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1-1 改稿版

お待たせしました。

 一人の少女がベッドの上で胡坐をかき唸っている。

 腰まで伸びた艶のある黒髪を乱雑に左手で掻きむしり、腕を組む。


「告白されたんだよな……女の子に」


 昨日のことを思い出し少女は頬を赤く染めて、締まりのない顔で口元を綻ばせ――にやつかせる。

 

「それに、初ちゅーまで……へへ」


 まるで思春期真っ盛りの男子高校生の様に浮つく少女。

 それもその筈、外見は少女の姿なのだが中身は男なのである。

 神の悪戯か、はたまた嫌がらせなのか、男であるはずの蔵美(クラミ)善十郎(ゼンジュウロウ)は、少女の姿に変えら異世界スクピドに飛ばされたのだ。

 それからゴブリン軍団の襲撃や、誘拐騒動など様々な困難に巻き込まれながら異世界で生活すること一ヶ月。

 生まれて初めての女性からの告白と言うイベントにクラミは浮かれていた。

 

「ソフィアの事は好き……なんだけど」


 だらしない顔から一転、眉を顰めて言葉を洩す。


「やっぱり、元の世界に帰りたい」


 どんなに浮かれようとも生まれた世界の違い、故郷への哀愁、両親の顔が浮かべば、ソフィアへの思いは薄れてしまう。

 そうした自分の気持ちを伝えたいクラミなのだが、ソフィア自身は「返事はいらない」と、言っていたのでケジメをつけられずにいる。

 そのため、心の片隅ではソフィアの告白シーンを思い出しては――。


「帰る! 絶対に帰る!」

 

 未練がましい思いを払拭するべく、クラミは頭を左右に振りながら立ち上がる。

 元の世界に戻る方法は聞かされているのだが、帰る為の条件――長年連れ添っていた新品の相棒の手掛かりは未だにない。

 その手掛かりを探すために、元い、魔物が蔓延る異世界で生きていくには力が必要である。


 自分の決意を忘れないように両頬を手の平で二回叩くクラミ。彼女は日課のトレーニングをする為に着替えると、長い髪を不慣れな手つきで後頭部で一括りにまとめて垂らす――ポニーテールにして部屋を後にした。

 そして、薄暗い第一城壁周りを無心で走り続ける。


 一通り汗を掻き、体が温まったのを感じるクラミはランニングを終え、城の庭で軽くストレッチを行なう。

 体を解し終える頃にはすでに朝日が昇ってきており、クラミは右手で日よけを作り、空を仰ぐ。


「日が昇るのが早くなっているかな?」

 

 目を細めながら独り言を漏らした後、腰に提げている魔法の袋に手をかざして念じる。

 

(剣出てこい。剣、剣――)


 すると右手に光の粒子集まりだし、クラミがそれを握ると黒い棒状に物質化した。

 

「よっこい……セイ!」


 おっさん臭いかけ声と共に右手を天にかざすと、黒い棒に光の粒子が纏わり付き銀色の刃へと化す。


「どっせい!」


 またもや、少女の容姿に似合わないかけ声を発しながら、魔法の袋から取り出した剣を振る。

 

「剣を扱うなら剣道とか習っていればよかったかな……せい!」


 彼女は剣と軽く言っているのだが、常人が見れば余りにも常軌を逸している。

 クラミが両手で握る柄の長さが一メートルほどあり、刃は三メートル。全長が彼女の二倍強ほどある大剣なのだ。

 それを彼女は軽々と振り回しながら汗を流していく。


「く~ら~み~、そろそろ朝食の時間だよ」


 額に浮かぶ玉の汗を袖で拭きながらクラミは声のする場所に目線を向けると、少し離れた場所に彼女よりも頭一つ背の高い女性が、タオルを片手に声を掛けていた。

 クラミは腰に提げている魔法の袋に手を添えて「収納、収納」と、独り言を呟くと、大剣が光り輝く。かと思えば、次の瞬間には光と共に大剣は消え去っていた。

 物騒な凶器を魔法の袋に仕舞い終えたクラミは、先ほど話しかけてきた女性の元へと歩み寄る。


「……おはようございます、ソフィア」

「おはよ。はい、このタオルを使ってね」


 白いタオルを手渡してくれる女性――ソフィアにお礼を言って、顔をタオルに埋くめる。

 ポカポカと温かなお日様の香りに安らぎを覚えつつ、タオルの隙間からソフィアを見つめるクラミ。


 彼女は鮮やかなピンク色の髪を短くカットし、両サイドのもみ上げは肩に垂れかかるほど長い。足首まで隠れるほど長い黒のワンピースの上からピナフォア(エプロンドレス)を着ている。

 所謂、メイドさんの格好だ。

 そのメイド服を着こなすソフィアが口を開く。


「どうかしたのクラミ?」


 疑問を口にするソフィアは人差し指を口元に当てると、ゆっくりと形をなぞりながら動かす。

 見つめていたことがバレた事と、柔らかな唇の感触を思い出したクラミは俯いて黙り込む。

 動かなくなってしまった彼女の後ろに回り込んだソフィアは、クラミの背中にない胸を押し当てて口を開く。


「お礼が足りなかったら、何時でもいってね」


 冗談めかしに耳元で囁くと、体をふるふると震わせるクラミを見てソフィアは微笑む。

 顔が熱くなり、心臓の鼓動がバクバクと五月蠅い胸に手を当てるクラミは大きく息を吸い込み、振りかえる。


「あの……ソフィ――」

「そろそろ朝食だから早く着替えないとね!」


 真剣な表情のクラミと目が合うと、話題を逸らすように早口で答えて歩き出す。

 早足で歩くソフィアの背中を見ながら、告白の返事を返せなかった事にため息を漏らすクラミ。

 そんな彼女とは裏腹にソフィアは、真剣な眼差しのクラミを思い出しては頬を緩めていた。


ちょっとスランプ?って感じです。

あと、お仕事ちゃんがヤンデレ過ぎて休日ちゃんとイチャイチャしていたら発狂するので大変でござる(白目


話し変わりますが、一章では、

<スファギ・アラゾニア・エクサシルの加護-高揚-が発動しました>

等と、書いていましたが、どうしてもこの表現が好きになれず、二章では書きませんでした。

人様の作品を読む分では気にならないのですが。


これからはクラミの瞳の色を変えて加護が発動したと表現しようかと考え中です。

普段は黒色だけど、憤怒の場合は赤?

色欲はピンク?

いくら筋トレしても筋肉が付かない加護の場合は……?


もう少し更新早くできるように頑張りますので、これからもお付き合いして頂ければ幸いでございます。

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