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3-2

 リトスを見送り、ただ待ちぼうけするのも時間の無駄だと思い筋トレをするクラミ。

 しかし、庭園なんかにダンベルなど有るはずも無く、そもそもこの異世界に存在するかも疑問が残る。クラミは辺りを見渡し、岩で囲まれた花壇を見つる。その岩の大きさは、大体15㎝っといったところか、重さは、10㎏有るか無いか。

 その岩を両手で持ち、息を吐きながら限界まで持ち上げ、息を吸い込みながらゆっくり後頭部の方に深く下ろしていく。これにより体の後ろの筋肉、腕なら上腕三頭筋、肩の僧帽筋に三角筋、背中の広背筋に負荷を与える。


「ふしゅぅぅぅぅ……わんもせっ!」

「あの……クラミ様何をなされているのでしょうか?」


 クラミが、3セット目を始めようとすると、メイドが両手にクラミの為に用意した上着とタオルを持ち、奇異の目で見つめていた。少し物足りなく感じながらも、筋トレを終えタオルで汗を拭いていく。


「クラミ様、リトス様がお風呂でお待ちですが……」

「あ、大丈夫です! 水でも浴びれば平気なので」


 お風呂のお誘いを華麗に断り、上着を羽織り部屋まで案内して貰う。ベッドの上には昨日買った茶色の衣服に、その隣には、下着の上下が並べられていた。それを見て悩む。下着を着けるべきなのか――否か。

 暫くすると、メイドが水の入ったタライを持ってきてくれ、お礼を言うと、体を拭くのを手伝うと、言ってくるが、やんわりと断る。


「クラミ様、汚れて服はタライの中に入れて下さい。私達で洗濯しますので」

 

 自分で洗うと言うが、「私達の仕事をこれ以上奪わないで下さい」と、拒否され、何も言い返せないクラミ。

 一礼して、メイドが外に出たので部屋の中で全裸になり、なるべく体を見ないように、てきぱきと拭いていく。体を拭き終わり、下着を睨み付ける。とりあえず、ショーツを履く。ブリーフだと思えば何の問題も無い、問題はブラジャーだろう――。




 部屋から出るとメイド待っていてくれた。食堂にまで案内され、中に入ると、まだリトスが来ておらず、椅子に腰掛け待つことに。

 胸を締め付けるような、なんとも言えない違和感に苛まれているとリトスがやって来る。怒っている様子は無いが、とりあえず今朝のことを謝ることに。


「あのリトス様「クラミ、一緒にお風呂に入りましょう」ごめんなさい」

「そんなに嫌なのかしら?」

「え!? 違います! 今朝の事を謝ろうと思いまして……」

「ああ……クラミ、女の子としての恥じらいを持った方が良いわね。」


 話し込んでいると、料理が配膳される。運動した後だからなのかタンパク質を取るための、ハムと卵が昨日と同じだが、スープだけが違っていた。

 ハムを囓りパンのちぎって食べてると、リトスが口を開く。


「ところで……今夜は一緒にお風呂に入りましょ……それとも嫌?」

「え? 嫌じゃ……無いです」

「フフ、楽しみね」

(朝から、お風呂に入る約束とか…………恥じらいを持ちましょリトス様)


 心の内で、リトスにツッコミを入れつつも、夜の事を考えると鼓動が早くなり、食事の味がしなくなる。気がつけば食べ終えており、執事がお茶を準備しながら話しかける。


「クラミ様、今日は私がギルドまでご一緒いたします。準備ができ次第いつでも出発できます」

「わかりました。今日はヨロシクお願いいたします」

「…………別に無理しなくても良いんだけどね」


 リトスの呟きは聞こえず、執事にお礼を言いつつ、お茶を飲み、一礼をしてから食堂を出るクラミ。メイドに案内して貰いながら、部屋に行き、特に準備することも無く、昨日散財して、すっかり軽くなった銀貨の入った袋をとり、玄関へと向かう。


「準備はよろしいでしょうかクラミ様」


 玄関にはすでに執事が待っており、一緒に外に出ると、馬車が停留していた。歩きだと思っていたら、嬉しい誤算だ。執事が手を差しだし、それに戸惑いつつ、手を借り馬車の中に入る。「出発いたします」と、一言声を掛けられ動き出す。

 窓を開け顔を覗かせると、丁度門を抜けるところで、門番達が元気よく挨拶してくる。


「「「行ってらっしゃいませ」」」

「ありがとうございますぅぅぅ!!」


 一人だけ、変わった挨拶――お礼を言う奴が居たが、ほかの門番にボコボコされていた。



 門を抜けると二騎の兵が先頭を歩き、その後ろを馬車が歩く。

 ゆっくりと歩を進める馬車の窓から街の風景を眺めると、いつの間にか冒険者ギルドに到着していた。

 執事の手を借り馬車を降りると、周囲の視線がクラミを見つめているのがわかる。それを気にとめること無く、執事が声を掛け、ギルドの中に入っていく。

 騎士の一人を先頭に、執事、クラミ、騎士の順ではいる。騎士二人の護衛は、リトスの過剰な愛だ。彼女は、本当にクラミを心配していた。

 そんな愛にギルドが静まりかえり、好奇の視線に、腫れ物を見る視線。歓迎をされている感じは無い。

 その静寂を打ち破る、野太い男の罵声が響く。


「そ、そんな理由があるかぁぁ! 街の一大事だったかもしれないんだぞ!!」


 その声に食いつくよに反論する、聞き覚えがある声。


「私だって、貴族様に水をぶっかけて一大事だったんだよ! それに警鐘は2回だろ! 騎士の仕事だろ!」

「それでも、何時一大事になるか判らないだろが!」

「そうなったら、すぐに駆けつけるに決まっているだろ、ハゲ」


 こめかみに青筋をたて、ぷるぷると震えだす大柄な中年の男。


「へ、平民だったんだろがぁ! そんなのほっとけ!」

「うっさいハゲ! ごめんなさいハゲ! 次からは気をつけます……ハーゲ!!」


 そんな挑発的な語尾に、大柄な中年の男は睨み付ける。怒り狂った表情で。


「お、お前は…………私は、禿げておらんだろうがぁぁ!!」


 その男が言う通り、髪はある。が、しかし後頭部だけにしかなく、一言で言えば……落ち武者。いっそのことスキンヘッドのにすれば風格が出て、味のある男になるのだが、今の髪型は、灰汁が強すぎる。

 そんな偉そうな落ち武者と言い争っている相手に、クラミは見覚えがある。その子と目が合うと、


「あれ、クラミ?」


 ソフィア・オリキオが驚いた表情になり、次第に笑顔をみせる。そして、落ち武者を無視してこちらに駆け寄ってくる。


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