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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第18章 事変
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237 メインディッシュとデザート

PCの排熱で暖を摂る今日この頃です。

(無理してデスクトップを買った甲斐があったと思っております。)

このお話が、ちょっとした暇つぶしになれば幸いです。

 「敗戦した郷が旗を降ろすのを見るのは、敵とはいえ複雑な気分になるな」

 ヤヅの関に詰めている初老の真人の騎士の1人がポツリと呟いた。彼の目にはコービャの関にたなびいていたケフの郷旗が関を閉める時間でもない昼下がりにスルスルと下げられる光景が映っていた。

 「敵とか敗戦って、我々は奴らと剣を交えていませんよ。戦功は全て、バルン様が雇われた海賊みたいな連中が掻っ攫っていきましたから」

 彼の横に立っていた若い騎士が不満を滲ませて口にした言葉を聞いて、初老の騎士は思わず苦笑を浮かべた。正規の騎士団員はただ関を閉めろとか、ケフとヤヅの郷主一行を捕獲せよなどの戦働きを見せるような任務は一切命ぜられることがなかった。それ以前に、ケフと開戦したとの報せも未だに耳にしていないのである。見えないところで何かが確実に動き、そして知らないうちにケフに勝利した、この勝利の報せすらも彼らは耳にしていないのである。

 「使いの子どもと女が来て、初めて勝ったのかなって推測する体たらくだからな。どんなことになるかは分からんが、多分大きな嵐が吹き荒れるぞ。これは覚悟しておくことだな」

 初老の騎士はため息交じりに若い騎士に言うと、もう旗も何も上がっていない掲揚塔を不安そうにじっと見つめていた。


 「書状を賜ってきました。これが書状と言うならばですが」

 タカノ沢近くに幕営しているお館様にネアは怒りを必死でかみ殺しながら、バルンがネアに投げつけたメモ用紙をお館様の野外用机の上にそっと置いた。

 「随分と斬新な書状だね。これを書状と言うのであればね。例え征服されたとはいえ、郷主に宛てるモノではないな。彼は随分と自由な人なんだろう。キリーン殿、これは中々面白いですぞ」

 お館様はバルンのメモを手にしてその場に居合わせたミオウの郷主であるキリーンに見せた。

 「面白いと言う前に、バルン殿のおつむは聊か残念なご様子ですな」

 バルンのメモを見たキリーンは思わず吹き出していた。

 「俺の書状を真に受けたことは確かなようだ。では、ステキな書状を書ける彼を手厚く歓迎してあげようではないか」

 お館様は周りに控えている両騎士団長たちに、いたずらっ子のように笑ってみせた。

 「あの笑顔は、凄い事を企んでいる顔だ・・・」

 ネアはかつてあの笑顔をスージャの関を奪還する戦いの時に見たことを思い出して小さな声で呟いていた。

 「面白い事を考えているのは声の質からも分かるぞ。できるものなら、儂が暴れられる場を与えてもらいたいものじゃ。あの傲岸不遜な馬鹿に命乞いをさせたくてのう。あの嫌らしい声を二度と出せんようにしてやりたいのじゃ。あんな声質はヤツはロクでもないヤツでしか吐き出せんからのう」

 ラールはバルンの放った声を思い出すと顔をしかめた。

 「私もムカついているんですよ。お館様を馬鹿にして、心を複雑骨折させてやりたいぐらいです」

 ネアはそう言うとぎゅっと拳を握りしめた。


 「敗軍の騎士とは惨めなモノだ」

 コービャの関を通過するバルンは馬車の窓にかかったカーテンを少し指先で分けて俯き加減で黙々と撤収作業を続けるケフの騎士たちを見て鼻先で笑った。

 「なにもかも、バルン様の智略の賜物ですよ」

 この騒ぎの中、バルンの秘書官として抜擢されたエジルは下手な幇間のようにバルンに胡麻を擦っていた。そんな様子をバルンはつまらなそうにちらりと見て小さなため息をついた。

 【自称カミソリか、切ることならバターナイフの方が切れ味は上だな】

 バルンの中ではエジルの価値はいつ切り捨てるかの問題を提供するだけになっていた。

 【ケフには使えそうな奴はいないようだし、暫くは、こいつでがまんするか・・・】

 「いい面してますよ。あの恨めしそうな目、特にあの犬っころなんて」

 エジルはケフの関で様々な作業している騎士たちをバルンと同じようにカーテンの隙間から見て下品な笑い声を上げていた。


 「道を開けよ」

 バルン一行が関を超え、街道の両側に延々と森が続く辺りのど真ん中、タカノ沢まではまだ、歩いて四半日ぐらいの場所で彼らの行く手を鎧を付けた一団が遮っていた。

 「我ら、ミオウの郷、波しぶき騎士団。義により貴様らを討つっ!」

 彼らの戦闘に立った波しぶき騎士団長のロッドが大音声を上げるとバルンに付き従ってきた騎士たちがさっと馬車の前に盾を構え、防御の陣形をとった。

 「と、言いたいところだがね。我々にも美味しい思いをさせてもらいたいんだよ」

 居並ぶ波しぶき騎士団員たちの背後からミオウの郷主キリーン・ザイエンがひょこっと姿を表した。

 「戦う意思はないよ。いまの所はね」

 馬車の扉が開き、やたら装飾が施された服を着たバルンが勿体ぶって降りてきた。

 「キリーン殿、中々の俗物ぶりですな」

 バルンは数的には波しぶき騎士団の3倍はおり、数的に優勢である。さらに森には伏兵が同じ数いる。このことがバルンに自信を与えていた。

 「ケフには、おこぼれもなかったのかな」

 バルンはニヤニヤとした笑みを浮かべながら、お道化たように尋ねた。

 「この臭いに気付かないのかい。ケフの街は殆ど燃やされて、郷の民は女、子供は犯して殺し、それ以外はすぐに殺し、でおこぼれが残る方が不思議だよ」

 キリーンは鼻をひくつかせると肩をすくめて大げさにため息をついた。

 「言われれば、随分と焦げ臭いな、ここまで臭うとなると、ボーユのヤツ、随分と派手にやったようだな」

 勝利を確信したバルンは薄ら笑いを浮かべながらキリーンを見た。

 「ミオウがヤヅに恭順するというなら、考えてあげてもいいよ」

 「ミオウにヤヅの属郷になれという事かな」

 腕を組んで絶対的な有利を疑わないバルンはキリーンを完全に見下していた。

 「物分かりが良いじゃないか。僕はね、こんな北の隅っこに押し込められている郷にはうんざりなんだよ。この勢いで次はワーナンだ。そして行く行くは・・・」

 その言葉を聞いた時であった。いきなりキリーンはぶっと吐き出し笑い出した。それと時を同じくして波しぶき氏団員たちも肩を震わせて笑い出した。

 「な、何がおかしい。その失礼な態度で気が変わった。あいつらを始末せよ。この勢いでミオウを燃やし尽くす。郷の民は愚かな郷主をさぞかし呪うであろうが、知ったことではないからね」

 「起きたまま寝言を言える人物とは千年に一度会えるかどうか・・・ぷふっ」

 キリーンはそう言うと腹を抱えて笑った。それは決して演技ではなく、顔を真っ赤にして息苦しそううであった。散々笑われたことにより怒りで顔を真っ赤にしたバルンは控えている騎士団員たちに命令を下した。

 「ばっとぅ・・・」

 護衛の騎士団の長が号令を発し終える前に目の前を矢が一本通り過ぎ街道わきの木に深く突き刺さった。

 「もう少し歯ごたえのあるのは準備できんかったのかえ? 」

 いきなりの事に状況を飲み込もうとしているバルンに涼やかでありながらも小馬鹿にしたような声がかけられ、森の中から伏兵一人にに刃を付けつけるように声の主であるラールが現れた。

 「潜ませていた連中はコイツ以外は皆、森の養分になっておるぞ」

 ラールはその男の背中を蹴りつけて街道上に倒すと剣を仕込み杖に納めた。

 「お、お前は書状の・・・」

 バルンはラールを指さして口をパクパクさせ、何かを言おうとしていた。

 「紹介が遅れてすまん。儂は、ラール。世の連中は勝手に剣精と言ってくれておるがのう」

 まるでバルンの表情が見えているかのようにラールは楽し気に笑みを浮かべて顔をバルンに向けた。

 「バルン様、楽しい夢はここまでですよ」

 森の中から黒狼騎士団を引き連れたお館様と一緒に出てきたネアがバルンに一言放った。それを合図にしたかのように彼らの車列の背後で鉄の壁騎士団員たちがその退路を断っていた。

 「ケフには戦力が残っていないんじゃないのか。ビケット、騙したのか。卑怯者め、斬り捨てよ」

 バルンはお館様に噛みつくような威勢で吠えると、護衛の騎士団員たちに命じた。

 「既に囲まれております。これ以上の抵抗は徒に犠牲を増やすだけと判断いたします」

 バルンの命令に護衛の長は剣を抜くこともせず辺りをすっかり囲まれていること、勝ち目が無い事を具申した。

 「いい家臣を持っているね。この子が言うように君の夢はもう終わりだよ。ボーユだっけ、彼にはもう会えないよ。なかなか、面白い事を考えているようで聊か勿体なかったけど、始末させてもらったよ。痛い思いをしたくなかったら、武装を捨てることだな。それとも、郷主らしく戦って散るか」

 お館様は腰に佩いた剣をポンと叩いてバルンに決断を迫った。

 「儂としては、是非とも郷主らしく戦ってもらいたいのう。まだまだ暴れ足りないのでな。この中に、剣精を討ち取って名を上げたいヤツはおるか? 」

 ラールは挑発すようにバルンを護るように陣形を変えた騎士団員たちに声をかけたが、誰もそれに応える者はいなかった。

 「ラール様に挑むなんて、自殺したいだけだろ」

 お館様の横に控えてた黒狼騎士団長のガングは肩をすくめた。それを見たお館様は小さな笑い声を上げた。

 「あの偉そうな態度はどこに行ったんですか? 腰をぬかしましたか? こんな餓鬼、しかも猫もどきに言われて腹が立ちませんか? ねぇ、バルン様」

 ネアは敢えてバルンを挑発するように声をかけた。

 「私一人でもバルン様なら討ち取れますよ」

 ネアはそう言うと騎士団員たちに囲まれているバルンに声をかけた。

 「ネア、何を言っているんだ。そんな挑発に乗る馬鹿は・・・」

 「馬鹿にしおって」

 お館様がネアを止めようとする前にバルンは一声叫ぶと自分を護っている騎士団員たちの陣の中から出ると腰に佩いていた細身の剣を抜刀した。

 「あの男、馬鹿か」

 お館様はあまりの事に頭を抱えたくなっていた。

 「馬鹿は力で屈服されない限り、何度でもやらかします。奴の性根を複雑骨折させない限り、我らの勝利とは言えません」

 「くれぐれも大きな怪我をさせるなよ。馬鹿も怪我はするからな」

 お館様はシャフトを伸ばして構えるネアの背後から声をかけた。

 「主従揃って愚弄しやがって」

 バルンは見てくればかりの両手剣を手にするとネアに大上段に構えて走り寄ってきた。その構や足運びからネアは彼が真っ当に剣術を身に付けておらず、子供程度なら勝てるとなめてかかっている事を読み取り、身を低くすると猫族ならではの身体能力、つまり全身のバネを使って飛び出した。ネアのいきなりの動きにバルンは思わず足並みを乱し、闇雲に両手剣を力任せで振り下ろした。

 「歯ぁ、喰いしばれっ」

 振り下ろされる刃を潜り抜けネアは叫ぶと、シャフトの先端をバルンの踏み出した右足の膝に突き刺すように繰り出した。シャフトの先端はネアの狙いとおりバルンの右ひざの皿の中央あたりに鋭くめり込み、バルンは悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。ネアは落ちてくるバルンの身体を避け、さっと左に飛び退くと護衛の騎士たちを睨みつけながら後方に下がった。

 「あ、足が、足が」

 膝を抱えることもできず横たわったまま砕かれた膝に手を当ててバルンは苦悶の脂汗を流していた。そんな郷主の姿をみていたヤヅの騎士たちはその場に手にした武器を放り出し、戦う意思が無い事を示した。

 「あれは、一生、足を引きずることになるぞ。足もそうだがヤツの心も砕いたようだな。部下の目の前でのあの失態はキツイな」

 バルンに一撃を与えたネアが戻ってくるとお館様は彼女の頭を撫でながら呆れたような声を出した。

 「中々にえげつない攻撃じゃな。いっそのこと真ん中の足も潰しておくと良かったのにのう」

 ネアがシャフトをしまっているとその背後からラールが声をかけてきた。

 「それは、逆に恨みが強くなってへし折ることはできないと思いましたので」

 ネアは考えもしなかった攻撃点を指摘されると、思わず身震いした。

 「アレを持っておったから、狙わなかったのかのう。そこまで非道はできんか。それも良しじゃ。今切らんでも、後からでも切り落とせるからのう」

 ラールは意味深な事を口にすると低く笑った。その笑いに何故かその場にいた男たち、ネアまでもが思わず股間に手を当てていた。


 「見せてみい。これぐらいでは死なん」

 街道上で横たわり脂汗を流しながら唸るバルンの下にジングルはハンレイとともに勿体ぶってやって来ると彼を怒鳴りつけた。

 「ネア君の慈悲だねー、真ん中じゃなくて良かったねー」

 ハンレイはラールが口にしたようなことを言いながらバルンの装飾過多なズボンの右裾を手にしたナイフで切り裂いて行った。

 「見事に砕かれておる」

 「うーん、これだともう膝を曲げることはできないねぇ」

 両医師は互いに言い合いながら砕かれた膝に副木をあてるとがっしりと包帯で固定した。

 「あの威勢が良かったバルン殿が・・・、濃い霧の中の一歩先は見当もつかん、とはよく言ったものだよ」

 キリーンがロッドとともにお館様に歩み寄ってきた。2人とも好奇の目で担架に乗せられ呻いているバルンを眺めていた。

 「アレをやったのは、ひょっとしてケフの凶獣かな? 」

 キリーンはにやっとしながらネアを見ると、ネアは小さく頷いての言葉を肯定した。

 「うちの騎士団に欲しい逸材ですな。どうだ、給金を倍出すからうちの騎士団に来ないか」

 ロッドはお館様から3歩下がって控えているネアに声をかけた。

 「大変ありがたいお言葉ですが。私の忠誠はビケットのお家に捧げておりますので、申し訳ありません」

 ネアはロッドに深々と頭を下げた。それを見たロッドはいきなり笑い声を上げた。

 「俺が見込んだ通りの逸材だ。残念ながら諦めねばなりませんな」

 「うーん、ネアはお金では動かないようだよ。小さいながらも立派なビケットの臣下だね。ゲインズ殿は良い家臣をお持ちで羨ましい」

 ロッドとキリーンは笑いながら優しくネアの頭を撫でるとお館様に向き直った。

 「バルン殿の処置は如何ほどに? 彼により迷惑を被ったのは事の大小あれど、我らミオウも同じ。民を人質にされたこととなると、ワーナンを含めるとどの位の郷が迷惑を被ったか・・・」

 キリーンはお館様にバルンの今後の処置を尋ねてきた。

 「殺してしまうのは簡単ではあるが、我が郷が口封じをしたと思われかねん。できれば公の場で裁きたいと考えている。キリーン殿は如何様に? 」

 お館様は運ばれていくバルンを見おりながらキリーンに彼の処置について思うところを語った。

 「そうですな。ケフがヤヅに喧嘩を吹っかけたと勘繰られるのも癪なことですからな。大々的に裁きましょう。裁きに必要となる費用も全部とは言えんが協力させてもらうつもりだ。その辺りは、後々、ミオウの宰相に細かな調整をさせるつもりだ」

 「それは助かりますな。今日は我が館に逗留して行って下さい。豪勢とはいかぬが、食事と酒も用意させよう。我らが勝利を祝おうではないか、だよ」

 お館様はいきなり砕けた口調になってキリーンに笑いかけた。

 「うちの騎士団長が借金しなくて済むようにしてもらえれば助かるよ。少しでもケフの役に立てたことがうれしいよ」

 キリーンはそう答えるとお館様に手を差し出した。

 「君たちには、随分と助けてもらったからね」

 お館様は差し出された手を力強く握った。

 「お館様、剣精様と小さな忠義者の英雄に何か褒美を遣わして頂けないでしょうか」

 2人のやりとりを傍から見ていたロッドがそっとキリーンに声をかけた。

 「剣精様にはミオウの穀物を使って作り、磨き上げた酒を。この小さな忠義者には・・・、銀細工の髪飾りを遣わそうじゃないか。我が郷の酒は天下一、銀の細工は王都に持って行っても恥ずかしくないものだからな」

 「良き酒は、うん、楽しみじゃ」

 キリーンの言葉にラールは満面の笑みを浮かべていた。目隠しがなければその表情はごく普通のエルフ族の娘のように無邪気だった。

 「私には勿体無い事です。できるものなら、髪飾りではなく、侍女仲間で食べられるようなお菓子を所望いたします」

 ネアはキリーンにおずおずと遠慮がちに自分の希望を伝えた。ネアは早く戻って待たしている人たちに一刻も早く逢いたくなってきていたのであった。仕事以外で誰かに会いたいなんて前の世界では考えられなかったことを望んでいる自分にネアは少しばかり戸惑いを感じていた。

 「そうか、菓子か。ミオウは穀物を使った焼き菓子が自慢でな。アレはお茶にも酒にもあう優れものだよ。すぐに手配させよう。可愛い箱に入れてね。この箱もなかなかいい品でね。箱だけでも欲しいって娘もいるぐらいだよ」

 キリーンはどこの地方役所の広報係だと思わさんばかりにミオウの特産品をPRしだした。自ら特産品を売り込もうとする郷主の言葉にネアは苦笑をかみ殺しながらひたすら感心したように聞いていた。


 「ねえ、聞いた? お館様がバルン様を捕まえたって」

 お使いから戻ってきたフォニーがついさっき街で噂されている事をラウニに聞かせた。

 「え、バルン様はヤヅにおられるんじゃないのですか? どうやって捕まえられたのですか? 」

 「うーん、そこまでは分からないよ」

 ラウニの追及にフォニーは困ったような顔になった。

 「ネアお姐ちゃん、帰ってくるよね・・・です」

 ティマが最近任されるようになった飾りボタンを付ける手を止めてポツリと呟いた。

 「ネアは心配しなくても帰ってきますよ。すぐにでも元気な顔を見せてくれるかも」

 奥方様が心配と不安のオーラをこれでもかと放っているラウニたちに優しく声をかけた。

 「そうですよね」

 「帰ってきますよね」

 「帰ってくる・・・です」

 ラウニたちが自分に言い聞かせるようにそれぞれが呟いた。

 「なーに辛気臭い顔しているのよ。辛気臭い顔をしていると不運がやって来るってハッちゃんも言ってたでしょ。ネアは絶対に帰ってくる。約束したからね」

 レヒテがラウニたちに明るく声をかけた時、奥方様の執務室と言う名の工房の扉がノックされた。

ミオウは大きな湖を擁し、その豊かな水でちょっとした穀倉地帯となっており、良いお酒の産地にもなっています。ネアは年齢的に呑めないのですが、前の世界では呑む機会を蹴っていただけで決して下戸ではありませんでした。こっちの世界でも下戸ではないようですが、アルコールへの耐性は年齢相応です。この世界でも蒸留酒はありますが、普通のお酒と比して金額が数倍違ってきます。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

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