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鎧を脱いで  作者: C・ハオリム
第12章 つながり
153/342

142 夜祭で

病気は防ぎようがありますが、想いの伝播は防ぎようがないように思います。

それがいいものであれ、悪いものであれです。

と、言うわけでギルドもランクもスキルも関係ない世界が今回も続きます。

 「折角、夜の外出を許されているんだから、もっと見て回ろうよ」

 冷たいさっぱりした柑橘系の飲み物を飲み干したフォニーがグラスを退屈そうに弄びながら未だに「白き乙女」の余韻に浸っている大人やラウニたちに声をかけた。

 「夜は女を素敵に魅せるからねー」

 バトはそう言うと、魅せるという言葉に反したがさつな所作で一気にグラスに残ったものを喉に流し込み立ち上がった。

 「・・・言っていることと、やらかしていることがバラバラですよ」

 既にグラスを空にしていたルロは呆れたように言うとテーブルに手をついて疲れた様子を見せながら立ち上がった。

 「ルロは疲れているみたいですね」

 そんな様子を見ていたアリエラがティマを椅子から抱えて降ろすとちょっと心配そうな気配を漂わせながらルロに声をかけた。

 「・・・誰が疲れさせていると思っているんですか・・・」

 ルロは本当に疲れ切ったように呟くと、行きがかり上最重要警護対象となったパルの動きを見守っていた。

 「まじめすぎると禿げるよー」

 そんなルロをからかうようにバトは言いながら辺りに視線を走らせていた。

 「不真面目すぎるのもどうかと思うけど・・・」

 アリエラはそんな2人のやり取りに入り込みながティマの右手で取りつつ、左手で腰に付けたポーチにしまっているナイフをいつでも取り出せる姿勢を取っていた。

 【俺らだけの時はあんな姿勢を見せてないし、遊んでいるだけかと思ったけど、ちゃんとやるべきことは分かっているんだな。ひょっとしてエルマさんの訓練のおかげかな。スイッチが入るのが少し遅かったようだけど】

 ネアは椅子から立ち上がりながら、今までダメな所しか見せなかった彼女たちを密かに見直していた。

 「・・・」

 ネアたちが全員動き出したのを確認したルロが小さく手でサインを出すとバトがネアたちを先導する位置について先立って集めていた飲み物代をまとめてカウンターに置いた。

 「ごちそう様」

 小銭を数えるウェイターにバトは微笑むと道行く人たちにさっと視線を流し、アヤシイのがいないことを確認すると、さっと手でサインを作った。

 「じゃ、行きましょうね。メムちゃんはバル様から離れない様にしてね。ティマちゃんはちゃんとお姐ちゃんたちの手を持ってね。ラウニちゃんはティマ、フォニーちゃんはネアちゃんをお願いね」

 アリエラは自然に言うと彼女らが常に視界に入る位置についた。

 「忘れ物してないでしょうね。こんな時に物を落としたり、忘れたりしたら絶対に戻って来ないからね。人攫いもいるかも知れないから、はぐれない様に」

 動き出した一行にルロは子供を引率する教員のように声をかけた。


 「さぁー、白と赤の鎧の者たちについて知りたいか?英雄と心を一しにして自ら危険に赴く鎧の者たちについて知りたいか?」

 夜店がひしめいているちょっと開けた場所に木箱の上に立った、金糸銀糸でガラスで作られた飾りボタンを必要以上に縫い付けたジャケットを着た男が大声をあげていた。

 「噂屋か、珍しいなー」

 ネアが噂屋を胡散臭そうな目で見ながら言った。

 「こんな田舎にには滅多に来ませんもんね」

 「渡り鳥よりも目にすることはないからねー」

 ネアの言葉を耳にしたラウニとフォニーは珍しいものを見るように大声を上げる男を見つめた。

 「()()()()が人の姿になるとああなるんでしょうね」

 「胡散ってどんな臭いなんでしょうか?お嬢様、」

 不思議そうな表情でメムがパルを見つめた。

 「知りません」

 「言ったことに責任を持つことも大切だと思いますよ。お嬢様」

 たがで鼻を括ったような態度のパルにメムは纏いつくように声をかけた。

 「主を追い込むようなことをするのもいかがなものか、と思いますよ。メム」

 パルがにっこりしながら、肉球のついて手をメムの前で開いた。

 「お、お嬢様、お戯れは・・・」

 「聞き分けがいい子は好きですよ」

 慌てたメムにパルは微笑むとゆっくりと手を下げた。

 「噂紙一枚、ちょうだい」

 パルとメム主従が妙なやり取りをしている間にネアはフォニーから離れると、派手な装飾を施したスタンドに陣取っているさわやか系のおにいさんに小銀貨1枚を差し出した。

 「穢れには関係ないと思うが、商売だからね」

 さわやかな風体に反するような表情を浮かべたおにいさんはネアにビラを一枚手渡した。

 「ネア、勝手に動いちゃだめだよ」

 「ごめんなさい」

 ネアの動きをフォニーがとがめると、ネアは耳を伏せてしゅんとした姿勢をつくって謝罪した。

 「ねぇ、あっちからいい匂いがするよ・・・、します」

 ティマがラウニの手を引いて、露店が並ぶ奥の方を指さした。

 「あ、どこかで嗅いだ匂いですね」

 ラウニが黒い鼻をひくひくさせて匂いを確かめた。

 「この匂いは、漢のクッキーだよ。マサタネさんがお店をだしているんだ」

 フォニーは匂いを嗅いだ後しばらく考えてから、その匂いが何か答えを出した。

 「フォニーさんの言う通りですね」

 「ふふん、我々犬系の獣人は鼻が利きますからね」

 パルとメムはフォニーの推測が正しいことを口にした。

 「え、流石獣人、匂いのことなんか手私らは分からないよ。すごいよね。でも、毛深いからルロは分かるでしょ」

 獣人たちのやり取りを聞いていたバトが驚きの声を上げた。

 「毛深いと匂いのことは別だと思います」

 バトの言葉にむすっとしながらもルロは切り返しながらも、自然な様子で辺りを警戒していた。

 「お師匠様は分かるでしょ」

 ティマがアリエラを見つめた。その眼を見たアリエラは葛藤状態に陥った。

 【分からないけど、分からないというとティマを悲しませる。でも、嘘は付けないし】

 「ごめんなさい、私には分からないよ。真人や亜人の鼻はそんなに利かないの」

 葛藤の末、アリエラは正直にティマに応えることにした。

 「お師匠様に勝ったー」

 アリエラの言葉にティマは嬉しそうな声を上げた。

 「ティマの鼻はすごいですよ。これは、偵察、斥候の任務にとても役立つ大切な事です。師匠としても鼻が高いです」

 アリエラはそう言うと胸を張るティマをぎゅっと抱きしめた。それは、いつもの欲望任せ、力任せのそれではなく、愛情のこもった優しい抱擁だった。

 ネアたち一行が目当てのマサタネの出店に着いた時、店主のマサタネと2人の男がなにやら言い争っていた。

 「俺は、ここでやっていく。俺のパンはここの気候でしか作れないからな」

 腕組みをしてちょっと身なりのいい男たちを睨みつけながらマサタネは頑として譲らない姿勢を見せていた。

 「お前の腕をこんな所で眠らせておくのは勿体ないぞ。中央に行けば、貴族の顧客が絶対に付くぞ」

 「味の分からん連中にお前のパンは勿体ない。お前のパンは、しっかりと味の分かる()のために焼いてこそ意味があるんだ」

 どうも、この男たちはマサタネの同業者らしく、何とか自分の店にマサタネを呼びよそうとしている最中のようであった。

 「おっじさーん、漢のクッキー一袋ちょうだい」

 困ったようなマサタネを見たフォニーが明るく声をかけた。

 「ん、お館のキツネの嬢ちゃん、フォニーちゃんだったけ、いつもありがとよ。で、今日はパンはどうだ」

 マサタネは、何とか説得しようとしている2人を無視して笑顔でフォニーを迎えた。

 「おや、クマの嬢ちゃんもネコの嬢ちゃん、お前さんは最近来たリスの嬢ちゃんじゃねーか。皆そろって夜祭か、いいねー。あ、パル様も、イヌの嬢ちゃんまで・・・、流石、女神さまのお祭りだ。女神さまがそろってご来店、ありがたいね」

 マサタネはフォニーが取り出した小銀貨の枚数に応じたクッキーを園芸用スコップのような匙で紙袋に詰め込むと、ちょっとおまけをつけてフォニーに手渡した。

 「ちょっと、お腹がすいているので、そこのハムを挟んだパンを・・・2つ」

 パルはロールパンにハムを挟んだパンを指さすと、隣で何かを期待しているメムの目を見て小さなため息をつくと2人分を購入した。

 「お嬢様、ありがとうございます」

 メムはパルからパンを手渡されると早速それにかぶりついた。

 「あたしは、その大きなクッキーを一つ」

 「そこのハチミツパンを」

 「私は、そこの袋に入ったラスクで」

 マサタネは、ネアたちが次々と注文するのを笑顔で受けると、漢のクッキーを詰めた小袋と一緒に手渡した。

 「おじさんのクッキーはお館様もお気に入りなんだよね」

 フォニーが敢えて説得に来ているらしい男たちに聞こえるようにマサタネに話しかけた。

 「甘さの押さえ方が絶妙だって、仰ってました」

 ネアがフォニーの後に続いた。それを聞いていた2人組は微妙な表情を浮かべた。

 「貴族様の顧客も大切だろうが、郷主様におほめ頂いて、黒狼騎士団長のご息女がご自身で手ずから買ってくださる。お前さん方の言っていることがもうここで実現しているだろ。態々、空気も水も良くない中央に出る気はない。さ、諦めて帰ってくれ」

 マサタネは男たちを手で追い払った。男たちはまだまだ何か言いたそうであったが、肩をすくめてその場を立ち去って行った。

 「フォニーちゃん、助かったよ。パル様にもお助けいただいて・・・、感謝を申し上げます」

 マサタネはパンにかぶりついているパルに深々と頭を下げた。

 「ぐふっ、そ、そんな丁寧なお礼はいいです」

 咀嚼していたパンをぐっと飲みこむとパルは笑顔でマサタネに応えた。

 「あ、申し訳ありません。パル様をはじめとしたお嬢様方に、コイツをサービスしますよ。そこの大きなお嬢ちゃんもこっちに来な、この杏のジャムを詰めたパンを持って行きな」

 マサタネはネアたちの後ろで辺りを警戒しているバトたち大人にも声をかけた。

 「え、私たちまで」

 「おじさん、男前っ、思わず濡れたよ」

 「貴女って人は・・・」

 バトたちはマサタネからパンを貰うと早速それに齧りついた。

 「・・・おいしい・・・」

 「そんなに甘くないから、お酒が好きな人にもいいかも」

 「液が出そう・・・」

 彼女らは三人三様に口にしたパンの感想を述べた。

 「そうか、美味いか、よかった。そこの嬢ちゃん、出すならよだれだけにしておいてくれよ」

 マサタネは彼女らに笑いかけた。

 「あの人たちは誰なの」

 ニコニコしているマサタネにフォニーが首を傾げて尋ねた。

 「王都の近くで店を出している連中さ。ちょっとでも腕がある職人を雇って、店を大きくしたいらしいが、あんなところの空気と水じゃ、俺の出したい味は出せないから断ってたとこだったんだが、連中、しつこくてね、嬢ちゃんたちに救われたよ」

 「ウチもおじさんのクッキー食べられなくなるのは嫌だから」

 「あいつら、ここの連中は味が分からないってぬかしやがったが、郷主様やお嬢様や嬢ちゃんたちが認めてくれているって知って、勢いがなくなったのは笑ったよ」

 「おじさん、またね」

 「パン、おいしかったですよ」

 出店の前でニコニコしているマサタネにネアたちは別れを告げるとネアたち一行の耳に教会の鐘の音が入ってきた。

 「礼拝が終わったようですね」

 亜人の耳にもその鐘の音は届いたようで、ルロがぼそっと独り言をつぶやいた。

 「次の鐘で夜祭もお開き、その後は・・・、大人の夜祭ね」

 「バト、子供もいるから、あんまりそんなことは・・・」

 大人たちがニタリとしたり困惑の表情を浮かべているのを横目で見たネアは子供たちの興味がそちらに向かわない様にすることにまたもや妙な義務感を持ってしまった。

 「教会に行って、女神さまにお祈りを捧げないといけないですよね。夜祭は女神様のためにあるんでしょ」

 ネアはフォニーの手を引っ張りながらちょっと大きな声を出した。

 「それは、良い心がけですよ」

 このままだと何かイケナイことになりそうだと察知したアリエラがネアの意見に同意した。

 「そうですね。お祈りしないといけないですね。それと、お嬢が心配ですから」

 パルも教会に行くことに賛成を示した。

 「郷主のご一家や街の世話役や商工会長の家族は礼拝に参加しなきゃなりませんからね」

 ラウニがパルの言葉を聞いて礼拝に参加しなければならない人の苦労を想像しながら口を開いた。

 「ずーっと、座ったままお祈りするんでしょ。・・・お嬢、絶対に荒れてるよ」

 フォニーが荒れているレヒテの姿を想像して毛を逆立てた。

 「尻尾を引っ張られるですめば、まだまだいい方ですね」

 何度かお嬢に尻尾を引っ張られたネアが恐怖の表情を浮かべた。

 「お嬢ってそんなに怖いの」

 不安になったティマがそっとフォニーを見上げながら尋ねた。

 「本人に悪気がないから性質が悪いのよ。一緒に寝ようって声をかけられて、ベッドに入ったらヌイグルミみたいに朝までぎゅっと抱きしめられるの。しかも、思いっきりぎゅっとだよ。寝ぼけてミミやら尻尾を引っ張られるし・・・、悪気はないんだけどね」

 「怖いです・・・」

 フォニーの言葉に不安になったティマが肉球の付いたフォニーの手をぎゅっと握りしめた。

 「私たちも剣術のおけいこのお相手しなくちゃならないですからね。いつもより激しくなりますよ」

 ルロがため息交じりにバトとアリエラに警告を発した。

 「えー、それは勘弁、お嬢の剣って、当たると思いっきり痛いんだよ」

 「バトは痛いのも好きなんじゃなかったっけ」

 「それは、相手によるの、愛がないとダメなの、って何を言わせるの」

 バトとアリエラが漫才のようなやり取りをしながらも、バルを中心として護衛できる位置を占めていた。そして、ネアたちも自然とパルを囲むようにして歩いていた。

 【身分ってのは、こうやって刷り込まれるんだな】

 前の世界ではあまり感じられなかった、身分による壁のようなものをネアは感じていた。


 「ありゃ、想像以上に荒れるよ」

 教会から出てくる郷主一家を見ながらフォニーが呟いた。

 「顔を合わせたら、ひどい目に遭いますね。もう、帰った方がいいもしれません。寝ている私たちを起こすことはお嬢でもしない・・・かな・・・、その前に奥方様が許されませんから。お部屋に戻るのが一番安全ですよ」

 「私たちも帰りましょうか。眠くなりましたから」

 ネアたちの状況を悟ったパルがそっとメムに告げた。

 「パル様、お家までご一緒します」

 パルの動きを察知したルロが素早くパルたちの前に位置どった。

 「子供の時間はお終いだからねー、皆、帰ろうか」

 「ティマはもう限界みたいね。ラウニちゃんお願い」

 バトがネアたちに声をかけ、アリエラは立ったままうとうとしているティマをラウニにおぶわせた。

 「ネアもはぐれない様に」

 「フォニー姐さん、そこは承知しています」

 パルを中心にした一行は、人の波をルロが切り裂き、バトとアリエラがそれを押し広げるような形で騎士団長の屋敷を目指した。

 「お嬢様、おやすみなさい」

 お屋敷の前でラウニの背中で半ば夢の世界にいるティマ以外が恭しくパルに頭を下げて挨拶をした。

 「お姫様・・・、おやすみなさい・・・」

 ラウニの背中で眠っていたティマが寝言のように呟くとパルは満面の笑みを浮かべた。

 「おやすみなさい、ティマちゃん」

 「さて、お館に戻ろうか。ちゃんと寝る前におしっこしておくんだよ」

 バトがにこやかにネアたちに声をかけ、一行はお館に入って行った。こうやって、ネアたちの一夜の楽しみは幕を下ろした。


 「・・・広告ビラじゃないか・・・」

 小さな灯りの下で小銀貨一枚で噂屋から買った噂紙を見てネアは呟いた。

 「正義と秩序のために身を犠牲にした団員、英雄とともに戦える誇り・・・胡散臭いな」

 そこには、求人を謳う広告ビラにありものの、働く喜びや活躍している場面が様々な美辞麗句で飾り立ててあった。しかし、求人広告と違うところは、賃金やら厚生に関しては気持ちいいぐらいに記述されていない事であった。

 「なんて書いてあるんですか」

 真剣な表情で噂紙を睨んでいるネアにラウニが声をかけてきた。

 「白と赤の鎧の人たちのこと、勇敢で恐れ知らずで、正義と秩序のためにいつでも命を投げ出せる選ばれた人たちだそうですよ」

 ネアは『命すら正義と秩序の前では鴻毛のごとし』と書かれている所を指さした。

 「気持ち悪いですね」

 「いっちゃった人たちみたい」

 ラウニが顔をしかめ、いつの間にか噂紙をのぞき込んでいたフォニーも嫌そうな声を出した。

 「あのグルトはこれになりたいみたいですね・・・」

 ネアは夜祭の場で熱く語っていたグルトを思い出して顔をしかめた。

 「男の子はこのようなのが好きなのでしょうか」

 ラウニの言葉にネアは自分のことを思い出そうとしていた。確かに男の子はヒーローに憧れるものである。グルトにとって正義と秩序の実行隊はまさにヒーローなのだろう。

 「単純なグルトらしいです」

 身をもってグルトと接したことのあるネアは呆れ顔で呟いた。

 「正義の真なる人か・・・、つまり真人しかなれない・・・」

 ネアは正義と秩序の実行隊員になる素質を見てため息をついた。

 【正義の光の暴力装置か】

 ネアの脳裏には、前の世界の過去に黒い制服に赤い腕章をまいた連中の姿と白と赤の鎧が重なって見えた気がした。

 「危険な存在になりますよ。こいつらには絶対に近づいちゃダメです」

 ネアはこの正義と秩序の実行隊が危険だと先輩方に力説した。

 「言われなくても近づきたくありません」

 「こいつら絶対に嫌な臭いがするよ」

 ラウニとフォニーは噂紙に描かれた白と赤の鎧を汚物でも見るような目で見つめた。

 「そんなバカな連中のことは置いといて、さっさと寝ましょ」

 ラウニが声をかけると、ネアはその噂紙をテーブルの上に畳んで置くと、さっと自分のベッドにもぐりこんだ。

 「じゃ、灯りを消すね。おやすみ」

 「おやすみなさい」

 「明日がお休みでも寝坊はいけませんからね。おやすみなさい」

 フォニーが灯りを消した暗い部屋にはティマの安らかな寝息と遠くから聞こえてくる大人たちの笑い声だけが耳に入ってくるだけになっていた。

今回も出てきた「噂屋」ですが、瓦版みたいなものです。それぞれ版元があり、絵と文字で庶民に分かりやすくしたものです。印刷は銅版画のようなもので、正確性より多く刷ることを重視しています。

内容も、しっかりしたものから、裏取りすらなされていないものまで様々あります。

価格は大体、小銀貨1枚程度です。(日本円に換算して100円程度)

今回も、駄文にお付き合いいただきありがとうございます。ブックマーク頂いた方に感謝を申し上げます。

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