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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第18章 事変
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244 後始末

雪や凍結やら車の故障で退屈しない日々を過ごすことができましたが、平和に退屈したいものです。

 「ハービアちゃんもいなくなるのか、寂しくなるねぇ」

 ラールにお酌しているネアの耳に近くの席でお友達同士で盛り上がっているオバさんたちの声が飛び込んできた。

 【「ハービアちゃんも」って、「も」という事は・・・】

 何となく気になったネアは彼女たちの会話に意識と耳を向けた。自由に動く猫の耳はこういう時、便利なのものだとネアは久しぶりにこの身体の持つ能力に感心していた。

 「時々、買い取りに来てくれるモンテス商会の若い子を随分と気に入っていたもんね」

 「あの子じゃなくてね、お店で事務をしている人が南の遠い地方に転勤ってことで、あの子が事務に回ることになって、買い取りに来られなくなるって・・・」

 「あれでしょ、南の方に大きな仕事があって、うちの店からも転属するって言ってたことだよね」

 彼女のたちの言葉の中の「南の方の大きな仕事」と言う言葉にネアは引っかかりを覚えた。

 【南の方って、ティマやミエルちゃんの居た所だよな・・・、大きな仕事って、あの英雄絡みか? 考えすぎか・・・、少なくとも祝いの席で考える事じゃないよな】

 ネアは軽く頭を振って心に浮かんだ思いを振り払おうとした。

 「南か・・・、南の方で蠢く気持ち悪い連中の事が気になるのかえ? 」

 ラールは空になったグラスをネアに差し出し酌をするように促しながらニヤッと笑ってみせた。

 「剣精様は連中のこと・・・、正義と秩序の実行隊をご存知なのですか」

 「儂は旅が長かったからのう」

 ラールは呟くように言うとグラスの中身を一口すすった。

 「目が見えぬ女でしかもエルフ族となるとな、世の見る目が如何なるものか、穢れの民のお主なら分かるじゃろ。人に近いとは言え、穢れの民、儂の剣も必要に迫られてのものじゃ」

 ラールはそう言うとふっと鼻先で笑った。

 「生き残るためには、厄介な連中に対して敏感にしておかんと、気づけば敵の真ん中に居ることになるからのう。正義とナンとかのナンとやらは噂でしか知らんが、質が悪いことは穢れの民なら皆口にしておった。・・・南の大きな仕事となると・・・」

 「正義と秩序の実行隊!? 」

 「そう考えて問題なかろう」

 不安そうな表情を浮かべるネアにラールは静かに頷いて見せた。それを見たネアの顔に不快感と不安感が綯い交ぜになった表情が滲んだ。

 「体重と同じでいらないものばかり増えてくる」

 「体重なら食事制限と運動で何とかなるぞ。奴らは台所に沸く黒き災厄と同じじゃ。一匹いるのをみたら、その30倍はおるからな」

 「あいつらと同じ扱いですか。似たようなモノですから仕方ありませんね」

 ネアとラールは互いを見合って苦笑を浮かべた。


 「先ほどの話、ご隠居様に伝えないといけませんね」

 結婚式が終わり暗くなった通りをラールに己の肩に手を置かせ案内するようにしながらネアは口を開いた。

 「ご隠居殿なら、もうご存知じゃぞ。あの男、一体どうやって情報を手に入れておるのじゃ。あのような、飄々としてつかみどころのない、底知れぬ男は今まで見たことないわい。あ奴が後、30歳ほど若く、妻子もおらんかったら、誘惑して口説いておるぞ」

 ラールはそう言うと楽し気な笑い声を上げた。

 「若い頃は随分と遊ばれたとの噂ですけど、今は大奥様に睨まれておられるようで」

 「ふふ、そうであろうな。あの奥方殿ならこそできることじゃな。それはそうと、少し冷えて来たな。こんな時は温かい風呂に限る、急ぐぞ」

 ラールは楽しそうに言うと、ネアを少しばかり急かして館に戻る足を速めた。

 「下着を穿いたら少しはマシになると思いますよ」

 「大地の気を吸収できんことの方がキツイから、それはナシじゃ。お主も穿かん方が良いぞ」

 「見つかったらエルマさんに何をされるか分かりませんから。私は穿きますよ」

 ラールはネアの言葉にため息をついた。

 「踏ん切りが悪い上に、小さいヤツじゃな」

  ラールはフンと鼻先で笑った。

 「剣精様、朝起きて身体が変わっていたとして、すぐに割り切れますか。今まであったモノがなくなって、今までなかったモノがあったらどうします? 用を足すにも苦労したんですから」

 ネアは己の身体を自ら抱きしめるようにしながら、先輩方に女の子としての在り方を激烈に指導された日々を思い返し、顔をしかめた。ネアの実感のこもった言葉にラールは小さく頷いた。


 「花嫁様、綺麗だった? 」

 翌日、午前のお茶の時間にフォニーが詰め寄るようにネアに尋ねてきた。

 「花嫁様? あ、ハービアさんですね。ええ、とてもきれいで、まるで絵本のお姫様みたいでしたよ」

 ネアはお茶菓子のビスケットを齧る手を止めると、目を薄く閉じていかにも思い出している姿勢を作りながら答えた。

 「お姫様! パル様がお嫁様になられたら、お姫様のお姫様です」

 ティマが言葉的には良く分からないが、実感としては何となく分かる言葉を口にした。彼女の頭の中にはお姫様オブお姫様のパルの姿があったようで、それを伝える表現がなかなか見つからないための発言であった。

 「パル様は、どんな方とご結婚されるんでしょうね」

 ラウニがうっりとした表情になりながら、ティマの言うお姫様オブお姫様を想像し、それに自分を重ねていた。

 「ご本人の想い人は、ルッブ様じゃないですか」

 ネアは誰もが思っていることをしれっと口にした。

 「それは、言っちゃダメだよ」

 「パル様がお聞きになったら、マズルクロー程度ではすまないですよ」

 ネアはパルがメムのマズルを鷲掴みにして振り回している姿を思い出してぶるっと身震いした。

 「あ、でも、私のマズルは犬系の人と違って短いですから鷲掴みにできないと思いますけど」

 ネアは自分のマズルを撫でながらフォニーの尖ったマズルを見つめた。

 「猫系のひとは首の後ろを掴まれて振り回されるんじゃないでしょうか」

 ラウニが自らの首の後ろを掴みながらネアを見つめた。

 「バル様なら、そうするだろうね」

 フォニーは腕組みをしてうんうんと勝手に納得していた。

 「お姫様を怒らせたら当然罰なのです」

 ティマも厳しい視線でネアを睨んでいた。

 「パル様のルッブ様に対する想いは・・・、怖いよ。うちは知ってるから・・・」

 茶化すわけでもなくフォニーは真剣な表情で侍女見習い仲間に力説していた。

 「地稽古の時でしたね。傍から見ていても殺し合いみたいな雰囲気でしたからね。互いにムキになると言うか、殺気をかくさずに打ち合ってましたからね」

 ラウニがため息交じりにフォニーに言うとフォニーはぷいっと視線を窓の外に逸らせた。


 「南の方のでかい仕事ってなんだ? 」

 深夜の真っ暗なトバナの部屋でロクのドスを利かせた低い声がトバナを締め付けていた。ベッドの上にちょこんと座ったトバナが脂汗をかきながら聞かれたことに答えようとしていた。

 「事務能力の高い連中が呼ばれている。新たに騎士団のようなモノが創設されると聞いた。その管理面の支援で必要らしい。うちの店からも1名転属となる。こんな田舎からでも人をとるんだぞ。そのおかげで買い取り組のヤツを事務に回したぐらいで・・・」

 「お前のみせのことなぞどうでもいい。その騎士団のようなモノについて話せ」

 愚痴の色が滲みだし始めたトバナ言葉をロクが叩き斬るように遮った。

 「俺にとっては切実な問題なんだぞ。アンタも知っているだろ、あの正義と秩序の実行隊、アレが大きくなって隊から団になるらしい。そのために新たな頭も引き入れる、それぐらいしか聞こえてこない」

 トバナは額に浮かんだ脂汗を手で拭いながらロクの追及に何とか答えた。

 「口から出まかせなら、その代償は大きいぜ」

 ロクはトバナに金貨を投げると、さっと窓から飛び出して行った。

 「寿命が縮まる・・・」

 トバナは安堵のため息をつきながらロクが投げて行った金貨を拾い上げていた。


 「隊から団かい。随分と出世するモノだね」

 ボウルの店の奥にある居間に限りなく近い会議室で、ロクから手渡されたトバナの報告書を読み終えたご隠居様が皮肉めいた声をあげた。

 「現在、誰がその新しい組織の頭になるか情報を収集中です。元々妙な集団ですから妙な人物が蝶になると推測されます。王都付近で現在職にあぶれていて、クセの強い連中をリストアップしておきました」

 コーツがご隠居様が手にした資料について簡単な説明をした。彼がリストアップした10名程度のプロフィールを目にしたご隠居様は顔をしかめた。

 「趣味で戦をやらかして、郷を潰した郷主、視界に入った穢れの民は必ず殺す貴族の倅・・・、どれも酷いな。コーツ、この中にはないけど極端にストイックなヤツも調べてくれ。あの連中、聞く限りではドイツもコイツも自らの欲も意思もなく、只管に任務を遂行するような連中だ、そんな連中を束ねるとなると欲に走るとあの、エイディ君みたいなのが来るようだからね。確か彼は現在、病気療養中だったようだが」

 ご隠居様は一通り目を通すと資料を隣にいたガングにそれを手渡した。コーツがリストした名前に目を通して顔をしかめた。

 「ユージス・・・、まだ生きてやがったか。「返り血」が随分出世したもんだ、御大層に姓なんぞつけやがって」

 ガングは傭兵団を率いていた頃に目にした男の名前を発見して舌打ちをした。

 「捉えた者を虐待する嗜好あり、ありゃ虐待の範疇を超えていたぜ。奴に捕まって次の日を迎えたヤツはいない。迎えられたとしても臍から下が無事な奴は皆無って下衆なヤツだ」

 ガングは唾を吐くように言うと隣に控えていたヴィットに報告書を差し出した。

 「うーん、まるで下衆と人でなしのカタログだな。よくもこんだけろくでも無い連中をリストできたものだよ。作業中のを見せてもらったけど、あれにはここまでの下衆はいなかった気がするんだが」

 ヴィットは仮面の下からコーツを苦笑しつつ見つめた。

 「保全は確実でございますよ。誰に対してもです。たとえそれがヴィット様であっても」

 コーツは笑いをこらえながらヴィットを見ると、軽く目を閉じて首を振った。

 「簡単に信用するな、か。コーツらしい、そして私はまだまだ未熟だな」

 ヴィットは少し恥ずかし気に頭を掻いた。

 「ドイツもコイツも虫唾が走る。カスだらけですね」

 ヴィットが置いた机上の資料を見てネアは顔をしかめた。そこにあったのは残虐性と小役人的保身に長けた言うなれば、クズたちの名前であった。

 「私の名前がなくてほっとしてますよ。ケフの凶獣の名前があったら暫く立ち直れなかったですよ」

 ネアは冗談めかして笑いながら報告書に目を通して行った。

 「手駒は、正義のためなら自分の命すらなんとも思わない連中、自ら考えることができないアホでやたら真面目などうしようもない兵隊、指揮官から見ればどんな無茶な事も文句を言わず実行する兵隊か・・・、与えられた任務を遂行することに無情の悦びを見出す。その喜びのためにいろんな事を捨てているヤツが適任かな」

 ネアが報告書片手にブツブツ言っているのを耳にしたご隠居様はそっとネアに近づいてきた。

 「前のネアみたいなヤツかな」

 「ええ、顔を合わせても何の面白みもない、仕事がかろうじて人の形をしたようなヤツが理想かも知れませんね」

 ネアはそう言うとずらりと並んだ名前を爪先でトントンと叩き、口角を上げて皮肉な笑みを見せた。

 「よりによって、こうも虫唾が走る連中を集められたものですね」

 テーブルについているそれぞれの前にお茶を置きながらナナがちらりと報告書を目にして呆れたような声を上げた。

 【一瞬見ただけだよな、全部は見てないのに余程有名人がいるのか? 】

 ネアは驚きの面持ちでお茶と茶菓子を置いて行くナナを見つめた。そして、無理やり自分の中で納得しようとしていた。

 「4番目のゴルテスって、貴族のお坊ちゃんですけど、やたらガタイが良くて力任せで気に入った女は無理やり犯し、気に入らないのはその場で死ぬまでボコボコにする、頭のネジが飛んでいるバカですから、何かを率いることは無理ですね。8番目のキュートスは口先だけ、そこにある功績、犯罪ですけど、あれも他の子悪党のやらかしの横取りですよ」

 ナナは一瞥しただけで報告書の内容を頭に入れたようであった。彼女の恐るべき能力にネアは畏怖を感じていた。

 「あら、ネアちゃん驚いているの? これぐらい、この手の仕事をするなら当然の事よ。練習すればだれでもできるようになるから」

 ナナはネアの表情を読んだのか、さらりと自分のやったことを言ってのけた。

 「アレは、ナナしかできん芸当だ。俺でも半分がやっとだ」

 信じられないという表情をしているネアにロクがそっと囁いた。

 「一瞬、ちらっと見ただけで記憶するなんて・・・、ロクさんも大概ですよ」

 「ネアちゃん、何も難しい事はないわよ」

 ナナはにっこりと笑った。

 「難しい、難しくない以前の話のような気がする・・・」

 「練習すれば、大丈夫よ」

 事もなく言い放つナナにネアは、達人や天才のアドバイスはさほど役に立たないと改めて認識した。


 「やっと、バルン君の処置について王都から返事が来たよ」

 南で立ち上がる新たな組織については、これから集中的に情報を収集していく方針が決定された後、ご隠居様がカバンから一枚の書状を取り出した。

 「美辞麗句といらない修飾詞で目がくらみそうだが、言っていることは、お前らに任せた、これだけだよ」

 ご隠居様はその書状を指先で持ってひらひらとさせながらため息をついた。

 「つまり、当初の予定通りですね」

 「こっちの筋書き通りで行ける。妙な横やりは入らない、やりやすいと言えばやりやすいが、どうも北の果ては王都からすれば、どうでもいい地域なんだろうね。だから、狙われることも少ない。いいのか、悪いのか、この場合はいい方向に取っておこう」

 ヴィットはケフとしてどう動くか、当初作られた計画通りで問題ないと聞いて安堵しているようであった。

 「バルン君は一生彼の屋敷に作った座敷牢で過ごして貰う事になる。彼が雇った連中と、バルンに尻尾を振った連中は全員犯罪奴隷として売り捌く、その儲けはヤヅの復興に使用する。これに変化はないよ。ただ、ルシア嬢のご両親が郷主となるにして、その姓の問題が発生した。彼らは我々に良き姓を与えてもらいたいと言ってきているからね」

 新たに発生した重要に見えないが、それなりに重い問題にご隠居様は苦笑を浮かべた。

 「姓を貰うという事は、相手に対して臣従するという意味もありますからな。彼らはケフに下る、ヤヅがケフの郷の一部にしようとしているのですから、いらない流血も避けられそうにありませんな」

 コーツが砂をかんだ貝を食べた時のような渋い表情になっていた。

 「姓を与えなくても、彼らはケフに臣従するつもりらしいよ。ヤヅは貧しい、そこであの港をフルに活用して、ケフの布、ミオウの穀物を売りさばきたいようだ。しかし、臣従されるとなるとケフもヤヅの面倒を見なくてはならんようになるから、両手放しで喜んでいる状態じゃないからね」

 ご隠居様は、これからヤヅに割く予算も発生することを考えて頭を抱えたくなっていた。

 「ご隠居様、港の使用料を安くしてもらって、私たちもパーセンと直接取引できるようにすればいいんじゃないですか。もうワーナンの都に旨味はありませんし、なによりフーディン様がおられないワーナンなんて、綿の入っていない布団のようなモノです」

 ネアはケフが享受するであろう利益を考え、港繋がりでバーセンとの取引に便利だと口にした。

 「その港なんだがね、ヤヅの港はどちらかと言うと漁港、その上小さいときている。貿易にシフトするにはそれなりの出資が必要、その出資と儲けが見合うかが問題なんだよ」

 ご隠居様はそう言うとため息をついた。実際、ヤヅを臣従させるとなると様々な面で出資が必要となり、繊維の郷を自称しているケフであっても、十分な余裕があるとは言い難く、有体に言えば財政は豊かではない、そこにヤヅを抱えるとなると下手をすれば大きな負債を抱えることも十分にある訳で、バルンと戦う以上に厄介な問題であった。

 「ご隠居様、ルシア嬢のご両親は中々の商売人と聞き及んでいます。今まで海洋諸島連合王国との通商に随分とご尽力されていたようで、設備への出資は取り返すことが可能だと思いますが」

 ヴィットがヤヅでの不良騎士の捕縛の際に耳にし、目にしたことからヤヅは将来、金の卵を生み出す鶏

になると見込んでいた。

 「その事も承知している。出資はミオウもするらしい。最悪の場合、ケフはミオウの出資に保障しなくてならなくなる。そうなれば、ケフの郷は身売りするしかなくなる。危険な橋だよ」

 情報収集や工作についてはイケイケなご隠居様も経済が深く絡んでくるといきなり慎重になる姿にネアは首を傾げた。

 「経済での負けは、戦で負けるより根が深いんだよ。敵を退けたにもかかわらず、戦費が嵩んで崩壊した郷は、歴史上、両手の指の数ではすまないほどあるんだよ。郷を維持するのは、まずはお金だよ。だから、土地を持たないモンテス商会の会頭が郷主以上の発言権をもっているのはそこなんだよ。経済に関わることだからここは、婿殿の判断を仰ぐことにしようと思うんだよ」

 ご隠居様は困った表情で言い訳するように説明した。そんないつもらしくないご隠居様の態度にネア首を傾げた。

 「ご隠居様、お金の事で大奥方様から釘を刺されておられるのですか? 」

 ネアはその年齢の子どもらしくあどけなくご隠居様に尋ねた。

 「お小遣いに直接響くと噂を聞いておりますが。私も先日、飲みすぎだ、と理不尽な言葉一つでお小遣いを減らされましたので」

 ガングが同情のこもった目でご隠居様を見つめた。その視線に気づいたご隠居様はすっと視線を外した。

 「お小遣いが減ると、ネアにおやつをご馳走できる余裕もなくなるから・・・」

 「それは、困ります。この問題、宰相様にも相談しましょう。そして、何が何でも儲けられる筋道をつけないといけません」

 ネアは時々奢ってもらう食事の事を思い出し、それらがなくなることが到底受け入れることができなかった。

 「貧乏がなにより一番の敵で、最強ですからね」

 お金が無い事で引き起こされる問題は異なる世界であっても変わることがないことにネアは気づき、そして深いため息をついた。


郷主になるのは大概が世襲ですが、時折、平民からのし上がる場合もあります。ヤヅの新郷主であるルシアの両親はまさしくのし上がったタイプです。この際、新たに姓が必要になるのですが、勝手に名乗って既成事実にする場合と、有力者から姓を賜る場合があります。後者の場合、姓を賜った者は、姓を贈ってくれた者に対して臣従するのが普通です。そして、臣従させると様々な面倒を見てやる必要もあります。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

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