200 はまったり、つかったり
なんと、200話目です。ここまで続けた自分を少しばかり褒めてあげたいような、気がします。
これからも、継続は力なりと、ぬるぬると続けていつもりですので、生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
「うわ、うわー」
ラゴの村へ向かうため、馬車を待っているティマのテンションは上がりっぱなしだった。
昨夜降り続いた雪が真新しい布団のように通りを覆い、それが朝日にキラキラと輝いている光景は、雪の降らない地方で生まれたティマにとって神秘的でとても美しく感じられていたからである。
「しろい、まっしろ」
最近、しっかりと歩けるようになったビブもティマの横で新雪に足跡をつけたりしてはしゃいでいた。
「雪かきの面倒くささを考えなければ、本当にきれいですよね。何か、詩の一つでも書けそうな気がしますよ」
ラウニは上ったばかりの太陽に反射して輝く新雪を眩しそうに眼を細めて見つめながら嘆息した。
「書けそうな、だよね。・・・真白き雪、白き乙女の如く、輝きは一瞬・・・、後が続かないや」
フォニーは何かを吟じかけてすぐさまに断念していた。そんな2人の会話を聞いていたのか、ネアが徐に口を開いた。
「初雪や 小便ツボの 二つ三つ・・・」
「ネア、何それ、全然詩になってないよ。短いしさ」
ネアのつぶやきを耳にしたフォニーが、不思議そうにネアを見つめた。
「下品な感じがします」
ラウニは真っ向からネアの詩に指導を入れてきた。そんな彼女らの気持ちを知ってか、知らずがネアはケロリとした表情で、街灯の根元を指さした。そこには、誰かが小さな自然の要求を満たした痕跡が見事に残っていた。
「雪で何もかも覆われて、非日常的な空間になっていますが、そんな中であっても人の営みはいつもと変わらない、と言うことです」
ネアは先輩方にさらりと答え、口元に少し笑みを浮かべた。
「深いですね」
「そんな短い三行詩の中に、それだけの事を詠うなんて・・・」
さっきまで、下品だとか分からないと言っていた先輩方はネアの俳句もどきに感嘆の声を上げていた。
【俳句とか川柳はこの世界には来ていないよな・・・。芭蕉や一茶の句をそのまま使っても・・・、いかん、盗作はいかんよな・・・】
先輩方の感嘆の声を聞きながら、ネアの心の中で小さな悪と正義の戦いが繰り広げられ、結局は正義が勝利していた。
「ばしゃ、きたー」
ティマと一緒に雪玉を作ったり、走り回っていたビブが立ち止まり通りを指さした。
「あれは、馬車じゃなくてソリだよ。あの板で雪の上を滑って行くの」
レイシーはそっとビブを抱き上げながらビブにソリについて簡単に説明した。
「そーり?」
「そう、ソリだよ。あれは、お馬さんが曳いてくれるソリ」
ビブとレイシーの親子のやり取りをティマ羨ましそうに眺めていた。
「なーに、落ち込んでの。これから、楽しい、楽しいお休みなんだよ」
フォニーは立ちすくんでいるティマを背後から抱きしめた。ティマは身体に巻き付けられたティマの手を強くつかんで、にっこりするとフォニーの顔を見ようと首を回した。
「ソリへの付け替えは順調だったようじゃな」
ドクターは顔なじみの御者に声をかけると、御者は疲れたような表情を見せた。
「滅多にやらない作業で、手順とか要領を思い出しながら付け替えたから時間がかかったよ。雪が無くなっても大丈夫なように車輪を持ってきた。付け替える時は手伝ってくれよ。それも、料金の内だ」
御者はそう言って力なく笑った。
「わしらが手伝うのに、何故、それが料金に含まれるんじゃ、普通は割引じゃろ」
ドクターは御者を見上げて吠えるような声を上げた。
「ソリから、車輪への取り換えアトラクションの参加料金はサービスだって言ってるんだよ。いやなら、歩いて行きな。残念ながら、このアトラクションはご婦人は参加できませんので」
御者は微笑むと恭しくレイシーに頭を下げた。
「それは、残念。あなた、ウェル君お願いね」
「お兄ちゃん、良い所を見せられるよ」
「ウェル君、頑張ってね」
大荷物をソリに乗せようと悪戦苦闘しているウェルをアーシャとシャルにはにこにこしながら、応援する様な声をかけた。
「全く他人事だと思って・・・。ドクター、そうでしょ」
ウェルは苦笑しながらドクターをると、彼は手荷物を積み込みながら他人事のようにウェルを眺めていた。
「力仕事は若い者の仕事じゃろ。わしは、レイシーとビブの相手で忙しいんじゃよ。ほれ、レイシー、踏み外すなよ」
ドクターはそう言うと、ビブを抱いたレイシーを馬車に手を引いて乗せた。
「ウェル君、がんばれ」
「期待してますよ」
「がんばれ」
ため息をついているウェルに先輩方とティマは元気よく声をかけて馬車に乗り込んでいった。
「そう言う、星の元に生まれたんです。恨むなら、あなたの運命を恨んでください」
ネアはそう言うと防寒用の毛布をウェルに手渡した。
「御者さんから、荷台は冷えるからって、油引きした特製毛布らしいですよ」
「最低限のやさしさ、ありがとう・・・」
ウェルは力なくネアから毛布を受け取ると、大きなため息をついて荷台に上がり、荷物の間に毛布をかぶって丸くなった。
【大きな猫みたいだな。・・・人の事は言えないか】
ネアは自嘲気味の笑みを浮かべるとさっさと馬車に乗り込んだ。
「下手な同情は禁物じゃ。あれも医学の修練の一つじゃよ。寒さによる身体の変化を身をもって学ぶために必要な事なんじゃよ」
ドクターも尤もらしいことを言うと御者にさっさと出発しろと促した。
「うるさい、言われんでも時間だ」
御者が口にすると同時に教会の鐘が寒空に気持ちよく響いた。
「よし、行くぞ」
御者は手綱を操作すると馬車・・・と言うかソリはゆっくりと進みだした。
「あ、馬車だー」
「ソリー」
寒さも何のそので、窓から身を乗り出して辺りを見ていたティマとビブがいきなり大きな声を上げた。
「この季節、定期運航でもなく馬車が来るとはな」
御者は向かってくる馬車を訝しそうに眺めた。その声を聞いて、うとうとしているように見えたドクターはそっと手近に置いた斧に手をかけ、レイシーは愛用の仕込み杖をし須賀に両手で軽く握ると辺りの気配を伺いだした。
「あれ、あの紋章は、どこかで見た様な気が・・・」
ネアは近づいてきた馬車の御者席に飾られている紋章を目を凝らして見つめた。
「ルシアちゃんのマークだよ・・・です」
「え、ルシアさんの」
ラウニはティマの言葉を聞いて思わず身を乗り出していた。
「しっかし、大荷物じゃな」
ドクターは警戒を解かずに馬車が積載している荷物を見て呟いた。
「しかも、二頭立て、ソリの沈み込みから見て、荷物を満載してますね。護衛もいますが、荷物を護るためにいるようですね・・・」
レイシーはいつでも戦える姿勢を保ちながら、向かってくる馬車を睨むように見つめながら口にした。
「レイシーさん、どうしてそこまで」
ネアはレイシーが何故そう判断したのか見当がつけられず、そして改めて護衛たちを見て小さな声を上げた。
「馬車に窓がないし、護衛が背負っている荷物も冬とは言え、大きい」
ネアはレイシーにあの馬車が荷物の身を運んでいると判断できる事実を並べ立てた。
「流石ね、そのとおりよ。人が乗るなら大きな窓が必要。護衛の荷物が大きいのは、それぞれの食料をそれぞれが持っているってこと。人を運んでいるなら調理器具やら食器があるから、野外で調理することが簡単だけど、そのために馬車を一つ仕立てる必要があるわね。荷物の護衛だけなら、簡単な携行用糧食で済ませる方が経済的だからね。ルシアちゃん住んでいるヤヅからだと、一日仕事になる、その上この雪、速度は出ないから、大変な行軍よ」
レイシーは護衛の兵士たちの苦労を労うように言いながらも警戒だけは解いていなかった。
「レイシー、奴らに敵意はないぞ。力を抜け」
兵士たちの動きを見ていたドクターは斧から手を外すと小さな安堵のため息を吐いた。
「・・・」
レイシーもドクターに倣いそっと仕込み杖を脇に置いた。
「?」
ラウニとフォニーは2人の一瞬の内に緊張した気配を読み取り、理由は分からないモノのそれぞれが隠し持った武器に手をやっていたが、ドクターとレイシーが緊張を解いたのを見て首を傾げながらもそっと武器から手を離した。
「ルシアさんの家の馬車とすれ違いますよ。ルシアさんは乗ってないみたいですけど」
ネアはそんな2人に窓の外を指さしながら声をかけた。ネアの声に2人は窓に駆け寄り身を乗り出した。
「あの紋章は」
「ルシアさんのとこのだよ」
2人は目を輝かせながら、ボーデンの紋章が入った馬車を見送った。
「この方向だと、ケフの都になりますね。ケフの都に何の用なんだろ」
ネアは去って行く馬車を見送りながら首を傾げた。すれ違った馬車と徒歩の護衛たちは雪の上にソリの跡と足跡を残してネアたちの視界から消えて行った。
「ルシアさん来てるね」
宿の車寄せの脇の駐車場に停めてある馬車を目にしたフォニーが嬉しそうな声を上げた。
「ルシアさん来てるの、早く会いたいです」
「馬車から降りるのは、馬車が止まってから、そうじゃないと大怪我して、遊べなくなるよ」
ネアは、今にも馬車から飛び降りようとするティマをネアが押さえつけた。
「こんな所で怪我をするとつまらんぞ」
ドクターはそう言うと馬車がしっかり止まってから、ドアを開けゆっくりと降り立った。
「下は雪じゃな。滑ることはないと思うぞ」
ドクターは足元を確認するとレイシーに手を差し伸べた。レイシーはビブをラウニに預けてそっと馬車から降りると、ラウニからビブを受け取りそっと地面に立たせた。
「ここの雪は深いでしょ。動き回ると深い所にはまるから、足跡のない所を歩いちゃダメよ。ずっぼりはまっちゃって雪が解けるまで見つからないことになるからね」
レイシーはビブに言い聞かせると、ビブは真剣な表情で頷いていた。
「ティマ、レイシーさんの言葉聞いていたかな」
馬車からポンと新雪の上に飛び降りて走り回っているティマにネアは声をかけた。ティマはネアの言葉に動きを止めると、ネアに向かって新雪の上を一直線に走り寄ろうとした。そして、その姿は一瞬にして消えた。
「ティマっ」
ネアはティマの名を大声で叫んだ、しかし彼女が消えた風景を見た途端、全身の毛が逆立つような恐怖を感じた。その恐怖のためネアはその場に固まってしまった。
「ティマ、大丈夫、だからね、新雪の下は何があるか分からないから、歩かないようにね」
近くにいたレイシーがはまり込んだティマの手を掴んで引き上げながら注意していた。
「ティマ、良かった・・・」
ティマの安全を確認したネアは彼女の元に駆けよるとがっしりとその小さな身体を抱きしめていた。
「ネアお姐ちゃん、どうしたの? 」
ネアの取り乱した姿を見たティマが不思議そうな表情を浮かべた。レイシーはネアの行動を見て、彼女が抱えているものの一片を見たように感じていた。
「さ、宿に行きましょう。ここに居ても身体が冷えるだけ・・・、あれ、ウェル君は・・・」
ラウニは固まっているネアや荷物降ろしをしているアーシャたちを見回して首を傾げた。
「あ、お兄ちゃん固まってるよ」
アーシャは荷台に上がると毛布にくるまって丸くなってしまっている兄を見て面白そうな声を上げた。
「お兄ちゃんを降ろすよ。受け見取らないとどうなっても知らないよ」
アーシャは固まっているウェルを抱えて、荷台から大地に降ろそうとすると、彼はやっと動き出した。
「僕はその手の降り方は嫌いなんだよ」
「じゃ、とっとと降りて荷下ろしを手伝ってよ」
人使いの荒さにウェルは声にならないうめき声を上げると、黙々とに悪露作業を始めた。
「恨むなら、己の運命を恨め・・・か」
ウェルは文句をつぶやきながら硬くなった身体を無理やり動かしていた。
「また、世話になるぞ」
ドクターは宿に入ると、掃除をしていたラスコーに声をかけた。
「貴様の世話はしない。レイシーさんとビブちゃんの世話ならするぞ」
ラスコーはにやりと笑ってドクターを懐かしそうに見つめた。
「わしがおらんで、寂しかったくせにのう」
「ぬかせ」
客と宿の主との会話とも思えぬ軽口を叩きあいながら、2人は満面の笑みを浮かべていた。
「ただいまー」
ドクターの後からシャルが元気よく声を出して駆けこんできた。その後をアーシャがラスコーに挨拶しつつ、2人そろって厨房の方に駆けて行った。
「ここに、荷物、置きますね」
そんな中、ウェルが大量の荷物を抱えて宿に入ってきて、ホールの中ほどにどさりと置くとその場に座り込んでしまった。
「いい若い者が情けないぞ。今夜はここで泊っていけ、宿代と食事代はわしが持つからな。荷運び代じゃ。アーシャちゃんの分もあるからな」
ドクターは座り込むウェルの頭を軽く叩くと、レイシーを呼び寄せた。
「冷えておるじゃろ、ビブはわしが見るから、一っ風呂浴びて来い。アーシャんちゃんに正対してもらえるように話はしておくからな」
「ありがとう。あなた」
レイシーは笑みを浮かべるとビブを呼び寄せた。
「お母ちゃんは、お風呂に入ってくるから、その間はお父ちゃんと一緒に待っててね」
ビブは返事をする代わりに、父親にびたっと抱き着いた。その行動にドクターの顔は腑抜けたような笑顔になっていた。
「娘の持つ破壊力はすごいねー」
ドクターが猫なで声でビブと遊んでいるのを見てフォニーはクスリと笑った。
「あの歳で、男の扱いを知っているんですよ。末恐ろしい子です」
ビブがドクターに甘えている姿を見てラウニは目を細めた。そんなビブに刺激を受けたのか、ティマがいきなりネアに抱き着いてきて、頭をネアにこすりつけてきた。
「お姐ちゃん・・・」
「そっかー、ティマも甘えたいんですね」
ネアはそっとティマの背中を撫でてやると、ますますティマは力を込めて抱き着いた。
「その姿、アリエラさんが見たら、きっと血の涙を流すよ」
「甘やかすだけの師匠ですからね」
フォニーとラウニは互いを見合って肩をすくめた。
「貴女たちのお部屋は前と一緒の所。ドクターも同じですよ。お食事までじかんがあるから、お風呂に入って、身体を温めるといいよ。あ、アーシャ、レイシーさんに整体の施術をお願いね」
シャルはいつもの動きやすい服装にエプロン姿になると、ホールで戯れているネアたちに部屋を示し、疲れ果てている兄の肩をほぐしているアーシャに声をかけた。
「りょーかーい、今回は念入りにやるからね」
アーシャは袖まくりすると、いつも施術をしているベッドがあるホールの一角に向かうと、タオルやオイルの準備を手慣れた様子で進めて行った。
「アーシャの整体の腕、随分と上達したなー」
ウェルは自分の肩をさすりながら、妹が、あらゆる意味で力強く成長していることを実感していた。アーシャが準備を終えた頃、ほかほかに茹で上がったレイシーが身体から湯気を上げながら脱衣場から出てきた。心なしか左脚の状態もいつもより楽そうに見えた。
「お風呂で温まるだけで、疲れとか悪いものがすーっと身体から出て行ったみたい」
「温まっているうちに、歪みを治しますから、ここに俯けに寝てくださいね」
「じゃ、背骨からいきますね」
パーテーションで区切られた施術のブースからボキっとか、バキっという剣呑な音と、レイシーのうめき声が聞こえてきた。
【あの声、艶っぽいなー】
入浴のための道具を小脇に抱えてホールに入ってきたネアはレイシーのうめき声を聞いて、久しぶりに心の中がおっさんで占められていることに気付いた。
「レイシーさん大丈夫かな・・・です」
ティマが不安そうにネアを見上げた。そこには、いつもと違う感じがする彼女の目を見て少し身を引いた。
「ん、大丈夫だよ。骨の歪みとかを治してもらっているから、ちょっと痛いらしいけど・・・」
身を引いたティマの表情を素早く読み取ったネアは、できるだけいつものように振る舞うことに注意を払いながらティマの問いかけに答えた。
「で、ティマはどうしたのかな」
身を引いて、怪訝な視線を送るティマにネアはにこやかに尋ねかけた。
「いつもと違う感じがしたけど、あたしの気のせい・・・です」
「そ、そうなの・・・」
ネアはこれ以上の問答はいらぬ墓穴を掘るように感じたので、取り合えず温かい温泉を堪能することに気持ちを切り替えた。
「ネアちゃん、ティマちゃんお久しぶり」
浴場には先客がいて、彼女は、はしゃいだ声を上げてネアたちに駆け寄ってきた。
「ルシアさん・・・」
「お風呂で走ると危ないですよ」
ルシアの出現に驚いているネアたちを傍目にすっぽんぽんのルシアはネアに抱き着いてきた。
【こ、これって、犯罪に近いと言うか、犯罪だよ・・・】
ネアはひきつった笑みを浮かべながら、暫くルシアにされるがままになっていた。
「お嬢様、ネアさんたちが驚いていますよ。さ、身体を洗いますから、こちらにどうぞ」
年齢を思わせぬ締まった身体のマーカがタオル一枚を巻き付けただけの姿でルシアを手招いた。
「ネアさん、ティマさんお久しぶりですね。お元気そうでなによりです」
マーカはそう言うと、傍らにちょこんと座ったルシアの身体を優しく洗い始めた。
「ルシアさん、お久しぶりです」
「お久しぶり、元気でしたかー」
ネアたちの後にラウニとフォニーが天然の毛皮を身に纏っただけで浴場に入ってきた。そして、マーカに現れているルシアを目にすると嬉しそうな声を上げた。
「ルシアさん、ジェボーダン家の人たちも来ているの・・・ですか」
ティマは、たたっと速足でルシアの横に腰を下ろすとマーカに洗ってもらっているルシアに声をかけた。
「うん、皆来ているよ。でね、新しい家族もできたんだよ。お風呂から上がったら紹介するね」
「楽しみ・・・です」
ルシアの言葉にティマは身を乗り出した。そんなティマの肩にマーカがそっと手をかけた。
「お嬢様、終わりましたよ。温泉に浸かって、温まって来てくださいね。さ、ティマさんも洗ってあげますよ。さ、そのブラシを貸してください。こう見えても獣人の子の面倒も看たことがあるんですよ」
「あ、お願いします・・・」
ティマはマーカの横に座ると彼女にその身を任せた。
「お母ちゃん・・・」
ティマは洗われながら、母親と一緒にお風呂に入っていた頃を思い出して小さな小さな声で呟いていた。そのつぶやきは洗っているマーカの耳に届いていた。マーカはその声を聞いて思わずティマの小さな身体を抱きしめたくなるのを堪え、優しく洗い上げて行った。
久しぶりのルシアです。彼女はネアたちから見ると幼く見えますが、この世界でも普通の子はルシアがデフォルトです。獣人たちが早く年齢をとる、という事ではありません。真人と獣人の寿命の長短の差はないことにしています。
今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。