240 大きな変化の予感
寒かったり、流行病がぶり返したりと何かと慌ただしく歩みだした年ですが、
忙しさの合間の暇つぶしの一助となれば幸いです。
「儂の目指す場所にレイシー殿は既に立っておられる。ここ百数十年、いくら足掻こうと手すら届かぬ場所にレイシー殿はおられる。是非、儂を弟子にしてくだされ」
「け、剣精様、頭を上げてください。私、そんなに大したものじゃありませんよ。剣を齧ったことのある一介の主婦にすぎませんから」
いきなり土下座したラールにレイシーは肝を抜かれあたふたしながらラールの肩に手を賭けようとした。
「お願いじゃ」
ラールは伸ばされたレイシーの腕を掴むと目隠しを解き、青く濁った瞳でレイシーを見つめようとした。
「剣精様、落ち着いてください」
「レイシーさん、慌てないでください。お師匠は時々こうなるんです。少し時間が経てば落ち着きます」
ラールに手を掴まれたまま困惑の表情を浮かべるレイシーの耳元でエルマが落ち着いた声で囁いた。
「如何にすれば、母親になれる? 剣と母親は両立するのか? 」
レイシーの両手を掴むとラールは顔を近づけ矢継ぎ早に質問を投げつけた。
「は、伴侶を見つければよろしいかと」
レイシーはラールに振り回されながらも、何とか答えを口にしていた。
「そこじゃ、その伴侶じゃ・・・」
ラールはそう言うとピタリと動きを止めた。そして、ブツブツと独り言を呟きだした。
「~っ! 」
レイシーは、いきなりの事に泣き出しそうな顔でエルマを見たが、彼女は特に何をするわけでもなく、
「もう少しの辛抱です」
と一言答え、レイシーは思わず天を仰いだ。
「剣精様、何かをこじらせているのかな」
ラールの奇妙な行動にネアは首を傾げながら呟いた。ネアとしては、今の世界は勿論の事、前の世界でも考える事すらしなかった事に真剣に悩んでいる人を見ることは滅多にない事であったし、あったとしても無意識のうちに無視するのが習性になっていた。最近、漸くおぼろげながらに察することができるようになったおかげで、ラウニやフォニーの幼い憧れの伴った甘酸っぱい思いは知っていたが、これとは、比較しようのない大人の生臭い思いの発露にネアはキツイ蒸留酒を飲んだような感覚に襲われ思わず半歩後ずさっていた。
「うーん、あれは、重症だよ。エルフ族的には剣精様はまだまだ現役だけど、あの性格と生活スタイルだとね。その上、剣精って称号があるから・・・、難しいね。何かに打ち込みすぎるエルフ族には少なからずあるんだよね。寿命が長いからさ、大切な事を後回しにして忘れてしまうんだよね」
ネアの呟きを聞いたバトがそっとネアに種族的な特徴を説明してくれた。そして、ちらりとエルマを見て、
「あの人もこじらせていると思うよ」
さらに小さな声でネアに囁いた。そしてその本人であるエルマも我が師匠の奇行を呆れながらも複雑な表情で眺めていた。
「不思議だよねー」
ネアとバトの会話を耳にしたフォニーが小さな声でネアに話しかけてきた。
「不思議? 」
「そうだよ。うちらの周りにエルフ族の人は少ないけど、うちが知っている限りだと結婚しているのは宰相の奥さんのアルア先生、ラゴのヒルカさんぐらいだもん。剣精様、エルマさん、バトさんも皆美人だよ。ティマじゃないけど、お姫様みたい、だよ。その気になればすぐにお嫁に行けると思うんだけど」
首を傾げるネアにフォニーは彼女らが如何に美形であるか、そんな人たちが何故独身で、しかもその事をこじらせているのか、彼女にとってそれは理解の範疇から大きく外れたことであり、思わず疑問をネアに投げかけてきた。
【そりゃ、常日頃の行動を見れば分かるでしょ。奔放すぎたり、鬼軍曹だったり、シモだったりだからね】
ネアは思わず正直な感想を口にするところであったが、何とか思いとどまった。もし、これを口にしたら、ブレヒトたちと同じ目に遭うと野生の本能が警告を発したからである。彼女はフォニーの問いかけにあやふやな笑顔で答えるのにとどめておいた。
「そこ、それ以上言うと、その口に糞を詰め込んで縫い合わせるぞ」
エルマがいきなりネアたちを睨みつけ、ドスノ利いた声を張り上げた。
「Yes,ma’am! 」
その場にいた侍女たちは全員気をつけの姿勢を取り、一斉に返事をした。そして、エルマはそっと我が師を見た。
「え? 」
エルマはこの侍女たちの一斉の行動、それを叩き込んだ自分の手腕に対し、師匠から何らかの言葉、突っ込みを期待していたが、師匠はレイシーの前に膝をついて半べそをかきながらブツブツ言っているだけで、レイシーが助けを求めるようにエルマを見つめているだけであった。
「あのー、お師匠様、レイシーさんもお困りの用ですから、さっさと稽古しましょうね。さ、お鼻をチンして」
たまりかねたエルマはぐずっているラールを立たせるとハンカチを手渡した。ラールはハンカチを手に取ると盛大に鼻をかみ、ぐしょぐしょになったハンカチをエルマに手渡そうとしたが、エルマはそれをきっぱりと断った。
「待たせたな、では、手合わせしようかのう」
こじらせから来る様々な精神的不具合から立ち直ったラールが稽古場に両手に木剣を杖のように握ってすっと立った。
「お願いします」
細身の両手剣サイズの木剣を構えたレイシーが剣士の表情で応えた。
「いつでも、好きな時に打ち込んでくるが良いぞ」
ラールの表情も先ほどまでのみじめったらしいモノは微塵もなく、正しく剣士の表情であった。
「っ! 」
レイシーが右脚を使って素早く踏み出し、上段から素早く振り下ろす。しかし、その剣は途中でピタリと止まった。
「素早く、正確な打ち込みじゃな。とても、足が悪いとは思えんぞ。聊か剣が素直すぎる気がするが、そこらの剣士ではお主に歯が立つことはなかろう」
レイシーの喉元に木剣をそっと当てたラールがレイシーの剣について感想を告げると、レイシーはさっと身を離して深々と一礼した。
「ご指導、ありがとうございました。全く、歯が立ちませんでした」
「母でありながら、その腕前、やはり、レイシー殿、弟子にしてはくれんか」
神妙な面持ちでラールに礼を述べるレイシーに彼女は無茶な要求してきた。
「お師匠様、母になる前に、その身だしなみから整えないとなりませんね。少なくともパンツを穿く生活から始めないとなりません。下品な女に良い男性は近寄りません。レイシーさんは主婦としてのお仕事、診療所のお仕事もある忙しい方です。どこの誰かみたいに剣を振るっていれば、日が過ぎる人とは違うのです。おねーさんはこれから、このオバさんとお話しするから、ビブちゃん、今日もおりこうさんでしたね」
エルマはレイシーに縋り付こうとするラールの襟首を掴むと少し怯えているようなビブに笑顔で告げ、まるで荷物を扱うかのようにルールをずるずると館の方に引きずって行った。
「今日の稽古はこれまでです」
ジタバタ藻掻くラールを気にすることなくエルマはネアたちにそう告げた。
「師匠に対する礼儀がなってないぞ」
「師匠としての身だしなみ、礼儀を身に付けて頂きます。泣いたり笑ったりできなくなるまでお付き合いしますので、ご安心を」
鬼軍曹と化したエルマはラールを地獄の底に引きずり込む悪魔のようにその場から連れ去って行った。
「剣精様、胃に穴が開くか、血のおしっこがでるよ」
バトは、全身は鳥肌が立ち、冷たい汗が背中を流れるのを感じていた。
「威圧感がとんでもないですからね」
ルロもバトの言葉に頷きながらぶるっと身震いした。ルーカやタミーも立ち去るエルマの方向を見ようともせず黙って立ち上がると
「さ、お仕事、お仕事」
と、その場から足早に去って行った。
「えーと、私は大丈夫・・・かな」
取り残される形となってしまったレイシーが不安そうに呟きながらビブを抱き上げた。
「あのおばちゃん怖い・・・」
ビブが余程怖かったのかレイシーに強く抱きついてポツリと呟いた。
「おばちゃんて言わないの。お姉さんって言っている限り大丈夫だからね」
レイシーはビブをしっかりと抱きながら杖をついて診療所に帰って行った。
「ねー、かれいしゅうって何? 」
辺りに日常の空気が戻り、安全になったことを確認して帰ろうとするネアの手を引いてティマが気になっていた言葉を聞いていた。
「その言葉は、口にしちゃいけない言葉ですよ。あのブレヒトがどうなったか知っていますか」
ネアが声を低くしてティマに諭すように言い聞かせた。
「死にそうになっていた。奴隷になってます」
「ああなりたくなければ、口にしてはいけません。加齢臭とは、歳を取ると独特の臭いがしてくるんです。だから、気にする人はとても気にしているんです」
「だから、そうなんだ・・・」
禁断の言葉を口にしたがためにブレヒトはその当日に川を渡るための渡し賃が無い事を心配する様な事態となり、それからは定期的に稽古と言う名の調教を受け、今やエルマの奴隷にまで成り下がっていることを思い出したティマはストンと納得したようで大きく頷いていた。
「あの言葉は、うちらに破滅をもたらすからね」
「絶対に口にしては、いけません。不幸になりたくないなら」
ティマはフォニーとラウニに諭され、恐ろしい言葉として 加齢臭 を封印することにした。
「で、彼女の両親とは連絡をとれたのかい」
「中々キツイ申し付けで、苦労しましたよ」
お館様の執務室で寛ぐご隠居様の横で小さくなっているロクが疲れたような声でご隠居様に答えた。
「その苦労は報われたようだよ。彼女の両親からは我々の台本にのってくれるようだよ。彼らは娘のルシア嬢から危機を知らされていた。しかし、エジルのせいで連絡が取りにくく、あの暴挙の具体的な日時まで知らなかった。しかし、彼らからの救援の依頼、そしてこの事を詠んでいたルシア嬢の活躍で最小限の出血で済んだ。今までのヤヅに対する貢献、ケフに対してバルンの暴虐を伝え、撃退することに大きく貢献したことにより、当面、ヤヅの郷の舵取りを彼らに任せる。そして、正式に王都に認可してもらい、彼らが郷主となる。聊か荷が重いようだが、ヤヅの郷を潰すより随分マシだからね」
お館様は、多少の無理はあるモノの何とか理屈を作り上げていたようで、これを基に動くことを決心していた。
「成程、その救援依頼を根拠にヤヅに入るか。で、経費は、やはりヤヅに持たせるか」
ご隠居様は概ね自分の考え通りに物事が進んでいるらしく、お館様の言葉に意見は挟まなかった。
「全額一括払いは、キツイですから、数年に分割して払ってもらいますよ。バルンの私財を処分すれば少しは足しになりますからね。落ち着いてから払ってもらいますよ。その代わりと言ってはなんですが、海産物への関税は引き下げてもらう予定ですよ。最近、魚が高くなってましたからね」
お館様はご隠居様に今後の計画をご隠居様に説明すると、ご隠居様は黙って頷いた。
「婿殿、騎士団の件だが、ヤヅの騎士団にもご協力を願おうじゃないか。騎士団の中にも不埒者はおるだろうがね。そいつらはおいおい炙り出すことにする。彼らに働いてもらえれば、我が郷の遠征費も少しは抑えなられる。野営ではなく宿やバルンの館を使えば、輜重隊の労力も減って節約にもなるだろうからね。彼らから当面の間は我々に統治を委任すると言う文言もあるからね」
ご隠居様は当面の問題が片付く算段がたったのか、ほっと一息つくと手ずからポットのお茶を注いでそっと口にした。
「お館様、ご隠居様、今回の件、いろいろと探りましたが、正義の光が動いた形跡は認められませんでした。この騒ぎはバルンが単独でやらかしたのじゃないかと思われます」
ロクがこの騒ぎの黒幕は確認されていないことを報告するとお館様は安心したように息を吐いた。
「我々は一息つけるが、ルシア嬢はこれから忙しくなるな。郷主の娘としてお飾りとしてもヤヅに行かなくてはならんだろう。レヒテとも仲良くしてくれている良い子なんだが、離れ離れになると思うと心苦しいな」
お館様はレヒテと楽し気に遊んでいるルシアを思い出し、少し悲し気な表情を浮かべた。
「ヤヅの大使の席は空いているぞ。前のはヌイグルミでもできるような事しかしていなかったからね。彼女にはその席がいいね。星の花で彼女の知名度は高いし、人気もある。ケフの郷主の下で郷主の娘としての立ち居振る舞いを学ぶこともできるからね。・・・レヒテを手本にしてもらうと聊か難があるがね」
ご隠居様は小さな声で「レヒテよりお嬢様らしいんだよね。あの子」とクスっと笑いながらポツリと呟いた。
「では、俺の方からルシア嬢に今後の事について一筆したたためます。彼女には悪いが、大使として、郷主の娘として振舞ってもらう事になりますからね。エイケロンにフォローに回るようにも私の方から伝えておきます。義父上からもお願いします。・・・ルシア嬢にはうちからもネアたちに定期的に向かわせて精神的に支えさせ、アルアには行儀作法を・・・、レヒテほど手はかからないと思いますが」
お館様はそう言うと早速便せんにペンを走らせ出した。それを見たご隠居様は小さく頷き、ロクに声をかけた。
「ロク、ちょいと一杯ひっかけに行こうか。ナナも一緒だ」
「承知しました。ご一緒いたします。ナナも喜びますよ」
ご隠居様は文面をどうするか、悩むお館様を後にして部屋から出て行った。
「ルシア様、何か顔色が優れないようですね」
「変なお客が居たんだったらあたしが・・・、潰す」
店の中でいきなりぶるっと身を震わせたルシアを気遣うようにジーエイ警備のクゥとカイが駆け寄ってきた。
「何か、凄いことになる予感がするの。大きく変わるの」
少し蒼くなった顔色でルシアは彼女らに自分が感じ取った事を説明した。その言葉を聞いてカイとクゥは互いに顔を見合わせた。
「ルシア様、最近お人形を使わなくても詠まれますからね」
クゥがルシアを抱きかかえそっと彼女の頭を宥めるように撫でた。
「ルシア様の傍にはあたしたちがいつも居ますからね。絶対に守りますから」
カイもルシアを抱きしめ、何故か感極まっていた。
「ルシアさん、こんにちは」
声をかけられたルシアはその方向を見るとバトを従えたネアが大きな封筒を持って真面目な表情で立っていた。
「ネアちゃん、どうしたの?」
ルシアはカイとクゥのハグから抜け出したルシアがネアに走り寄ってきた。
「お館様から重要なお手紙を預かってきました。返事を聞かせてください。マーカさん、リックさんもご同席お願いします」
ネアはそう言うとぺこりと頭を下げた。その背後でバトがにこやかにたたずみながらも辺りを探っていた。
「あの人が本気モードに入っているよ」
「挨拶かわりのシモネタもなかったですよ。警戒レベルを上げますよ」
「了解」
カイとクゥは護衛としてネアに張り付いているバトからただならぬ気配を読み取り、ネアとバトの来訪がいつものお買い物でないことを察し、すぐさま警備の配置、ルシアの後方に位置した。
「ネアさん、郷主様からのお手紙ですね。リックさん、応接室へ」
いつの間にか現れたマーカが店頭でにらみを利かせているリックに声をかけると、彼はカイとクゥの表情から察したようで速やかに応接室に向かった。
「お嬢様、ネアさんと一緒にどうぞ。バトさんも」
ルシアの手を引いたマーカに促され彼女の後をネアとバトは彼女たちの後を追うようにして応接室に向かった。
「いい動きね。・・・思わず濡れちゃったよ」
緊張の表情を滲ませているカイとクゥの横を通り過ぎる時バトはいつもの調子で声をかけるとすました顔でネアの後について行った。
「まずは、ルシアさんこのお手紙をお読みください」
ネアは封筒の中から、蝋で封印された封筒を取り出し、ルシアの前に置いた。ルシアは黙って封筒を手にするとマーカから手渡されたペーパーナイフで封を切った。そして、手紙をじっくりと読みだした。手紙には、敢えて難しい極は使わず、ルシアの両親は無事で、近いうちにヤヅの郷主となること、それによりルシアが郷主の娘となること、ケフでお店を続けながら大使としての仕事をしてもらいたいこと、その仕事のために新たに建物を手配すること、お館で郷主の娘としての立ち居振る舞いなどを学ぶことができること、ケフが何かとフォローすることなどが、やさしく、そして心の底から心配していることが読み取れるように書かれていた。
「・・・」
手紙を読み終えるとルシアは黙ってそれをマーカに手渡した。マーカはその手紙を読んでいるうちに驚愕の表情が滲んできた。
「旦那様たちがご無事でしたか、それが一番です。・・・つまり私どもの生活に大きな変化はないという事ですね」
マーカの言葉を聞きながらネアはルシアをじっと見つめた。
「お館様が、明日のお昼、一緒にご飯を食べながらこの件についてルシアさんとお話がしたいそうです。今日はそのお食事会に参加できるか、できないかのお返事をお聞かせください。マーカさんが持っておられる疑問についてもその場で回答が得られるか、検討事項として煮詰めていくことになると思います」
ネアはそう言うと出されたお茶一口ふくんだ。ルシアはネアの持ってきた手紙の内容を必死で理解しようとしていた。ネアはそんな彼女を急かすこともせず、出されたお茶菓子のクッキーを齧りだした。
「バトさん、これ、美味しいですよ」
ネアの隣に座りながらもずっと黙りこくっているバトにクッキーを差し出した。
「結構です」
信じられないことにバトはネアが差し出したクッキーを拒否した。
「え、リックさん、非常事態です」
難しい顔でマーカに魅せられた手紙を読んでいたリックにネアは声をかけた。
「くそ、気づかなかった。カイ、クゥ、警戒を最大級だっ」
リックは立ち上がると部屋の外に待機している2人に声をかけた。
「え、何、何が? 」
この騒ぎでバトはすっと立ち上がり剣を手に取った。
「バトさん、何が来たんです」
「え、何の事? 」
「え? 」
ネアは剣に手をかけるバトに尋ねるとバトも驚いたように尋ね返してきた。
「バトさん、ここに来る時からずっと黙っているし、いつものシモネタも口にしないし。変に真面目だし・・・、だから、何かがずっと狙っているのかと思っていました。違うんですか」
ネアはきょとんとした表情でバトを見上げた。
「・・・カイ、クゥ警備通常に戻せ。誤報だ」
リックはため息をついてソファーに沈み込んだ。
「バトさん・・・」
慌てて警告を発しようとしたネアは、事の発端はバトだと言いたいように非難がましく見つめた。
「剣精様やエルマさんを見ていると、このままじゃダメじゃないかと思って・・・、でもさ、非常事態を宣言したのはネアだよね。私じゃないよね」
バトはネアにニヤッと笑って詰め寄った。
「罰として、暫く私に肉球を差し出しなさい。断ったら、エルマさんにネアの素行に問題ありって報告しようかなー」
ルシアたちはネアたちのやり取りを敢えて目にしないようにしながら、明日の食事会について真剣に話し合い始めていた。
「・・・きつく触らないで下さいね。結構敏感なんですよ」
ネアはむすっとしながらピンクの肉球をバトに差し出していた。
ヤヅの郷主の交代に向けて動き出します。
郷主の娘としての立ち居振る舞いから考えるとルシアは既に及第点となっています。
令嬢として板についているのはパルになると思われます。
ルシアの店「星の花」はそれなりに繁盛しているので、ケフの税収の少なくない部分を占めています。
ジーエイ警備もそれに伴い大きくなっていくと思われます。
今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。