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3-4 ②

「どこまで話したっけ? 王様とブレ家当主との愛――」

「いえ、それはもういいです。街道以外の話しでお願いします」


 両手で耳を押えて、頭を振るクラミ。それにつられてポニーテールも犬の尻尾の様に靡く。ソフィアは内心でいい脅迫(いたずら)材料が出来たとほの暗い感情が芽生え、口角をつり上げ街の説明を続ける。


「う~ん、東門は街道が有名だから一番活気があって、大きな広場があるんだよ。東のメインストリート沿いにあるお店は、殆どがほかの街や王都からの品を扱ってるよ。昨日買った下着とかがそれだね」


 そう言いながら、顔を赤めるソフィア。昨日自分がクラミに対して行ったセクハラ行為を思い出し、悶々としていた。それに気付かないクラミは、下着の高さに納得していた。

 

「昨日買った服もですか? 下着に比べて安かったんですが」

「あの店が取り扱っている商品は全部この街の品だね。周りが高い商品ばかりだから普通の値段でも安く感じるんだよ」


 因みに、西のお店は近くの森のモンスターから剥ぎ取った素材を生かした装備品が主な商品になる。


「街の説明はこんな感じかな? あ、あと各門の近くには詰め所が在るんだよ」

「詰め所? 第二城壁で暮らしているのではないんですか?」

「第二城壁の騎士達は街の治安維持のためで、市壁の詰め所は、街の外で活動する人を守るのが仕事だよ。畑仕事とか畜産関係とかね」


 東の除く各門の詰め所には騎士が50人で、東は畑が多いので騎士が100人。月に一回、第二城壁の騎士と交換する。

 この街の騎士の数は総勢で500人弱。一見少なく感じるが、有事の際は街から成人男性を徴兵して各騎士達が小隊長を勤め、総勢一万弱の大部隊になる。


 そんな事を聞きながら歩けば南門が見えてくる。ソフィアの説明があった通りにこの辺りは臭い。

 クラミが鼻をつまみながら門を抜けると、近くに市壁と同じ高さの壁で覆われた建物が在った。


「ソフィアあれは?」

「あれが畜産エリアあの中に豚が一番多く飼われていて、次に鶏、牛が飼われているんだよ」


 畜産の建物に入るのかと思えば、真逆に歩いて行くソフィア。街道を逸れ、草原を歩くと木が見えてくる。遠目には鎧を着た人も見える。ここで何をするのか考えるクラミ。


「クラミあそこで飼料を採るんだよ! 草とかを刈ったり、木下に落ちてる木の実を集めるよ」

「はい。この林って飼料用に育てているんですか?」

「そうみたいだね~私は専門じゃないから、わからないけど」


 ソフィアと話しながら林に近づくと近くにいた男に話しかけるソフィア。この人が依頼主らしい。

 依頼主が言うには騎士が先に安全確認をしたので安心して採取が出来るらしい。クラミは近くの篭を背負い、木の実を集める。


「ソフィア~これとかは栽培しないの?」

「どれどれ? あ~ツル豆か食べたこと無いけど……食べられるの?」

「私がいたところでは、これに似たものを塩茹でして食べてましたね」


 クラミは手に取った緑色の莢に入った豆を眺める。見た目は枝豆だがここは異世界、食べられるか判らず取敢えずポケットにしまう。

 その後は大きな篭がいっぱいになるまで木の実や、ソフィアが指示した草を刈り取っていく。


「うぁ~腰が痛い」

「ふふふ、頑張れ頑張れ」


 作業を開始して3時間だろうか、中腰で行動するので腰への負担に泣き言を漏らす。腰を摩り、ソフィアと話しながら採取を続けると、街の方角からお昼を知らせる重低音の鐘が聞こえてくると、ソフィアが立ち上がり笑顔を見せる。


「さてと仕事終了~」

「うぁぁ~疲れた。午後もこの仕事ですか?」


 げんなりした顔で聞いてくるクラミ。それに対してソフィアは首を振り否定する。


「この仕事はお昼までだからね。それよりも仕事終了のサインを貰ってくるよー」


 ソフィアと一緒に林を出るとクラミと同じように篭を背負った人が街を目指して歩いて行く。畜産の建物の前には20人ほどの行列が出来、先ほどソフィアが話しかけた男がサインをしていた。

 クラミもその列に並びサインを貰い、ソフィアと一緒に街の中に入っていく。


「ソフィア、これどうするの」


 サインを貰った紙を振りながらソフィアを見る


「ギルドに持って行ってお金に換金するんだよ」

「サインだったら自分で勝手に書いて提出する人はいないの?」

「ギルドと依頼者しかしらない事がこの紙に書かれているんだよ。この紙を提出して違うことが書いていたら取り調べを受けるんだよ」


 納得した表情で肯くクラミ。それと同時にお腹がなる。


「そういえば、お昼ご飯をごちそうする約束だったね」

「いえいえ、あれ冗談ですから! それにお金も入りますから」

「ここは、先輩に華を持たせなさい」


 ソフィアに押し切られ、南門から離れ西へと向かう。西の第二城壁の近くに行きつけのお店があるらしく、期待しながら歩く。

 談笑しながら歩いているとソフィアが急に立ち止まり、建物と建物の間に入っていく。訝しげに思いながら後をついて行くと、ブロンド髪の少女が3人の男に絡まれていた。


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