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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第2章 ふしぎな世界
25/342

24 街でおかいもの

小銀貨1枚は100円程度の価値だと考えています。

この世界での戦いは総じて地味なのです。豪剣一撃でドラゴンを倒したり、魔法の一撃で魔族を消し去るということは夢のまた夢です。

 ケフの街を囲う城壁の南門から直線にお館まで続く大きな通りの中ほどに噴水とも泉とも形容しがたい直径10メートル程のオブジェを中心に大きな広場が形成されている。先輩方がマーケットと言ったのは、この広場に所狭しと乱雑に立ち並んだ露店の集団でことであることをネアは手を引かれながら認識した。

 「今日は、いつもよりお店が多いですね」

 広場の入り口の行きかう人々の流れから逸れた場所に歩みを止めてラウニが立ち並ぶ露店を見て感心したように呟いた。

 「人も多いね。特に他所の人が多いみたい」

 フォニーが行きかう人々を目を細めて凝視しながら付け足した。ネアとしては初めてのマーケットである、多いも少ないも判断しようにもデータがないため、先輩方の言葉を素直に信じることにした。

 「・・・」

 しかし、ネアの鼻腔には今まで経験したことが無いぐらいの匂いによる情報が流れ込んでいた。行きかう人々の汗の臭い、露店で焼かれているお菓子の匂い、肉の匂い、ご婦人方の香水の匂い、荷役のために連れてこられている家畜たちの臭い、思わず情報量に顔をしかめてしまった。

 「どうしたの?」

 フォニーがネアのしかめっ面に気付いて覗き込むように尋ねてきた。

 「臭いが・・・」

 「人ごみに慣れてないのですね。こればかりは慣れるしかないの。いらない臭いを気にしないようにしていくこと。でも、危険な臭いは嗅ぎ落とさないようにね」

 ラウニの言葉に気になることがあり、ネアはラウニの顔を見上げて尋ねた。

 「危険な臭い?」

 「これも、慣れと言うか、経験して覚えるしかないのです。でも、本当に危険なものはすぐに分かります。身体が知っているの」

 【身体が知っている・・・、本能で分かるのか】

 難しい表情で考え込むネアにフォニーが

 「3日前のステーキとかの臭いとは違うけどね。何と言うか、ゾワゾワってくるのがあるのよ。これは、アブナイって分かるのよ。理屈じゃないけどね。それより、早く行こうよ」

 明るく話しかけ、露店街に向けてネアの手を引っ張った。


 「お、お館のお嬢さん。今日はお休みかい?いいのが入ったんだ。安くしとくよ。そこの新顔のお嬢さんもサービスするよ」

 露店いっぱいに穴かくし、尾かくしを並べた露店の犬族の青年が親しげ声をかけて来た。

 「これ、かわいい・・・」

 その言葉に釣られるように露店の前に足を止めたラウニがレースで飾り立てられた尾かくしを手にしてため息をついた。

 「渋いのもあるね、ネアはどれが良い?」

 色とりどり、形も様々な尾かくしを目の当たりにしてネアはまた考え込んでしまった。自分に合うモノ、持っている服に合うモノ、流行のモノなど考えるが、全く見当もつかなかった。

 「コレ、いいかな・・・」

 様々に並んでいる商品の一つからネアが手にしたのは、黒の無地、装飾もないようなシンプルなモノであった。

 「それは、紳士もの、しかも、おじさん用だよ」

 フォニーが苦笑しつつ、ネアの選択にダメ出しをしてくれた。

 【前の考えが抜け切れていないのか、前の感覚で考えちゃダメなんだ】

 手にした尾かしをそっと戻すとネアは再び考え込んでしまった。ネアが考え込んでいる間にラウニは露店の主人である青年と商談に入り、そして目当ての尾かくしを手に入れていた。

 「いつもの馴染みということで、本当は小銀貨、5枚なんだが、3枚でいいよ。お、その猫の尾嬢ちゃんが持っているのは小銀貨2枚にしておくよ。それも値打ちもんだからね」

 ネアが偶然手に取った白い大きなリボン状の尾かくしを見て店主は声をかけて来た。

 「小銀貨3枚ね。はい」

 ラウニは巾着状の財布から今朝貰った小銀貨を3枚取り出して店主に渡した。

 「この子、あんまり持ち合わせがないの。もうちょっとまけることってできませんか」

 買った商品をバッグにしまいこみながらラウニが店主に話しかけた。

 「いつも、贔屓にしてもらってるからなー、よし、特別だ、小銀貨1枚と、大銅貨5枚だ」

 店主は、ネアの手にしている処女趣味満開な商品を意を決したように指差した。

 「ネア、よかったね。おにーさん、コレもちょっとお願い」

 フォニーは、ネアの肩を軽く叩き微笑むと、自分が選んだモノを手にちゃっかりと値段交渉に移行していた。

 「しっかりしてるなー、それは、小銀貨2枚」

 やれやれと店主は苦笑しつつフォニーが手にした青いストライプが入った尾かくしに値段をつけた。

 「買った。はい、これね。ネアも早く払ってあげて」

 ただ、手にしただけで購入することとなった尾かざりを見つめながら、ポシェットに手を入れて、今朝貰ったばかりの中銀貨を取り出し、店主に手渡した。

 「お釣りは・・・、小銀貨8枚に、大銅貨5枚だよ。ありがとな」

 手渡されたお釣りを見つめながらネアは、この世界の貨幣が10進法であることを理解した。しかし

 【小銀貨って、どれぐらいの価値なんだ?尾かくしなんて前の世界にはなかったものだし・・・】

 と、根本的な部分はまだ不明であった。

 「じゃ、今度はヘアアクセを探しましょう。ネアも必要になってくるものだし」

 ラウニは店主に軽くおじぎをすると、ネアの手を引っ張って露店が織り成す迷宮の奥に向かって歩き出した。



 「畜生・・・」

 お世辞にも人相が良いとは言えない真人の中年が薄くなりつつある頭を気にしながらかきむしった。

 「兄貴、だから言ったでしょ、前もって商いする場所を知っておかなきゃ、ぐっ」

 その男より少し若いひょろ長い真人の言葉は、兄貴と呼ばれた男の拳で止められてしまった。

 「阿呆な獣ども相手なら、軽いと見ていたが」

 その男たちの露店は誰も足を止めることなくスルーされていた。彼らが商っているものは布製の小物類であるが、ケフが繊維の郷であることをあまり考慮していないための結果であった。他の郷であれば、それなりに商える商品であるが、ケフのモノと比較するとどうしても質の面で劣っており、購入するための硬貨の枚数でははるかに勝っていた。しかも、彼らが言う穢れの民に対しては客であっても横柄な態度を崩さず、何かあれば吹っかけるため、当然といえば当然の結果であり、彼ら自身の責任に帰するところが大きかった。

 「仕方ねーな、急き仕事でもするか・・・」

 兄貴分は突き出た腹をポンと叩いてひょろ長いのを見つめた。

 「やばくないですか」

 「商品を間違えなきゃ、大丈夫だ」

 兄貴分はにたっと笑った。


 「可愛いのが買えて良かったね」

 さっき買ったばかりの小鳥の意匠が施されたヘアピンをネアに刺しながらラウニはにっこりした。

 【オレに意見を言う権利はないんだ・・・】

 数点の小物類を購入したが、どれもネアの意見は取り入れられず、商品の選択から値段交渉まで全て先輩方のペースで進められていた。今朝貰ったお金も、小銀貨が3枚と大銅貨が数枚程度になっていた。

 先輩方は疲れを知らないようで、どんどんとあちこちの露店を見て回っている。そして、あちこちで値段交渉と買い物をしている。その後をネアは迷子にならないように懸命に付いて行くことになった。

 【スーパーで見た家族連れのお父さんの気持ちが何となく分かる気がする】

 前の世界では想像すらしなかったことを理解できるとは、皮肉なことである、とネアは苦笑した。

 【それにしても、腹が減ったな・・・、ん、この匂いは・・・】

 人ごみの中を散々歩き回ったせいか、様々な臭いによるストレスのせいか、いつもより早く空腹を感じたネアの鼻腔を焼いた肉の香ばしい匂いが刺激した。辺りを見回すと、少し離れたところで、何かの肉を串にさした、前の世界では焼き鳥と呼ばれたのに似たものを販売している露店が目に入った。ただ、知っている焼き鳥とはそのサイズの面では全く違っていた。

 「一つ、ちょうだい、おいくら?」

 ネアは、肉を焼く煙の向こう側の真人の老人に声をかけた。

 「串焼きは、どこでも大銅貨5枚じゃ、焼き立てで美味いぞ。特に、この鶏はいい餌を食わしているからな」

 ネアは老人の言葉を聞くと、ポシェットから小銀貨1枚を取り出して老人に手渡した。

 「じゃ、お釣りは大銅貨5枚、ほら、落とさんようにな、串には気を付けるんじゃよ。怪我するからな」

 「ありがと」

 ネアはまだ湯気が上がる巨大焼き鳥を手にして、辺りを見回した。

 「はぐれた・・・」

 いつの間にか、先輩方の姿が見えなくなっていたのに気付いた。心細さが襲ってくるが、それ以前に目の前の巨大焼き鳥が気になった。

 「食べてから探すか・・・」

 ネアは、人の流れから外れた薄暗い路地に入ると早速、湯気を上げる肉にかぶりついた。


 「あれ、見てみろ」

 髪の毛が薄くなりつつある商人が露店の前にいるひょろ長い弟分に指差した。

 「猫族の子ですか?」

 「獣にしちゃ、小奇麗にしてやがる、それにどうもはぐれているようだ」

 「仕入れますか?」

 「ああ、あの身なりだと、基本的な躾はされているようだし、なによりあの器量だ。でかい郷の物好きな金持ちやお貴族様にいい値で売れるぞ」

 人相の良くない二人の男は自分の露店から離れて、見つけた商品が入った路地に向かった。



 【素材の味が活かされているな】

 巨大焼き鳥を完食したネアは、口の中に残る肉の味をかみ締めながら満足そうに口元を手の甲で拭った。

 「っ!」

 その時、今まで嗅いだことの無い、嫌な臭いを感じた。そして、同時に全身の毛が逆立つのを感じた。

 【ラウニ姐さんが言ってた、危険な臭いってやつか】

 ネアは辺りを見回した。すると、路地の正面から二人の人影がこちらに向かってくるのを目にした。


 流石は獣人、こちらの気配に素早く気づくとは、と商人は目の前の猫族の少女がさっと身構えたのを見て感心したが、所詮、年端も行かぬ子供である。大人の力でどうとでもなる、と踏んでいた。


 「どいて下さい。通れませんから・・・」

 ネアは目の前で壁のように立ちはだかり、こちらを凝視してくる人相の良くない中年に声をかけた。

 「はは、それは聞けないなー、だまってついて来れば痛い事はしない、なんせ大切な商品なんだからな。おとなしく・・・」

 禿げかけたおとこがしゃがんでネアの肩に手をかけてきた。ネアは手にしていた串を口に咥えると、その男の手を掴み、流れるような動きで手首落としをしかけ、その男の身体を路地の石畳の上に横たえさせていた。

 「この、餓鬼がっ」

 ひょろ長いのが、はげかけたのを決めているネアに蹴りを入れてきた。

 「っ」

 ネアは男の上から、さっと飛びのき、その足をかわした。

 「ふざけやがって、大人に舐めたことすると、どうなるか思い知らせてやる」

 手首落としをかけられたのが立ち上がり、服に付いた汚れをはたくと、どすの聞いた声を上げた。

 「・・・」

 【逃げるか?土地勘が無いところで逃げ切れるか?この身体はどうもスタミナが無いようだから、追いつかれると為す術が無いぞ。と、言うことは】

 「・・・」

 口に咥えた串を右手に短刀のように持ち、ネアは染み付いた動きで構えた。


 獣人は子供でも身体的に優れているが、この餓鬼は妙な技を使ってきやがった。それに、脅しても顔色一つ変えることも無い、しかも妙な構えでこっちを睨んでくる。人相の悪い商人は何か不気味なものを感じたが、これは、これで希少価値のある商品であると認識した。自分が思っているよりもっといい値段になる。そう思うと、不気味な感覚なんぞどこかに吹っ飛んでいってしまった。


 「手加減できないよ」

 ネアは感情を滲ませることなく、大の大人2人に対して淡々と言葉を発した。それは、強がりではなかった。前の身体であれば当然のことであった。そう、前の身体であればである。

 「この畜生が、人間様に歯向かうなんざ、許されんことなんだよっ」

 はげかけたのが両手を開いてネアをホールドするように飛び込んできた。それを身体をひねりつつ交わして、

 「っ」

 がら空きになっているわき腹に拳を突っ込んだ。

 「くっ」

 はげかけたのがつんのめって、路地に転ぶのを背後に感じながら、さっきと同じように蹴りを入れてくるひょろ長いの空振りした足を両手で掴むと、渾身の力でその足を押し、相手のバランスを崩した。

 「うわっ」

 ひょろ長いのは受身を取ることなく、あっけなく後ろに倒れ、動きを止めた。

 「殺す」

 つんのめってこけたはげかけたのが懐からナイフを取り出して構えた。

 「・・・」

 背後に倒れているひょろ長いのが動く気配が無いことを確認すると、その場から一足飛びで路地の出口にネアは移動し、そのまま背を向けて人通の多いところに出ようとした。

 「っ!」

 いきなり、ネアは足首をつかまれ、その場に転倒してしまった。ひょろ長いのが意地を出したかの、ネアを逃すまいと力任せに足首を掴んだのである。ネアが転倒したのを確認したひょろ長いのは嫌らしい笑顔でネアを見つめてきた。ネアはその顔にかかとを叩き込んでやろうとしたが、今は人と作りが違うことにはっと気付いた。(犬系、猫系の獣人は基本的に爪先立ちなるような骨格である)

 「くそっ」

 ネアはひょろ長いのの顔を踏みつけるように蹴りを入れた、勿論、猫族のお家芸とも言える爪を出したままの猫キックである。イエネコの猫キックを喰らったことがあれば分かると思われるが、あの大きさであの威力である。子供といえどイエネコに比して大きなネアに蹴られるとなると、その被害は穏やかなモノではないことは想像に難くなかった。ひょろ長いのはネアを掴んでいた手を離してけられた顔を抑えた。その指の間からは赤いモノが流れ出てきていた。自分の蹴りの威力を確認するまでもなく、ネアはさっと飛び起きると串を片手にナイフを持った男と対峙する形を取った。

 「舐め腐りやがって」

 ナイフをためらいもなく引き抜く行為をするだけあって、そのはげかけの男は場慣れしているようであった。

 【殺すと問題になるな、間違いなく。できれば・・・】

 串を短剣のように構えるネアは相手をきっとにらみつけた。相手は声を上げるでもなく、いきなり突っ込んできた。しかし、ネアにはその動きが非常に緩慢に感じられた。突き出されたナイフをさっと身をひねってかわすと同時に

 「っ」

 その男の眉の上辺りに版画を彫るようにさっと串を走らせた。

 「くそっ」

 いきなり、動きがいつものように感じられ、獲物にかわされた男が再びナイフを構えようとしたとき、額から噴出す血のために視界を奪われ、目に手をやるのを見るとネアはさっとその路地から飛び出した。路地の周りには男たちが発した怒声に気づいた人たちから集まっていた。


 「何があったんだ?」

 路地を覗き込んだ人達は顔面から血を流して横たわっている男とナイフを片手に顔面から流れる血を手で押さえている男がふらふらと立っているのを見て戸惑っていた。

 「通してくれ、何があった。けが人がいるのか」

 ネアはどこかで聞いた声がするのに気付き、その方向を見ると、昨日食堂で声をかけてきたゴッシュの姿があった。

 「派手にやらかしたなー」

 血を流している男たちを一瞥するとゴッシュは彼らに声をかけた。

 「そこの猫の餓鬼にやられた」

 フラフラとたっているのがナイフでネアを指して、自分たちは被害者であると主張しようとした。

 「子供相手に、ナイフか?穏やかじゃないな・・・、怪我はしてないか、それと、これはお前さんがやったのかい」

 血の付いた串を持って息を整えているネアにしゃがみこみながら尋ねてきた。ネアはその問いに首を立てに振って答えた。

 「すげぇな、おい、こいつらの手当てしてやれ」

 ゴッシュは部下の一人に二人の手当てを命じて

 「なんでやったんだ?」

 穏やかにネアに語りかけた。

 「いきなり、掴まれて、ついて来いって言われて、大切な商品とも言われた・・・。だから、仕方なく・・・」

 「そうかい?それは、穏やかじゃないな・・・。おい、手配書持ってきてくれ」

 ゴッシュの部下の一人が鞄から紙の束を取り出して手渡した。

 「おい、そいつらの面見せてくれ、血はふいてくれ」

 かれは、手配書パラパラとめくって

 「天秤秤のバルサ、荷車のフマクか?」

 ゴッシュの問いかけに路地に横たわったひょろ長いのが頷いた。それをちらりと見たはげかけたのが

 「フマク、お前は馬鹿かっ。俺達の正体を・・・」

 と、怒鳴りつけ、己の失言に言葉をつまらせてしまった。

 「ありがとさんよ。アンタらには、違法な人身売買の疑いがある。ちょいと付き合ってもらうからな」

 ゴッシュは部下に二人を衛士の詰め所に連行するように命じるとネアに話しかけてきた。

 「荒事の素人とは言え、大の大人、しかも男をあそこまでできるとは、只者じゃないな。一体、誰に教わったんだ?」

 あの一連の動きができたのは、前の世界での訓練の賜物であり、誰かに師事したことはないのであるが、それを説明するのはとても難しいと考えたためネアは首を振って答えるにとどめた。

 「・・・あの人たちのことすぐに分かったの?」

 この街の警備はお尋ね者でも簡単に通すのか、と疑問を持ちつつネアはゴッシュに尋ねた。

 「あいつらのことかい?最近、街道筋で若い子を無理やり連れ去るって事件があちこちであってな、その容疑者としてあいつらの名前が俺達の筋で流れてきたのよ。それで、カマかけたら、見事にビンゴってやつだ」

 ゴッシュはちょっと自慢げにネアに説明した。

 【アイツら、本当に馬鹿なんだ】

 やばいことをしておきながら、すぐに名前が知れて、しかもちょっとしたカマかけに引っかかるし、挙句の果てには子供に良いようにのされてしまうなんて、相手が犯罪者でありながらも、ネアはちょっとした同情を感じた。


 「ネア、探したよ。どこに行ってたの?」

 「怖い目にあいませんでしたか?怪我してませんか?」

 人ごみを押し分けて先輩方が飛び込んできて、2人してネアを抱きしめた。

 「はぐれないようにちゃんと見ておかないと、ダメじゃないか」

 ゴッシュは厳しく一言先輩方に声をかけ

 「お前さんも、はぐれるようなことはするな。今回は、相手がマヌケだったから良かったようなものの、これがもっとヤバイ奴だったら・・・」

 ゴッシュはネアの頭をゴシゴシとなでると立ち上がり

 「アイツらをちょいと締め上げてくるから」

 片手を上げて分かれの挨拶代わりにすると、詰め所に向かって歩みだした。


 「危険な臭いのこと分かった・・・」

 「怖い目にあったのね、ごめんなさい」

 「ごめんなさい」

 先輩方の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。それを見たとたんにネアに今まで感じたことが無いような感情の大波が襲ってきた。

 「怖かった・・・」

 今になって恐怖が襲ってきた。そして、心配してくれるラウニとフォニーのことが何よりありがたく感じられ、そして安心したことでいきなり涙が溢れてきた。その涙はどんなに止めようと思っても暫く止まる気配が感じられなかった。

 「ごめんね・・・」

 それに釣られるように先輩方も涙を流しだした。露店が作り上げる迷宮の中で3人の少女が互いに抱き合って涙を流し続けるているのを見た露店の茶店の女将がそっと3人を店のベンチに座らせるまでそんなに時間はかからなかった。

 

お買い物というより、小競り合いになってしまいました。

馬鹿は洋の東西、時代の今昔を問わず世界共通的に生存しているのです。作者を含めて・・・

駄文にお付き合い頂いた方、ブックマークいただいている方にいつものように感謝捧げます。

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