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4-3

「すげぇぇぇぇ! お姉ちゃんすげぇぇ!」


 食堂で黒色のパン、スープ、肉を一切れ。全三品が出され、それを食べてるクラミに尊敬の眼差しと、賞賛の声が上がり、クラミが怪訝そうにソフィアを見ると頬を赤らめて聞いてくる。


「クラミ、そのパン……固くないの?」


 クラミは不思議そうに黒パンを小さな口で囓り、引き千切りながら答える。


「しっかりとした麦の風味と旨み。それに酸味と歯応えがあって美味しいですね!」


 その姿を真似すれば前歯を押えたり、泣き出す子供達。アルが注意をして固いパンをスープに浸し、ふやけさせて食べる。

 このパンが固いのは、二週間前にまとめた焼かれた物の最後の残りだからだ。パンにある酸味のおかげで長期の保存ができるのだが、しかし、最後になってくるとパンが固くなりナイフですら切りづらくなりる。

 それを普通に食べるクラミを見て子供達は騒いでいたのだ。まるで動物園の珍獣で見ているかのように。


 

 お昼ご飯を食べ終わるとアルは午後の仕事へと向かい、クラミとソフィアも午後の仕事をするべく、子供達と中年シスターに挨拶をする。


「今日はお風呂と、お昼ご飯ありがとうございました」


 クラミが中年シスターに頭を下げる。少し離れた場所でソフィアが子供達と戯れていた。


「気にしなくて良いのよ。内のアルが随分お世話になったんだし」


 中年シスターは左手を口に当て、右手を顔の近くに持ち上げ手首のスナップを効かせて二度振る。クラミはそれを見て、近所のおばちゃんを思い出す。時代は違えど、国を違えど、世界すら違うのにおばちゃんの仕草は変らない。そこにロマンを感じずにソフィアを見れば、「アル姉より胸がない~」「ぺたんこ……ぺたんこぉぉぉ!!」と、子供が騒いでいた。

 クラミは見なかったことにして、おばちゃんと話す。


「あ、それとコレを貰ってください」


 腰に結んである袋から銅貨を十枚取り出しおばちゃんに手渡しつつ、横を見れば、ソフィアが二人の男子の顔を撫でていた。


「……有り難く子供達の為に使わせて貰います。御寄付、有り難う御座います」


 おばちゃんが口調と表情を奇麗に整え、深々と頭を下げてくる。ソフィアは鬼の形相で二人の子供の顔面を片手で持ち上げ、高い高いしていた。

 クラミはおばちゃんに頭を上げてくださいと言い、ソフィアを止めに走り出す。



「あんなに寄付して良かったの?」


 南門へと向って歩いている最中にソフィアに質問される。


「お風呂とご飯のお礼ですからね。そんなことよりも……ソフィアこそ良かったのですか? 子供達をあんなにして」 


 クラミが止めに入って解放された子供二人は、顔を押えて「「おっぱい大きいお姉ちゃんゴメンナサイ。おっぱい大きいお姉ちゃんゴメンナサイ。」」と、地面に蹲りながら震えていた。クラミの言葉に顔を背けるソフィアの胸元をマジマジと眺めていると、


「どかしたのクラミ……文句でもあるのかな?」


 その視線に気づいたソフィアがジト目睨んでいた。


「…………」


 今度はクラミが、なにも言わずに顔を背ける。そんなやり取りをしていると門に着き、午前中にゴブリンと遭遇した場所目指して歩く。


「ゴブリンまた出ますかね?」

「巻き餌が有るから大丈夫だよ」

 

 その答えに疑問を持つが、直ぐに意味を理解した。


「アイツらって、共食いもするんですか?」


 クラミはげんなりした表情でソフィアを見る。


「私もよく解らないけど……生きている時には無いよ。死んだら同族と見なさずに、餌にしてる感じかな」


 クラミとソフィアが遠くを眺めながら、小声で話す。その先には、先ほどクラミとソフィアが倒したゴブリンに群がり、同族のゴブリンが五体いた。

 

「さてと……どうしようかな」

「私が一人で倒してきますか?」

「じゃ~私がバックアップと周辺警戒するから、クラミは好きにして良いよ。け・ど、油断しないようにね?」


 クラミは頷き考える。今まで奇襲されてばかりだったが、今はその逆。どう攻めようか悩んでいた。


「どうかした?」

「あのソフィア。奇襲するときのコツってありますか? なにぶん初めてな物で……」


 ゴブリンを睨み付けながら、ソフィアも悩みながら考える。自分がする時はただ速く動き、通り過ぎる際にナイフで切り裂く。これは自分が速いから出来ることなので、クラミが出来るかと言われると――疑問が残る。

 

「う~とね。後ろから殴れば良いと思うよ!」

「…………そうだよね」


 クラミは目を瞑り呼吸を整え、頭の中では可憐な剣捌きでゴブリンを切り伏せる。 イメージトレーニングは完璧だ! もっとも、拳や棍棒といった鈍器しか使えないクラミに必要なことかと聞かれると、疑問が残る。


「それじゃ、いきます」

「怪我しないように頑張ってね!」


 クラミは走り出した! ゴブリン目掛けて全力で走る。奇襲すると言いつつ、開けた場所を駆け抜けていく。


「奇襲するんじゃないんだ……?」


 よく解らない行動をするクラミの後ろ姿を見ながらソフィアも走り出す。



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