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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第18章 事変
246/342

227 帰りたい

何とか、今週もUPできました。

これからもこのお話を生暖かく眺めていただけならば幸いです。

 【早く、戻らないと。皆、待っているから。】

 日が落ちて真っ暗になった街の家々の屋根の上を走り抜けながらネアはお館の人たちの顔を思い出していた。

 【え、俺は情報を早く伝えなくちゃいけないから急いでいるんだよな。寂しいからじゃ・・・】

 ネアは前の世界で感じたことがない心がチクチクと痛むような気持に戸惑っていた。

 【あ、待ってくれている人がいるからか、・・・贅沢な痛みだよ。変わったもんだな】

 仕事以外に何にもなく、仕事以外のモノには目もくれなかった前の世界のことを思い出してネアは自分に苦笑した。


 「こんな夜に、1人で動くなんて誘っているようなもんだぜ」

 船員崩れたちが下卑た笑みを浮かべて見つめる先には、まだ身体の線も固い真人の少女が怯えた表情で立っていた。

 「ーっ」

 少女は恐怖のあまり悲鳴を上げたが、それに反応する者は誰もいなかった。いきなり、街に雪崩れ込んできた船員崩れたちと統制された屈強な男たち、ヤヅの住人は本能的な恐怖に飲み込まれ、もめ事を起こさない、回避しようとしていた。少女は誰も助けに来ないと理性では判断していたが、本能が彼女に悲鳴を上げさせていた。

 【あの時に助けてくれなかったから・・・】

 彼女は食堂兼酒場で働いていたが、酔客の1人に無理やり腕を掴まれ、お持ち帰りされそうなった所を隙を見て逃げ出したものの、既に彼女の運は尽きていたようで、逃げている最中に先ほどの酔客より性質が悪い船員崩れに遭遇してしまったのである。


 「俺が一番だぜ」

 背丈が他の2人より拳一つ分大きい長髪の男が怯えた少女の頬を張り倒して彼女を倒すと声を上げるとともにベルトを緩めだした。

 「仕方ねぇ」

 「一応、兄貴分だからな」

 残された2人は面白くなさそうに言うと自分たちもベルトを緩めだした。

 彼らは今回、とてもついてなかった。良い儲け話があると聞いて船に詰め込まれ、ついたのはどことも知れない小さな港街、そこで命じられたことは、そこの住人たちが刃向かわないように監視し、そんなそぶりを見せる連中を潰すことで、表立った略奪も禁止されていた。酒場も娼館も街の大きさに見合ったもので、ちょっとした雑用、後から来る連中のために寝床を作るために倉庫の整理をさせられているうちに出遅れ、どこも満杯で、娼館に至っては、商売道具がすれ切れると娼婦たちが嬉しい嬌声を上げているくらいで、出遅れた彼らは自然な成り行きであぶれてしまったわけである。

 しかし、運は彼らを見捨てていなかった。警備と言う名の街のぶらつきをしている時に、少しばかり青いが何とか食べられそうな果実を見つけたのである。その時の彼らに躊躇うという選択肢はなかった。


 「ん? 」

 屋根の上を猫族の持つ身体能力を余すことなく発揮して移動しているネアの耳が悲鳴を拾い、彼女は足を止めた。

 【どうする? 】

 ネアはその場にとどまって暫く考えると、悲鳴の方向に足を向けて駆けだした。

 【情報収集しなくちゃ、あの連中が何をしているか、お館様に報告しなくちゃ。・・・ヤヅへの武力制裁の口実になる可能性もあるしな】

 心のどこかで早く戻りたいと泣き声を上げているのを宥めながら、ネアは悲鳴の主を探した。

 【3人で仲良く、順番にか】

 ネアが建物と建物の間に生活感を惜しげもなく見せつけている小道を見下ろせる低い建物の屋根の上から悲鳴の主を視認した。その少女にのしかかり上着を破ろうとしている男、彼女の両手を押さえている男、そして彼女を見降ろしながら、気が早いことに下半身を丸出しにした男、彼らを見た時、ネアの全身の毛が逆立つような嫌悪と怒りを覚え、苦いつばを吐いた。

 【お楽しみは永遠にお預けだ】

 ネアは弩を屋根の上で伏せながら構えた。そして、鼻の下を伸ばして、自分の順番をただ待っている男の下半身の中心に狙いを定めた。

 【倅にさよならの挨拶をするんだな】

 男としてソレを失う事は、物理的な痛みより精神的な苦痛が大きい事をネアは身をもって知っていた。だからこそ、彼女は敢えてソレを潰すことにした。同族殺しの後ろめたさをほんの少し感じながらも彼女は弩の引き金を絞った。


 「っ! 」

 これから、楽しもうと押さえつけた少女に身体を密着させようとした時、仲間の一人が悲鳴とも断末魔ともいえるような声を発した。こんな時に、つまらない事をしやがるとその男を見た時、彼の動きは止まった。

 「えっ、うー、な、何? 」

 人間は目に飛び込んできた風景がいきなり想定外だと、その認識に暫く時間がかかるもので、彼も例外ではなかった。彼の目に飛び込んできたのは男を男たらしめている存在に無慈悲に突き刺さる矢と、その矢により物理的に破壊され、ちぎれかかっている存在の姿であった。彼が目にしたモノをやっと理解した時、目の前で少女の手を押さえていた男の表情がくぐもった音ともに固まった。

 「お、おい? 」

 口から出た言葉それだけだった。彼の目の前の男のこめかみからいきなり棒が飛び出してきたのである。慌てて彼を見直すと彼の頭が銛で貫かれているのを確認した。そして、同時に己の生命の危機を感じた。生命を作る前に、生命が失われる、本能がそう告げ、彼の中で優先順位が音をたてて入れ替わっていた。

 必死で優先順位を入れ替えている時、彼は自分の首にふさっとしたものが巻き付いたことを感じた。それは、次の瞬間、激烈に彼の首に喰い込んできた。唸りながらそれを振りほどこうとしたが、背中にしがみついてきた何かが彼の手を毛の生えた足で押さえつけきた。喘ぎながら、彼は自分を攻撃しているモノを確認しようとし、最後に彼が見たのは毛の生えた顔であった。それは、感情のこもらぬ目で「くたばれ」と一言発した。それが彼が聞いた最後の言葉だった。

 「う、ううう」

 下半身の中心に矢を受けた男はその場にへたり込み、肉体からの苦痛と精神からの苦痛に呻いていた。

 「これ借りるよ」

 血まみれた場所に似つかわしくない子供の声が激痛に襲われている彼の耳に入った。涙を血まみれの手で拭きながら彼は声のした方向を見た、そこには身体に比して大きな剣を手にした猫属の少女がゆらゆらと歩いて来る姿があった。

 「そんな状態で生きていても辛いだけだよ。楽にしてあげるよ」

 少女はそう口にすると、横に剣を薙いだ。彼がその後のことを知ることは未来永劫なかった。


 「派手にやったかな」

 何が起こったのか把握できず、横たわったまま、返り血を随分と浴びた少女を脇目にネアは銛を突き刺した相手の頭に足をかけて銛を引き抜きながら呟いた。

 「あ、あの、あ、あの」

 組み伏せられていた少女が上体を起こし、手で胸を隠しながらネアに声をかけてきた。

 「さっさとここから立ち去らないと、もっと面倒な事に巻き込まれるよ」

 ネアはまだ何が起こったか掌握しきれていない少女に告げると銛についた血を男たちのズボンで拭い、さっと暗い道を駆け出して行った。少女が我にかえってその場から逃げ出したのはネアの姿が夜の闇にすっかり飲まれてから少し後であった。


 「道は歩くものと思うな、か、この場合は門は通るものと思うな、だな」

 街の出入り口は固く閉ざされ、騎士団と船員崩れがやる気は多くないものの、頭数だけは十二分にいる状態で警備とも、ただ立っているとも言えない状態で門の前のあちこちをぶらぶらしたり、雑談したり、佇んていたりしていた。そんな状況を屋根の上から伺ったネアは随分と昔に聞いたような言葉を知らずのうちに口にしていた。ネアは門を通過することを諦めると山側の方向に移動しだした。

 「街の中に流れ込む川の一筋ぐらいあっても罰はあたらないでしょ」

 移動しながら、水の音を懸命に探っていると、彼女の大きな耳が水の音を拾い上げた。ネアはためらう事もなくその音の方向に移動していくと、川幅が10歩程度の小川を見つけた。それは、街を囲む門の下に穿かれた門から街の中に静かに水を流していた。

 ネアは川岸にそっと歩み寄ると物陰に隠れ、水門を見つめた。そこには簡単かつ、歯槽膿漏になった歯のような状態の鉄棒が、流れ込んでくる木の枝とか侵入者に対して見せかけだけの障害物になっていた。ネアはさっと服を脱ぐと小屋からくすねてきた帆布の切れ端に弩や銛などと一緒に包むと固く結びあげた。彼女はそれを軽く叩いてしっかりと包装されていることを確かめるとそっと水の中に包みを抱えて入った。

 「ーっ」

 川の水は日中は温かいとは言え秋の足音が聞こえている季節、しかも山から流れ出ている水でありその冷たさはネアにすんでの所で悲鳴を上げさせそうになった。

 「くそっ」

 ネアは悪態をつきながら川の中に入ると包みを浮のように使い、水音を立てもせずに水流に逆らって泳ぎだした。水の流れは冷たいだけで幼い彼女の身体でも何とかなりそうであり、実際そうであった。

 「もうだめ・・・」

 ネアは水門を超え、街から少し離れると川から包みを抱えてフラフラと上陸し、身体をブルっと震わせて水を切り、力なくその場にへたり込んでしまった。幼い身体には冷たい水の中の水泳は余程応えたようで、もう何かをする気力すらそぎ落とされていた。

 「帰らなきゃ」

 ネアの脳裏にお嬢や奥方様から命じられた「生きて帰れ」が鮮明に思い出された。

 「ご馳走するって言ってたし、ユキカゼも寂しがってるだろうからね」

 暗がりの中、湿った身体に服を着けるとネアはありったけの気力を総動員してケフに向けて歩き出した。


 「畜生っ、はめられたっ」

 ヤヅの関を超え、コービャの関に入った護衛の騎士団は御者台を見て自分たちがトンデモない失態を犯していたことを悟った。御者台にいたのは、見たこともない男、そして馬車の中には縛られた御者、必死で追いかけ、護衛してきたのは馬車だけであったことを知った騎士団員たちはその場に崩れ落ちるように膝をついた。

 「何たる失態、これは、死を持って・・・、これよりヤヅの関に攻勢をかける。1人でも多く道連れにせよ。生きて帰ることは許されん、分かっているな」

 護衛の騎士団員たちの長は決死の表情で部下に命じた。

 「死を持って償うしかないじゃないですか」

 「今日は、死ぬにはいい日和だ」

 護衛の騎士団員たちは口々に言いながら、剣を抜きヤヅの関を睨みつけた。

 「馬鹿な真似はするな」

 「ここで死んでも、何も変わらんぞ」

 関を護る騎士団員たちは必死に彼らを押しとどめようとしたが、彼らの意志は固く、邪魔立てするなら斬り捨てるとまで口にしていた。

 「死ぬことで貴様らの失態がなくなると思うなっ」

 騎士団員たちが揉めている最中、大音声が一喝した。

 「死んで失態が、汚名が帳消しになると考えるとは、愚か者がっ」

 大音声を発したのは馬上で怒気を身に纏った黒狼騎士団長であった。

 「命の捨て所はここではないぞ」

 黒狼騎士団長の横に馬を並べた鉄の壁騎士団長も厳しい口調で護衛の騎士たちを諭した。

 「お前たち、モーガやレヒテ、ギブンとあの侍女たちが簡単に敵の手に落ちると思っているのかい? 」

 失態を演じた恥辱と申し訳のなさ、その上、死に場所すら与えられない苦しみの中、お館様が彼らに穏やかに声をかけた。

 「そ、それは・・・、しかし、万が一が・・・」

 「俺は信じているよ。こんなふざけた事をしでかす連中にあのモーガが黙っているわけがないと、ね。しかも、ヤヅにはミオウの郷主家族と護衛の騎士団も入っている。彼らもそれなりの食わせ物らしいから、俺はヤヅの連中に同情するよ」

 お館様は内心の不安を心の奥底に封じ込め、何事もないように振る舞った。それが、護衛の騎士団員たちの唯一の救いとなっていた。

 「ヤヅの波しぶき騎士団を率いる、ロッド・フィッツァー殿は歴戦の猛者、郷主のキリーン・ザイエン様もなかなかのやり手と耳にしております。敵に回したくない相手ですな」

 黒狼騎士団長は自分と同じ獣人の身で一つの郷の騎士団を率いるロッドのことを思い返しながら口にしていた。代々騎士の家系でありながらも、傭兵団あがりの自分より破天荒な狼族のあの男なら、何とかするんじゃないかと彼は思っていた。

 「お館様、お館様」

 いきなりお館様の足元で声がした。突然のことに驚きながらも足元を見るとそこには侍女の服を着た栗鼠族の幼女が真剣な眼差しで彼を見上げていた。

 「ティマじゃないか。お前はモーガと一緒ではなかったのか」

 お館様は下馬するとティマの目線に合わせるように屈みながら彼女に声をかけた。

 「奥方様からのお手紙です」

 ティマはエプロンのポケットから折りたたまれた紙をお館様に差し出した。

 「どうやって、ここに来たのかい? 」

 お館様は手紙に目を通しながらティマに尋ねると、彼女はおずおずとヤヅの関を指さした。

 「まさか、関を通過してきたのか? 」

 黒狼騎士団長が驚きの声を上げ、そして何か思い出したのか納得したような表情になった。

 「随分と上達したな。見事な働きだぞ」

 黒狼騎士団長も下馬すると不安そうにお館様を見つめるティマの頭を優しく撫でた。

 「見事な働きをしたこの子を休める場に案内せよ。お菓子と飲み物を忘れるなよ」

 同じく下馬していた鉄の壁騎士団長が関の騎士団員に命じると、犬族の女性騎士がそっとティマを関の詰め所に連れて行った。

 「手紙には何と? 」

 真剣に手紙を読むお館様に黒狼騎士団長が尋ねると、彼はにやっとした笑みを浮かべた。

 「暫くすると、ヤヅの関で騒ぎが起こる、その騒ぎに乗じて突破するとのことだ。我らも奴らが騒ぎ出したら繰り出すぞ。お前たちに一番槍を命じる。思いっきり暴れて来い、我らを舐めたことを後悔させてやれ。決して死ぬな。これは、郷主直々の命令だ。心せよ」

 お館様から直々に命ぜられ、萎れていた護衛の騎士団員たちに力が漲ったように見えた。それは、悲壮感に覆われ、死に場所を探していたような状態とは打って変わって、自らの任務に大きな誇りを感じているようであった。

 「さーて、皆、鬨の声上げてくれ。遠吠えも良しだ。モーガから手紙を見たなら音をたてよ、って命じられていてね。さ、やろうか」


 「お、あの栗鼠の子、まさかとは思っておりましたが、見事に関を突破したようですな」

 関の近くで馬車を止め部下に後方を警戒させながら、コービャの関の方向からの雄たけびを耳にしたロットが笑みを浮かべながらキリーンに報告した。

 「あの子も特別なのよ」

 奥方様が少し自慢そうにしつつ、見事無事にティマが任務を果たしたであろうことに安堵していた。

 「いきなり、消えた時は驚いたが、まさか遁術をあの年齢で使えるとはね」

 キリーンは奥方様から手紙を託された幼女が目の前であっという間に、見えているのに見えなくなる不思議な現象を思い出していた。彼は噂にはそのような不思議な術が世の中にあることは耳にしていたが、与太話の一つとであると思い、今しがた目にするまで信じていなかった。

 「ますます、面白くなってきましたな。奥方様、いつでも準備はできておりますぞ」

 「騎士団長さん、頼もしく思いますよ。さ、皆、仕上げのお芝居を始めるわよ」

 奥方様が声をかけるとそれぞれが黙って頷き、馬車隊はゆっくりと前進を始めた。


 「聞いておらぬが・・・」

 ヤヅの関を護る隊長はミオウの郷主夫妻とその子供、ケフの郷主夫人とその子供たちが引っ立てられてきたのを見て首を傾げた。

 「奴らの関を解放させるための交渉を実施せよとのことです」

 兜のバイザーを深く降ろしたバトが事務的に隊長に説明した。

 「しかし、交渉の内容を詳しく聞かせてもらっていないが。あまりにも突然すぎる。こちらにも準備という物が・・・」

 隊長はいきなりの事に戸惑い、この案件で失敗した時の責任のありかなどを考え、決断を戸惑っていた。

 「決断が遅れ、時機を失した事例は枚挙に暇がありませんからね。隊長がその中の一つに加わらないことをお祈りします」

 アリエラがバイザーの奥から独り言のように呟いた。

 「ご決断を、このまま放置して叱責を受けるか、それともやつらと交渉して見事な手柄を上げられるか、二つに一つ、さ、ご決断を」

 ルロが悩む隊長に決心を迫った。

 「しかしだな・・・」

 この隊長に座右銘があるとしたらそれは「無難」の一言になるであろう。彼は武勇に優れているわけでもなく、事務処理能力が高いわけでもなく、大事な局面においては、いつもリスクの少ない方を選択してきただけ、良く言えば将来を見る目があり、悪く言えば保身に長けていると言えた。

 「交渉に失敗しても、突然の事ですから仕方ない事ですが、時機を失したならば大きな失態と思われるでしょうね。女の身からすれば、ここ一番の重大な局面で決断できる殿方は逞しく思えます」

 バトはそう言うとバイザーを上げ、エルフ族として普通、真人からすると美人と思われる顔を見せにっこりと微笑んで見せた。エルフ族特有の尖った耳は兜で隠れているため、隊長からは真人の美女に見えた。それと、失敗しても失う物が少ないと聞いたことが彼の心を決心することへと押し出した。

 「よし、それでは、人質を連れて来い。関の門を開けて奴らに我らの要求を呑ませよう。人質を連れて来い」

 彼は、散々逡巡していたことを悟らせないために、大きな声でいかにも即断したように部下たちに命じた。

 「了解しました」

 バトたちは隊長に敬礼するとさっと身を翻すと、素早く馬車に向かい、不服そうな表情の人質たちを連れて来た。

 「離しなさいっ」

 「家族を傷つけると、どうなるか、覚悟することになるぞ」

 暫くすると、鎧を身に付けたヤヅの騎士団員たちが縛り上げたケフの郷主婦人とその子供、ミオウの郷主夫妻とその子供、そして子守りの娘、年端も行かない侍女たちを引っ立ててヤヅの関に入ってきた。

 「これだけいれば、一人ぐらい殺しても行けるな」

 隊長は不遜な事を口にしながら、この交渉で自分が関の守備隊長から新たな高い役職に就くことを確信していた。

 「ケフの諸君、この方たちの身の安全は偏に我々の手の内にある」

 隊長は尊大な態度をとりながらコービャの関に向けて大声を張り上げた。

ネアたちがヤヅから何とか逃げ出せそうです。

ヤヅの騎士団は警察的な色合いが強く、軍事的な行動はあまり想定していません。また、勢力はそれほど大きくないため、船員崩れなどを臨時採用している状態です。

烏合の衆ですので、奥方様たちが何とか逃げ出すことができたようなモノです。

「私は一頭の羊に率いられたライオンの群れを恐れない。しかし一頭のライオンに率いられた羊の群れを恐れる」

 と言う感じですね。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。また、ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

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