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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第20章 将来
279/342

259 台風消滅

日常に戻る、そんな時の気分天下の一助になれば幸いです。

 「いいお湯ねー」

 湯船の中で寛ぐレヒテの周りに、疲れ切った表情のネアたちがお湯の中で生気のない目で遠くの景色を眺めていた。

 「手伝ってあげる」

 この一言のもとに、レヒテはネアたちの脱ぐことのできない毛皮をワシャワシャとペットの犬か猫を洗うように彼女らの身体を遠慮なくブラシや素手でこねくり回したのであった。毛皮と尻尾、若干の骨格の違いを覗けば獣人の身体も真人と変わることなく、これは、同性であれ触られることに不快感やら羞恥を感じる場所もほぼ同じであった。

 「お嬢、酷いです。尻尾の付け根は自分でするって言ったのに・・・」

 フォニーが泣きそうな表情でレヒテに抗議した。

 「ごめんね。尻尾が可愛くてついつい・・・」

 フォニーの抗議にレヒテは頭を掻きながら、笑ってごまかすように小さな舌を出して謝った。

 「家臣のあんなところを無理やり洗うなんて、酷いです。もう、お嫁さんになれないですよ」

 ラウニが目に涙を浮かべ、レヒテに訴えかけた。その表情から彼女は己がしでかしたことがちょっとした悪戯程度で済まないかもしれないと思い、その笑顔が固まってきた。

 「同性だから、お嬢にやらしい事をしてやろうって気がなかったから、コレで済んでいるんですよ。もし、これが普通のお館で、主が男の人だったら・・・、洒落になってませんね」

 レヒテにもみくちゃにされた顔の毛を整えながら、ネアが厳しい口調でレヒテに彼女の蛮行が如何に酷い事かと説明しだした。

 「ネアだって、バトさんたちやカイさん、クゥさんの胸をじっとやらしい目で見ていたじゃないの」

 話題を無理やり変えようと、レヒテはネアの痛い所をついてきたが、ネアはそんなことも想定済みであった様で

 「かっこよくなるための見取り稽古です。大きさが全てではない、形、はり、そしてベストな状態を保っているには隠れた鍛錬があるんです。誰も口にはされていませんが、下着の選択から鍛え方、それら努力の跡を見取っているのです。そして、私も皆に負けないぐらいかっこよくなりたいんです。それと私はお嬢と違って、嫌がる人を無理やり触ったりしません」

 ネアは自分とレヒテが違う事を力説すると、最近洗濯板からレベルアップしつつある己の胸をぐっとそらした。

 「無理やりって・・・、そこまで酷いことした? 」

 「お母ちゃんにしか見られなかったところ、見られた・・・です。尻尾の付け根の裏側まで・・・」

 ティマは目に涙を浮かべてレヒテを睨みつけた。そんなティマにレヒテはただ頭を下げることしかできなかった。

 「あーあ、お嬢、ついに手籠めにしたんですか? 愛のないお触りは暴力だよ。痛いだけでさ、気持ち良くない。愛があれば鞭での一撃も最高に気持いいご褒美にっ」

 気まずそうにしているレヒテの横にタオルで隠すこともせずバトが入ってきていつもの調子で語りだした。そしていつもの調子でルロに桶で殴りつけられ、カポーンといい音を響かせた。

 「もう、ルロのは愛がないから、痛いだけだよ」

 「痛いようにしているんです」

 頭をさすりながらバトが吐き出す言葉にルロは当然の事のように言い返した。

 「ティマちゃんの・・・、大切な所を見て、なおかつ触るなんて、羨ましい・・・、いえ、けしからんことを・・・、主とその家臣と言えども超えてはならぬ一線はありますよ」

 アリエラはそっとティマに近づき、優しく彼女の頭を撫でながらレヒテを非難をこめて睨むように見つめた。

 「え、そんなに酷いことだったの・・・」

 レヒテの顔色が失せて行くのが隣にいたネアには手に取るように分かった。

 「お嬢、ここは我々家臣が日々の感謝を込めて、その御身体を洗って差し上げます」

 「さ、お嬢、こちらへどうぞ」

 「恥ずかしがることはありませんよ」

 その時、示し合わせたように残念トリオがレヒテに声をかけるとその手を引いて洗い場に連れて行った。

 「ち、ちょっと私は郷主の娘・・・」

 「家臣の心のこもったスキンシップですよ」

 「さぁ、我々に全てを任せて」

 まるで哀れな犠牲者に群がるゾンビのようにバトたちはレヒテの身体を押さえつけると、鬼手仏心ならぬ仏手鬼心でレヒテの身体を洗い出した。

 「あ、そこは、ちょっとー」

 「お嬢、我々に任せてくださいね」

 「さぁ、力を抜いて」

 バトたちは口では優しく、手先は怪しく、そして至福の笑みを浮かべながら悲鳴を上げるレヒテを洗い上げた。

 「郷主の娘に対して、あんなことができるなんて」

 「ケフ、恐るべし」

 悲鳴を上げるレヒテを遠巻きに見ていたカイとクゥは互いに見合った。

 「私たちにはできない事ね」

 「それ以前に、する理由がありません」

 彼女らは自分たちが、あのような行動をとらなくて良いし、そんな可能性はないと互いに言い聞かせた。


 「酷いよ・・・」

 身体を洗われ、湯船に浸けられたレヒテは泣きそうな表情を浮かべていた。

 「それを私たちにしたんですよ。尻尾の付け根や裏側まで無理やり洗ったのはお嬢ですよ。秘密基地が蹂躙された者の気持ち、お分かりいただけたと思います」

 泣きそうになっているレヒテに湯船に腰を掛け身体を冷やしているネアがそっと声をかけた。

 「いろんな所、洗われた・・・」

 「嫌がる私のお尻を洗ったのはお嬢ですよ。しかもブラシで、明日の朝、トイレで苦しいことになるかも知れません。でも、お嬢はちゃんとタオルや手で洗ってもらってますから、そこは安心して下さいね」

 ネアの言葉にレヒテは首を横に大きく振ると、ネアを睨みつけた。

 「そんな問題じゃないの。家臣が主に対して無礼な事をしたのよ。そこで呑気にしているバトたちが、そして、ネアは黙ってそれを見過ごした。私を見捨てたの」

 ネアに掴みかからんばかりの勢いで言い放つと、レヒテはばね仕掛けのように湯船の中で立ち上がった。

 「バト、ルロ、アリエラ、貴女たちの不敬な行為をお父様に報告します」

 湯船の中でのほほんと脱力している残念トリオを睨みつけた。

 「あれ?、我々はお嬢のお身体を丁寧にお洗いしただけですよ。大きな郷の姫様となると自らお身体を洗われることはありませんし、用を足した後も拭いたりする後始末も家来がしていますよ。王都にお行きになられるなら、慣れて頂かないと」

 バトはレヒテの怒りにたいして全く意に介していないようににっこりして返した。

 「お嬢、そのお身体を洗うなんてことは下賤な我々に任せて頂いていいんですよ」

 「お尻もちゃんとお拭きいたしますから」

 ルロもアリエラもバトと同じように何事もないように淡々とレヒテに返した。

 「と、いう事ですよ。これからは、お風呂の時間も我々下賤の者は、お嬢の時間に合わせて、被らないようにしないといけませんね。さ、お風呂から退出しましょう。お嬢、失礼いたします」

 ネアはそう言うと湯船の外で身体を冷やしているラウニたちに声をかけ、深々とレヒテに一礼するとさっさと浴場から出て行った。

 「ネ、ネア。ちょ、ちょっと」

 レヒテは出て行くネアの後ろ姿に手を伸ばした。そして、残っている残念トリオに目を向けた。彼女らは一礼するとネアたちに続いて出て行った。

 「お着替えもお任せください」

 ルロが残されたレヒテに一礼するとそのまま浴場から出て行った。

 「な、なんで・・・」

 レヒテはネアたちの言動に戸惑いを感じていた。常にネアは否定するが、レヒテにとってネアたちは友、家族であるという感覚でいた。立場が違うという事も知っているし、理解しているつもりだった。ネアたちを洗った時、彼女らが真剣に抵抗しなかった、できなかったのは自分が郷主の娘であり、彼女らの主であることだと今更ながらに気付いた。

 「レヒテ様、あまりにもラウニさんたちに甘えすぎですよ」

 ちょっと落ち込んでいるレヒテにそっとルシアが声をかけてきた。しかし、レヒテは俯いて湯の中に沈み込んでいくような状態になっていた。

 「私も、カイさん、クゥさんに対してお友達、お姉さんみたいに思ってますけど、それは心の中だけです。人には言わないし、カイさん、クゥさんにも言いません。どんなに頑張っても、立場から離れられないんです。でも、レヒテ様のお考えはとても好きです。でも、それは心の中で留めている方が良いと思います」

 ルシアはレヒテの横にそっと移動すると俯いた彼女の顔を覗きこむようにした。

 「うん、分かってる、でも、ついつい・・・」

 「その気持ちは分かります。私たちは、彼女たちと違うんです。どんなに頑張っても同じ場所に立つことはできないんです。ネアさんたちは前は商人の子と奉公人という差はありましたけど、平民同士でお友達になれました。でも、私は郷主の娘になったから、きっと今までとは違うお付き合いになると思います。お父様はこのことは、郷主の娘として受け入れなきゃならないことだって・・・」

 レヒテに説明しているルシアの目にいつしか涙が浮かんでいた。

 「そんなに浸かっているとのぼせますよ」

 しんみりしているルシアとレヒテをカイとクゥが湯船から引きずり上げ、身体を洗うために使う椅子に腰かけさせた。

 「失礼しました。でも、のぼせると大変な事になりますから」

 「我々は、お先に上がります」

 カイとクゥはルシアとレヒテに頭を下げると浴場から出て行った。そんな彼女らの背中を見送るルシアの目には涙と一緒に寂しさも溢れていた。

 「背負ってるものが違うってことなんだよね。私もいっつも言われているよ。好きで背負っているわけじゃないんだけど」

 レヒテは顔を伏せたまま小さな声を出した。そこには、いつもの快活すぎる暴れ姫の姿はなかった。そこにいたのはは、孤独感に襲われている歳相応の少女であった。

 「私とルシアちゃんも、郷の事で揉めたら、お友達でいられなくなる。私もルシアちゃんも郷の民が背中を見てるから・・・」

 「そうですよね・・・」

 温かな浴場の中、様々なモノを背負わされた少女たちは互いに手を取り、背負ったモノの重さから来る辛さを分かち合った。


 「なかなか出てこない・・・です」

 最近はそんなに手伝ってもらわなくても着替えることができるようになったティマが脱衣場にある藤で編まれた椅子に腰を掛けてレヒテを待ちながら呟いた。

 「ケフは、異常なまでに主と家臣の距離が近いですから、私たちも慣れてしまって、王都でも同じような事をすれば、ケフの郷に泥を塗ることになりますから・・・、気をつけないといけないです」

 「全くネアの言うとおりです。そして、お嬢よりも危険なのが、アナタです。バト、王都にいる間は、シモはなしです。アナタがシモに走ったら、ケフの郷がお下品極まりない郷と思われてしまうんです」

 ルロは、ビシッとバトに指を刺し、睨み殺す勢いで彼女を見つめた。

 「そ、そこは大丈夫だよう・・・」

 バトが後ずさりながら答えると、いつの間にかヒルカがバトの背後に立っており、彼女の退路を断っていた。

 「アナタ一人のおかげで、エルフ族が馬鹿にされたり、軽蔑されたりしたら、エルフ族全体からどんな目に遭わされるかよーく考えてね」

 ヒルカはバトに喰らいつくぐらい顔を近づけ、にっこりしながら恐ろしい事を口にした。

 「だ、大丈夫です・・・」

 「そうだといいわね。私も知り合いのエルフ族が無残な目に遭うところを見たくないから」

 ヒルカは注意と言うより、警告をバトに与えるとそっとその場から立ち去って行った。

 「バトさん、大丈夫? 」

 ヒルカが去っても表情が引きつっているバトにフォニーが心配そうに声をかけた。

 「け、結構、キツイかも・・・」

 バトの表情にはいつものにこやかさは無く、そこには死地に赴く兵士のような表情が滲み出ていた。

 「・・・頑張ってね、私は貴女の弁護はできないと思うから」

 ルロはそう言うとそっとバトの肩を叩いた。

 「私、貴女の事、忘れないから」

 アリエラは既にバトの行く末が決まっているような口調で、悲しげな表情で語りかけると彼女の手をぎゅっと握りしめた。

 「ち、ちょっと、私、ちゃんと弁えているから、まるで、死ぬことが決まっているみたいじゃない」

 バトは2人に対して納得いかないと言い返すと

 「ラウニちゃんたちは、違うよね」

 と、ラウニたちを見たが、ネアをはじめ彼女らはあからさまにバトから視線をずらした。

 「え、皆、私がエルフ族から粛清されるって思ってるの・・・」

 バトは近くにいたラウニに詰め寄った。

 「何かやらかして逮捕されても、縛り方が今一つとか、言ってそう・・・」

 ネアは心に何気に浮かんだ言葉を思わず口にしていた。

 「あ、それはあり得ます」

 そんなネアの独り言にラウニがこれも思わず、心の言葉を吐きだしてしまった。

 「皆、酷いよ・・・」

 バトはそう言うとその場に座り込んでしまい、暫く俯いて何かを堪えているようであったが、いきなり弾かれたように立ち上がった。

 「シモの道は茨の道なのよ。これぐらいの痛みはご褒美と思わなきゃ。シモを我慢するのも一つのプレイだと思えば、よっしゃーっ」

 バトは己の両手で頬叩くと気合を入れた。そしてそこにあったのはいつものシモエルフの顔であった。

 「やっぱり極めることは、簡単には行かないものなんだなー。事の良し悪しは別として、人として凄いと思う」

 バトの逞しさにネアは思わず彼女なりの称賛の言葉を口にしていた。

 「その気合を別の方向に行かせたらいいのに・・・」

 ラウニは当然の事を口にすると、その場にいた全員が大きく頷いていた。


 「ルシアちゃん、私ってネアたちに甘えすぎなのかな・・・」

 ベッドに入り、眠れそうにないレヒテは同室のルシアに小声で尋ねた。

 「レヒテ様、私も人には言えませんよ。ただ、仕えている者もレヒテ様に甘えていますね。これは、カイとクゥも同じですけど、近すぎるんですよね」

 ルシアは歳に合わない冷静な答えをレヒテに返してきた。

 「様はいらない。レヒテでいいよ。公の場で無ければお互い同じ立場の友達としていたいの。お館の人たちと」

 「レヒテさんでいいかしら。そうですね。公の場じゃなければお友達としてお付き合いしてください。お館の人たちとはお友達になれないんですから、そしてネアさんたちとも・・・、寂しすぎますから、せめて・・・」

 ルシアは暗い天井を見上げたまま小さな声でレヒテに答えた。小さな声であったが静かすぎる部屋では響く渡るようにレヒテには感じられた。レヒテには、ルシアの言ったお友達と言う言葉が心に突き刺さった。

 「うん、お友達だよね」

 レヒテはルシアに確認するように言うと、そっと目を閉じた。


 「もっと、静かに歩くっ」

 マーカのレヒテに対する行儀作法の指導は容赦がなかった。いつものように逃げ出そうにもルシアがともに指導を受けている手前、それもできなかった。ネアたちに助けを求めようとしても、彼女らは使用人としての態度を崩すことなく、やんわりと助けを求めるレヒテの手を払い退けた。そんな中、普通に歩くと言う課題で再三マーカに注意を受けていた。

 「これが、私の歩き方・・・」

 レヒテは思わずマーカに言い返したが、最後まで言い返すことをマーカは許さなかった。

 「貴女の歩き方は王都では通じません。ここは田舎の宿ですが、王都の広間であるのです。ここでできなければ、どこに行ってもできません。貴女が恥をかくだけでなく、ケフの郷、貴女のお友達であるルシア様も恥をかくのです。互いに厳しさを保つため、あの残念トリオもネアさんたちも敢えてレヒテ様から距離をとっているんです。いいですかあの子たちも郷を背負っているんです。カイとクゥも大好きなルシア様から距離をとっているんですよ」

 マーカは一気に正論をレヒテに浴びせかけた。マーカの正論と勢いにレヒテは何も言うことができず、ただ黙々と行儀作法の指導を受けるしかなかった。それと同時にレヒテは、 【残念トリオってもう認知されているんだ】と、妙な事に感心をしていたりした。


 「なーんか沈んだ空気が漂ってるねー」

 整体のアルバイトに来たアーシャが宿の空気を感じて思わずシャルにその感想を漏らした。

 「今回はね、お休みじゃなくて、お勉強会参加のための合宿みたいなものなのよ。暴れ姫が今や跡形無し、残念さんたちも、カイさん、クゥさんも、ネアちゃんたち、ティマちゃんまでがほら・・・」

 シャルが視線で示した先には、真っ白のテーブルクロスの上にきちんと食器を置いて、給仕の訓練をしている残念トリオ、只管にレヒテの靴を磨き、火熨斗(ひのし)をブラウスかけてしわを取り、ドレスの汚れを落としたり、繕いをしているネアたちの姿、屋外にはレイシー相手に稽古をしているカイとクゥの姿があった。

 「え、これって・・・」

 「合宿か演習よ。ケフやヤヅがあまりにも普通とされる郷からかけ離れているから、私としてはいい意味でかけ離れていると思うんだけど、王都では一般的でないからね」

 シャルは肩をすくめてアーシャに説明していると、宿の扉が開いて身体に比して巨大なリュックサックを背負ったビブが入ってきた。

 「シャルお姉ちゃん、お肉買ってきたよ」

 「ありがと、じゃ、それ厨房に持って行ってね。今夜はビブちゃんのおかげで美味しいお肉が食べられるよ」

 シャルは自慢そうにおつかいを終えたことを報告するビブを笑顔で労った。

 「ビブちゃんまで・・・」

 その光景にアーシャは目を丸くしていた。

 「おつかいなら、私が行くよ」

 「これは、ビブちゃんの訓練なの。レイシーさん言うところじゃ、来年あたりにはビブちゃんはお姉ちゃんになっているらしいから」

 思わず、ビブの事を心配して口を出したアーシャをシャルは止め、彼女が姉になるために訓練していることを告げた。

 「レイシーさんが・・・」

 宿の外でクールにカイとクゥに稽古をつけている黒い影を見ながらアーシャは微妙な表情を浮かべた。

 「できる女は違うみたい」

 「これも、大地の気を吸収しているからなのかな・・・」

 アーシャは整体をしている時のレイシーの言葉を思い出しながら、明後日の方向に足を踏み出そうとしていた。


 


ケフ、ヤヅ、ミオウなどの北部にある郷は元より貧しく、食うためになりふり構っていられない、という土壌から、種族ごとの特性を発揮して郷を作り上げてきました。だから、穢れた身と言えども郷の貴重な戦力としてみなして来ました。南部も同じように貧しい郷が多いですが、少ない食い扶持を穢れの民に持って行かれるという考えから彼らを排斥するようになりました。

最初のボタンの掛け違えが地方の特色を出している状態と言えます。

ただ、ターレの大陸の王が権力を及ぼす範囲内ではどこもうっすらと穢れに対する排斥の心情が存在しています。それがほとんどない北部は異様であるとも言えます。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

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