170 贈り物
残暑が続いて、うんざりするひびですが、この駄文が、すこしでも暇つぶしのネタになれば幸いです。
「お疲れ様、ネアは、奥方様の仕事部屋で声がかかるまで待機していなさい」
タミーのお供をしてお館に帰ってきたネアにエルマが優しく声をかけた。
「何があったのかな・・・、叱られるようなことをしたかな・・・」
ネアは予想と違う行動を命じられたことで少し不安を感じた。
「ネアは、とっても良く働いてくれたよ。おかげで、随分と助かったんだから」
巫女の衣装のままのタミーが不安そうにするネアを安心させるように声をかけた。
「さ、早く行きなさい」
エルマに急かされ、ネアは2階の奥方様の執務室、エルマいうところの仕事部屋に入った。
「ネア、ただいま、戻りました」
扉を開けると、そこには奥方様の姿はなく、同僚であるラウニ、フォニー、ティマとルーカが退屈そうに椅子に腰かけていた。
「ネア、お疲れ様」
ラウニはネアにねぎらいの言葉をかけると、空いている椅子を指さした。
「ネアで、最後かな・・・」
待ちくたびれたのか、フォニーが背伸びしながらネアを見つめた。
「主役は、最後に現れる・・・かな」
ルーカは、傍らで寄り掛かって眠りこけているティマの頭を優しくなでながら、クスリと笑った。
「皆そろったようね」
ネアが椅子に腰を降ろして、お茶をすすっているといきなり奥方様が部屋に入ってきた。
「じゃ、皆、ささっときれいに、可愛くね」
奥方様は後ろに控える、ハトゥアを先頭にした侍女たちににこやかに命じた。
「承りました。皆ー、はりきって、いくよー」
ハトゥアが少し気の抜けた声を上げると、控えた侍女たちは一斉にネアたちに殺到した。
「え、なに?」
「脱がすのー」
「な、な、なに」
「-っ」
「自分で脱ぐからーっ」
ネアたちが悲鳴とも戸惑いの声とも言えぬような叫びをあげているうちに、ハトゥアに指揮された一団はネアたちに、ドレスを着付け、髪を整え、ルーカには化粧を施していった。
「着付け、完了」
「メイク、完了」
ネアたちをあっという間に奥方様が言われたように、きれいに、可愛く仕立て上げたハトゥアの連れて来た侍女たちは逐一、ハトゥアに報告していった。
「うーん、いい出来ねー、この時間でこれだけ出来たらー、すごいよー。奥方様、こちらの準備は整いました」
ネアたちの状態を確認したハトゥアは、奥方様に報告した。
「皆、ありがとう。とても素敵なできよ」
奥方様の前には、これからパレードに繰り出すような着飾った少女たちがきょとんとした表情で突っ立っていた。
「気に入ってもらえたかしら」
奥方様の言葉にネアたちは初めて姿見で己たちの姿を確認した。
「・・・これって・・・」
ラウニはそう言うと言葉を詰まらせた。
「お昼は皆に働いてもらってるから、お館だけでのパレードになるけど、これで我慢してね」
奥方様はネアたちに微笑むと、そっと執務室の扉を開いた。そこには、パレードに参加する少女たちが配るお菓子が入ったバスケットを持ったエルマたちがにこやかに待機していた。
「さ、今夜の主役なんだから、しゃきっとして」
まだ、驚きから覚めていないネアたちにびしっとエルマが声をかけると、条件反射のなせる業か、ネアたちの背筋は、ティマまでもビシッと伸ばされた。
「かわいいねー」
エルマの横にいたルロが感嘆の声を上げた。
「もっとスカートは短くても良いと思うけど。ルーカって脚の線きれいだからね」
「バトが言うと、どうしてもやらしく感じられるから、黙ってて」
ルロはバトの素直な感想を一言のもとに投げ捨てた。
「ティマちゃん、可愛い、できることなら産みたかったよー」
そんな2人の横でアリエラが悶絶していた。
「・・・、連れて行こっか・・・」
「悪い影響の出る前に」
バトとルロは互いに見合って、悶絶するアリエラ両脇から抱えると、ずるずるとお館の奥の方に引きずって行った。
ネアたちが奥方様に連れられて玄関ホールに向かうとそこには、お館様、ご隠居様、大奥様、お嬢、若と郷主一家が正装で勢ぞろいしていた。
「主役の登場だぞ」
お館様の言葉を合図に、楽器の演奏が趣味な使用人が数名からなる楽隊がパレードのための行進曲を奏でだした。
「さ、皆待ってますよ。笑顔で元気よくね」
奥方様の言葉にネアたちは無言で頷いた。ルーカはいつものクールな様子はなく、今にも泣き出しそうな表情になっていた。
「さ、行くよ。この場に、涙は似合わないからね」
感動のあまり、涙をこぼしているラウニにルーカは己の涙を堪えて元気に言うと、先頭を立って歩き出した。
「みんなーっ、ありがとーっ、幸せのおすそ分けだよー」
ルーカは元気よく玄関ホールから飛び出していった。お館の正面の庭は、あちこちに松明が立てられ、ネアたちの歩くコースを照らし出していた。そして、その灯りにお館の使用人たちがずらりと並び、ニコニコしながら拍手を送っていた。
「ありがと、ありがとー」
ラウニは涙でくしゃくしゃになりながら、バスケットの中のお菓子を集まってくれた使用人たちに手渡していった。
「うちらが、普通の子と同じことができるなんて・・・、夢かな」
戸惑いながらフォニーがネアに確認するように尋ねてきた。
「フォニー姐さん、これは、現実ですよ。そのドレス、とてもきれいですよ」
着飾ったフォニーは、ネアの目にはどこかのお嬢様のように見えた。歩き方も、下手な貴族の娘よりそれらしく見えた。
「本当のお姫様になったみたい」
疲れて眠りこけていたところを飾り立てられたティマは、自分の現在の状況を夢の中の出来事のように感じていた。
「こんな、温かいのはじめてだよ。とても温かいよ」
先頭を歩くルーカは、お館様、奥方様、お屋敷の皆に感謝捧げながら、今まで誰にも見せたことのないような笑顔ではしゃいでいた。山奥の寒村で生まれ、口減らしとしてお館に奉公し、十数年ずっとお館のために働いてきた。そんなルーカは、自分たちをにこにこと優しく見守ってくれている郷主一家を見ると忠誠心を新たにした。
ラウニは、今の自分の状況が信じられなかった。例え、お館の中だけと言えど、パレードに出ることなんてできるわけがないと自分に言い聞かせてきたからであった。どこで野垂れ死にしていてもおかしくなかった自分に、寒さに凍えることのない寝床、飢えに苦しまない食事、きれいで清潔な衣服、これらが与えられていることがどれだけ幸せな事かをラウニは知っており、これ以上のことは望まないようにしていたのであった。
「し、幸せのおすそ分け・・・です」
涙で声を詰まらせながらもラウニは嬉しそうに庭に集まってくれた使用人たちにお菓子を配って行った。使用人たちもラウニにやさしく、「かわいいよ」、「どこのお嬢様かと思ったよ」と冷やかし半分に彼女に励ましの言葉を送っていた。ラウニもその言葉に、満面の笑みで応えていた。
「夢じゃないよね。夢じゃないよね。夢だったら、もう少し覚めないで」
フォニーは祈るような気持ちで歩いていた。フォニーは、パレードで歩く少女たちを仕事をしながら眺めて、自分はそんな身分ではないと改めて思い知っていた。さらに、パルの晴れやかな姿を見た時、心の中に黒いもやもやとしたものが湧き上がってきたことも自覚できた。
【あれが、嫉妬っていうのかな、嫌な気持ちだった・・・】
「幸せのおすそ分けだよー、しっかりと受け取ってねー」
フォニーは心の中のもやもやを吹き飛ばすように、明るく、元気にちょっとスキップしながら、お菓子を配っていた。
「おすそ分けです」
はしゃぐ先輩たちの後をネアに隠れるように恥ずかしそうにしながら、ティマは丁寧にバスケットに入ったお菓子を配っていた。
【こんなきれいな服を着られるなんて、お母ちゃんやお父ちゃん、お姉ちゃんに見てもらいたいな】
ティマは目の前で無残に殺された家族のことを思い出して、とてつもない喪失感を味わっていた。楽しくて、うれしい事なのに、どうしてもそのことが思い浮かんできて、泣きそうになるのを懸命に堪えていた。
「ティマ、楽しむ時は、思いっきり楽しむことだよ。こんな時に辛い思いになるのは、アイツにやられているのと同じだよ」
ネアは、ティマの表情から心中を察して、彼女の大きな耳の傍でそっとささやいた。
「うん、天国の皆もあたしが悲しい顔をしていたら、心配するから」
ティマは小さな手を思いっきり握りしめると、無理やり笑顔を作った。
「ティマは、強い子です。アイツに負けるわけにはいかないですからね」
いつかは、斃さなくてはならないだろう英雄のことを考えていた。
【こんな小さな子に、辛い思いをさせやがって】
表にはうれしそうな表情を作り、裏では怒りにたぎる複雑な思いでネアは明るい曲が奏でられる中、ゆっくりと歩いて行った。
「ネア、もっと笑顔じゃなくちゃダメだよ」
いろいろと考え難しい表情になっていたのであろう。そんなネアにいきなりレヒテが駆け寄ってきた。
「しょぼくれた顔を強いると、幸せが逃げていくよ。ねー、幸せのおすそ分けだよ」
レヒテはネアの背中をポンと叩くと、ネアのかごからお菓子を一つかみして、使用人たちに手渡していった。
「だよな、楽しむ時は、思いっきり。幸せのおすそ分け、皆、末永く、幸せにになりやがれっ」
ネアは、吹っ切れたように叫ぶと、拍手する使用人たちにお菓子を手渡していった。
「この館はこれより、本格的に収穫感謝祭を挙行する」
ネアたちがお館の庭を一周して玄関ホールにもどると、お館様が大音声で宣言した。その声に使用人たちは大きな歓声で応えた。
「お嬢様方、どうぞ、こちらへ」
ご隠居様が恭しくルーカに頭を下げて、その手を取って、この館で一番大きな会議用のホールに案内した。会議用のホールは、いつものような無機質な会議用のテーブルとイスだけの風景から、全員が入れるように立食パーティ会場へと模様替えされていた。
「お昼の残りと、こちらがメインのおまけ分だ」
料理長を先頭にホカホカと湯気を上げる料理を山盛りにした大皿を抱えた料理人たちがホールの真ん中のテーブルにどんどんと食べ物を置いて行った。
「あたし、まだ寝てるのかな、痛い、起きてる・・・」
この光景が信じられないのか、ティマは己の頬をつねっていた。
「皆に、重要な事を知らせるぞ」
料理が並べ終えられ、使用人たちが料理に殺到しようかとする時、お館様は声を上げた。
「今日の、この催しは、今年の巫女様である、タミーの発案によって実施した。タミー、大役ご苦労、そして、この素敵な催しを教えてくれて感謝するぞ」
喜ぶ使用人たちを楽しそうに見ていたお館様がタミーに頭を下げた。
「そ、そんな大したことは・・・」
タミーは慌てて否定しようとしたが、その声は、周りからの「巫女様、万歳」、「タミー、いいぞー」、「結婚してくれ」などの声にかき消されてしまった。
「そして、もう一つ、この館は、明後日も休日とする。以上だ、酒もあるが、ほどぼとにな。小さい子供いるんだ。大人として良い手本を見せてくれよ」
少し砕けた感じでお館様が宣言すると、使用人たちは大歓声で応えた。
「貴方たち、こんな時に、ごめんなさいね。これ、黄金のリンゴ亭の食事とお酒のチケット、お仕事の後でゆっくりと楽しんできてね」
奥方様は、大騒ぎのホールからそっと抜け出して、ちょっとつまらなそうな今夜の警備にあたっている衛士に、お館様が直々に手書きしたチケットをすまなそうな表情で渡した。
「え、こんな、勿体ない事です。我々は仕事ですから・・・、お気持ちだけで充分です」
「貴方たちが、しっかりと働いてくれているから、皆が安心して騒げるんです。これは、ちょっとした感謝の気持ちよ。貴方はいいかもしれないけど、ほら、若い人たちは・・・」
衛士の長の真人の男は、辞退したが、そこはにここにしながらも強制力を発揮する奥方様と、物欲しそうな表情を浮かべる部下たちの無言の圧力に押し切られてしまった。
「ありがたく、頂きます。お前ら、絶対に気を抜くな。今夜は俺たちの腕の見せ所だ。これが、俺たちのパーティだ、いいなっ」
衛士の長の言葉に若い部下たちは、応っと大きな声で応えた。
「おいしい、いくらでも食べられそうです」
大皿から自分の分の料理を取り分けて食べるラウニは幸せそうな表情を浮かべた。
「野生の顔になってるよ。いつも、いってるじゃないの、侍女たるもの、お淑やかに、って」
自分もラウニに劣らぬがっつきを見せているフォニーが口の周りに揚げ物の衣のカスをつけたまま、ラウニが常に口にする言葉を口にした。
「そんな口で言っても説得力ないですよ」
そんなフォニーにネアが楽しそうに突っ込んだ。
「食べ方、汚い・・・です」
フォニーは年齢下からの指摘に思わず口の周りをぺろりと舌でなめとった。
「お行儀が悪いですよ」
常なら、もっと厳しく指導するであろうラウニが笑いながら窘める程度ですませた。
「マズルが短いと食べやすいもんね」
フォニーは自分のマズルが原因であると言いたげであった。
「パルもマズルながいけど、きれいに食べるよ」
ネアたちがワイワイやっている所に、とても郷主の娘とは言い難いような盛り付けた小皿をもったレヒテがやってきた。
「パル様は、別格です」
レヒテの言葉にフォニーがむすっとした。
「ワイルドさで勝負ですね」
ネアは楽しそうにフォニーに言うと、フォニーは黙ってネアのマズルを掴もうとしたが、猫のマズルの形状からするりと手が抜けてしまった。
「ネア、ずるいよー」
「猫族ですからねー」
文句を言うフォニーにネアはニヤリとして答えた。
「ずるいって、私なんか、尻尾を引っ張られるし、バル様のマズル掴みを真似されるし、さんざんだよー」
「尻尾を引っ張るのは知ってましたが、まさかマズル掴みまで、お嬢、マジですか」
ネアは恐怖の色を滲ませて料理をがっつくレヒテを見つめた。
「あ、あれ、あれはね、い、一度だけだから」
レヒテは慌てて、言いつくろおうとした。
「一度やったんですね。行く行くはティマにもなさるんですか」
レヒテの言葉を耳にしたラウニが穏やかにレヒテに近づいた。
「だって、掴みやすそうだし、手にした感覚がいいのよね。ティマはまだ小さいから・・・」
何とか、言い訳をしてその場から逃れようとするレヒテにラウニはにっこりとした。
「やったんですね。お嬢、世間一般では、獣人の尻尾をいきなり掴んだり、引っ張ったりしたら、殴られても文句は言えない、って言われているのはご存じでしょうか」
ラウニがニコニコとまるでできない生徒に指導する教師のようにレヒテに詰め寄った。
「私はね、親愛の情なの。どこにさ、尻尾をいきなり掴む女の子がいるの。貴女たちが私にとって特別だから、掴んだり、引っ張ったりするんだよ」
詰め寄られたレヒテは少し引きつったような笑みを浮かべて己の行為の正当性を主張した。
「それって、親愛の情じゃありませんよ。お嬢。尻尾ってとても敏感なんです。背骨の延長みたいなものです。それを無神経に掴んで、あまつさえ引っ張るなんて・・・」
フォニーは自分のふさふさの尻尾を抱きかかえるようにして、じっとりした目つきでレヒテを睨んだ。
「お嬢、やさしくだったら、ティマの尻尾は触っても良いよ。でも、引っ張るのはナシ」
ちょっと追い詰められているようなレヒテにティマが優しく声をかけてきた。
「やっぱり、ティマちゃん、やさしいーっ、なんで、私から産まれてくれなかったのーっ」
レヒテがティマに何か言おうとしたが、その前にアリエラが乱入してきた。
「やさしくて、可愛くて」
驚くティマに関係なしでアリエラは跪いて彼女を抱きしめると、頬ずりを始めた。
「あちゃー、暴走したねー」
バトが楽しそうな声を上げながらアリエラの背後にそっと立った。そして、
「目を覚ませ、馬鹿師匠っ」
いきなり、平手でアリエラの後頭部を引っぱたいた。その衝撃で少し正気に戻ったアリエラはティマから身体を離すと、その場に立って、ティマをしげしげと見つめた。
「そのドレス、とっても似合っているよ。いつもの可愛さをさらに倍増させているよ」
「お師匠様、ありがとう」
アリエラの言葉にティマは覚えたてのカーテシーを披露した。
「ティマちゃん、それ、ダメっ」
可愛さに我慢しきれず飛び掛かろうとするアリエラの襟首を掴んで引き倒すとルロが真剣な表情でティマに注意を促した。
「この淫獣にそんなの見せたら、襲い掛かって来るよ」
バトも引き倒されたアリエラを見つめて呆れたように口にした。
「・・・わかった・・・ました」
ティマはアリエラの鬼気迫る姿と真剣に心配してくれているバトとルロに頭を下げた。
「でも、さっきのパレード、かわいかったよ。バトさん、思わず濡れちゃったよ」
いつもながらのバトの言葉に隣のルロは呆れたため息をついた。
「素敵でしたよ。つくづく、私たちはいい主に仕えていると思いましたね」
「お館様以外に、仕えるべき人はおられませんから」
ルロの言葉に、ネアが真面目に答えると、侍女見習いたちは皆、同意しているとネアの言葉を肯定した。床に倒れているアリエラさえも同じように頷きながら、「お館様、万歳」とくぐもった声を上げていた。
「アリエラ、ティマが引いているよ」
何とか立ち上がったアリエラにレヒテは可哀そうなモノを見るような目で視線を投げつけた。
「お嬢、ティマちゃんの愛らしい姿を見ると、どうしても理性が・・・、お嬢にもこのような経験はーっ」
「何を言ってるのっ」
レヒテに自分の正当性を主張しようとするアリエラの脳天に、ルロは、飛び上がってかかと落としをくらわせると、乱れたスカートを直した。
「アリエラの言っていること、全然分からないよ。これなら、バトの方が分かりやすいぐらい」
何やってんだかと呆れたようにレヒテが口にすると、バトはアリエラに少し自慢そうに胸を張ってみせた。
「アリエラのは、犯罪の臭いがするからねー」
「バトは、わいせつ物陳列罪です」
バトの言葉にアリエラが言い返すと2人は顔を突き合わせるようにしてにらみ合った。
「アリエラ、ついに、自分のやり方を見つけたんだね」
暫くするとバトは感心したようにアリエラに話しかけた。
「バトに認めてもらえて、うれしいです」
にらみ合っていた2人は、そう言いあうと互いに抱き合っていた。
「・・・ここまで行くと、かける言葉すら見当たりません」
そんな2人を見ていたルロが諦めたように口にすると肩をすくめた。
「良く分からないけど、多分、イケナイ大人の見本だと思う・・・」
レヒテが引き気味に口するとネアたちは大きく頷いていた。
収穫感謝祭のお館バージョンです。経済的、家庭的、その他諸々の理由でお祭りに参加できない子たちがいます。そんな子たちに少しでもお祭り気分を、とタミーが口にしたことを奥方様が極秘裏に進めたのが今回のお話です。ピケット家は、使用人も家族と考えているようで、彼ら、彼女らを大切にしています。また、郷主をはじめピケット家は、人心掌握が巧みなようでもあります。
今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマークを頂いた方に改めら感謝します。