208 揺さぶり
梅雨入りしてじめじめしたり、暑かったりで体調を崩しやすい時期で、しかも食べ物も傷みやすくなってきて、勇気の一口が大変な事への第一歩になるかもしれない、厄介な季節ですが、少しでもこのお話が暇つぶしのお役に立てれば幸いです。
「噂は耳にしていましたが・・・」
綺麗に右腕の肘から先を斬り落とされた髭もじゃの容態を確認しながらリックは驚きの声を上げていた。
「私たちが部屋に入った時には、もうこんな状態でした。そんなに時間はかかっていないはずです」
クゥは未だに床に転がっている髭もじゃの右腕を見て、信じられないとばかりにレイシーに視線を向けた。
「こんなきれいに斬り落とすなんて、普通じゃないよ。・・・あ、あの悪意味じゃなくて・・・」
カイは思わず口にした言葉を慌てて取り消し、レイシーに頭を下げた。
「気にしなくていいんですよ。昔、剣を少し齧ったのが役に立ったのが良かったみたいね。こんなオバさんの腕でも褒めてもらえるとうれしいわ。それとね、この剣が良かったからね」
椅子に腰を掛けたレイシーは仕込み杖をカイたちに見せて恥ずかし気な笑みを浮かべた。
「随分と汚したなー、下もそうだが。明日は一日掃除だ。良い酒をおごるからアンタらも手伝ってくれないか」
モップとバケツを持ったラスコーがネアたちのいる部屋に顔を出し、部屋の荒れ具合を確認するとため息をついた。
「それとな、そこのご婦人は隣の部屋に移した方がいいぞ。こんな光景を見たらまた気絶するかも知れんからな」
ため息をつきながらラスコーは床に転がっている右腕を手に取り、髭もじゃに応急処置を施しているドクターに尋ねた。
「これをくっつけることは出来んのか? 」
「綺麗に斬っておるからできるかも知れんが、ここにはそんな細かな治療ができる道具もない。それに、コイツがそれだけの治療費を払えるとは思えん。命が助かるだけでも儲けモノじゃ。死ぬことから比べれば、腕の一本程度我慢して貰いたいものじゃな。レイシーも警告しておったのじゃから、これは自業自得じゃ」
ドクターは髭もじゃの腕の傷口の処置を慣れた手つきで行うときつく包帯で縛り上げ、今度は足の怪我に取り掛かった。
「実はな、下の階にもう一人、血はそんなに流しておらんが、あり得ない方向に手足を曲げたヤツが一人転がっておるぞ」
ラスコーは斬り落とされた腕からそんなに高価そうに見えない指輪を外しながらドクターに新たな患者の存在を知らせた。
「お前さんが斬ったのか? 」
ドクターは治療の手を止めることなくリックに尋ねた。その言葉に、リックは少し居心地が悪そうな顔になった。
「米豹族のご兄妹に助けてもらいました。顔面への強烈な一撃と、見事な関節技、あっという間でした」
「ウェルとアーシャちゃんか、怒ったウェルは手加減せんからのう。アーシャちゃんが本気になれば身体中の関節を外されても不思議な事ではあるまいよ」
ドクターは髭もじゃの足にもきつく包帯を巻きつけると、血で汚れた毛布をその上にかけた。
「意識が戻ったら、痛みに苦しむことになるじゃろうな。スパンとレイシーに斬られておるから、ちぎれたり、押しつぶされた時ほどの痛みはなかろうがのう」
不気味な予言を口にするとドクターはため息をついた。レイシーは、そんなドクターの額に浮かんだ汗を手にしたハンカチでそっと拭くと、アルコールの入った小瓶を差し出した。
「ありがとう。一仕事の後はこれが一番じゃ。レイシーよ。身体が冷えておろう。一風呂浴びて寝床につくといいぞ」
ドクターはレイシーににっこりしながら告げると、彼女はこくりと頷いて、杖をつきながらそっと部屋から出て行った。
「脚が悪いのは本当だったんだ」
「ハンデがあるのに、一撃ですか・・・」
カイとクゥはレイシーの腕がまだ一線級なのではないか、と顔を見合わせた。
「剣士の宵闇は、今はパートタイムじゃ。レイシーはフルタイムでわしの妻でビブの母親じゃよ」
ドクターはつまらなそうに言うと、階下でくたばっているされる患者を診るために、診察カバンを手にすると部屋から出て行った。
「死人が2人、死にかけが1人、重傷が1人、派手にやったもんだな」
村の鉄の壁騎士団の派遣隊長は寝入り端をたたき起こされたのか、眠そうな目で宿のホールに横たわっている連中を見て大きな欠伸をした。
「けが人はちゃんと処置されているのか、取り合えず、留置場に突っ込むぞ」
がっしりした体躯の派遣隊長は、眠そうに突っ立っている真人と鼬族の若い団員に命じた。
「えー、4回ないじゃないですか」
鼬族の男が抗議の声を上げ、真人の男も大きく頷いていたが派遣隊長は気にすることもなく、一言「やれ」と命じた。何を言っても現実が変わらないと悟るとため息をついて、髭もじゃを担架に乗せると派遣隊との屯所に運んで行った。
「ひょっとすると、こいつらの仲間が生き残りを奪還に来るかも知れないな・・・、面倒なことを持ってきてくれたもんだ」
派遣隊長は刺客たちを引き渡すリックに少し嫌味を口にした。その言葉を耳にしたリックはため息をついて派遣隊長を睨みつけた。
「アンタらの仕事だろ。俺たちは、俺たちの仕事をしただけだ」
「ははは、そんなに怖い目で睨むなよ」
派遣隊長は乾いた笑い声を上げるとリックの肩をポンポンと叩いた。
「日が昇ったら、こいつらに聞きたいことがある。屯所に行ってもいいだろ」
「好きにするといいさ」
派遣隊長は腕組みしながら横たわる刺客たちを無表情に眺めながら興味がないとばかりに吐き捨てた。
「そうさせてもらう」
リックは派遣隊長に告げると、カイとクゥの元に疲れた足取りで向かって行った。
「やっと、ルシアちゃんは眠りました。マーカさんにはお酒を呑んでもらって・・・」
「普段呑まないと、良くまわるんだね、あっという間」
クゥとカイはリックの部屋でほっとしたような表情になって、ラスコーが淹れてくれた熱いお茶を啜っていた。
「それは良かった。で、お前ら、怪我はないか。怪我も料金の上乗せ対象だからな」
リックはそう言うと、大きなため息をついて椅子に腰を降ろした。
「なーんだ、あたしらのことを気にしてくれてるのかと思ったのにー」
「怪我はしてませんよ。・・・リックこんな調子だと、高い確率で、ずっと独り者コースだと思いますね」
女性陣から思わぬ突っ込みにリックは彼女らが何を言わんとしているのか、理解できず言葉を詰まらせてしまった。
「リックさん、あいつらに尋問するなら、私も一緒に・・・連れて行ってもらっていいですか」
ネアがリックたちの部屋にそっと入ってきて、言葉を詰まらせているリックの顔を覗きこんだ。
「ん、まだ寝ないのか・・・、尋問なんかに来ても面白くもないし、子供が見るようなモノじゃないぞ」
「気になることがあるんです。マーカさんが目的なら、私たちを皆殺しにする必要があるように思えなくて・・・、ね、いいでしょ」
ネアは少し考え、何かを決心すると媚びるような目つきでリックに頼み込んだ。
「仕方ねぇーな」
「ありがとう」
リックはしぶしぶネアの申し出を聞き入れてくれた。
「小さいけど、分かってるね」
「男にどう接するかを弁えているようですね」
カイとクゥは上目遣いでリックを見るネアに感心しているようであった。
【何か、大切なモノを失った気がする・・・】
リックに媚を売りながら、ネアは大きな喪失感を味わっていた。
「マーカ、食べないの? 」
いつもより少し遅めの朝食時に、自分の食事に手をつけないマーカを心配したルシアが声をかけた。
「だ、大丈夫です。昨夜のことが少し・・・」
マーカ昨夜のリックたちの活劇に伴う流血騒ぎが応えたのか未だに顔色が優れなかった。それに比して、ルシアはいつもと変わらぬ食欲を見せていた。
【この子、大物なのか・・・】
ネアはそんなルシアを不思議そうに見つめていたが、自分たちもいつもと変わらぬ食欲と昨夜の一件も大雨に降られた程度にしか感じていないことに気付いて苦笑した。
「きれいにした後のご飯おいしい・・・です」
ネアたちは、朝早くから床に飛び散った血、ときおり混じる何かの塊を綺麗に掃除をし終え、やっと食事にありついていた。その中でティマが笑顔を浮かべてパンにかぶりついていた。
「ラウニの脚払い、綺麗だったよ。流石、日々の修練の賜物だね」
ハチミツを溶かし込んだお茶を飲んでいるラウニにフォニーは笑顔を向けた。
「あの時、フォニーが声をかけてくれたおかげで、アレに隙ができてカイさんがやっつけることができたんです」
ラウニはちょっとした子供同士の喧嘩のように昨夜の出来事を事も無げに口にしていた。そんな会話を傍で聞いていたネアは自分の感覚が随分とこの世界の荒っぽい部分に馴染んできていることに気付いて複雑な気分になっていた。
【あんな血生臭いことに慣れていると言うか、常に覚悟していると言うか、前の世界だったら大問題になりそうだな。子供にキツイ世界だよ】
ネアは、子供の教育環境を心配する親の気持ちが何となく分かるような気になっていた。
「皆、怪我がなくてなによりだよね」
目をこすりながらアーシャがまだ寝癖が生々しいウェルを連れて食堂にやって来た。
「お、昨夜は助かったよ。恩に着る」
米豹兄妹を目にしたリックたちは立ち上がって頭を下げた。
「大したことはしてないよね。ね、お兄ちゃん」
「う、うん・・・」
ウェルはアーシャの勢いに押されてそのままテーブルについた。
「あの拳、そして見事な関節技、すごかったぜ」
リックは見事な兄妹の連携攻撃について純粋に称賛の声を送ったつもりであった。
「私は、か弱い女の子なんですっ」
リックの言葉にアーシャがむくれてふくれっ面になった。それを見たウェルは困ったような表情を浮かべた。
「ありがとう。僕らは医者見習いと整体師だから、本来は治す立場だから、壊す方はあんまり・・・」
「そうか、すまなかった。でも、助けられたの本当だ。そこには、感謝しても感謝しきれないんだ」
「お気持ちだけ、受け取っておきますね」
ウェルの歯切れの悪い説明、リックの気まずそうな回答に対して、アーシャはツンとした態度で答えると、目の前の朝食に手を伸ばしていた。
「ほほう、本来以外の道で評価を得たか。医道に挫折しても生きて行けるのう」
ドクターはにやっと笑って食事をする手を止め目を細めた。
「挫折するつもりはありません」
先ほどまでの歯切れの悪さを微塵も思わせることなくウェルは胸を張った。
「そうか」
ドクターは短く言うと、満足そうな表情を浮かべた。
「失礼かもしれませんが、レイシーさんにも感謝しています」
リックが深々とレイシーに首を下げると、カイとクゥも立ち上がりリックに倣った。
「そんなにあらたまらなくてもいいのよ。昔、ちょっと剣をかじったオバさんがお節介をしただけなんだから」
レイシーはクスクスと笑いながら、リックたちに手で座るように促した。
「見てはいないが、斬り結んでなかったんだろ」
座ったリックはカイとクゥに昨夜の出来事について再確認をした。
「うん、アイツが飛び込んだ後、あたしたちが踏み込んだ時は、あの状態だったんだ」
「斬り結ぶ音はありませんでした。私たちが飛び込んだ時には、全てが終わってました」
クゥはビブに朝食を食べさせているレイシーを畏怖のこもった目で見つめた。しかし、彼女が畏怖を覚えた存在は傍から見れば、優しく美しいお母さんでしかなかった。
「ん、屯所に尋問に行くだけだぞ、その荷物はなんだ? 帰りは引っ張れってことか」
昼食後、昨日の刺客を尋問するというリックに、ネアがソリ遊び用のソリを引きずりながら付いて来るのを見て首を傾げた。
「ちょっとした荷物です」
ちらりとソリを見たネアの視線の先には、ソリの上の荷物に掛けられた古い布があった。
「ちょっとした荷物ねぇ・・・」
リックはちょっと呆れたような表情を浮かべ雪道を屯所へ向けて歩いて行く、その後をネアがソリを引きずりながら付いて行った。宿を出たあたりから降り出した雪はネアたちが屯所につくころには本格的に降りだしていた。
「ソイツはまだ起きないか・・・」
リックは檻の向こうのベッドに横たわっている髭もじゃを見てため息をついた。
「手当はしっかりしてもらっているが、熱が酷い、朝から衛生係に診てもらっているが、あの様じゃもたないな。疲れていたのか、体力が落ちていた上での大怪我だからな」
派遣隊長はそう言うと残念そうに肩をすくめた。その隣の牢には包帯で両肩をきつく固定された男がベッドの上に苦悶の表情を浮かべながら横たわっていた。
「コイツなら話はできるぞ。な、「吹き曝し」のレイゴン、それとも「押し車」のワゴかな? 」
派遣隊長は横たわる男に皮肉っぽく語り掛けたが、男は何も反応を示さなかった。
「ここに来てからずっとあの調子さ。死んだ2人も髭も皆、傭兵の鑑札と行商人の鑑札を持ってやがった。これは、なーんにもしなくてもご法度だという事はお前さんなら知っているだろ」
派遣隊長は呆れたような口調でリックに確認した。その派遣隊長の言葉にリックは眉をひそめた。
「ああ、俺たち傭兵は紹介状、仕事を請けている契約書があれば郷の境を超えられるからな。そうじゃなきゃ結構な額の通行料やら街に入る税金をふんだくられる。行商人も商工会からの鑑札が無ければ同じだろ。もし、観察を偽造したら犯罪奴隷に堕とされても文句は言えないってのがこの世の習わし、そうだよな」
リックはだんまりを決め込んでいる男に声をかけたが、帰ってきたのは沈黙だけだった。
「ふーん、そうなんだ。そうすると、このおじさん、刺客としては三流なんだね。ひょっとすると傭兵としても三流かも」
ネアは檻の中の珍獣を見るような目で敢えて小馬鹿にしたような口調でだんまりを決め込んでいる男を挑発した。
「うるせーぞ」
包帯の男から低い怒声がネアに投げつけられた。怒声にネアは顔色を変えることもなくすっと牢に近づいた。
「子供にしか怒鳴れないんだ・・・、やっぱり三流だよ。このおじさん、夜のことで聞いても多分、何も知らないよ。聞いていたかもしれないけど、理解できていないし、忘れていると思うよ。だって、このおじさんバカなんだもん。それでさ、このおじさんこれからどうなるの」
横たわった男はネアに背を向けようとしたが、無理やりはめ込まれた肩の関節が悲鳴を上げたため、舌打ちをして面白くもない天井を見上げることと、ネアへの怒りに専念しだした。
「嬢ちゃん、何でコイツが三流なんだ。少なくとも俺よりも強かったぞ」
リックがネアに、何を言い出したんだと訝りながらネアを見た。ネアはリックの視線を感じるとにやっと笑った。
「傭兵って剣の腕だけではダメでしょ。身一つで荒事の世界を渡るんだから、契約、報酬についてしっかりとしてないと、命を落とすでしょ」
ネアは自分の考えに誤りがないかと確認するようにリックを見上げた。
「ああ、そうじゃないと、生きていけないからな。余程、運がいい奴じゃないと」
ネアはリックを見上げて納得したように頷いた。
「おじさん、運が尽きたんだね」
ネアは横たわる男をじっと見ると、ワザとらしく大きなため息をついてみせた。
「さっきから黙って聞いてりゃ。ガキが好きかって言いやがって、くっ」
男は怒鳴ろうとしたが、身体を走る激痛に顔をしかめた。
「だって、そうでしょ。依頼は、マーカさんの始末、それなのにルシアさんを含んでの皆殺しでしょ。こんな簡単な事すら出来なくて、勝手に依頼を解釈するなんて三流以外あり得ないよ。おじさん、こんなヤバい仕事するなら、なんで鑑札を2つも持ってるの、バカでしょ」
ネアは馬鹿にした目つきで下りの中の男を薄ら笑いを浮かべながら見つめた。
「何を勝手なことを」
男は怒りの籠った目でネアを睨みつけてきたが、彼女はそんな視線を一切気にするそぶりは見せなかった。
「何か、良い情報が聞けるかなって思ったけど、期待外れ。だって、おじさん、三流だもん。あ、任務に失敗しているから四流? 五流かなー」
ネアは檻の向こうの男を馬鹿にしたような目でみてクスクスと笑った。そのネアの態度に横たわっている男は睨み殺すような勢いでネアを睨んでいた。
「三流以下が捕まっても誰も助けに来てくれないよ。おじさん怪我しているから連れ出すのも手間だから、誰かが来ても、その時はおじさんを始末するためだと思うよ」
ネアの言葉に男の顔色は赤を通り越してどす黒くなっていた。
「でもさ、勝手に皆殺しにしたら、契約違反だよ。しかもルシアさんを始末したら、ボーデンさんの所からひっきりなしに刺客が送られてくるよ。違約金払ったり、成功報酬ももらえないでしょ」
ネアは椅子を持ってきて檻の前に置くと腰かけ、楽し気に男を見つめた。
「ーっ」
男は脂汗を流しながらネアを睨みつけていた。
「おじさんが生き残るのは、ここで味方を作るか、それとも逃げ出すかしかないんじゃないの。覚えていることを話すだけでも、扱いが変わって来るかもね」
ネアは立ち上がるとリックを見上げて、ウィンクして見せた。そしてリックにそっと近づいた。
「揺さぶりましたから、崩れるかも知れませんよ」
リックに小さく囁くとネアはつまらなそうに留置場から出て行った。
「おっさんのお前より、あの子供の方が物事を分かっているみたいだな。で、お前さんの名前から聞かせてもらおうか・・・」
リックはネアが引きずってきた椅子にどっかりと腰を掛けると、楽し気に話しかけた。
「・・・」
横たわっていた男がちらりとリックを見つめた。
「プレゼントを渡しておかないとね」
ネアはソリの中からまだ踏み抜かれていない釘板を取り出して牢の窓、人目につきにくく、隠れられそうな逃走経路に汚物が付いたまま設置すると、新雪をそっと釘の上にかけて行った。
「アイツは、身体だけは鍛えていそうだからな。関節を雑にはめられていても動くだろうしな」
ネアは釘板を全部設置し終えると、つまらなそうに牢獄から出てきた派遣隊長に仕掛けた場所を簡単な地図に記したものを手渡した。
「逃げた時と始末するヤツが来た時の対処です。踏むと大変ことになりますから注意してた下さいね」
「物騒なモノを仕掛けたもんだな。アイツらは明後日ぐらいにはケフの都に送られる。それまで仕掛けて置くよ」
派遣隊長は案外えげつないネアの仕掛けた罠の話を聞いて複雑な表情を浮かべていた。
郷の外に出るには、普通の住民は、出国許可書が必要になります。どこの郷にも属さない傭兵や行商人は商工会が出した鑑札が必要になります。傭兵の場合、鑑札だけだと通行税等が高くなりますが、仕事の依頼書があれば格安になってきます。しかし、これらを偽造すると業界から追放されたり、キツイ罪に問われることになりますので、切羽詰まったヤツか、向こう見ずな馬鹿か、残念な事にその両方を持ち合わせたヤツぐらいしかやらかさない犯罪です。
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