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1-3 ②

 教会兼、孤児院に到着したクラミは玄関から大きな声で挨拶をする。

 すると、ドタドタと元気な足音が複数近づいてくるのが分り、「ふぅぅッ」と、息を飲み込む。


「おねえちゃんだ!」

「いらっしゃい!」

「あそぶの? いっしょにあそぶの?」


 瞳を輝かせる子供達は、クラミのお腹目掛けて頭から突撃してくる。

 クラミはお腹にぶつかると同時に子供を持ち上げては、横に置き、持ち上げては横に置いていく。毎度同じ事をしてくるので今は馴れたものだ。


 一種の絶叫アトラクションを乗っているかのように子供達は大はしゃぎで抱っこをせがむ。

 その子らの頭を撫でて「また後でね」と、あやしていると年配のシスターがやって来た。


「こら、お客様に迷惑を掛けるんじゃないよ! いらっしゃい、クラミちゃん。今日はどうしたの?」


 顔さえ隠せば何人もの男達が生唾を飲み込むであろう、艶めかしいボディーラインを持つおばちゃんシスターは、クラミに纏わり付く子供達を引き剥がして問いかけてくる。


「今日はギルドで依頼を受けてきました」


 子供達の脇腹に両手を差し込んで振り回している、おばちゃんシスターの雑な扱いを見て、苦笑いを浮かべるクラミ。

 (ちぎっては投げ、ちぎっては投げだな)などと思っていると、おばちゃんシスターは驚いた様子で口を開く。


「クラミちゃんが依頼を受けてくれたの?」

「はい。ギルドマスターからお願いされまして」


 ギルドマスターの名前を出した辺りでおばちゃんシスターは口元をひくつかせる。


「クラミちゃんに……仕事を押しつけたのね」


 何時ものと変わらない声色だが、明らかに怒気を孕んだ声にクラミは生唾を飲む。先ほどまで居た子供達はいち早く異変を察知したのかすでに居ない。

 誤解を解くべく緊張した面持ちでクラミは言う。


「違うんですよ。仕事をしにギルドに行ったら休めって言われまして、どうしても仕事がしたいなら、この仕事を進められてのですよ」

「つまり、人気のない安い仕事を押しつけられたと?」

「いえいえいえ、アレですよ! その……アルさんとイリニの様子とか見るついでに……って感じです」


 クラミの必死な説得が通じたのか、おばちゃんシスターは納得した様子を見せる。


「ギルドマスターは後で……それより、わざわざ仕事を受けてくれて、ありがとうねクラミちゃん」

「いえ、そんな。気にしないで下さいよ。ははは」


 誤解は解けていなかった様だ。もう、これ以上どうすることもでき無いクラミは乾いた笑い声を上げて、心の中でギルドマスターに手を合わせる。

 そんな事をしているとおばちゃんシスターは「とりあえず中に入りましょう」と、孤児院に入っていくので慌ててついて行くクラミ。


 孤児院の中は相変わらず子供達が元気よく遊んでおり、クラミを見つけると駆け寄ってくるが、おばちゃんシスターが「仕事中だから駄目よ」と、蜘蛛の子を散らすように追い払う。

 子供達に手を振りながらクラミ口を開く。


「あの、子供達しか居ないんですか?」


 クラミとソフィアの二人が救出した女性達の姿が見えない。その事を疑問に思いシスターを見つめると、彼女は首を横に振る。


「まだ色々と心の整理が付かないのよ。殆どの子が部屋に閉じこもっているわね」


 何とも言えないクラミは渋い顔になる。彼女達を救出した手前、何か声を掛けるべきか? しかし、掛ける言葉などよくよく考えれば持ち合わせていない。

 軽い気持ちでこの仕事を受けるべきではなかった。と、後悔しているクラミにおばちゃんシスターは言う。


「まぁ、アルモニアのお姉さん、イリニは元気みたいだから一人で街に出かけてみたいで、慌ててアルが追いかけていったのよ」


 嘆息混じりの言葉を吐くと、おばちゃんシスターはクラミに向き直り真剣な眼差しで問いかける。


「クラミちゃんはアルと仲良いけど、イリニの事は何か聞いた事ある?」

「いえ、家族の話などしたことなかったので」

「そう……」


 話ながら歩いていると食堂に辿り着く。おばちゃんシスターに進められ椅子に座ると、彼女は対面に腰を下ろして言う。


「仕事の前に、アルがここに来た時の事を話してもいいかしら?」


 無言で肯くクラミは神妙な面持ちのシスターを見つめながら、テーブルの下で手を握りしめるのであった。

>>無言で肯くクラミは神妙な面持ちのシスターを見つめながら、テーブルの下で手を握りしめるのであった。


また面倒くさい話かよ。って覚悟を決めている描写?です

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