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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第12章 つながり
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155 避難

常に最悪の事態を予想し、楽観的に行動するのが理想ですが、どうしてもその逆になり兼ねがちになります。

 「ドクター、何があったんですか」

 さっとベッドから飛び出たネアはランプの光を点けながら尋ねた。

 「役場からな、大水になるかもしれんから避難しろとのことじゃ。村の入り口の高台にあったメラニ様の教会にすぐに避難するんじゃ」

 外は相変わらず大きな雨音と退屈せないかのように鳴り響く雷鳴で賑やかだった。

 「起きてください・・・、起きろーっ、いつまで寝てやがる、さっさと起きやがれっ!!」

 ネアは最初にそっとラウニをゆすったが、起きそうになかったので、部屋の入り口に立つと大声を張り上げた。

 「なんですか、いきなり・・・」

 「うちは、低血圧だから、おやすみ・・・」

 「眠い・・・」

 ラウニたちは何が起きているのか全く理解できず、もごもごと言うと再びベッドに潜り込もうとした。

 「お前ら、死にたいのかっ!!、さっさとベッドから出ろ。夢の世界は終わりだ。大水がくるぞ、さっさと準備しろっ」

 ネアの怒鳴り声にラウニたちはびくりとすると、ネアの剣幕に押されて着替えを始めた。

 「お主の新たな面を見せてもらったぞ。なかなか、面白いわい。わしも家族の面倒を見なくてはならんからな。ウェル、診療セットを忘れるなよ。薬も包帯も持てるだけ持って行くぞ」

 ドクターは廊下に出るとウェルを呼びつけた。既にウェルは準備していたようで巨大な荷物を背負っていた。

 「いつでも行けます。アーシャ、ドクターの家族、シャルさんとヒルカさん、お館の子たちを頼む。無茶するなよ。気をつけてな」

 「分かった。お兄ちゃん、気を付けてね」

 ウェルの呼びかけに既に避難準備を終えていたアーシャは応じると、宿のロビーに走って行った。


 「これから、丘の教会に行くからね。はぐれちゃダメだよ」

 嵐が宿の外で唸っている中、ネアたちにオイルドクロスのポンチョを着せながらヒルカが彼女らに注意を促していた。ポンチョは宿の客用で子供用ではなかったため、紐をベルト状に腰に結び付け、余った布を挟み込んただめ、ネアたちはできの悪いテルテル坊主のような姿に成り果てていた。勿論、その下には緊急用の荷物をまとめシーツに包んだものをたすき掛けにしてである。そして、さらに彼女らより悲惨な姿になっていたのがビブでまるでどこかの遺跡から発掘で出てきた何重も布で梱包されたミイラのような状態になっていた。

 「ラスコーさんは?」

 ネアは辺りを見回してラスコーの姿がないのに気づいてヒルカに尋ねた。

 「あの人は、水門を開けに村の人と行っているの。大丈夫、この非難も空振りで終わるから」

 ヒルカはネアたちを安心させるように言い聞かせた。そんな中、いつもとは違う雰囲気と夜中に起こされたことでビブがレイシーの腕の中でぐずりだした。

 「レイシーさん、ビブちゃんは私が連れて行きます。足元が悪いんです。もしものことがあったら」

 抱いたビブをあやしながらレイシーは一瞬厳しい表情を浮かべ、夫であるドクターを見つめた。ドクターは診察用のバッグなどを背負っておりビブを抱いて避難できる様子でないことを悟った。

 「シャルちゃん、お願い。この抱っこ紐を使ってね。ビブ、お母ちゃんはいつも近くにいるからね」

 レイシーは意を決したようにビブをシャルに預けた。ビブはまるでトリモチのようになかなかレイシーから離れたがらなかったが、その内力尽きてシャルに抱きかかえられていた。

 「ビブちゃん、安心して、おねえちゃんが何があっても、ビブちゃんもお母さんも守るからね」

 宵闇の通り名を持つ、元剣士を前にして妙な台詞であったが、敵対するものが自然とあっては剣も何も用をなさない現実があった。

 「皆、この紐を腰に巻いた紐に通して行くよ。真っ暗な中ではぐれると命取りだからね。怖がらなくてもいいよ。米豹族はね、夜にも強いんだよ。私からはぐれちゃダメだよ」

 アーシャは色濃く不安を滲ませているティマに優しく語るとそっと頭を撫でて、彼女の不安を取り払おうとした。

 「アーシャが先頭、その次はラウニちゃんたち、そしてレイシーさんとビブちゃん、最後は私が行くから」

 ロビーにいる皆にヒルカはテキパキと指示をだすと、大きな荷物を背負った。

 「わしとウェルは最後に行くからな。不安を感じたらその場でじっとしていろ。わしらが拾って行ってやるからな。レイシー、皆を頼んだぞ」

 ドクターはレイシーをじっと見つめた。その眼にレイシーは無言で頷いていた。

 「じゃ、行くからね。紐をしっかり握って、慌てなくてもいいからね。怖がることはないからね」

 変換石のランプを片手にアーシャは雨と風が吹き殴る暗闇の進み出た。

 「怖くないよ。皆いるからね」

 ラウニは怯えて泣きそうになっているティマの手をしっかりとつかんでいた。

 「ラウニお姐ちゃん」

 不安そうに見上げるティマにラウニは夜の闇とフードのために見えないであろうにも関わらず精いっぱいの笑顔を浮かべた。

 「フォニー姐さん、大丈夫ですか」

 ネアはフォニーの不安をつながれた手から感じ、心配そうに声をかけた。

 「このフォニーさんにそんな心配は無用だよ。ネアこそ大丈夫なの」

 フォニーは自分の不安を声に滲ませないように空元気を振り絞って明るく答えた。しかし、その声とは関係なくネアの手を握っている手の肉球が汗ばんでいた。

 「私の後をついて来て、逸れちゃダメ、溝やいきなり深くなっている所もあるからね」

 先頭を行くアーシャがランプを掲げて大きな声を出した。いつもなら普通の石畳の通りが足首の上グラマで水がついて、まるで小川のように濁った水が流れていた。

 「ラウニお姐ちゃん・・・」

 ティマは不安な声を上げた。小さなティマにとっては小川のようになっている通りも脅威であった。

 「こうすれば大丈夫だよ。しっかりつかまりなさい」

 ラウニはティマを安心させるように言うと強く抱きかかえた。

 「ラウニちゃん、ティマちゃんを私に。ティマちゃんおいで。ラウニちゃんは自分のことに集中して。ちょっとした油断が怖いことになるから」

 アーシャはティマに近づくとそっと手を差し出した。

 「アーシャおねえちゃん。怖い・・・です。」

 「私がいるから、大丈夫。怖がらなくていいよ」

 アーシャは不安がるティマに優しく語り掛けるとしっかりと抱き上げた。

 「足元を探るようにです。ひょっとすると石畳がめくれて深くなっているかもしれません。置き石を踏んでこけたら流されます。波が立っている所は避けて」

 アーシャの頼れるおねえさん感あふれる背中を追うようにネアは足を進め、いつの間にかフォニーの手を引いてアーシャの後をしっかりとついて行った。。

 「ビブ、怖くないから、怖くないからね」

 レイシーはシャルの腕の中でぐずるビブを足元に気を使いながら声をかけていた。

 「ビブちゃん、シャルお姉ちゃんがいるからね。怖いことないからね」

 シャルは腕の中のビブにひたすら声をかけ、時折、雨でぬれた顔をそっと拭ってやっていた。

 「レイシーさん、今はビブちゃんより自分の足元に注意して、見えない石や窪みがあるから、転ばないことに意識を傾けて」

 ヒルカは意識がビブに向きっきりになっているレイシーに厳しく注意を促した。暗く小川のようになっている水の中で何かに足を取られ転倒すればそのまま流されてしまうこともありうることであり、特に足が不自由なレイシーにとっては危険この上ない状況であった。

 「ええ、分かってます・・・」

 【ここで、私に何かあれば、ビブはどうなるの。今は何が一番大事なのかよく考えること】

 レイシーはヒルカが口にすることは充分に承知はしているのであるが、母親としてどうしてもビブに気が向いてしまうことを何とか抑えようとしていた。

 「慌てることはなですよ。慎重に行きましょう」

 アーシャが揺れる光とともに投げかける言葉に頷きながらレイシーは杖で足元を探りつつ、足を進めていった。


 彼女らが教会にたどり着くまでに要した時間はわずか1時間にも満たないものであったが、この時間は彼女らにはとても長いように感じられた。風に煽られ、雨にうたれ、オイルドクロスのポンチョでもそれらから護り切ることはできなかったようで、教会に着いた頃にはけがはなかったものの、全員身体が湿気た状態になっていた。

 「レイシーさん、ビブちゃん頑張りましたよ」

 オイルドクロスのポンチョを脱ぎ終えたレイシーにヒルカはそっとビブを差し出した。レイシーはビブを受け取ると無言でぎゅっと抱きしめた。

 「・・・」

 そんな様子をアーシャにそっと床に降ろしてもらったティマが複雑な表情を浮かべてじっと見つめていた。

 「ティマちゃん、よく頑張ったね」

 そんなティマの表情に気付いたネアが自分が濡れるのも構わず力強く抱きしめた。

 「しっかり者ですね」

 「流石のフォニーさんもちびりそうになったもんね。ティマはすごいよ」

 ティマを抱きしめているネアに気付いた先輩方もネアと一緒にティマを抱きしめてやった。

 「あたし、頑張ったよ」

 ティマは一言口にすると、黙ったままぽろぽろと涙をこぼした。

 「皆、無事でよかったけど、裾がべちょぺちょだよ。うちらが最後かな」

 フォニーはスカートのすそを絞って水を切りながら辺りを見回した。

 「どうでしようね。宮司様が名簿で確認に来られるから、皆はどこから来た誰かをちゃんと答えるんですよ」

 ヒルカは心配そうにあたりを見回し、知った顔を探していた。

 「こんばんは、皆さん、怪我などはされていませんか。このような時に怪我をすると大ごとになりかねませんから。よろしければお名前などを確認したいのですが」

 身体を拭いているネアたちに長身の五輪刈りのエルフ族の男が親切そうに声をかけてきた。

 「ここにいるのは、癒しの星明り亭のヒルカとシャル、こちらはお館の侍女のラウニ、フォニー、ネア、ティマの4人、こちらの親子がドクターの奥様のレイシーさんとビブちゃん、そして、この子は隣村のアーシャ、全員で9人よ。あら、あなたは、村の方じゃないですよね」

 ヒルカはエルフ族の男をじっと見て首を傾げた。

 「ええ、私は昨日からこちらの教会でお世話になっております。リョウアンと申します。皆さん、大事がなく良かったです。え、癒しの星明り亭・・・、「拡大鏡」のラスコーさんの・・・。あ、では、何かありましたらお声をかけてください。出来ることは限られていますが、できる限りのことはさせて頂きますので」

 リョウアンと名乗った男は手にした紙にネアたちの名前を書き込むと一礼して他の避難者のグループへと歩み去っていった。

 【リョウアン・・・、どこかで聞いたような・・・、あ、「まれ人考」の著者、まさか・・・】

 ネアは立ち去るリョウアンの背中を見ながら、妙なめぐり合わせてもあるモノだと感じ入っていた。


 「奥の控室、借りるぞ」

 ネアたちが一息ついたころ、ドクターとウェルがぐしょぐしょに濡れた状態で教会に入ってきた。ドクターはレイシーとビブの無事を目で確認すると、無言でレイシーに頷いた。レイシーはそんなドクターに微笑んで返した。

 「さ、ウェル、診療所を開設するぞ。ゆっくりしている暇はないからな」

 「承知しました」

 ウェルが大荷物を背負ったまま祭壇の隣にある聖歌隊の控室に向かう後ろ姿をアーシャはじっと見つめていた。

 「お兄ちゃん、ガンバレ」

 「ウェル君、頼りにしているよ」

 ドクターの後ろを動いて行く大荷物にアーシャとシャルは声をかけて応援した。そんな声にウェルは片手を上げて応えた。

 「ウェル君、随分と逞しくなったわね」

 キラキラとした目でウェルを見送るシャルにヒルカは楽しそうに声をかけた。ひょっとすると彼が将来、シャルを支えてくれるかもしれないと密かに考えたりしてクスリと笑った。

 「ケガした人はそんなにいないようですけど、食べ物や水が心配ですね」

 教会のあちこちにグループを作っている人々をみてネアが心配そうに呟いた。

 「うちらは、ネアが言ってくれた準備してたからさ、こうやっていろいろあるけど」

 荷物を包んでいたシーツを床に広げその上に座ったフォニーが宿でもらった保存食の包みを手にしてネアに見せた。

 「ネアの言う通りでした。着の身着のままだったら、大変でした」

 ラウニは濡れた身体をタオルで拭きながらネアの先を読んだような行動を称賛した。

 「ネアお姐ちゃんって、すごい」

 さっきまで泣きそうになっていたティマが初めて明るい表情を見せて、ネアにくっついてきた。

 「ごく、普通に準備しただけです」

 ネアは驚くようなことではないとでもいうようにさらりと応えると、改めて避難してきている人たちを見回した。

 「バイゴたちもいるようだし、後は水門がどうなったか・・・」

 ネアは水門を開きに行ったラスコーの身を案じていた。


 教会の中では小声で不安を語り合う声があちこちでしていた、そしてそれを消し去るように外では嵐が轟音を上げて吹き荒れていた。侍女見習いたちも疲れたのか、シーツに身を包んで壁にもたれた四人が身を寄せ合うようにして寝息を立てていた。

 「ネアちゃんのおかげかな」

 レイシーは、むずがるビブのオシメを避難用にまとめた荷物の中から取り出したものと取り替えながら、寝息を立ているネアに目を向けた。

 「私も助かりました。こんな小さいのに本当にしっかりしてるんだ。最初に会った時は随分と落ち着いた子だなと思っていたけど」

 アーシャも持ち出したシーツを身にまとって同じく持ち出したビスケットを齧りながらネアの行動を思い起こして感心していた。

 「宿、大丈夫かな・・・」

 ちょっと落ち着いたシャルがヒルカを見て心配そうな声を出した。

 「命さえあれば、何度でもやり直せるから、心配しない」

 ヒルカはにっこりしてシャルの頭を撫でた。そんなヒルカをアーシャは眺めながら、長命なエルフ族ならではの発想なんだと妙に納得していた。


 「水門は開いたぞ。これで村にこれ以上は水は来ないぞ」

 そろそろ空が白くなってきたころ、びしょびしょになった男たちが教会に入ってきて、大声をあげた。その声に避難していた人たちは安堵の声を上げた。

 「くそっ、水が来たか」

 ぐっすりと寝込んでいたネアは大声に目を覚ますとさっと立ち上がって周りを見回した。

 「あれ・・・」

 「ネアちゃん、安心して、水は来ないわよ。洪水にならずに済んだみたいよ」

 辺りを見回すネアを安心させるようにヒルカは優しく声をかけた。

 「良かった・・・」

 ネアがほっとしていると、教会の扉が荒々しく開けられた、風はやんだものの外はまだ雨が降っており、教会の中に雨音が大きく響いた。

 「お前たち、邪魔だ、出て行ってもらうぞ。穢れが多くて臭くてたまらんが、泥だらけよりかは幾分かマシだからな。さっさと出て行ってもらおう」

 扉を開けて入ってきたのは、いかにも使用人風のスーツを雨で濡らした長身の男であった。

 「勝手なことを言うな。どこへ行けってんだ」

 「何様のつもりだ」

 避難していた者たちから怒声が上がった。

 「ボーデン様がこちらに避難されるのだ。気持ちの悪い異教の神の教会だが、我慢してやる。有難く思え。ふん、貴様らごときが文句を言う資格が無い事を知らんのか」

 その男は一声叫ぶと、後ろに従えた男たちに、こいつらをつまみ出せと命じた。避難していた村民も対抗うに立ち上がり、教会内に不穏な空気が立ち込めた。

 「ここは、神の家です。あなた方のものではありません。皆、難を逃れて来ているのです。神の前では、あなた方は特別な存在ではありません」

 ドワーフ族の宮司が大声をあげた男の前につかつかと歩み出て、その男を見上げた。

 「さ、こいつらをつまみ出せ。歯向かったら痛い目を見せてやるといいぞ」

 男は宮司の言葉を無視するどころか見向きもせずに連れてきた男たちに命じた。

 「あなた方がここで好き勝手にできる・・・」

 「ボーデン様の第一秘書である私に貴様らごときが話しかけた無礼は許してやる。さっさと出ていけ」

 抗議する宮司を見下ろして男は横柄に言い退けると、宮司を蹴り上げようとした。

 「神の家を管理する者として、あなたの行いは見過ごせません」

 宮司は蹴り上げようとした男の足をゴツイ手でがっしりホールドすると、髭に覆われた顔に怒りの表情を浮かべた。

 「穢れの分際で、それは許されんことだ。痛い目と言ったが、始末して構わん」

 「朝っぱら、ゴタゴタうるせえぞ。こっちは一晩中怪我人の治療で疲れてんだ。何が、始末だ。やってみやがれ、生まれてきたことを後悔させてやる」

 第一秘書を名乗る男の背後に控えた男たちが宮司に掴みかかろうとした時、斧を担いだドクターが大声を張り上げた。

 「久しぶりに、暴れてもいいかしら」

 男たちを睨みつけるドクターの背後に仕込み杖をついたレイシーがそっと立っていた。

 「ああ、足に障らんていどにな」

 ドクターは振り向きもせずレイシーに応えるとニヤッと笑みを浮かべた。

 「この教会は村の者ためにあるんだ。他所者のあんたにゃ、関係がない場所だ。出て行ってもらおうか」

 ラスコーが手に手に工具を手にした男たちを引き連れて第一秘書を名乗る男の前に壁を作った。

 「わしに、そんな穢れどもがおった場所に入れと言うのか、何を考えておる。さっさと帰るぞ」

 雨が降りしきる中でも派手さだけは認識できる馬車の中から第一秘書を名乗る男に声がかかった。

 「しかし、雨が降っておりますし・・・」

 第一秘書を名乗る男が何か言いかけたのを制するように再び馬車の中から声が響いた。

 「わしと家族は濡れん、お前らが濡れたくないだけだろう。こんな、物騒な場所に足を運んだわしの目が曇っておったのだ。さっさと行くぞ」

 降りしきる雨の中、派手な馬車の後を泥だらけでずぶ濡れになった使用人たちを引き連れてボーデンは去っていった。

 「なんじゃ、肩透かしか」

 「久しぶりに暴れられると思っていたんですけどね」

 ドクターとレイシーは残念な表情を浮かべていた。

 「暴れられると困るんだがな」

 似たもの夫婦を眺めながらラスコーは呆れたような声を上げた。

ボーデンはケフの郷に隣接するヤヅの郷で一代にして成りあがった男です。元々、網本の株を買って、人を使い捨てのようにして財を得ています。彼には穢れの民も真人もありません。ただ、使えるか使えないかだけが問題であり、使い捨てすることには差別はありません。

今回も駄文にお付き合いいただきありがとうございます。ブックマーク、評価を戴いた方に感謝を申し上げます。

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