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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第12章 つながり
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160 詠む力

ダンジョンに潜ることもなく、盗賊たちと斬りあうこともなく、モンスターを討伐することもなく、ネアたちはそれなりに懸命に生きている・・・つもりです。

 ネアは、将棋盤のような四角く区切られたマスの一つに佇んでいた。辺りを見回すと同じように様々な人、物が盤上に置かれていた。

 【なんだ?】

 ネアは取り合えず近くにいるティマに向かって走り出そうとしたが、身体はピクリとも動かなかった。

 【金縛り?】

 動かない己の身体に恐怖を感じ、叫ぼうとしたがうめき声すら上げることができなかった。

 【えっ】

 動かない自分の身体が目に見えない巨大な手で押し出されるのを感じるとともに、言い知れぬ恐怖がネアに襲い掛かってきた。身動きも取れず声も上げられず、身体が盤面を滑っていく、ネアは様々な人、物を縫うように高速で移動していた。その恐怖に目をぎゅっと固く閉じてしまっていた。

 【やっと止まった】

 身体は動き出した時と同じように唐突に停止した。このことに安堵のため息をつきながら、ネアはそっと目を開けた。

 【マジかよ】

 ネアの正面には、今、英雄と呼ばれているアイツが居た。彼はネアをじっと見つめると口角を上げてニヤリ笑い、腰に佩いた剣を抜刀した。彼から発せられる殺気に思わずネアは後ずさりしてしまったが、恐怖を抑え込み、睨み返した。

 【くそっ、簡単にやられるかよ】

 エプロンの裏に隠したシャフトを取り出し、一振りして伸ばすとネアは身構えた。

 「お前は、ここまでだ」

 アイツは、ニタニタしながら言葉も言い終わらないうちにネアに斬りかかってきた。

 【早いっ】

 アイツの剣がどんどん迫ってくるのが見えるのに、ネアの身体の動きは鈍く、その結果は目に見えていた。

 「うわーっ」

 首筋に冷たい感触が走るのと同時にネアは叫び声を上げていた。

 「・・・」

 ふと、気づくとベッドの上に半身を起こし、肉球が濡れてしまったかのように汗をかいていた。

 「夢・・・か・・・」

 あの出来事が夢であったことと、大きくな声で叫んだと思っていたが、誰も目を覚ましているようでないことに安心したネアは深いため息をついた。

 「酷い汗だ・・・」

 ネアは汗で濡れた肉球を見つめてため息をついた。そして、身体をひねって自らの臭いをくんくんと嗅いで、顔をしかめた。

 「臭うな」

 空は、うっすらと白くなりつつあり、ネアは意を決してベッドから出るとお風呂道具と着替えの下着をそっと準備して部屋を出た。廊下は暗く、ひんやりとしていた。この身体になってから、夜目は利くようになっているので暗さで動けないことはなかった。

 ネアが天然の毛皮を纏っただけの状態で湯船に浸かった頃には東の空が明るくなっていた。

 【あの夢は・・・、俺はアイツに殺されるってことか?】

 ネアは、夢の中で感じた首筋に走った冷たい感触を忘れるように両手で湯をすくって顔を洗った。

 【おじさんの世界にショーギってゲームがあったの?】

 ネアはいきなり心の中に響いた声に目を丸くして辺りを見回した。

 【そのゲームでね、王様だけが前に出ると負けるよね。他の駒と協力しないと勝てないよね】

 ネアの戸惑いなんか気にすることなく、心に訴える声はちょっと年上のお姉さんが、小さな弟に語り掛けるように続けた。

 【私たちの力は小さいけど、味方になってくれる人の力を合わせるととても大きな力になるよね。今はまだ勝てないけど、きっと勝てるよ。先のことなんていくらでも変えられるよ。だって、わたしたち、最高のチームでしょ】

 心に響く声にネアはにこりとすると、ゆっくりと肩まで湯の中に沈み込んだ。

 「勝てるさ。勝てるとも、最高のチームに心強い仲間がたくさんいるんだから」

 ネアは小さく呟くと、心に響く声は楽しそうな笑い声をあげてから沈黙した。

 「負けられないんだ・・・、涙も血も流したくないから」

 ネアは、顔をのぞかせだしたお日様に決意するように呟いていた。


 「ふわふわになってる」

 目を覚ましたルシアがやった最初のことは、ロビーに干されているヌイグルミの確認だった。

 「お嬢様、それはいい事ですが、ちゃんとお顔を洗って、着替えてから、なさってください」

 マーカがルシアの後を追ってどたどたと走りよるとルシアを抱えて部屋に連れ戻した。

 「気になるよね」

 お風呂から上がってきて、寝巻のままロビーの隅で涼んでいたネアはそんな主従のやり取りを見ながらクスリと笑うと、自分も顔を洗って、着替えるためにロビーを後にした。


 「ルシアさん、お気持ちは分かりますが、この子たち、あちこち解れていますから、それを修理しますね。お昼前には終わりますよ」

 朝食後、はやる気持ちを抑えきれないルシアにラウニは優しく諭した。

 「フォニー姐さんたちに任せておけば、間違いないから。なんせ、お針子姫から毎日、直接指導受けてるからね」

 フォニーはルシアを安心させるように言うと、早速、裁縫箱を取り出して作業の準備に取り掛かった。その手際は、同年齢の少女では成し得ぬような動きだった。ルシアはフォニーの言葉と手際の良さを見て黙って頷いた。

 「お針子姫ですって、貴女達は・・・」

 マルカはフォニーの言葉に驚きの声を上げた。

 「私たちは、ケフの郷のメイザ奥方様付きの侍女見習いです。勤めてから長い短いがありますから、皆同じ腕前じゃないですが、このティマも雑巾やちょっとした繕いはできるんですよ」

 ラウニがちょっと自慢そうに言うと、灰色のオオカミのヌイグルミの取れかかった目を縫い直しだした。

 「その子はね、ボッティ王子、ジェボーダン家の王子様なの。優しくて、賢くて、強いの」

 ルシアはラウニが手にしているヌイグルミの身の上を話した。

 「じゃ、この白い子はお姫様ね」

 尻尾が解れて中身が出そうになっている白いオオカミのヌイグルミを手にしたフォニーが楽しそうにルシアに話しかけた。

 「この子は、ボッティ王子の妹のコロン姫、ちょっとお転婆だけど、誰にもとても優しくて、親切なの、そして美人」

 ネアはルシアの説明を聞いて何かの既視感を覚え、お腹当たりがちょっと解れだしたイヌのヌイグルミをルシアに見せた。

 「ひょっとして、この子はいつも失敗したり、いらないことを言って怒られたりしているのかな」

 「うん、その子はね、ベス。とても一生懸命なんだけど、失敗が多いの。でも、頑張り屋さん」

 ネアはルシアの言葉に既視感が確信に変わった。

 「クマの子は、とてもまじめだけど、好きな人のことを考えるとぼーっとしたり、キツネの子はやきもち焼きな感じがするけど、芯はとても優しかったり、リスの子は誰からも好かれる明るい子だったりするのかな」

 ネアはある程度の見当をつけてルシアに尋ねた。

 「うわー、どうして知ってるの?マルカはね、騎士団の人がとても好きなの。で、ね、ネッカはボッティ王子が大好きなの。でもコロン姫もお兄ちゃんが大好きだから、ちょっと複雑なの。ルシーは一番小っちゃくてね。甘えん坊なところがあるけど、しっかりしているんだよ」

 ルシアのざっくりとしたそれぞれのヌイグルミの設定があまりにも一致しているのでネアは興味を通り越して驚愕を覚えていた。

 「あってますね」

 ルシアの言葉にラウニは驚いた声をあげた。

 「複雑って、間違っちゃいないけど」

 フォニーは手にしたコロン姫を複雑な表情で見つめた。

 「この子のことは聞いてないよね・・・ですね」

 ちょっと手持無沙汰気味のティマがネコのヌイグルミを手にしてルシアに見せた。

 「その子はね、クーネ、頭が良くてね、男の子に負けないぐらい強いの。でも、うーん、おじさんみたいな感じの子」

 ルシアは嬉しそうにネコのヌイグルミの設定を口にした。それを聞いたラウニとフォニーはニヤリとしてネアを見つめた。

 「ハサミで切るような子じゃないのでしょうか」

 「確かに、おじさんみたいなところあるよね」

 彼女らは口々にそう言うとクスリと笑った。

 「皆さん、ひょっとして、お嬢様のお話の設定が現実になってるのですか」

 マーカは何気なく語られている子供たちの会話を耳にして顔色を失いかけていた。

 「お嬢様は昨夜まで皆さんのことは、全くお知りになっていませんでした。皆さんの言葉からするとお嬢様の設定は現実に近いんですね」

 「マーカ、私のお話って前から知っているでしょ。ボッティ王子が絵を描くのが好きだとか、コロン姫は時々、お料理を作って皆に振舞うとか」

 ルシアは当然のことを口にしているだけで大げさに驚くマーカがちょっと気に障っていた。

 「星詠みでしょうか」

 ネアたちの会話を耳にしたリョウアンが目を丸くしているマーカにそっと声をかけた。

 「え、星詠み?」

 驚いて振り返るマーカにリョウアンは深々と頭を下げた。

 「急なお声かけ、申し訳ありません。私は「求道」のリョウアンと言う、旅の物書きです」

 「あの、先ほどの星詠みとは、占いみたいなものでしょうか」

 リョウアンの言葉にマーカは喰いつくように尋ねた。

 「占いとは違うと思いますよ。占いは対象の人に対して行いますが、ルシア様の場合は、何かの力を感じたり、受け取られて、そして遊びの中で無意識のうちに物語として、これからのことをお話になっておられるのではないかと思った次第です」

 リョウアンの言葉にマーカはちょっと納得いかないような表情を浮かべた。

 「ねえ、ジェボーダン家はね、お家をなくしたりするんだけどね、とても優しくて、親切な人が助けてくれて、誰かがいなくなったり、大切な物をなくしたりしないの。だから、安心していいの」

 ラウニから直してもらったボッティ王子を抱きながらルシアはぽつりと口にした。

 「お嬢様、それは今回の大雨のことですか?」

 ルシアの言葉にマーカが真顔で尋ねた。

 「違うよ。これから、先のこと。とても怖い思いをするの」

 ルシアはそこまで言うとロビーの天井を見上げた。

 「偉い人が、怖い人を連れてくるの。怖い人がいっぱい持って行くの。でも、偉い人も、怖い人も、優しくて親切で強い人にやっつけられるの。ジェボーダンのお家は、その人に助けられて、それから、ずっとついていくことになるの」

 ルシアの何気ない言葉にマーカの表情が曇った。

 「このことを大旦那様にお伝えしないと」

 リョウアンはルシアの言葉に首を傾げた。

 「失礼な事を申しますが、あの教会での我々に対するやり取りを見ていると、ボーデン様はとてもこのような事を信じられるようなお方じゃないと思うのですが」

 「この事を一笑に付すのは、第一秘書と自ら名乗るジルエだけです。あの男は、大奥様を亡くして心に大きな穴を開けてしまった大旦那様に言葉巧みに近寄り、何かと目障りになる、ルシア様のご両親に仕入れと販路拡大の仕事を押し付けて、お屋敷にいないように仕向け、ボーデンの家を好きなようにしているのです。でも、大旦那様がジルエをとても信頼されているので、あの男を排除することはできないのです。お家の恥をさらすことですので、内密にお願いします。このことがあの男の耳に入ると、また、大騒ぎになりますので」

 マーカの言葉を聞いたリョウアンは端正な顔をしかめた。

 「心が弱った所に付け入るとは、なかなか物事を幹割れる目をもっているんですね。だから、商売をしても抜けがない、損をしないのでしょうね。」

 マーカの心労を察したリョウアンはこの事を口外しないことを誓うとそっとその場から席を移した。

 「コロン姫には、トンデモなくお転婆なお友達が居たりするのかな」

 繕いを終えたルシーに服を着せながらティマがルシアに尋ねた。

 「お転婆を通り越えて、暴れん坊のお姫様のお友達がいるよ。でも、そのお姫様もコロン姫と同じぐらい優しい心を持っているから、街の人から好かれているの」

 「ますます、一致しています。ダンディなお爺さんとか食いしん坊の大男とかもいるのでしょうか」

 ラウニはボッティ王子に上着を着せながら呟いていた。

 「おじさんみたいな感じの子・・・、おじさんみたいな感じの子・・・」

 ネアはよほど気になったのかルシアのクーネに対する評価の一部を呪文のように口にしながらクーネにエプロンを着けていた。

 「その子はね、とても不思議な子なの。おじさんみたいな時もあるし、小さい子みたいな時もあるし、私たちが知らないことも知っているの」

 ネアが余りにも不憫に感じたのか、ルシアはフォローするようにクーネの設定をネアに説明した。

 「ネアそのものじゃん」

 ルシアの説明を聞いてフォニーは楽しそうに言い放った。

 「これが、リョウアンさんの言っていた星詠みってことかしら」

 ラウニは余りにも一致することが多いことに興味より畏怖が大きくなってきていた。

 「うちらのこと、何でもかんでも知っていそうな気がするよ。コロン姫、復活だよ」

 フォニーもちょっと恐怖を感じながらドレスを着せ終わったコロン姫をルシアに手渡した。

 「ありがとう、フォニーさん。コロン姫、とてもうれしいって」

 ルシアはニコニコしながらコロン姫に頬ずりした。

 「はい、ボッティ王子も復活」

 「ラウニさん、ありがとう。ボッティ王子が感謝を述べるって」

 ルシアはボッティ王子を抱きしめた後、そっと耳元に持ってきて、王子を代弁するように言った。

 「おほめに頂き、恐悦至極でございます」

 ラウニはルシアの手にした王子に恭しく首を垂れた。

 「侍女たちも復帰」

 「ルシーもいるよ」

 ネアとティマが綺麗に着付けを終えた5体のヌイグルミをテーブルの上に並べてルシアに声をかけた。

 「・・・ありがとう。本当にありがとう、皆にまた敢えてうれしい・・・」

 ルシアは7体のヌイグルミを抱きしめて涙を流しだした。

 「良かったね」

 ルシアの様子を見てティマが満足したようにネアに言うと、ネアは黙ったまま深く頷いて応えた。

 「王子様、お姫様、お屋敷と家具も準備してございます」

 リョウアンがドクターたちが綺麗にした家具や食器をきちんと詰めたおもちゃ箱とルシアの物であろうくしなどが入ったヌイグルミ用おもちゃ箱を恭しくルシアの前にそっと置いた。

 「カップもテーブルも、このテーブルひびが入ってたのに、キチンと治ってる。王子もお姫様も驚いているよ」

 ルシアが小物を取り出して感嘆の声を上げていると、ロビーの奥で家族団らん中のドクターがルシアに声をかけてきた。

 「ドワーフ族の手にかかれば、そんな物、簡単なもんじゃよ。王子様とお姫様にお喜び頂ければ、何よりのご褒美じゃからな」

 「おじさん、ありがとう」

 「いいんじゃよ。お嬢ちゃんの笑顔がなによりの報酬じゃよ」

 「できれば、こんどは豹の親子も仲間に入れて貰いたいなー」

 ルシアは嬉しそうにドクターに礼を述べると、ドクターは髭の中で思いっきり笑顔になった。それを横でニコニコしながら聞いていたレイシーが喜ぶルシアにちょっとしたお願いをしてみた。

 「きれいな黒とかわいい斑模様・・・、マーカ、こんどクロヒョウとヒョウの赤ちゃんを仲間にしたいなー。王子様とお姫様にお勉強を教える先生と赤ちゃん、もっとジェボーダン家が楽しくなるよ」

 ルシアは楽しみが隠せないぐらいニコニコしながらマーカに新たなヌイグルミをおねだりした。

 「優しくてきれいな先生と可愛い赤ちゃん、探してみましょうね。きっと出会えますよ」

 ルシアはマーカの答えに嬉しくなってぎゅっと抱き着いた。

 「どこまでも楽しい、人形遊びで会ってほしいモノです。下手な解釈も何もない、純粋に楽しいだけの・・・」

 そんなルシアを見つめてリョウアンが心配そうに呟いた。

 「大人がいらないことをしなければね」

 リョウアンの言葉にネアは皮肉に答えていた。


 「私、今まで獣人のお友達っていなかったんです。身近にドワーフの人もエルフの人もいなくて、皆、ジルエが追っ払うの」

 昼食後、王子たちを綺麗になったお屋敷に片づけたルシアがネアたちとおしゃべりを楽しんでいた。

 「で、生の獣人はどうですか?お嬢様」

 フォニーがおどけたようにルシアに尋ねた。

 「うーん、綺麗な毛皮とかわいい尻尾と優しい心を持った人と言うことは分かったよ」

 ルシアは楽しそうにネアたちを見回した。

 「小さくても尻尾は尻尾ですからね」

 ラウニはそう言うとそっと自分の尻尾をなでた。

 「お嬢様、不思議な力もっているよね・・・ですね。あたしたちのことまるで昔から知ってたみたい」

 ティマが首を傾げながら余りにも自分たちと一致していることが多いジェボーダン家についての秘密を知りたくて尋ねた。

 「あれはね、ふと頭の中に思いついたの。この子はこんな性格の子だって。ルシーも言葉にはできないけど、とても悲しい思いをしてきているの。でも、頑張っている、周りの子たちが力になってくれているの」

 ルシアの言葉にティマはドキリとした表情を浮かべた。

 「貴女のことを思って考えたんじゃないの。頭の中に浮かんでくるの・・・」

 ルシアはちょっと黙り込むと泣き出しそうな表情になった。

 「悪いことも悲しいことも、頭の中に思い浮かんでくるの、それが只の思ったことだったらいいんだけど、本当のことになるんだよ・・・、嫌だよ」

 ルシアはそこまで言うと隣にいたマーカに抱き着いて身体を震わせはじめた。

 「お嬢様のせいではありません。お嬢様が悪いんじゃありませんよ」

 マーカは震えるルシアの頭をそっと撫でで宥めようとしていた。

 「たった一人の子供に、世界を変える力なんてある訳ないよ。大きな流れは誰かが作っていて、ただその流れの音を聞いているだけだよ」

 何かに怯えるように泣いているルシアにネアはちょっときつく声をかけた。

 「怖いことがあるって分かったら、準備すればいいんですよ。大水の時はすぐに逃げられるように持ち物をまとめたり、吹雪が来るって分かった時は雪洞を掘ればいいんですよ。準備できる時間が得られる、それってすごい事ですよ。誰かに決められた未来なんて、面白くありません」

 ネアは自分に言い聞かせるように力を込めてルシアに声をかけた。

 「私が悪いことを呼び込んでいないの・・・」

 涙で濡れた目でネアを見つめるルシアにネアはにっこりして力強く頷いた。

この世界の星詠みとは、対象の未来ではなく、これから先に発生するであろうビジョンを感じることです。

どんな仕事に就くか、などが占いで、どんな仕事が世界的に影響を与えるかが星詠みとなるのです。

ルシアは人形遊びの中の自分で作った物語りが将来のことを言い当てていたり、各人形の設定が現実と一致することが多いので、ボーデンは密かに商売の指針の一つとしていますが、第一秘書は全く信じていません。

今回も、この駄文にお付き合いいただきありがとうございました。ブックマーク頂いた方、評価して下さった方に感謝を申し上げます。

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