を震わせ出した。ルシアの言葉で、今まで我慢してきたモノがあふれだし、止めようがなくなった。
「妹分の前では、暴れ姫でいてくださいね」
声を殺して泣きじゃくるレヒテの背中をそっと撫でながらルシアが優しく声をかけた。
「う・・・、うん、もう少しこのままでいさせて」
レヒての感情の爆発が収まるまでルシアは彼女の好きなようにさせていた。ラウニが食事の準備ができたことを伝えに来た時には、何とかレヒテは涙を拭いておすまし顔を作れるようになっていた
王都は行政と商取引の街であるため、庶民が生活している区画は限られています。しかし、務め人が多いため、彼らのための集合住宅などはあちこちにあり、外食産業などが栄えています。
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