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クラミが魔力測定してから一週間、特に事件も無く平和に生活していた。
ソフィアと一緒の時は街の近くでゴブリンを狩り、街で雑用をする時はアルと一緒に働き、充実した日々を過ごし、お金も銀貨九枚、銅貨四十枚と増やしている。
そんなクラミさんには一つ悩みがあった。
それは――
「せいはぁぁぁ!」
ある日、クラミは南門から一人で抜け出しゴブリンを狩っていた。
ソフィアから一人では絶対に街から出るなと言われてるが、どうしても確かめたい事がある。
それは、自分の力の事だ。単純に今現在の全力が知りたかったのだ。
そのために目の前に居るゴブリンの群れの一体に殴り付けたのだが――
「あー……また新しい服を買わないとダメか」
クラミは力一杯目の前のゴブリンに殴り付けると、頭が拉げ、その血肉で服を汚していく。
その異様な光景を見た残りのゴブリンが一斉に逃げ出し、クラミは頭の無いゴブリンから棍棒を奪うと走り出す。
速い。腕力だけじゃ無く、脚力も上がっており、逃げ惑うゴブリンの肩に棍棒を振り下ろした。
ここでもあり得ない事が起る。棍棒と言う鈍器で殴った筈なのに、ゴブリンの肩から腰へと切り裂かれ絶命した
クラミは全てのモンスターを狩ると、自分の手を見つめながら実感する。少年の神様が与えた加護の力を。
自分の容姿は相変わらず細い手足に華奢な体付き。
しかし、その力は化け物以上。自分自身の力に気持ち悪さを覚え、誰にも言えずに悶々としていた。
どうしてこうなった?
心当たりはある。
それは……筋トレだ。
魔力がゼロと知ったその日から、あの恥ずかしさを忘れる為に筋トレを行なっていた。朝起きて筋トレ。ゴブリンを狩り、筋トレ。雑用の後も、もちろん筋トレ。
肉体を苛めることにより、余計な事を考えない様にしていた。それはエスカレートし、城の庭園にある大きな岩を、使うまでに。
その結果がゴブリンの惨殺死体だ。
クラミはなんとも言えない表情で街へと帰っていた。