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4-3

 ギルドを後にした二人は酒場を目指して歩く。

 仲の良いはずの二人には会話はない。未だ腹の虫が収らないのかソフィアは黙り込んだまま歩き、その後ろで眉間に皺をよせ、難しい顔をしたクラミが悩んでいた。

 

 ギルドで護衛依頼の危険性を聞いたので、ポリティスの露骨な勧誘に疑いを持つのは分かる。分かるのだが、いきなり短剣を取り出すのはどうなのだろうか?

 もしソフィアが言っていた例え話の通り、ポリティスが卑怯な手を目論んでいたとしても、流石に人の目があるギルドで事を及ぶことはない。なら会話で――そう感じるのは、法治国家で色々なものに守られて生きてきた温い考え方なのか? と、クラミは思う。

 

 クラミは昨日の事を思い出しながらソフィアの背中を見つめる。 

 

 お互いに生まれたままの姿で、肌の温もりを感じた――ではなく、早朝のギルドで凸凹コンビの冒険者と揉めたときも、短剣を取り出していた。

 やはり、過剰防衛ではないのでないか? 

 それとも、過剰防衛にならざるお得ない事情でもあるのか?

 ギルドマスターと仲が悪い事とも関係しているのか?

 などと悶々と為ていると、不意にソフィアが振りかえる。


「さっきから、何を唸っているの?」

「え……っと」


 人のプライベートな事を聞いて良いのか悩むクラミ。

 ただでさえ機嫌が悪いのに、これで地雷でも踏んだとしたら、今後の生活に支障が出そうだ。主に、寝床の関係で。


「何でもないです」


 最も、寝床よりもソフィとの関係にヒビが入る方が怖い。

 怖いし、自分の本当の性別、男である事を隠したまま聞くのはフェアではない。

 そう思えば、つい聞きたい事を濁してしまう。

 

 まだまだ子供のクラミ――元い、青さの抜けない善十郎には、難しい話しである。

 そんなクラミに、ソフィアは首を傾げながら言う。


「ほら、酒場に着いたけど……大丈夫?」

「大丈夫です!」


 悶々とした悩みを元気な声と共に吐き出し、クラミはとりあえずギルドで受けた依頼に意識を切り替える。

 

「…………?」


 意識を切り替えて、建物をよく見ると、どこかでみた覚えがあった。

 しかし、思い出せない。建物の周りをよく見ると、同じ建物が並んでいる。そのため既視感(デジャビュ)を覚えたのであろう。と、結論を出し、ソフィアと一緒にお店に入る。


 店内を見渡すクラミは首を傾げた。店の中は四人掛けのテーブルが六卓、L字型のカウンターの前に椅子が五脚。総座席数が二十九席もある。

 やはりどこかで見覚えがある既視感と、嫌な思い出が込み上げてくる感覚。

 お店の入り口で佇むクラミに、ソフィアが心配そうに話し掛けると同時に、店の奥から声が聞こえてくる。 


「申し訳御座いません。ただいま準備中でし……っげ!」

「あ!」


 白のシャツに黒のベストを着た老紳士が、潰れた蛙のような声で唸っていた。



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