172 謝る。
急激に涼しくなってきたように思えますが、まだまだ日中は暑いですね。
このお話も熱くなればいいのですが、いつものように淡々と日常が続きます。
ネアたちが目を覚ましたのは、お日様がそろそろ傾きだした頃合いだった。久しぶりのお昼寝で疲れが随分と楽になったようにネアは感じていた。
「あー、良く寝た」
フォニーがベッドに半身を起こして、大きな口を開けて欠伸しながら、背筋をうーんと伸ばしていた。
「身体が軽くなったようです」
ラウニも伸びをしながら、驚いたような声を出していた。
「猫にはお昼寝が必要なんですけど、ここにいるとそれは難しいです」
ネアは少し不満そうに言うと、うつ伏せになって猫のような伸びをした。
「ネアお姐ちゃん、本当にネコみたい」
ティマは目をこすりながら、くすくすと笑い声をあげた。
「こんな姿してるんですから、ネコとは随分と関わっているように思うんですよね」
ネアは自分のピンクの肉球のついた掌をじっと見つめた。
「私たちも、それぞれ関係があるんでしょうかね。私だとクマに……」
ラウニは自分の黒い毛が生えた腕を見回して寂しそうな表情になった。
「毛むくじゃら……」
己の腕の毛をつまんでラウニは深いため息をついた。
「毛だけじゃないよ。このマズル、尻尾、全く無関係ってわけじゃないと思うよ」
フォニーの言葉にはどこか諦観したような色が滲んでいた。
「そしたら、あたしリスの親戚かな」
ラウニやフォニーとは違ってティマは純粋に自分の身体を楽しそうに見ていた。
「でもさ、真人が人の基本だとすると、うちらは人からズレているよね」
フォニーがため息交じりに吐き出すように呟いた。
「そのズレを正義の光みたいな連中が利用しているんですよ。なーんにもないヤツが、真人というのを最後の拠り所にして、私らを下に見ることで心を落ち着かせているんですよ」
ネアはそう言うと正義と秩序の実行隊に憧れていたり、変に逆恨みをして、自分が力なんぞを持ち合わせていないことに気付かずに街から出された少年のことを思い出して鼻先で笑った。
「真人って、なんだろ?私たちの数が真人より少なくて、珍しいから普通じゃないのかな・・・、汚らわしいのかな・・・」
ラウニはそう言うといつも一緒に寝ているクマのぬいぐるみのプルンをぎゅっと抱きしめた。
「うちは、そう思わない。鼻も効かない、夜目も効かない、耳も良くない、身体も動かない、そんなのより、うちらの方がうんと優れているよ。力がないのが悔しいからそう言うんだよ。うちは、この毛皮も尻尾も大きな口も大好きだよ。狐族の埃の証みたいに思っているよ」
フォニーが弱気になっているラウニに少しキツイ口調で自分の思いを告げた。
「あたしもこのふわふわの尻尾、自慢・・・です」
ティマは己の尻尾をぎゅっと抱きしめていた。
「無いものは無い、有るものは有る。それだけです。出たサイコロの目に文句を言っても始まらないですよ。出た目で勝負するしかないんです。その目をどう使うかはその人次第ですけど。私はフォニー姐さんの気持ちと同じです。この身体の柄もお気に入りですから」
ネアは自分にやり直せるチャンスを与えてくれた猫族の少女に感謝の気持ちを表すようにラウニに言葉をかけた。
「ケフではないけど、ワーナンに言った時、気持ち悪いモノを見る目で見られているのを感じたんです。口にはされませんでしたが、ここは、お前たちのいる場所じゃない、そう言われている気がしたんです」
ラウニはそう言うと、さらにがくりと項垂れた。
「気にしすぎだよ。うちもさ、毛皮のないのが汗かいて臭くなってるのって気持ち悪いって感じるもん」
フォニーはラウニの言葉を気にしすぎの一言で片づけようとした。
「ラウニ姐さん、気になる人は多分、毛深いとか、肉球とか、尻尾なんて気にしない方だと思いますよ」
ネアの言葉にラウニは顔を上げた。
「そうでしょうか・・・」
「そうじゃないと、鉄の壁騎士団は真人だけの組織になってますよ」
ネアは心配そうな表情を浮かべるラウニに、あの仮面の男が種族にこだわるような男ではないという自分の考えを伝えた。
「初めて見た時、怖かったけど、とても優しいひとだったよ・・・です」
ティマも僅かであるがヴィットの印象を口にした。
「見た目は兎も角、イイ男って、ヴィット様のような人なんだろうなー」
フォニーもヴィットが自分たちのような侍女にも丁寧に接してくれることを思い出していた。
「私は、ヴィット様のお名前を口にしていないのに・・・」
ラウニは不思議そうな表情をしてから、むすっとした。
「分かりやすいんだよね」
フォニーが苦笑しながらラウニの表情が明るくなったことに安心していた。
「誰かさんのルッブ様に対する想いぐらい分かりやすかったんでしょうね」
先ほどまでの沈んだ表情から一変してラウニは、ニヤリと笑ってフォニーを見つめた。
「う、うちは・・・、そんな・・・、大それた・・・」
ラウニの言葉にフォニーは慌てて手を振った。しかし、その言葉を否定することはなかった。
「2人とも、分かりやすいんですよね。こんな私にですら分かるんですから」
ネアはチラリと横目で2人を見てクスクスと笑い声をあげた。
「ティマはすぐ分かったよ・・・です」
2人にギロリと睨まれてティマは小さくなった。
「ルロさんは、一撃逆転もあり得るって、良く言ってるじゃないですか。姐さんたちも良く耳にしているでしょ。今は、下準備の段階、積み重ねて行けば、堤がアリの穴から崩れるようにですね・・・」
ネアは手に口を当てて、いやらしい笑いをあげた。
「ネアお姐ちゃん、悪い顔してる・・・」
笑うネアを少し怖そうにティマが見つめていた。ネアの言葉にむすっと黙り込んだ2人はキツイ視線をネアに投げかけてきた。
「妙なトコロだけ、女の子らしさが出て来たようですね」
「基本は全くなってないけど」
ラウニとフォニーは互いに見合って、黒い笑みを浮かべた。
「きちんとした淑女になれるように、少しばかり厳しくする必要がありそうですね」
「きっちり、手取り足取り、尾かざりの選び方から、髪のまとめ方まで」
2人の言葉を耳にした時、ネアは後悔した。しかし、それは遅すぎた。
「いいなー、あたしも可愛くなりたい、若にかわいいって、言ってもらいたいから」
顔色を失うネアの横から、ティマが嬉しそう声を出して顔を出してきた。
「若に言ってもらうの。凄いよ。応援するからね」
ネアは話題を変えようと、ティマの言葉に乗ることにした。その時、ドアがノックされた。
「開いてます」
ラウニが応えるとドアがそっと開いて、ルーカが顔を出した。
「ティマちゃん、お師匠様は少しは真っ当になるからね。とどめは刺さないで上げてね」
ルーカがそっと手招きすると憔悴しきったアリエラが顔を出した。
「ティマちゃん、お師匠として頑張るから、ごめん、許して・・・」
泣きそうな声でアリエラがティマに頭を下げていた。はたから見れば、いい大人が幼女に真剣謝罪しているという、倒錯じみた絵ずらになっていた。
「お師匠様、あたしもがんばって、若にかわいいって言ってもらうんだよ」
そんなアリエラを幼いながらも哀れに思ったのか、ティマが自分もがんばることを伝えようとしていた。
「ティマちゃん、私、いつでもかわいいって言ってるよ。今も可愛いし、寝ている姿も、お食事の時も、お仕事の時もいつでもティマちゃんは可愛いよ」
いつもなら、飛びついて頬ずりしている所をアリエラはじっとティマを見つめるだけで済ませていた。
「凄い、どんな調教したんだろ」
ネアはアリエラの行動を見て首を傾げると、ルーカが如何なる手段を用いたのかが気になったが、それは子供に聞かせるようなモノじゃないだろうと推測していた。
「お師匠様に言われてもそんなにうれしくない、それより、若に言ってもらいたの」
「え・・・」
ティマの何気ない言葉にアリエラの動きは停止した。そして顔から血の気が音をたてて失せて行くのが傍に居るルーカにも分かった。
「とおっ」
アリエラの症状を目にしたルーカはすかさずアリエラの鳩尾に強烈な一撃を突っ込み、彼女の意識を飛ばした。
「バト、ルロ、これを運ぶよ。完全に壊れる前に意識は飛ばしたから大丈夫たと思うけどね」
ルーカはバトとルロにアリエラを運ぶように指示すると、気にしないでね、と笑顔でネアたちに言うと、ずるずると引きずられていくアリエラの後を追って去って行った。
「とどめは刺すなって言われてたでしょ」
ルーカたちが去った後、扉を閉めながらラウニが何が起きたか分からずキョトンとしているティマに悲しそうに言った。
「あれは、思いっきり刺さったね。ぐっさりと」
フォニーはため息交じりに言うと何が何だか分からずに先輩方の顔を次々と見つめているティマの頭を撫でた。
「あたし・・・、お師匠様に酷いこと言ったの。お師匠様に謝らないと」
ティマは慌ててアリエラの後を追うとしたが、ネアはその小さな肩をぐっと掴んだ。
「これ以上の追い打ち、死体に鞭打つことはやめた方がいいよ。ティマは何も悪くないよ。大きくなるといろいろと拗らせるんだよ」
ネアの言葉にティマは首を傾げた。
「分からない・・・」
「大きくなれば、嫌でも分かりますよ」
ティマにそっと語り掛けるネアの言葉にフォニーはため息をついた。
「そんなこと、うちは、一生分かりたくない気がするよ」
「そう言うのは、分かってしまうモノだと思いますよ」
ラウニの言葉にはどこか諦めの色が滲んでいた。
「大きくなるのが怖い・・・」
ネアたちの言葉を聞いて、ティマが身をぶるっと震わせた。
「すまない、昨日、食材を使いすぎたんだ・・・」
食堂の前で、お館の経理などを担当しているルビクが輝く頭を下げていた。
「ルビクさん、俺のミスだ。昨日の宴会に思いっきり使っちまった。仕出しも今日は休みだ。明日の朝飯は何とかできるが、今日の夕飯は、どうにもできねえ、すまない」
料理長は土下座する勢いで角の生えた頭を下げていた。
「夕食代として、一人あたり、小銀貨3枚を補助するから、それで頼む」
ルビクの言葉に使用人たちは、頭を下げ続ける料理長に「昨日のは、美味かった」、「次の祭りが楽しみ」などの叱責の言葉ではなく、昨日の料理に対するお礼を述べていた。料理長以下料理人全てが温かい事日に感動して、その場で男泣きしていた。
「今日は、外で食べるしかありませんね」
ラウニはこの状況から外出して食事をすることにした。それをネアたちに確認するように口にした。
「特別にお金ももらえるし、ちょっとは残っているから、イイ感じの食事ができると思うよ」
フォニーは珍しくお金に余裕があるらしく、今夜は何を食べようかと頭の中でメニューをめくっていた。
「食材を買ってきて、厨房を借りたら、もっと安くてたくさん食べられますよ」
ネアはマーケットに並ぶ食材を思い返しながら、時期的には少しばかり早いが鍋物にするのも悪くないと考えていた。
「えー、料理するの?うち、料理は苦手だなー、卵焼きとか簡単なモノなら何とかできるけど」
フォニーはネアの意見に顔をしかめた。しかし、ラウニはネアの意見に何かを感じたようで、顎に手をやって暫く考えてから徐に口を開いた。
「メムから聞きましたが、パル様は最近、料理の腕をメキメキと上げておられるようですね。胃袋と玉袋を掴む者が勝利するんです。私たちも基本的な事は教わっています。ネアの女子力強化という面からも、私たちで料理するのは悪い考えではないと思いますよ。フォニーも良い所を見せたいでしょ」
ラウニは言葉の中に『パル様』というフォニーにとって聞き捨てならない名前を入れることで、フォニーの意見を覆すことができると考えていた。
「え、そう言えば、あの子言ってた・・・、うちもそれぐらいはできるよ。胃袋をがっつりと掴むのはフォニーさんだって、玉袋は・・・、良く分からないけど・・・」
フォニーも食材を買って、自分たちで料理することに賛成していた。そんな先輩たちの動きを眺めていたティマはうれしそうに目を輝かせていた。
「あたしも手伝うよ。お母ちゃんのお手伝いでいろいろとやってたから・・・」
いつもなら、ティマにとって、家族のことを思い出すと心に痛みを伴うのであるが、今は、不思議なことに懐かしさを感じても痛みは感じなかった。
「きまりましたね。では、さっそくお買い物にいかないと、その前に、料理長に厨房を借りることをお話してきますね。その時、どんなものがイイかも聞いておきましょう」
ラウニは話をまとめると、男泣きしている料理長の元に駆けよって行った。
「今日、厨房、借りられますか」
「え、なんだって・・・」
料理長はラウニの言葉にふと我にかえり、手の甲で涙を拭くとラウニに正対した。
「今日の夕食、私たちの分は自分たちで作ってみようと思いましたから」
ラウニの言葉に料理長は泣き顔を笑みに変えた。
「お安い御用だ。調味料も使って構わないぞ。でも、ちゃんと後片付けをしてくれよな。そうだなー、ラシン、今日はラウニちゃんたちに付き合ってくれ。買い物から後片付けまで、ちゃんと面倒を見てやってくれ。飯代の銀貨3枚は食材の購入に充ててくれ。お前の夕食もかかってるから、いい加減なことはできんぞ」
料理長は一緒に並んで目に涙を浮かべているドワーフ族の若い男に声をかけた。
「え、今日は、その・・・」
「彼女でも待たせているのか?」
「いいえ、喜んで、ラウニちゃんたちの面倒を見させていただきます」
ラシンと呼ばれたドワーフ族の若い男は、凄んでくる料理長の勢いに押され、その場で気を付けの姿勢をとっていた。
「後は、任せた」
料理長はポンとラシンの背中を叩くと、厨房の奥にある事務室に入って行った。
「この時間からだと、中央の市場が値引きする時間帯だからね。服は、そのまま、使用人だと足元を見られることもないし、僕がついているから、そんなことはさせないけどね。じゃ、お手当をもらいに行こうか」
ネアたちはラシンに続くようにルビクの牙城であるお館の事務所に向かった。
「揚げ物は、危険だから、焼く、煮る、蒸すで行くよ。火や刃物を使うから注意しないと、大怪我をするからね。僕も入ったばかりの時にやってね」
市場に向かう道すがら、ラシンは左腕の袖をまくってネアたちに見せた。そこには大きな火傷の跡があった。
「うっかり、鍋に押し付けてさ、肉じゃなくて、自分を焼いちゃったんだ」
ラシンは袖を元に戻しながら苦笑いを浮かべていた。
「うちらだったら、毛皮に穴が開いたって状態になるね」
火傷の跡を見たフォニーがぶるっと身を震わせた。獣人にとってケガなどで体毛を失ってその部分だけはげることを『穴が開く』と表現することがある。ネアも誰に教えられたわけではないが、穴が開くの表現はどんなことなのかは、身体を介して理解していた。
「あ、イイ感じの包丁が、ちょっとここで待ってて、すぐ戻ってくるから」
ラシンは刃物屋の店先に陳列してあった包丁を見ると、足早に店の中に入って行った。
「・・・あれじゃ、モテない・・・」
ネアは呆れたように苦笑した。そんなネアの言葉に先輩たちは深く頷いていた。実際の所、ラシンは料理に入れ込みすぎて、その辺りの所は全く手を付けていない有様であった。そんな彼を見て、ネアは、その姿がかつての自分の姿のように思えたのであった。
「アンタたち、お館の子だろ」
ラシンを待っているネアたちにいきなり声がかかった。声の主はラウニとさほど年齢の差がない女の子が数名、怖い顔でネアたちを睨みつけていた。彼女らは皆、真人で聊か古ぼけて薄汚れた服を着ており、それらのことは、彼女らの経済状態が芳しくないことを物語っていた。
「そうですが、何か御用ですか」
ラウニが怪訝な表情を浮かべて彼女らのリーダー格の少女に尋ねた。
「何か御用ですか、ってきやがった。獣の癖にあたいらよりいいもの着て、お高くとまりやがって。同じ孤児なのにさ、なんでアンタらはそんなにいいご身分なのかしらね」
彼女らは、メラニ様の教会が運営している孤児院の子どもたちであった。
「孤児院の方ですか。これも女神さまのお導きってやつなんでしょうね。文句を言うなら、女神様にでも申し立てた方がいいですよ。私らみたいな侍女見習いに凄んだところで、現実はなんも変わりませんよ」
ネアは敢えて彼女らに薄ら笑いを浮かべ、少し小馬鹿にしたような口調で挑発するように言い捨てた。
「獣の癖にえらそうに、躾がなってないわね。首輪も着けてないし、ちょっと調教してあげようかな。ラト、この糞猫に礼儀を教えてやりな」
彼女らの中で一番身体の大きな、ラトと呼ばれたボサボサの茶色の髪をした少女がネアの胸倉を掴んだ。ネアはリーダー格の少女が瞬きしている間に、彼女の手を取るとさっとねじり上げ、手首返しの要領で地面に伏せさせてしまった。
「痛い、痛いよ」
関節を固められたラトは小さなネアに組み伏せられて悲鳴を上げていた。
「アンタたち、聞いてないかな、あのグルトを落とした子がいること・・・」
フォニーが驚いているリーダー格の少女にニコニコしながら尋ねていた。
「え、グルトをもう少しの所で殺し損ねて、その次は街中でボコボコにして恥をかかせたのって・・・、ブレヒトを一睨みで黙らしたのって・・・、まさか、アンタが・・・」
フォニーの言葉にリーダー格の少女は目を見開いた。
「マーケットで大人の男2人を、血まみれにした・・・、ケフの凶獣が・・・」
組み伏せた子が泣き声を上げそうになっているので、ネアはそっと手を離すと、さっと組み伏せたラトから身を離した。
「ケフの凶獣って・・・」
知らない間についていた二つ名にネアは納得しかねると顔をしかめた。
「いい気になるなよ。いつか、あたいらに軽口を叩いたことを後悔させてやるからな」
少女たちは紋切り型の捨て台詞を残して、べそをかくラトを引きずるようにして、その場から足早に立ち去った。
「ネア、知らない間に凄い有名人になっていましたね」
「ケフの凶獣、凄い二つ名だよ。男の子だったら、欲しいかもね。うちはいらないけど」
ラウニとフォニーはニヤニヤしながらネアを見つめていた。
「ケフのきょうじゅうって、かっこいいです」
ネアの内心を知ってか知らずか、ティマは憧れのヒーローを見るような目でネアを見つめていた。
「あー、値段が良すぎて、買えないよ・・・、あれ、何かあったのかな」
刃物屋から出てきたラシンは複雑な表情を浮かべるネアをニヤニヤと見つめるラウニとフォニーに目にすると心配そうに尋ねてきた。
「何でもありませんよ」
ネアは取り繕うように手を振りながらラシンに答えた。
「ケフの凶獣って聞いたことありますか?」
慌てるネアを尻目にラウニはラシンに尋ねていた。
「子供たちが口にしているのを聞いたことがあるよ。なんでも、凄く喧嘩が強い子がいるらしいね。しかも、喧嘩なのに殺しにかかってくるようなイカレてるって。怖い子もいるもんだよね」
ラシンの言葉にラウニとフォニーはニヤニヤとし、ネアはその場で頭を抱えていた。
ネアたちは料理から炊事洗濯など家事にかかることの基礎を一通り教育されています。また、戦い方もイロイロと仕込まれています。これらの教育は全てエルマの手によるものです。
エルマ自身も相当の手練れです。その力を遺憾なく発揮できるチャンスは、あればいいなーと思っています。
今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク、評価を頂いた方に感謝を捧げます。