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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第14章 落とされた影
188/342

174 殲滅させる敵?

何だかんだと秋じみてきました。私事ながら、仕事も慌ただしくなってきています。

でも、継続は力なり、の言葉を信じて続けていけたらいいなー、とうっすらと思っています。

 「皆、準備はいいよね」

 お館の使用人用出入り口の前でバトは外出用の私服を着込んだネアたちに明るく声をかけた。

 「はい、準備完了しています」

 ラウニがネアたちを見回して、元気よく返事した。

 「元気があってよろしい。・・・で、なんでいるのかなー」

 バトは、にこやかにラウニに答えると、ネアたちと一緒にその場に集まっているルロ、アリエラ、そしてルーカとタミーを怪訝な目で見つめた。

 「貴女だけだと、この子たちにどんな悪いことを吹き込むか心配ですからね」

 ルロは当然のことのように口にした。

 「可愛い弟子と一緒にお散歩なんて、なかなか機会がないもん」

 アリエラは自分とおそろいの帽子、ティマにはちゃんと耳を出す穴が開いたのを優しく彼女に被せながら当然のことのように口にした。

 「私は、こもりがちなモコモコさんと、この子たちのことをほっといて掛け合いを始める人たち、自分の弟子に首ったけになって周りが見えないの、とかばっかりだったら不安しかないでしょ。この子たちの中には、武闘派もいるみたいだし」

 ルーカは武闘派と口にした時、ちらりとネアを見つめた。

 「ケフの凶獣だったよね」

 フォニーがルーカの動きを見て、ニヤリとしながらネアに声をかけた。

 「え、なに、そのちょっと恥ずかしカッコイイ二つ名」

 フォニーの言葉にバトが興味津々の様子でフォニーに尋ねてきた。

 「ケフの凶獣、耳にしたことはあるよ。噂では、大の男を2人を一瞬にして血だるまにして、喧嘩最強の噂を持つ男の子を2回も一撃で沈めて、挙句の果てにはこの街から追い出した女の子がいるって聞いたけど」

 ルーカが街で耳にした噂話を披露して、暫くしてから納得したようにうなずいた。

 「ちょっと、大げさになってますけど、ネアちゃんですよね」

 ルーカの話を聞くと、ルロがニコニコしながらネアに確認した。

 「昨日初めて耳にしました。心外です」

 「酷い二つ名じゃないんですから、誰かさんはシモエルフの二つ名を自ら名乗ってるのか比べると、まだまだマシだと思わないと」

 むすっと膨れるネアにルロが慰めのような言葉をかけた。

 「比較するモノが、違うような気がします」

 ネアはため息をついて項垂れてしまった。

 【アブナイ子リストはなかったみたいだけど、二つ名がつくなんて・・・】

 できれば、穏やかに人生のやり直しをしたかったネアの思いは踏みにじられているようであった。

 「今日はね、街の外の見晴らしのいいところに行こうって思ってさ。演習場の近くの丘にね、ちょっとした食べ処もあるし、いいでしょ」

 バトは今日の目的地を告げると、さっさと歩き出していった。

 「今日のお散歩の企画はバトだから、彼女の独断でも文句は言えないか・・・」

 ルロは、妙にハイテンションなバトを警戒していた。彼女なら、何かしでかす、それもトンでも無い事を、ルロの直感はけたたましく警報を鳴らしていた。


 「風が気持ちいいねー」

 草原を吹き抜ける風に髪や尾や全身の毛をなびかせてフォニーが目を細めた。

 「涼しくて気持ちいいですね。お山もきれいに見えるし」

 ラウニは目を細めて果てしなく多続くように見えるラマクの山塊を見つめた。空は、もう秋の色にそまっており、ラマクの山塊の頂が何時白くなってもおかしくない天候であった。

 「気持ちいいでしょ。来て良かったでしょ」

 バトが自画自賛するように胸を張り、深呼吸しているネアたちをニコニコしながら見た。

 「この、草が揺れる音が・・・、懐かしい・・・、でも、他の音も聞こえてくる、虫の声かな」

 南の草原で生まれ、最近までそこで生活していたティマは大きな耳を動かして、彼女にとって懐かしい音を集めていた。そんな彼女でも、この辺りの虫の鳴き声は異国情緒に溢れるものであった。

 「この音が、ティマちゃんの生まれた場所の音なんだ・・・」

 幼い頃、海に面した町で生まれ、家族もろともケフに移り住んだアリエラにはあまり馴染みのない音であったが、可愛い弟子が一瞬見せた複雑な表情を見てとると、彼女と同じように草原を吹き渡る風の音、草の音に耳を澄ませた。

 「秋の音ですよ。虫も懸命に生きているんですよ。夏から、秋に歌い手と舞台が変わったんですよ」

 ラウニは虫の音を聞きながら、自分が生まれた村のことを思い出していた。そこには、楽しい思い出がなかったことに思わず苦笑していた。

 【私は、家族や住む場所がなくなったことをティマみたいに悲しむことができない・・・、人の心を持ってないのかな、心も姿と同じで動物のままなのかな・・・】

 気持ちよい風に吹かれながら、ラウニは複雑な表情を浮かべていた。

 【それぞれ、何か抱えているんだろうね。子供なのにね・・・】

 ネアは少し寂しい気持ちになっていた。そんな自分の心の持ちようにネアは驚きを感じていた。

 【こんな、仕事に関しないことを気にするなんて、結果さえ出れば、それで良かったのに・・・】

 「何やってたのかな・・・」

 人として大切にしなくてはならないことを片っ端から切り捨ててきた半世紀余りを思い出してネアは独り言をつぶやいていた。

 「なに?」

 ネアの言葉を耳にしたフォニーがネアに尋ねてきたが、ネアは素っ気なく「なにも・・・」と答えただけだった。

 「皆ー、見えて来たよ。目的はあそこだよ」

 少し汗ばんできたころ、バトが皆に声をかけて、指をさした。その先には粗い石組で作られた小さな砦のような建物が見えてきた。

 「お山の飯処、天空亭、標高もお値段も高め。でも眺めだけは最高」

 バトはそう言いながら、砦を思わせる飯処の階段を上がって行った。

 「今日は風が強くないから、スカートを気にすることはないよー。めくれることはないから、穿いてなくても安心、ちょっと残念だけどね」

 階段を上がりきるとそこはテラス状になっており、眼下にはケフの都やその周辺が広がっていた。

 「ふわー、お館が、あんなに小さい・・・」

 ティマは一言口にするとそのままその光景を口を開けてただ眺めているだけであった。

 「いい場所でしょ?」

 バトが自慢げに言うと、慣れた様子でテラスに置かれたテーブルの一つに腰かけた。

 「えーと、皆、席について、ここでお茶とちょっとしたお菓子を食べた後、街でお昼にするよ。ラウニちゃんたちはお財布のことは心配しないで、ここは、お姐さんたちが持たしてもらうからね。いいよね」

 バトの異論を認めないと言外に匂わせた言葉に、ルロやルーカまでもその剣幕に押されて財布の中身を確認することとなった。

 「ごちそうさまです」

 フォニーはニコニコしながらバトたちにお礼を述べると、バト以外はちょっと引きつった笑みを浮かべて応えた。天空亭はそのロケーションの標高の高さもさることながら、出されるモノのお値段も標高に比例しており、バトが敢えてお茶だけにしたのも経済の問題からであった。

 「バト、よくこんなお店知ってたね。お茶だけに来るには少し遠いし、食事をするには値段はいいし」

 ルーカが不思議そうな表情を浮かべてバトに尋ねた。お館の辞書とは言え、お手当を潤沢に貰っているわけではない、どこかの大店のお妾さんにでもなれば話は違うが、彼女はそんな浮いた話とは無縁な存在だし、それ以前に彼女に彼氏がいると聞いたこともないので彼氏におごらせたことがあるとの可能性も薄くなっていた。

 「それにはね、コツがあるんですよ。初めて会う人にはね」

 バトはルーカに説明しながら、いつもはしないお澄ましの表情を作っていた。

 「こうやって、清楚な感じにして、『お腹すいたー、どこか素敵なところでお食事したいなー』とか、『私を食事に連れて行くことを許可する』みたいに、相手のタイプに合わせるの。高確率でおごってもらえたけど、一度きりなのが困ったもんなのよね」

 バトは苦笑しながら真人のウェイトレスに懐に優しい価格のお茶のセットを人数分注文した。勝手に注文されたことにルロがむすっとして、

 「私たちの合意も取らずに勝手になにしてるんですか」

 と、文句を言ったが、バトは無言でメニューを手渡すことによりルロを黙らせてしまった。

 「しかし、色気も何もない集団だねー、私たち」

 お茶が出てくるまで景色を楽しみながら待っている時に、ルーカが呆れたような言葉を口にした。

 「女ばっかりですからねー、しかも、誰も彼氏もいないし・・・」

 タミーはそう言うとため息をついて、侍女たちを見回した。ここに集っているのは、恋愛にはまだ幼すぎる子たちや玉の輿をねらっているものの実行動がともなっていないの、シモエルフともまで言われているの、弟子に首ったけになっているの、日々の仕事に追われてそれどころじゃないのと、それぞれがその手の世界に程遠い連中ばかりであった。

 「ルーカさん、それ言ったら、悲しくなってくるじゃありませんか。そこは、皆、痛いほど分かっていることなんですから」

 ルロは悲しそうな表情を浮かべていた。それと反してアリエラは周りが淀んだオーラを発しているのにかかわらず、いつもと同じような表情を浮かべていた。

 「私には、ティマちゃんがいるから・・・」

 「言われなくても分かってるよ。それもほどほどにね、重いと嫌われるからね」

 ルーカはアリエラに忠告を与えると小さなため息をついた。

 「ひょっとすると、この中で一番最初に結婚するのは、ティマちゃんかも知れないね」

 ルーカの独り言を耳にしたネアは思わず深く頷いていた。

 【バトとルロは言わずともだし、タミーさんは今のところ、仕事で一杯いっぱいだし、ルーカさんはこのままだとお局様一直線だしな】

 やっと出てきたお茶を口にしながら大先輩たちを見回して肩をすくめた。

 【これで、誰かに彼氏ができたりすると、この関係もギクシャクするんだうな・・・】

 皆でお茶を楽しむ風景を見て、ネアは、この関係がずっと続けばいいなとぼんやりと思っていた。

 【仕事に関係ないことを考えるなんて・・・、身体に引っ張られているのかな・・・】

 ネアは、我がことながら不思議な感覚をお茶と一緒に味わっていた。


 結局、天空亭のお茶は街で飲むものと値段以外は変わらないことを確認したネアたちは街に戻って使用人たちの憩いの場となっているしずく亭で軽めの昼食を取ると、お館のバトたちの部屋に集まっていた。

 この部屋は、バト、ルロ、アリエラの3人が一部屋で生活しており、大きさはネア他の部屋に比して大きく、ベッドもゆったりとしているように思えた。ただ、この3人とも騎士団出身のためか、部屋の中に無駄なモノは余りなく、ここが女性の部屋だと思わせるのはテーブルの上の一輪挿しに刺さった可愛い鼻とクマ、キツネ、ネコ、リスのヌイグルミだけだった。

 「アリエラさんのベッドはすぐに分かるね」

 フォニーがリスのヌイグルミがきちんと置かれているベッドを指さして本人に確認した。アリエラは不思議そうな表情でそのとおりだと答えた。

 「何で分かったの?」

 「そのヌイグルミですよ」

 フォニーは嬉しそうにリスのヌイグルミを指さした。よく見るとそのヌイグルミのあちこちに染みがあるようであったが、ネアはそれを無視することにした。

 「ベッドの上にでも腰かけて、ここ椅子が足りないから」

 バトが綺麗に整えられているベッドを指さして腰かけるようにネアたちに促した。

 「ここにお菓子置いとくよ。いっぱい食べると夕食食べられなくなるから」

 アリエラは昨日買い込んできたお菓子をテーブルの上に置いて行った。

 「これ、随分いい値段のシフォンケーキじゃないの。アリエラ、無理してない?借金してない?」

 ルーカがテーブルの上に展開されたお菓子を見て心配そうにアリエラ尋ねた。

 「無理はしてませんよただ、ちょっとお小遣いが足りなくなったくらいです」

 「可愛い弟子とその先輩方にお礼するのはいい心がけだよ。師匠らしいところを見せたね」

  バツが悪そうに笑うアリエラにルーカは優しく微笑むと、そっと頭を撫でてやった。

 「お茶が入りましたよ」

 ルロとタミーがお茶の入ったポットとカップを持って入ってくると、お茶会が自動的に開始された。


 「で、聞いたよ。ネアちゃん、またやったんだって」

 ルーカがニコニコしながらネアに顔を近づけてきた。その瞳には思いっきり好奇心の色が出ていた。

 「ネアちゃんだけじゃないですよ。ね」

 タミーがラウニたちを見回して笑みを浮かべた。

 「ひょっとして、ティマちゃんも・・・」

 タミーの言葉を受けて、アリエラがティマに詰め寄った。

 「ケガはない、やったのは誰なの?ソイツを私が〆るから」

 怒りで表情を無くしたアリエラがティマに近づいた。

 「お師匠様、顔怖い・・・」

 ティマがベッドの上で後ずさりしたのを見てアリエラは我にかえった。

 「ごめんなさい、つい・・・」

 「ちょっとは説教した甲斐があったねー」

 ルーカは、我にかえったアリエラを褒めると改めてネアに向き合うと真剣な表情になった。

 「で、どうだったの?」

 「喧嘩を売ってきたのは、孤児院の子たちでした。何でも、同じ孤児なのに、私たちはきれいな服を着て、いい物を食べているのが気に食わないらしくて、それで・・・」

 ネアの言葉を聞いてルーカはふふふと笑い声をあげた。

 「そっかー、洗礼を受けたんだねー、これは私ら、若くして使用人になった者の定めだよ。私もよく絡まれたもんだよ。私は、幸い孤児じゃないけど、思いっきり貧しい村の出身だからね・・・、で、舐められなかったんだよね」

 ルーカは笑い声を上げると身を乗り出してさらに尋ねてきた。

 「最初の絡みは、ネアが一撃で退けました」

 ラウニが恥ずかしそうに答えた。そして、ちらりとネアを見て肩をすくめた。

 「ふーん、最初の絡みってことは、次もあったんだー」

 いつになく鋭くバトが突っ込んできた。その眼はルーカに劣らず興味深々を雄弁に物語っていた。

 「次のは、恥ずかしい名前のついた集団の男の子を引き連れて来たんだけど・・・、うちらが・・・、ラシンさんも・・・、言っていいの?」

 フォニーは途中まで言うとラウニの表情を伺った。

 「かくしても仕方ない事です。事実は事実なんですから」

 「うん、私が話してもいい?」

 「間違ったり、盛ったら私が修正します」

 ラウニの言葉にフォニーは頷くと口を開いた。

 「恥ずかしい名前の手段のおにーさんを3人連れてきてさ、市場から帰るところを襲ってきたんだよね。おにーさんたちはラシンさんが投げ飛ばして瞬殺。後は、うちとラウニとネア、ティマが始末したよ。イキがってた割には弱くてさ、その中の一人はティマに膝蹴り喰らって蹲って泣いてたぐらいだから」

 フォニーは昨日の武勇伝を簡単に話した。ルーカたちはフォニーの言葉を耳を傾けながら、うんうんと頷いていた。

 「舐められなかったね。良し。しかし、ラシンがそんな武闘派だとは知らなかったよ。いつも厨房で難しい顔したり、味見してうっとりしているぐらいの安全な人だと思ってたけど、ドワーフの血なのかな」

 ルーカはオチをすすっているルロをチラリと見た。その視線に気づいたルロはむすっとした表情になった。

 「あの、恥ずかしい名前なんだったけ」

 フォニーがうーんと考えながらネアに尋ねてきた。

 「炎竜会・・・」

 「そのはずいの」

 フォニーはネアの言葉にびしっと指さして、それが正解だと宣言した。

 「へー、炎竜会ってまだあったんだねー」

 恥ずかしい名称の集団のことを聞いて、ルーカは懐かしそうに目を細めた。

 「炎竜会・・・、ちょっと耳にしたけど、そんなに凄い組織じゃなかったよね」

 バトが鉄の壁騎士団に在籍していた時に耳にした集団のことを思い出していた。

 「盛り場での喧嘩とカツアゲでしたね」

 ルロが懐かしそうに呟いた。

 「復活するんだねー、叩き潰したと思ったんだけどねー」

 ルーカは残念そうに言うとタミーも横で頷いていた。

 「アイツら、お館様と奥方様を馬鹿にして・・・、いっそのこと・・・」

 タミーがぎゅっと握りこぶしを作って苦々しそうに吐き出した。

 「ああいう組織は代替わりするんですよ。メンバーは入れ替わりますが、なぜか名前は継ぐんですよ。由緒があるのか、伝統があるのかしりませんが、あったとしても糞の役にもたたないでしょうが」

 ルロは呆れたように言うと、ちょっと小首をかしげた。

 「炎竜会が3人でしたよね。他のはどうなんでしょうかね」

 「その内の一人が会長で、レンて名乗ってましたよ」

 「やっぱり代替わりして、規模も縮小してるんですよ」

 ネアの言葉を聞いたルロは手を打って自分の疑問が解決したことを喜んだ。

 「侍女の先輩として、貴女たちにお仕事を一つ。炎竜会を叩き潰して、二度とふざけた名前を名乗れないようにしなさい。完膚なきまでに、殲滅しなさい」

 ルーカはびしっとラウニに指さして意義を挟ませない勢いで命じた。

 「あの・・・、ルーカさん、炎竜会に何かされたんですか」

 アリエラが恐る恐るルーカに尋ねると彼女はキツイ視線をアリエラに投げつけた。

 「私はね、貧しさのせいにして人の道からズレるヤツが大嫌いなんだよ。そんなヤツら限って、悪の道に進んだのは貧しさたどか、世間のせいだって、他人事にしやがって、その貧しさがなんだって、食い物が無くて生まれたばかりの子どもを間引くなんて世界もあるのにさ・・・」

 ルーカは悔しそうに俯いて拳を強く握りしめた。

 「いい服着てる?美味しいモノを食べられる?人ってのは出た賽の目で勝負するしかないんだよ。賽の目が悪くて文句ばっかり言ってても、前には全く進まないんだ。口減らしで街に出されてさ・・・」

 ルーカは絞り出すように言うと、ネアたちを鋭く見つめた。

 「アンタたちもさ、両親がいないとかで世間を恨んでしまったら、堕ちるだけだよ。堕ちたら、這いあがるのはキツイよ。ま、私が言えた柄でもないけど」

 ルーカは諭すように言うとお茶をすすった。ルーカの言葉にネアたちは黙り込んでしまった。ひょっとすると、自分たちもアンやラトのように恵まれた第三者を逆恨みするのではないかと、そんな不安がラウニたちの胸の中をふとよぎった。

 「さーて、辛気臭い話はここまで、これからは恋の話で盛り上がるのよっ」

 ルーカはポンと手を叩いた。

 「一番、難しい話題だと思いますよ。それ、ストレスがトンデモないことになりますよ。後悔しますよ。絶対に後悔します。断言できます」

 タミーは話題を変えようとするルーカに警告を発した。

 「こうなると、残るは食べ物のお話だけですね」

 ルロが残念そうな声を出した。

 「あたし、美味しいモノ好き・・・です」

 ティマがやっと分かる話題になったので嬉しそうにティマが声を出した。

 「私も好きだよ。師弟で今度美味しいモノ食べに行こうね」

 アリエラが満面の笑みを浮かべてティマに声をかけると、ティマは嬉しそうに頷いた。

 「楽しみです」

 恥ずかし気に口にするティマにアリエラは微笑みで返していた。

 【これも、お説教の効果なのかな。以前だったら思いっきり抱きしめていたのに】

 アリエラの師匠としての進化にネアは、ルーカがいかなるお説教を喰らわせたのか、想像するだけでも背筋に冷たいモノが走る思いがした。


この世界にも犯罪者は勿論います。その中でも、若い衆が中心となるストリートギャングのような存在はいます。それより、おっかないのもいますが、それは大きな街にならないと生息していません。

炎竜会はかつてはブイブイ言わせていたようですが、若かりし頃のルーカとタミーに徹底的に潰されています。(物理的に)しかし、その名を継ぐ存在もいます。それがレンです。レンも炎竜会の没落が何で始まったかは知っていません。

今回もこの駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を申し上げます。

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