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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第19章 組織
268/342

249 追跡

世間は何かと暗いニュースばかりですが、このお話が気晴らしのお役に立てたなら、幸いです。

 ウースヤの町に住むことになる人は、かつてこの町が深夜、いきなり野盗に押し込まれ多くの命が失われたことを耳にすることであろう。この理不尽な暴力は寝入った商家を家族、奉公人とわず皆殺しにして持てるだけの財を奪い、また民家に侵入し家人を殺した後になけなしの金目の物すら奪い取って行った。これらの蛮行が深夜から夜明けまでの間に町の至る所で実行された。


 「それなりに手に入ったろ」

 街から随分と離れた平地に広がる森の中でカイゼル髭の男は少しばかり満足げに集まった傭兵たちに声をかけた。

 「ここ最近では一番の儲けだ」

 「暫くは遊んで暮らせるぜ」

 街を襲撃した傭兵たちはそれぞれ収穫があったらしく、その表情は満足やら喜びにあふれていた。

 「こんなモノはまだまだ小手調べだ。明日はあれより南の町でゆっくり身体を休めろ。次の指示は町に入る前に伝える」

 カイゼル髭の男はそう言い残すと彼らの前ら去って行った。


 「食いっばぐれた奴らは、簡単に躍らすことができる」

 勝手に集まった烏合の衆にちょっとした方向性を示してやれば容易く扱うことができる。カイゼル髭の男は、彼が示唆しただけで傭兵たちが動いたことに満足を覚えていた。

 「この郷を乗っ取ることもできるか・・・、この「屁理屈」のディッセル、このまま朽ち果てる運命ではなかった」

 一口で傭兵と言ってもその働き方は様々ある。現在、エリグ家の住み込み家政婦をしているケーラのような後方支援に任ずるもの、ジーエイ警備のように護衛に特化したもの等枚挙の暇がなく、何を持って傭兵とするかは議論が分かれる所である、これは偏に傭兵として認められるための公的な資格などが存在しないからである。このディッセルなる男は複数の傭兵たちを指揮する、現場監督のような存在であった。それなりの集団が動く戦が彼の稼ぎ場所だった。それが、最近、カクラの町で反乱があったがそれすらあっという間に鎮圧され、コデルの郷やこの周辺に大部隊を率いて戦うような場は暫く存在しないと彼は考えていた。

 「踊らされたから、今度は踊らしてやるさ」

 英雄による野盗に支配された街の解放や、領主、穢れの民の排除が行われている、よって荒事の量が増えるという噂を耳にした彼はコデルで大きな内乱があると読み、いくつもの郷を越え、路銀を使いコデルにやって来たが彼が予想していた状況は発生しなかった。年齢的にもキツクなりだした傭兵稼業の最後に大きな仕事を手掛けたかった彼の夢は潰えてしまった。しかし、酒場で耳にした根も葉もない噂に彼は賭けてみた。そして、その賭けは良い方向に進んでいるように見えた。今の所は。


 「ウースヤの町が何者かに襲撃され、死傷者多数発生しております」

 ナトロの執務室にグレイのマントを羽織った男が現れると深く一礼してから口を開いた。

 「穢れどもか、カクラの弔い合戦でも挑んできたか。下等生物が」

 男の言葉にナトロは立ち上がり、大声をあげた。

 「ナトロ様、襲った者は真人のようです」

 ナトロは男の言葉を聞いて、それが一瞬理解できなかった。

 「・・・野盗か、町の騎士団は何をしていた」

 「そのようです。奴ら盗み、殺しはしたものの、女子供を嬲ることなく仕事を終えると速やかに立ち去っております。町の騎士団は夜であったことから初動が遅れ、野盗に対抗したものの、たった8名では、何もできず、彼らも殺害されております」

 グレイのマントの男は激昂しそうになるナトロを宥めながらウースヤの町で起こったことについて報告していった。

 「糞、騎士団はどこもその程度だったな。騎士団はあてにならんな・・・。彗星を差し向けようにもヤツは北の方に行っちまってる。・・・アイツらを使うしかないのか」

 ナトロはグランドで大声を上げながら素振りを繰り返しいるヨーゼンたちを見て渋い表情になった。

 「目撃証言からすると、襲撃者は30名程度、傭兵であったとあります。この勢力に8名の騎士団では荷が重すぎると愚考しております」

 新たな情報を聞かされてナトロは顔をしかめた。

 「潰すべき穢れどもがいなくなって、職にあぶれたか。穢れどもの次は傭兵も潰すか」

 ナトロはぐっと拳を握り込みながら、グランドで大声を上げている連中を睨むように見つめた。

 「ヨーゼンを呼べ、ヤツのお手並みを見せてもらう」

 ナトロは何かを決意したかのようにグレイのマントの男に命じた。

 「承知いたしました」

 男は現れた時と同じように唐突にその場から立ち去って行った。


 「出撃か? 」

 夕日が射し込むナトロの執務室でヨーゼンはナトロの前に気をつけの姿勢のまま挨拶もなしに尋ねてきた。

 「ウースヤの町が昨夜、野盗に襲われた。野盗と言うか傭兵崩れだな。お前には奴らを捕縛もしくは永久に安全化してもらいたい。出資者たちには俺から承諾を得る。こいつらが味を占めて郷を越えて悪さをしでかすことも十分に考えられるからな」

 「了解した。今夜、ここを発つ」

 「おい、もう日が暮れるぞ」

 「今夜発つ」

 ヨーゼンはそう言うとくるりと回れ右をして出て行った。

 「マジでやるつもりか。アイツ・・・」

 ナトロは呆れたような声を上げた。

 「マジか・・・」

 ヨーゼンがナトロの執務室から出て行ってから暫くするとフル装備をした正義と秩序の実行隊員がグランドに整列しているのを見て目を丸くした。

 「準備完了、これより出発する。ウースヤの町に行き、その後周辺を探査し、賊を発見次第、安全化する。以上」

 執務室の前でヨーゼンは大声でそれだけ言うとクルリと背を向けて待たせている隊員の元へ急ぐでもなく歩いて行った。

 「全員準備完了」

 「よし、それではこれよりウースヤに向け出発する。行進中、警戒は怠るな。出発」

 正義と秩序の実行隊員たちは馬も荷車も使わず、それぞれが巨大な背嚢を背負って日が落ちた街道を歩きだして行った。

 「マジで準備しやがった。真面目な馬鹿は面倒だからな。目を離すな」

 ナトロは、館から出て行く正義と秩序の実行隊員たちを見送りながら低い声を発した。

 「承知」

 部屋の隅から低い声がすると少し空気が動いた気配がした。


 「久しぶりの女だったぜ」

 次の獲物と決めたチッシャの町の酒場で昨夜の稼ぎ少しばかり懐が潤っている傭兵が1人で飲んでいるディッセルに嬉しそうな表情で話しかけてきた。

 「そりゃ良かった。あまり羽振りが良すぎると足が着くぞ。多分、コデルの都には俺たちがやったことが報告されているだろうからな。早くとも明日には討伐隊が出るかも知れない。ここでの仕事は明日の夜だ。仕事の後は速やかにずらかる。集合は中央の広場。昨日の連中にだけ伝えろ。もし、追手の影が見えたら各自で逃げろ。他のヤツの事を気にしている暇はないと、伝えておけ」

 ディッセルは声をかけてきた傭兵に小銀貨一枚を投げると自分の分の勘定をすませて店から出て行った。

 「やはり烏合の衆だな。これは早いうちに足が着くな。その前にずらかるか、後一仕事か二仕事が限界だな」

 その日の宿に向かいながらディッセルは独り言を呟いていた。ここでの仕事を終えたら、暫く雲隠れする必要があると彼は考えていた。できれば、次の仕事で遠くの郷へ行くための路銀を確保したかった。もう一花咲かせるために。


 「人を斬り慣れているな」

 教会の礼拝堂に並べられた死体について刀傷を確認しながらヨーゼンは呟いていた。深夜にたたき起こされた堂守の老人は不機嫌な表情を隠すこともしてないかった。

 「さっさとやってくれ」

 老人は欠伸をかみ殺すことも、不機嫌を隠すことなくヨーゼンに向かって言い放った。しかし、ヨーゼンの耳に彼の言葉一言も届いていなかった。

 「傭兵と言う線で間違いないかと」

 「そうだな、これから聞き込みだ」

 ヨーゼンは深夜であるにもかがらず当然のようにマースに命令を下した。

 「おい、あんたら、今、何時だと思っているんだ」

 老人はあまりにも非常識な時間に行動しようとするヨーゼンに抗議の声を上げた。

 「仕事の邪魔をするな」

 ヨーゼンは一言老人を叱りつけると、そのまま町へと繰り出して行った。


 「開けろっ」

 正義と秩序の実行隊員は、民家一軒一軒の扉を蹴り飛ばし、時には扉を壊してその家の住人をひっ捕まえて昨夜の襲撃について情報を聞いて回っていた。昨日の今日であるある者は恐怖に狩られて斬りかかってきたが、そう言う勇気のある人物は彼らに折角助かった命を刈られることになった。

 「賊は、金品を強奪した後速やかにウースヤを離脱」

 「金品は持てる限り、荷車などは使用せず」

 空が白みがかってきた時、町に放った隊員たちが住民から無理やり聞き取った情報をヨーゼンに報告していった。

 「追手がかかることを意識していたのか、統制された動きのように見積もられる。・・・ウースヤ近傍を捜索、奴らの痕跡を見つけよ。町を見渡せる場所、身を隠せる場所を重点的に捜索せよ。痕跡を発見したなら速やかに報告。日暮れには戻れ。俺は町の前に位置する。かかれ」

 彼は隊員たちに命ずると町の紋の傍に仁王立ちになった。

 「東西南北それぞれ4名で行動、発見したならば伝令により報告、残った者は現在地で伝令要因として待機」

 マースがヨーゼンの命令を細くすると隊員たちはさっと敬礼し、それぞれの方向に散って行った。

 「ある程度統制するためには、人を集め、命令する必要がある。必ず痕跡はある」

 ヨーゼンは自分に言い聞かせるように呟いた。

 昼を少し過ぎた頃、1人の隊員が大急ぎで走ってきた。

 「報告、北の方向の丘に野営の痕跡を発見」

 「よし、案内せよ。後から来た者に俺を追うようにせよ、と伝えよ」

 ヨーゼンは頷くと報告した隊員の後を付いて行った。

 「この焚火の跡は最近のモノだな」

 町の南方の高台の上についたヨーゼンは焚き火後を中心に地面に這いつくばるようにして痕跡を探し求めていた。

 「草の倒れ方からすると、襲撃の後、もう一度ここに来ている。南に向かったか・・・」

 ヨーゼンは残された痕跡から賊がどの方向に向かったかを読み取ると、隊員たちを呼び寄せた。

 「これから南の方向に街道沿いに前進する」

 かれは集まった隊員たちにそう告げるとさっさと歩き出した。その後を隊員たちがヨタヨタと歩き出した。昨夜から歩き通しで食事すら取っておらず隊員たちの疲労は随分と溜まっていた。しかし、どの隊員も文句も言わず黙々とヨーゼンの後を付いて行った。

 【この人は、人なのか? 】

 先頭を自分たちと同じ荷物を背負い、疲労を感じもせず歩くヨーゼンの背中を見ながらマースは驚愕していた。そんなマースの思いに勿論気付くこともなくヨーゼンは前進し続けた。

 彼が指揮を執っていた騎士団が強かった理由はここにあった。任務のためなら部隊の如何なる犠牲も厭わない、任務中に発生した傷病を無視し、食料や医薬品も無視する。大根おろしの上を滑らすように部隊を動かす、この常識はずれした運用が素早い部隊の行動につながり、それが敵に準備する時間を与えないためであった。ただ、一回の戦闘で失われる数も少なくなかった。これは、無視できる範囲を超えており、彼の更迭を考えられていた時期に丁度事件が発生したため、渡りに船と彼は任を解かれたのである。

 彼の部隊運用の妙はここでも発揮されていた。ウースヤの南にあるバナフの町に着いた頃には夜もふけており隊員たちはかろうじて立っている状態であった。

 「ここは襲撃されていないようだな。よし、情報収集だ、一軒一軒しらみつぶしに動け、傭兵の集団を見なかったか、見たとしたらどちらに向かったが、かかれ」

 疲れの色を見せないヨーゼンは町の前に整列し隊員に命じた。

 「隊長、申し訳ありませんが、隊員たちに休憩をとることをお許しください。昨夜から一睡もせず、食事もとっておりません」

 ヨーゼンの命令にマースが意を決しておずおずと意見具申した。そんなマースの事はを耳にしたヨーゼンは彼を睨みつけた。

 「俺もそうだ。眠いと思うから眠い、腹が減ったと思うから腹が減る。ぐだぐた言っている暇があるならさっさとかかれ。抵抗する奴は痛めつけても構わん、さっさと行け」

 ヨーゼンはマースを一喝すると彼らを町中に放った。彼はマースに自分も疲れていると仄めかしたが、実の所、疲れを感じていなかった。小部隊であれどもそれを率いて戦える。これが、全ての疲労、苦痛を無視させていた。

 「どいつもこいつも、眠いだとか腹が減っただとか、愚かな事を」

 ヨーゼンにとっては人の生命活動上必要な事ですら「愚かな事」ですらなかった。彼にとって戦場で戦う以外「愚かな事」に過ぎなかった。

 「南に、チッシャの町の方向に向かう傭兵の集団を見た、と言う証言を得ました」

 「南の方向に向かう集団を目撃した、という証言もありました」

 空か白みがかった頃、部下たちが町民をたたき起こして収集した情報を持ってきた。彼らがもってきた情報は「南に向かう集団を見た」程度しかなかった。

 「よし、奴らを追う。前進」

 ヨーゼンは威勢よく歩き出した。しかし、いきなりその足がよろけ、そしてその場にこけてしまった。30代半ばと言う年齢、今までの無茶な生活、そして今の食わず、眠らずが彼の身体にダメージを与えていた。

 「隊長、お休みになった方が」

 マースが駆け寄り起こそうとしたが、ヨーゼンはその手を振り払った。

 「問題ない、前進する。これも、()()のためだ。疲れていると思うから疲れるのだ」

 彼は吠えると、よろよろと立ち上がった。

 「よし、南に向かう。脱落したものは捨てて置け」

 ヨーゼンは己に言い聞かせるように言うと歩き出した。口でイロイロと言っても身体は正直なモノで、彼らの行進はまるで敗残兵が捕虜として引っ立てられているように見えた。

 

 「集まったな」

 深夜、ヨーゼンがふらつきながら行進している頃、チッシャの町の中央の広場に傭兵たちが影が寄り添うように集まっていた。その人数は前回のウースヤの町を襲撃した時より10名程増えていた。

 「増えたようだな。何度も言うが、この仕事は速度重視だ。無駄な殺しや、嬲りは禁止だ」

 ディッセルは黙って集まった集団に低い声で告げた。

 「次は、サーラックの町だ。イーソンは荒れ果てているから行くだけ無駄だ。仕事が終わったらサーラックに向かえ。さぁ、仕事の時間だ。かかれ」

 ディッセルが集まった連中に一声かけると、彼らはさっと広場から散って行った。

 「それでは、俺は俺の仕事をするか・・・」

 ディッセルはにやっと笑うと昼間目星をつけていた家に足を向けていた。


 「これより、しばらく休憩する」

 自分の足が痙攣しだしたことを悟ったヨーゼンはしぶしぶ隊員たちに休憩を命じた。

 「食事と仮眠を許可する。昼前には出発する」

 隊員たちが粗末な携行用食料による食事ありつけたのはそろそろ空が明るくなる頃であった。

 「出発準備完了っ」

 正義と秩序の実行隊が粗末な食事と仮眠を終えたのは昼前であった。テントも張らずただ地面に転がっての仮眠であったが皆泥のように眠りこけていた。ヨーゼンもその例外ではなかった。

 「チッシャの町へ向かう、前進」

 仮眠と食事により少しばかり回復した正義と秩序の実行隊は足早にチッシャの町へと向かった。町につくとヨーゼンは隊員たちに情報収集にあたらせた。そして、堂々と町の中に入ると壊れた商店などを見つけ、渋い表情になった。

 「遅かったか」

 彼らがチッシャの町に到着したのは日も暮れかかるころであった。町の広場には昨夜の蛮行の犠牲者が綺麗に並べられ、埋葬を待っていた。

 「斬り方はそれなりの腕を持っているヤツだな」

 犠牲者の遺族が遺体にすがっているのを押し退けてヨーゼンは死体を検分しだした。

 「おい、俺の女房に何するんだ」

 遺族の1人が声を荒げた。しかし、ヨーゼンはそんな言葉に耳を貸すことなく遺体の服をはだけ死体を検分しだした。

 「やめろっ」

 男はヨーゼンの肩を掴んで遺体から引き離そうとした。

 「邪魔だっ」

 ヨーゼンは立ち上がるとその男の顔面を殴りつけた。殴られた男はその場に崩れ落ちた。

 「貴様、何の権利があって俺の仕事を邪魔する。この町を襲った賊の仲間か、あーっ」

 ヨーゼンは倒れた男を踏みつけながら罵倒した。

 「我々は、賊の討伐のために動いている。それを邪魔するなら貴様も賊の一味とみなす」

 ヨーゼンは男を蹴り飛ばすとそのまま検分続けた。

 「おい、お前、賊はどこへ行った」

 幼い息子の遺体に縋り付いて泣いている母親の髪を掴んで引きずり上げながら怒鳴りつけるように尋ねた。

 「し、知りません」

 女はすがるようにヨーゼンに答えた。その答えにヨーゼンはため息をついた。

 「使えん」

 彼は、女を投げ捨てるように脇にどけた。そして辺りを見回し、職人風の男に詰め寄った。

 「賊は何人だ」

 「いきなり踏み込まれて、剣を突きつけられて、ほら、こんな怪我までさせられて・・・」

 職人風の男は斬られた腕の傷をヨーゼンに見せた。

 「賊は何人だ?」

 ヨーゼンは苛立ちを押さえながら再び尋ねた。

 「夜中に押し込まれて、子供を人質に・・・」

 男の答えにヨーゼンの目つきが鋭くなった。

 「お前は、俺に尋ねられたことだけ答えろ。貴様のガキの事なんぞ知らん。賊は何人だ? 」

 ヨーゼンは男を怒鳴りつけると剣の柄に手をかけた。

 「わ、分からない」

 「分からないなら、最初かそう言え。つまらん手間を取らせおって、使えんっ 」

 男を突き飛ばすように退けると、隊員たちを呼び集めた。

 「賊の規模、逃走方向は? 」

 居並ぶ隊員たちにヨーゼンは尋ねた。

 「賊の数、50程度」

 「逃走方向は、街道沿い南方」

 隊員たちは短時間のうちに町の人々を脅すようにして手にした情報をヨーゼンに報告した。

 「よし、街道沿いに前進する」

 ヨーゼンは大声で命令すると先頭を歩き出した。それに合わせるように隊員たちもその後に続いた。


 「エイディも大概だったが、アレも相当だな……」

 薄暗くなった町の中で遠巻きにヨーゼンの行動を見ていたグレイのマントの男の1人がため息交じりに呟いた。

 「新手の馬鹿でしょうか? 」

 「新手かどうかは知らんが、馬鹿であることは確実だな」

 グレイのマントの男の脇に控えていた同じ格好をした男が尋ねると、彼は深いため息をついた。

今回は、ヨーゼンが暴走気味ですが、これが彼の平常運転です。戦に勝つ以外に興味がないため、戦術的思考までしかできず、戦略的思考には全く及んでいません。統率も恐怖と権威で押し付けるタイプですので、部下になると大変です。傭兵のディッセルは扇動屋ですので、戦術的思考すらアヤシイのですが、そこは勢いでやっているようです。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございます。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

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