161 ちがうこと
ルシアとのお別れとネアたちがケフの都に帰るまでをお話ししたかったのですが、そこまでたどり着きませんでした。ごめんなさい、です。
「気持ちよく一致していたり、微妙に違っていたり、不思議なこともあるもんなんだ」
昼食後、綺麗になったジェボーダン家についてのお話をルシアから聞いて、フォニーは理解を超えているとばかりに首を傾げた。
「ルシアさんには昨日、初めてお会いしたのに、リョウアンさんが言っていた星詠みは、私たちのことについてなのかしら」
ラウニも奇妙な一致についてどう理解していいのか分からず、難しい表情を作っていた。
「・・・このヌイグルミたちが誰のことを指しているのか、ルシアさんのお話ごとに違っているかもしれません。ある時は私たちだし、他の時は別の人、郷のことかも・・・」
ネアは今まで、占いだとか予言だとかの類を信じたことはなかったが、目の前で語られた奇妙な一致と解釈によっては郷と郷の間の外交的な事象にも当てはまるのではないかと勘繰っていた。これを上手く読み解けば、商売をするには大きな武器となることは当然のことであり、これを利用してボーデンの商売が最近、非常に良くなってきているのではないかとネアは考えていた。
「ねーねー、これからどんなお話になるのー」
首を傾げるネアたちに関係なく、ティマはルシアの手にしているヌイグルミを興味深々な目で見つめていた。
「えーとね、王様がね、お友達になりたいって言ってきた国の人を呼んじゃうの。でも、その国の人はお友達になりたいんじゃなくて、王様の国が欲しいだけなの。でも、呼んじゃったから・・・」
ルシアは手にしたボッティ王子をおもちゃ箱にしまった。そして、コロン姫も同じようにおもちゃ箱に片づけてしまった。
「皆、捕まって、お家に閉じ込められるの。助けようとした人も閉じ込められるの」
ルシアはベスと呼んでいるイヌのヌイグルミをおもちゃ箱にしまった。
「王様の宝物も、お金も皆、盗られてしまうの。何も残らない・・・、そしてね、ボッティ王子とコロン姫もどこかに連れて行かれようとするの」
ルシアはしまったヌイグルミを全部取り出し、そっとテーブルの隅に置こうとした。
「でもね、強くて、優しい人たちがね、助けてくれるの」
ルシアは残ったヌイグルミ、クマ、キツネ、ネコ、リスのヌイグルミを両手に取った。
「そして、お友達になろうってだました人たちをやっつけてくれるの」
「どうなるかって、ドキドキしたけど、助かってよかった」
ルシアの語るお話にティマは安堵の表情を見せてにっこりとした。
「まさか・・・、そんなことが起こるなんて・・・」
マーカはルシアの作った話を聞いて顔の色がなくなっていた。
「どうした、気分でも悪いのか」
ドクターがマーカの状態に気付いて、さっと近寄るとじっとその顔を見つめた。
「だ、大丈夫です。でも、お嬢様のお言葉があまりにも恐ろしくて・・・。これは大旦那様に早く伝えないと」
マーカはそう言うと目の前に置かれた食後のお茶を飲み干した。
「あまり、重く考えない事じゃな。ネアが言うておったように、準備する時間が手に入ると考えると、強ち悪い事ばかりではあるまい」
ドクターはマーカに優しく語り掛け、そっと背中を撫でてやった。
「どこの郷のお話か分からないし、注意しておこくとに越したことはありませんね。でも、気に病みすぎると、身体までおかしくなってしまいますよ」
何とか心を落ち着けようとしているマーカにビブを抱いたレイシーがそっと話しかけた。レイシーの言葉が正しいと言わんばかりにビブが「だいよーぶ」と舌足らずな声を上げた。
「ありがとう、ビブちゃん、もう、大丈夫よ」
ビブの飾り気のない言葉にマーカは元気づけられたように微笑んだ。
「お話し中の所、申し訳ありませんが、この時間からだと、ヤヅには深夜に到着することになります。夜道はできるだけ避けたいのですが」
にっこりしているマーカの元に御者がそっとやって来て今後のことについて意見をした。
「明日の朝に発ちましょう。夜道でお嬢様に何かがあってはいけませんから」
マーカは御者に答えると、荷物をまとめておくようにと指示を下した。
「私たちと一緒でごめんなさいね」
湯船に浸かるマーカにレイシーが申し訳なさそうに話しかけた。
「え、何のことでしょうか」
温泉を全身で楽しんでいるマーカは目を閉じたままレイシーに聞き返した。
「穢れの者たちと同じ湯に浸かるのは、折角の温泉を台無しにしているでしょうから」
夕暮れ近い薄暗くなった浴場の中で真っ黒な顔のために、その青緑の目だけが宙に浮いているようにすら感じられるレイシーはすまなそうに身を小さくした。
「何を言っているんですか。その真っ黒でうっすらと模様が浮かび上がる美しい毛皮は恥ずべきものだと思いませんよ。いろいろな事を言う人もいるでしょうが、ビブちゃんがあのきれいな毛皮を誇れるようにお母さんも堂々としていないと・・・、母親になったこともない者が言うにはおこがましいかもしれませんが」
マーカはそう言うと湯船の中で気持ちよさそうに身体を伸ばした。
「お嬢様も全く気にされているようではありませんし、逆に興味を持たれて皆様に迷惑をおかけしているみたいですけど。お嬢様、嫌がられることはなさってはいけませんよ」
マーカが声をかけた先にはネアの背中をブラシでゴシゴシとこすって泡立つのを楽しんでいるルシアの姿があった。
「毛皮って皆、色も手触りも違うんだー」
ネアは背中を少々乱暴にこすられて顔をしかめていること気づくこともなく、マーカからの注意も耳に届かずルシアは珍しいモノに夢中だった。
「今まで、獣人さんと一緒にお風呂に入った事なかったから、濡れていてもこうなると、とても柔らかいブラシみたい」
ルシアは背後からネアに抱き着いて身体をこすりつけた。
「ーっ」
ルシアには全く悪気はないことであるが、されているネアにとっては複雑なことになっていた。
【小さい子に裸で抱きつかれて、身体をこすりつけられる・・・、見ようによっては犯罪だぞ・・・】
ネアは己に反応するモノが無い事をこの時は感謝していた。もし、アレに何らかの反応があったら、自分は犯罪者の素質アリ、と断言したのと同じであるのだから。
「わー、ティマちゃんの尻尾、細くなってる」
ルシアの興味がネアの背中の毛皮からティマの尻尾に移ったので、ネアはほっと一息、深いため息をついた。
ネアたちが浴場から出てきた姿は湯あたりしたようなぐったりしたものであったが、それは湯あたりではなく、ルシアあたりであった。
「皆さんにお願いがあります」
夕食も終え、後は寝るばかりとなった時、雑談に花を咲かしていたルシアはネアたちに神妙な表情を見せた。
「明日になったら、もうお別れだけど、皆、私とお友達になってくれますか」
ルシアはそう言うとネアたちに頭を下げた。
「何を言ってるんですか」
そんなルシアにラウニは笑い声をあげた。
「うちらは、もうお友達だよ」
フォニーも当然のように言い放ち、
「ティマもお友達」
ティマはルシアの小さな手を小さな手でそっと握った。
「ルシアさん、お友達になれたのは光栄なことですが、私たちのことは秘密にしておいてください」
皆からお友達だと言われて嬉しそうにしているルシアにネアはちょっと真剣な表情で話しかけた。
「え、それって」
ネアの言葉にルシアの表情が一瞬強張った。
「ネア」
「何言ってのよ」
ラウニとフォニーがきっとネアを睨みつけた。
「キツイ話ですけど、私たちとルシアさんでは立場が違いすぎます。私たちは家族もいない侍女見習い、しかも穢れの民である獣人です。もし、ルシアさんが私たちのことを言えば、ジルエのような人に必ず、そんなモノと付き合うなって、お説教を受けることになります。その上、私たちはジェボーダン家の人たちと似すぎていますから、きっとそのことでもいらない事をしてくる人がいます。・・・ボッティ王子に無理やりお嫁さんだって新しいヌイグルミを押し付ける人、もっときれいなヌイグルミが良いって、この子たちを捨てて新しいのを押し付けようとする人、きっと出てきます。嬉しい事ですが、ルシアさんが悪いことに巻き込まれないために、素敵なジェボーダン家の子たちが不幸にならないように、私たちのことは秘密にしておいてください。でも、私はルシアさんのお友達であることがとてもうれしいです。これは、本当の気持ちです」
ネアはそう言うと恥ずかしそうにそっとルシアに手を差し出した。
「ネアちゃんの言う通りだよね。きっとジルエが嫌なことを言ってくるもん。この子たちが捨てられるなんて・・・、だから、秘密にしておくよ。これ、約束するよ」
ルシアはネアの肉球の付いた手をしっかりと握った。
「いきなり、何を言い出すのかと思ったら・・・」
「ネアらしいね。うちらも軽々しく言えないよね」
「あたしも秘密にする・・・ます」
ラウニたちもネアの言葉に納得したように頷いて、この事は自分たちの秘密にすることを誓った。
「素敵ですね、秘密のお友達、私も誰にも言いませんよ」
ルシアの背後からマーカがにっこりしながら顔を出した。
「さ、お嬢様、そろそろお休みの時間ですよ。皆さんにおやすみを」
マーカは優しくルシアに促すとルシアは名残惜しそうにネアたちに頭を下げた。
「おやすみなさい」
ルシアは寂しそうに言うと、自室に向かうマーカの後をついて行った。
「おやすみなさい」
ネアたちはちょっと寂しさが漂うルシアの背中におやすみの挨拶を投げた。
「身分か・・・、うちら、とても恵まれてるよね」
ルシアを見送ったフォニーがしみじみと呟いた。
「一介の侍女見習いなのに、奥方様やお嬢に直接口をきけて、バル様のような人とも直接お話しできるなんて、普通に考えたらあり得ない事ですからね」
今まで当然のように思っていたことが、実はトンデモないことだと再確認したラウニが自分たちが良い環境にいることに感謝しながら口にした。
「あたしも若とお話できるよ。でも、それって、普通じゃない・・・です」
ティマも幼いながら感じることがあったのか複雑な表情を浮かべていた。
「ねえ、良く考えたら、うちらって最低の身分だよね」
ベッドに入っても寝付けないのかフォニーが誰に言うでもなく呟いた。
「獣人と言う点で穢れの身ですからね」
フォニーの言葉にラウニが少し寂しげに応えた。
「獣人で身寄りがないって、普通なら道端で物乞いしていても不思議じゃないよね」
この世界で身寄りのない子供にできることは、物乞い程度しかないのが普通である。ネアも時折、外出した時に嫉妬と憎悪に満ちた目で睨まれたことが少なからずあったことを思い出した。
「お館様に拾われなかったら、そうなっていたでしょうね。運が良かった、と感謝するしかないですね」
ネアは暗い天井を見上げながら呟いた。泉の中にいきなり湧いて出て、あの時、お館様に引きずり上げて貰わなかったら溺死していたかもしれない、もし、無事に岸にたどり着いても獣の餌になっているか、奴隷として売られて、金持ちの慰み者にされていたことだろう。それを考えれば、毎晩、先輩方に女子力強化トレーニングやお嬢の無茶に付き合う事なんて何でもないように思われた。
「あたし、お母ちゃん、お姉ちゃん、お父ちゃんを殺されて、逃げて逃げて、怖い人に捕まって、お腹もすいてて、寂しくて、悲しくて・・・、そんな時に若に助けてもらって、お姐ちゃんたちに良くしてもらって、奥方様もお館様も優しくて、お嬢はお転婆だけどあたしのことを見てくれてて・・・、いつもね、天国のお母ちゃんに安心してねって、言ってるんだよ・・・です・・・」
ティマも何か思うことがあったのか、そこまで言うと電池が切れたおもちゃのように黙り込んで、安らかな寝息をたてはじめた。
「普通の侍女見習いで、こんないいお宿に泊まって、温泉なんて楽しむことなんてできないですからね」
ラウニは改めて自分たちが置かれている立場が偶然と運の上に成り立っていることを実感していた。
「そうだね、これだけでも感謝しないと・・・、これ以上のことを望んだら罰があたるよね」
フォニーはルッブの顔を思い出しながら、自分に言い聞かせるように口にした、その言葉に何故か涙があふれてきたのを誰にも見せないように、シーツを頭からかぶった。
「身分はどうしようもないことです・・・」
ラウニも仮面の人のことを思って寂しそうに呟いた。部屋の中に重い空気が漂いだしたことをネアは感じていた。
【どうしても、身分は越えられないよな・・・、俺の言葉があの子たちを苦しめているのか】
ルシアのことを思って言った言葉が、ラウニたちを苦しめていることに遅ればせながら気づいた。
「でも、ルロさんが、チャンスがあれば立場も身分も覆すことができるって」
先輩方に少しでも希望を持ってもらいたいの思いからネアはルロが時折口にしている、玉の輿も狙うこともできるのではないかと提案した。
「吟遊詩人の歌みたいなことは、なかなかないですよ。あれは、あくまでも歌の世界だから・・・」
「どうしても越えられない壁だよ・・・」
先輩方の落ち込みは強い様で、フォニーに至っては涙声になっていた。
「ご本で読んだんですけど、押しかけ女房なるモノがあるそうですよ」
ネアは、自分の知識であることを悟らせないように前置きしてから口を開いた。
「押しかけ女房?」
ネアの言葉にラウニがすぐに反応した。
「無理やり、お相手のお家に上がり込んで、お料理やお掃除、お洗濯までやるんです。その時、重要なのが外堀を埋めることらしいです」
「ねえ、外堀って何のこと」
フォニーがシーツから顔を出してネアに尋ねてきた。
【よし、喰いついてきた】
ネアは心の中でガッツポーズをとった。
「お城にはお堀がありますよね。お城を守るのに大切な役目です。お城、つまり、意中の人を攻め落とすには、周りの人を味方に付けるんです。その人のご両親やご兄弟をどんどん味方にして、意中の人を攻め落とすのです。このやり方だと、身分の違いは乗り越えられるかもしれません。簡単じゃないと思いますけど」
ネアはそう説明すると、ベッドの上でゴロリと身体を横にするとシーツを被った。
「ラウニ、うちらにもチャンスはあるよ。諦めちゃダメだよね」
ネアが眠ったと思ったフォニーが小さい声でラウニに呼び掛けた。
「ええ、これからお料理やお洗濯の腕を磨いて、外堀を埋めて、攻め落としましょう」
ラウニがこれから戦いに赴く戦士のように決意を新たにフォニーの言葉に応えた。
「絶対に、落城させるんだ。絶対に」
フォニーは自分に言い聞かせるように言うと、そっと目を閉じた。
「身分が違っても、種族が違っても、うちの気持ちは違わないから・・・」
「そうです。気持ちに身分はないです」
フォニーとラウニが前向きになったことを確認したネアは小さなため息をついて、そっと目を閉じた。
「忘れ物はないですか。取りに来るのは冬になりますよ」
泊まっていた部屋の掃除が完了したことを確認したラウニはネアたちに忘れ物がないかの点検を指示した。
「フォニーさんはぬかりなしだよ。ネアも、ティマも大丈夫だよね」
ラウニの指示を聞いてフォニーは辺りを見回し、ネアたちにも確認した。
「忘れ物なしです」
「大丈夫」
ネアとティマの返事を聞くとフォニーはにっこりした。
「忘れ物ないよ」
フォニーの言葉に頷くとラウニは全員が部屋から出るとそっと扉を閉めた。
「馬車が来るまで少し時間はあるから、ゆっくりできるな」
ネアたちがロビーに降りてくると既にドクター一家は準備を終えてお茶飲んでいた。その近くでウェルがアーシャにいろいろと指導されていた。
「お兄ちゃん、食べ過ぎたらダメだよ。いつも食べ過ぎてお腹壊したりしてたでしょ。それとね、ちゃんとお風呂に入ってね、臭くなったらダメだからね。ちょっと美人だからって、付いて行ったらダメだよ」
アーシャの一言一言にウェルは面倒くさそうに返事していた。
「きれいな人に付いて行くような暇はないよ。まだまだ、修行中だからね」
ため息つきながらアーシャの相手をしているウェルにシャルが横から心配そうに顔をのぞかせた。
「ウェル君、身体に気をつけてね。冬までじゃなくても、いつでも帰って来てね」
シャルは両手を合わせて祈るようにウェルに言うと俯いてしまった。
「身体は頑丈にできているから心配いりませんよ。ぐっ」
ウェルはシャルにごく普通に答えると、むすっとしたアーシャに肘鉄を喰らって顔をしかめた。
「お兄ちゃんは、鈍いっ、本当に鈍いっ」
アーシャがウェルを攻め立てたが、ウェルに至っては何が鈍いのかさっぱり分からなかった。
「シャルちゃん、ウェル君には、この事を私がゆっくりと教育してあげるからね」
レイシーが声をかけると、シャルは顔を赤くしたままさっと宿の奥に駆けて行ってしまった。
「あれじゃ、先が思いやられますね」
ラウニがウェルの対応を呆れたように評した。
「鈍いのはいいが、シャルを悲しませるのは許せんからな」
いつまでもシャルに手元に居てもらいたい思いと、彼女が悲しむことの板挟みになりながらラスコーが難しい表情を浮かべていた。
「皆、私、もう行くね。お友達になってくれてありがとう」
ネアたちがウェルのことについて呆れたり、彼らしいと話している時、マーカに手を引かれたルシアが寂しそうにネアたちに挨拶をしてきた。
「また、会うこともできますよ。お手紙を書きますね。あて先はマーカさんにしますから。私たちはルシアさんの秘密のお友達ですからね」
ラウニは寂しそうにしているルシアに明るく声をかけた。
「ずっと会えなくなるわけじゃないから、ちょっとしたお別れだから」
フォニーはそう言うと、ルシアを抱きしめた。
「また、お話、聞かせてね」
ティマも少し寂しそうにルシアに声をかけた。
「お別れするから、また会えるんですよ。会える日を楽しみにしています」
ネアですら少し寂しげな表情を浮かべていた。
「そうだよね。また会えるよね。じゃ、その時まで少しの間、さよなら。ごきげんよう・・・」
最後は涙声になりながらルシアが宿から出て行き、暫くすると馬車が動き出す音がしてきた。
「行っちゃった・・・」
「また、会えますよ」
寂しそうにするティマにラウニが優しく声をかけ、そっと頭を撫でてやった。
「いつでも、お別れは辛いモノです。旅から旅への暮らしをしていてもこれだけは慣れることはありません」
寂しそうにしているネアたちにリョウアンが静かに語り掛けてきた。
「私は、暫く、この宿でお世話になります。人手が必要みたいですし、ここには私が研究していることの大家のラスコーさんもおられますからね」
リョウアンはそう言うと屈みこんで、寂しそうにしているティマに向き合った。
「さよならするから、また会えるって、ネアさんが言っていたことは本当のことです。そして、出会いはとても大切です。だから、どんな人とでもお付き合いは大切にしたいものですよね」
リョウアンの言葉に泣きそうな顔になっているティマは頷くだけであった。
この世界は穢れの民と言われる獣人やエルフ族、ドワーフ族がいますが、その穢れの民の中でも獣人は一段低く見られています。同じ獣人であってもフォニーとパルの違いは一目瞭然です。(狐と狼の違いではなく)どうしても越えられない社会的な壁があちこちにあります。それを、もう死語となった「押しかけ女房」によって、ラウニとフォニーは壁を打ち破れるのか、という新たな戦いが展開されていきます。
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