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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第18章 事変
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239 師匠と弟子

今年最初のUPです。このお話も気づけば5年続いています。我ながら、良く続くものだと呆れ半分、感動半分の気分です。

休み明けのちょっとした暇つぶしに役に立てば幸いです。

 「な、言っただろ。俺たちはちゃんと帰るって」

 ネアは目の前のハチ割れの少女ににやりと笑いかけた。

 「随分と怖い思いしたけど。でも、私たち、帰れたよね」

 ハチ割れの少女はとても嬉しそうで、その尻尾はピンと立ち上がり、小刻みに震えていた。

 「そう、俺たちは最強のタッグだよな。奥方様の命令も遂行し、ふざけたヤツを痛めつけ、帰れる場所を護ることに役に立てた。皆、傷つかないし、死ぬこともなかった。大切なモノを護ることができて、帰ってこれた、こんなにうれしい事は無いよな」

 「ふふ、ネアが前の世界では考えもしなかった事だよね」

 やり遂げた感を出すネアを見て少女は笑い声を上げた。

 「これから、大切はもっともっと増えていくよ。護るものが増えていくよ。そしてね、嬉しいことも増えるんだよ」

 「そうなるといいな」

 「いいなじゃないよ。そうなるんだよ」

 ネアは少女のとびっきりの笑顔につられて思わず笑顔を浮かべ、そして彼女の言葉を肯定するように大きく頷いていた。


 「あのふざけたガキをどないするつもりや」

 エイケロンはお館様の執務机に腰かけながら、報告書を難しい表情で読んでいるお館様に声をかけた。

 「どないもこないもあるかよ。あの馬鹿に迷惑をかけられた郷で共同して裁きたいね。いくら一番迷惑を受けたってだけで、ケフのみで裁いたりすると、あちこちから文句が出てきて、いらない事、つまり、ケフが今回の騒動を仕掛けたんじゃないかって勘繰られたくないんだよな」

 お館様は報告書を読み終えサインをすると、机上にある確認済の箱に入れ、軽く目をこすった。

 「それや、それ。ワーナンから、わしらも被害者やからとれるモンはケツの毛までむしり取れって、きよったさかいなー」

 エイケロンは肩をすくめて苦笑した。それにつられるようにお館様もため息を一つついた。

 「ヤヅはそんなに豊かな郷じゃないからな。賠償金をたっぷりむしり取ると、郷がなくなってしまう。難民が発生するのは明らか、で、彼らはケフに雪崩れ込む。ヤヅが隣接している郷はケフだけだからね。ケフも彼らを無制限に受け入れられる余裕はない」

 お館様はどうしたものかと椅子に深く身体を沈め込んだ。

 「幸い、バルンは正式に郷主として認められている訳ではない。彼を謀反をおこし、郷を乗っ取ろうとした、とすればヤヅも無くなることはないと思うが、マルバン家には子は彼しかいないし、カーウィン殿は側室を持たず、彼の兄弟もいない。バルンには子どもがいない、となると誰が郷主となるかだが・・・」

 お館様は困ったなと首を振った。そんな姿を見たケイケロンは暫く考え、はっと何かに気付いた。

 「お前がヤヅに行こうとした時、止めた子、おったよな。あの子を使えんか? 」

 エイケロンはニヤニヤしながらお館様ににじり寄った。

 「簡単に言うなよ。確かにあの子は、ボーデン氏の孫娘だが、まだ6歳になったばかりだぞ。勘繰る奴から見るとケフが傀儡を仕立てたって攻撃する理由を与えることになる。物事はそんなに旨くいかないよ」

 お館様はそう言うと力のない笑い声を上げた。

 「そうでもないよ。彼女はヤヅの真の実力者ボーデン氏の孫娘だよ。彼女の両親にもこの件について、早速連絡を入れておいた。彼女の両親を次期郷主に推そうと思うんだよ」

 ご隠居様が執務室に入ってきて困り顔の2人ににやっと笑ってみせた。

 「ケフの郷主を危険から救い、郷を反乱者から救ってくれと嘆願していた。これは立派な郷を思っての行動だよ。で、ここからがフィクションだ」

 ご隠居様は2人を呼び寄せると小声で話し出した。


 「結局、生き残った刺客はさらに寝付くことになったのか・・・」

 ルーカとタミーに撃退された女刺客は鼻の骨折とあちこちの打ち身で診療所の治療室にいたのであるが、目覚めると隙を伺って、あろうことかレイシーに襲い掛かり、彼女に斬られることはなかったものの、華麗に殴られ、綺麗に投げ飛ばされ、結果として身体のあちこちの骨折と成り果て、ベッドの上で身動きできない状態に成り果てたことを聞いたヴィットは深いため息をついた。

 「傭兵の生き残りから聞いたところ、奴らの大将のボーユってのがバルンから旨い話があると聞いて、今回の騒ぎを起こす契約をしたらしい。ボーユとしては、安心できる港が欲しかったようだ。バルンは港の提供を餌に彼らの報酬を値切ったようだ。契約書は血で汚れてはいるが、回収している」

 鉄の壁騎士団の団長室でお茶をすすりながら黒狼騎士団長のガングが決して人道的とは言い切れない手段で入手した情報をヴィットに話した。

 「ボーユが連れてきた奴以外、ネアが言っていた船員崩れたちの動向だが、雲行きが怪しくなってきたと悟った一部の連中はヤヅから脱出しているようだ。残りはキチンと落とし前をつけてもらいたいね」

 「落とし前をつけようにも、部隊を派遣する余裕は俺の所も鉄の壁騎士団にもないだろ。しかもだ、他の郷、しかも都に俺たちが入ったら、戦だぜ。事は簡単にすまないぞ」

 ヴィットとガングは互いにため息をつき、この騒ぎの元凶となった男を頭の中で数回叩き斬っていた。


 「難しい事は大人に任せて、いつもとおりお仕事をしましょう。ネア、無理はしないように。ここは襲いかかって来るモノはいないからね。レヒテはちゃんとお勉強してくるように、将来このような事が起きた時、正しく判断し、決心するための土台を作るために大切な事です。郷の民の命が貴女たちの言葉一つで失われることもあるのです。だ か ら、さぼると相応の罰があると心得なさい。ギブンも同じです」

 奥方様は朝の挨拶の後、ネアに安心するように話しかけ、きっと厳しい目線を我が子に向けた。

 「承知いたしました」

 ネアは恭しく頭を下げ、自分の作業場所に向かい、レヒテとギブンは真剣な面持ちで図書室で待ち受けているアルアの元に突撃していった。

 「ネア、貴女の働きには感謝していますが、私たちが悲しくなるようなことは止めて欲しいな。もう、手がない場合は別として、自ら進んで死ぬような仕事はしない事。ラウニ、フォニー、ティマも同じですよ。悲しいけど、万が一の時の貴女たちの死に場は私たちが準備します。その痛みを一生抱え続けることを覚悟して。だから、簡単に死ぬようなことは認めませんからね」

 奥方様が真剣な表情で口にする言葉を聞いて、ネアは改めて今いる世界が厳しい世界であることを認識していた。

 「死に場所を準備して頂ける・・・、ありがたい言葉ですね」

 死に場所を準備されることと同時にその死に対して痛みを感じてもらえることにネアは奥方様のやさしさを感じていた。前の世界では、命令によって死んでも、損耗を表す数字を構成するモノでしかなく、構成する命について深く考える者はほとんどいなかったことを思い出したからであった。

 「そうてすね。このお家なら決してその場しのぎや、体面を繕うために死ぬことを強要されることはあり得ませんから」

 ラウニがネアの言葉に頷きながらそっと耳打ちした。

 「あたしは、アイツをやっつけるまで死ねない・・・です」

 奥方様の言葉に納得いかないとティマが低く唸るような声を出した。

 「ティマ、私たちが死に場所を与えられるような場合は、既にこのケフが攻め落とされようとしている時ぐらいでしょう。このケフを襲ってくる奴は、バカかイカれた奴ぐらいでしょ。バカでイカれているのは正義の光連中しかいませんから。その時は、かわりにお館様たちがアイツを討ってくださる、と私は信じていますよ」

 ネアは怒りを隠そうともしないティマの肩をそっと抱いて彼女の大きな耳に小さな声で語りかけた。

 「そんな事にさせないためにも、私たちが皆でケフの郷を強くしていかなくちゃならないんです。その一歩は自分がするべきことをやり遂げることです」

 「強くなる、もう、好きにさせないから・・・」

 ティマはきつく拳を握りしめて喰いしばった歯の間から絞り出すように呟いた。

 「そう、奴らの好き勝手にされないためにも」

 「強くならなきゃね」

 ネアの言葉をフォニーが継いでティマの頭をガシガシと撫でた。その荒っぽい愛撫にティマは身体の力を抜いてぱっと顔を上げた。そこにはいつもの元気なティマの笑顔があった。

 「私たちのお仕事も、ケフを強くする力の一つですからね」

 ラウニに優しく言われるとティマは大きく頷き、懸命に命じられた飾りボタンの縫い付けをはじめだした。


 「剣精様が稽古してくれるって、準備して」

 いつもより早く勉強が終わったようでレヒテが執務室に飛び込んでくるなりネアたちに声をかけた。

 「奥方様・・・」

 いきなりの事で、判断に迷ったラウニが奥方様を見ると、奥方様は笑みを返してきた。

 「お仕事は滞ってないし、こんな機会は滅多にありませんからね。思いっきり稽古をつけてもらってきなさい」

 奥方様はラウニに稽古に行ってくるように指示した。その言葉を聞いた途端、レヒテが口を開いた。

 「裏庭の稽古場にすぐだよ。格好はそのままで。着替えている時間が勿体ないよ」

 レヒテはラウニたちを急かすと、先に稽古場に走って行った。その手にはただなすがままに引きずられるギブンの手があった。


 「今日は、侍女たちを中心に稽古をつけて頂きたいと思います」

 エルマが町娘姿で佇んでいるラールに稽古をつけてもらう相手について説明した。

 「エルマが全員に仕込んだのじゃな」

 目隠しのまま並んだネアたちを見るようにしてラールが楽しそうに尋ねた。

 「はい、バト、ルロ、アリエラ以外は最初から稽古させています。ラウニ、フォニー、ネア、ティマは基本を叩き込んでいる最中です」

 「そうか・・・、それでは彼女らの師匠はお主じゃな。まずは、師匠たるお主の腕が錆びついているか確かめてみようかのう。ほれ、木剣をとれ。わしも・・・」

 ラールは木剣が突っ込まれている樽から細身の木剣を2つ取り出し、軽く振ってから頷くと稽古場の中央あたりに目が見えているのではないかと思わせる足取りで向かい、木剣を逆手に持つとエルマが来るのを待っていた。

 「錆びついてるのに、致されたら剣精の名折れですね。ま、お歳がお歳ですからね」

 エルマはニヤリと笑うと両手剣を手にしてラールの前に正対した。真剣での勝負ではないとしてもその場に張り詰めた空気が漂いだした。

 「儂も歳じゃからな。しかし、お主の加齢臭は目で見るよりお主の位置を教えてくれる。なかなか憎い心配りじゃな」

 ラールは大げさに鼻をひくつかせ、ちょっと顔をしかめた。

 「禁句だよ」

 「破滅を召喚する言葉なのに」

 「とばっちりが来たらどうしよう」

 残念トリオは互いに顔を見合わせ、互いに顔色をなくしていることを確認した。『加齢臭』この言葉は、エルマには決して口にしてはならない言葉であり、かつてこの言葉を口にした少年が如何なる目に遭い、今は彼女の僕と化しているのを目の当たりにすれば、残念トリオの恐怖は当然の事であった。

 「年寄りが無理しないでください」

 「その年寄りより加齢臭がするのは如何なモノかのう」

 互いに口を利いた後、その場に鋭い木剣同士がぶつかり合う音が響いた。エルマが低い姿勢で絞り切った弓から放たれた矢の如く踏み込み目にもとまらぬ速さで横なぎにした。その剣を右手の木剣で杖をつくようにしてラールが受けると身体を捻り、そのまま左手の木剣で斬り上げるようにエルマに叩き込んだ。

 「ふっ」

 エルマはさっと飛び退いてラールの一撃をかわし、再び木剣を構えた。

 「打ち込みは、まだ錆びていないようじゃな。加齢臭は強くなっておるが」

 「歳ですから、無茶はダメですよ。寝たきりになりますよ。下の世話はしかねますからね」

 ラールとエルマはにらみ合いながら互いに不敵な笑みを浮かべた。

 「締まりは、お主よりいいぞ。色もきれいじゃからな」

 ラールはそこまで言うとクルリと身体を回すようにしてエルマの胴を斬りつけるが、エルマがその切っ先を弾いた。

 「表現が一々下品です」

 弾いた勢いでそのまま刺突に移るエルマの剣を身を捻るようにしてかわすとラールはぴたりと背中をエルマに密着させ、そのまま背後に剣を突き出すように刺突した。

 「っ」

 エルマが飛び退いたがそれより早く剣精の剣が彼女の首にそっと当てられていた。

 「参りました」

 エルマは一言口にすると、その場に木剣を落とした。

 「まだまだ錆びてはおらんようじゃ。精進を忘れるなよ」

 ラールはそう言うと木剣をついて足元を探るようにして元の場所に戻った。

 「さ、次は誰じゃ」

 彼女はそう言うと居並ぶ侍女たちを品定めするかのように気配を探って行った。


 「何よあれ、かすりもしないし、それ以前に追いつけない」

 肩で息をしながらルーカが残念トリオをまとめて稽古をつけているラールを見ながら吐き出した。

 「2人がかりでも捕まえらせませんでしたからね。あれで本当に目が見えていないのでしょうかねー」

 残念トリオの連携攻撃を華麗にいなして、それぞれの頭をポンポンと木剣で叩くラールにタミーも目にしているモノが信じられないとばかりにこぼした。

 「なんで」

 「当たらないの」

 「すり抜けた? 」

 残念トリオを散々ラールに翻弄され最終的には稽古場にへたり込んでしまった。

 「3人がかりで、全く歯が立たないなんて、信じられません」

 「私らが弱いってわけじゃないと思うよ。剣精様が強すぎるのよ。しかもアソコは綺麗だったし、締まりもよさそうだったし・・・」

 「あの斬新な挨拶、こんどティマちゃんとしてみようかなー」

 バトとルロがへばりながら愚痴っている横で、アリエラがとんでもない事を想像して少しばかり鼻息を荒くしていた。

 「教育上、悪影響しか与えないと思います。絶対にさせません。もしやろうとしたら、貴女のソレ、引っこ抜きますから」

 ルロはアリエラの襟首を掴むとぐっと引き寄せた。

 「あれは、エルフ族の挨拶だからね。それに、アリエラのって絶対汚くて変な臭いがしているから。だからね。きれいに洗ってあげるよ。たわしとブラシで丁寧にすり減るぐらい」

 バトもどこか的外れな事を口にしながらも、この危険物をティマの目に触れないようにその場から引きずって行った。


 「お主らもまとまってかかって来い。手加減はいらんぞ」

 ラールはネアたちに顔を向けた。

 「よっしゃ、行くよ」

 木剣を手にしたフォニーが気合を入れるようにぐっと一歩踏み出した。

 「全力で当たるのみです」

 ラウニは全身に力を漲らせるように全身の毛を逆立てた。

 「強くなるため・・・です」

 ティマもナイフのような短剣型の木剣を構えてラールを睨みつけた。

 「ふふ、やる気はあるようじゃのう。で、猫の子はどうじゃ」

 「言われんでも」

 ネアはラールの挑発ににやっと笑って応えた。


 「痛い・・・」

 稽古場の床に虎の敷物ように伸びたネアが呻いた。

 「悪い夢だよね」

 「疲れました」

 テディベアのように足を投げ出しているラウニと、彼女に毛皮のマフラーのように巻き付いたフォニーは互いに呻いていた。

 「面白い能力じゃな」

 ティマは稽古場に腰を降ろしたラール前にちょこんと座ってエルマにお菓子を振舞ってもらっていた。

 「ふと、消えるような……、特殊な力じゃな」

 両手でクッキーを持って小動物のように食べるティマにラールは語りかけた。

 「あたし、気配をけすことができるの・・・です。でも、剣精様は目が見えないのにあたしにコツンって」

 ティマは大きな耳の間に手を置いて不思議そうにラールを見つめた。

 「気配は消せても、匂い、体温、呼吸、心の臓の動き、体の中を走る気の動き、消せるものではないぞ」

 ラールはティマに如何に相手の存在を感じ取るかを少々オーバーアクションで説明していた。

 「お師匠様、小さい子がお好きだったんですね」

 そんな様子を見たエルマがそっと茶化すようにラールに囁いた。

 「剣の道は少々齧ることができたが、儂はまだ 母 をしたことがない。剣と母の両立こそが儂の目指すところじゃ」

 エルマの問いかけに少し恥ずかし気にしながらラールが答えた。

 「まだ、そんなこと言っているんですか。で、良い人が見つかりましたか」

 「・・・まだじゃ・・・」

 なぜか今までの快活さは鳴りを潜め、ラールは小さくなりながらエルマから視線をそらせた。


 「あら、もうお稽古は終わりましたか? 」

 しょげているラールの耳に新たな声が飛び込み、彼女は思わず声の方に顔を向けた。

 「レイシーさんとビブちゃん、レイシーさんもお師匠に稽古を? 」

 ビブを抱いてにこやかにやって来たレイシーにエルマはその真意を尋ねた。

 「足がこんなんですから、何合も打ち合うできませんが、是非とも稽古をつけてもらいたくて」

 「ビブちゃんは、私がお預かりしますね。ビブちゃん、また大きくなったね」

 レイシーはそっとビブを降ろし、エルマに頭を下げた。ビブもこれから何があるかは承知しているらしく、ぐずることもなくエルマの前にトコトコと歩み寄った。

 「エルマおばちゃんこんにちは! 」

 純真な子供の口から発せられた言葉にその場にいるレイシー以外の人物は凍り付いた。

 「おばちゃんじゃなくて、お姉ちゃんだよ」

 無理やり笑顔を作っているが、その裏で怒りが逆巻いているのを本能的に感じたビブは表情をちょっと引きつらせ。

 「えるまおねえちゃん、よろしくお願いします」

 「ご挨拶できるのね、えらい、えらい」

 エルマはにっこりしてビブを抱きしめていた。


 「その気配、それなりに使うようじゃな。ん?足か?」

 細身の木剣を手にしたレイシーにエルマが首を傾げた。

 「この足で一線を退きました。今は剣士と言うより母親ですね」

 レイシーが自嘲するかのように言った言葉にラールは表情を失い。その場に座り込んだ。

 「剣の腕があり、そのうえ母親じゃ・・・、すまん、弟子にしてくれ。否、師匠と呼ばせてくれ」 

 ラールの言葉にその場にいるものの全ての動きが止まった。

 「剣精様は何を言っているんだ? 」

 ネアは驚きと呆れが綯い交ぜになった表情を浮かべた。

 「え、あ、あの、私に弟子入りって・・・、えっ、どういう」

 そして、一番混乱したのはいきなり剣精に弟子入りを志願されたレイシーであった。

 


ラールは、その奔放な性格のおかげであちこちで混乱を招くことが少なからずあります。

この奔放さが剣聖ならぬ剣精と呼ばれている所以です。

一応独自のスタイルですが、それなりに極めたと自負している彼女ですが、私生活、家庭に関してはバトと大して変わらない状態です。

彼女が、ケフに居つくかどうかは彼女の気分次第です。目が覚めて鳥の鳴き声が聞こえたことですら、彼女にとっては充分な行動の理由になります。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

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