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2-4

  

「お荷物、お部屋に置いてきます。お食事の準備もできています」


 城に着くなり荷物を奪われ、食堂に案内されるクラミ。部屋に入るとリトスが朝と同じ席に座っており、後ろには執事が控えていた。

 物々しい雰囲気だったが、クラミが顔を見せると空気が一変した。


「お帰りなさいクラミ」

「ただいま、リトス様」

「ディナーの前に……少し話してもいいかしら?」


 リトスの言うことに返事をし、席に座る。今から何を話すのか考えるクラミ。料理の準備ができてることは、今まで食べずに待っていた……クラミの母ちゃんは、よくそれで雷を落としていた。

 つばを飲み込み身構えるクラミに、リトスは優しく語りかける。


「まずは、今朝のことを謝るわ、我が儘な態度をっとて、ごめんなさい」

「へ?」

「それと街の外での活躍、ブレ家当主として、お礼を言わせて貰います。本当にありがとうございます。」


 リトスの言葉に緊張が解け、ゴブリンが出た状況を説明する。


「悪臭…………ゴブリンから臭い……護衛の言うとおりね」

「どうかしたんですか?」

「いえ、クラミの護衛していた者が、臭いでゴブリンを見つけと言うから」

「え? しませんか悪臭――」


 話を遮るように、自分のお腹が鳴り顔を赤らめていると、リトスが微笑み、食事を用意させ、この話しは打ち切りとなる。その後は、街での出来事を話すクラミ。


「そう言えば明日は、冒険者登録ですね」

「…………」


 今まで笑顔だったリトスの表情が凍り付き、そんな空気を断ち切るように、執事が話しかける。


「お食事をお持ちいたしました。それとクラミ様」

「はい? 何でしょうか」

「登録には銀貨1枚いりますので、明日は、お忘れ無いようにお願いいたします」


 執事の言葉に悩むクラミ。今の残金、銀貨1枚に銅貨1枚。登録すれば、ほぼ無一文。そんな現実を忘れるように、出された料理をたべる。色々ごたごたして、食べれなかった昼食の分まで食べる。けして、やけ食いでは無い。




 食事の後、リトスから風呂に誘われるが、丁重にお断りをした。汗ふき事件や、試着事件がある。風呂なんて一緒に入ったら…………悶々とした気持ちでメイドに客間に案内されていた。

 部屋に着くと、盥に湯が準備されていて、それを使い自分で体を拭いていく。メイドが手伝おうとするが、もちろんお断りする。

 拭き終わると、メイドが盥を持ち退出する。その際、手伝おうとするが断られた。 

 特にやることも無く、ベッドに腰掛け、部屋の中を観察し、近くの机に置かれた荷物をみつける。荷物は赤いリボンで縛られていて、それをほどき、無造作に下着を取り、ベッドに仰向けで倒れ、両手で掲げマジマジと眺める。


(明日からコレを履くのか? すっけすけやで! コレをリトス様や、ソフィアさんが履くと……)


 ソフィアが押しつけた下着は、絹で作られ肌触りが良く、黒のレースで大事な部分以外は、すっけすけだった。生唾をのみ、妄想していると――


「それが今日買ってきた下着?」

「うひゃ! リトス様!!」


 リトスの声に吃驚し、飛び跳ねるように起き上がると、ベッドに腰を掛けクラミの隣に座っていた。


「その反応傷つくわ」

「ごめんなさい……そんなつもりじゃ無くて」

「冗談よ。それより随分と過激な下着ね……それもこんなに沢山。せっかくだから、ファッションショーでしてみる?」

「し、しませんよ! それにこの下着選んだのは、私じゃありませんし……」

「むぅーお昼も駄目、お風呂も駄目、ファッションショーもだめ……」


 リトスが可愛くむくれてしまい、慌てるクラミ。初めて見せる彼女の態度に、どうすれば良いのか考え、


「服でも良いですか?」

「ええ。着替えるの手伝いましょうか?」

「背中のボタンをお願いします、それ以外は大丈夫です!」


 まるで、演技でもしていたかのように、笑顔になるリトス。白いワンピースのボタンを外し、クラミに背を見せ着替え終わるのを楽しみに待つ。


「リトス様着替えました。」


 クラミの言葉に、笑顔を見せ――


「クラミ! カワイイ…………くないわね、その格好」


 真顔に戻るリトス。クラミの格好は、街娘がよく着る半袖に、ロングスカート。人気の無い茶色ときた。がっかりしつつも、近くのベルを取り鳴らすと、メイドがネグリジェを持ってくる。

 

「これに着替えましょうかクラミ?」

「いえ、一人でできるたい。」


 クラミは背を向け着替え始め、リトスはその様子を眺め、終わると同時にベッドに押し倒す。


「り、リトス様!?」

「今度は、一緒に服を買いに行きましょうね」

「はい。楽しみにしてます」

「おやみなさいクラミ」

「おやすみなさいリトス様」


 リトスは、手を伸ばし近くの魔道具を弄ると部屋の明かりが、オレンジ色の間接照明に切り替わる。その薄暗い中を、リトスの手がクラミのお腹に乗り、そこからゆっくりと這いながら腕を撫で、手を見つけると、指を絡ませながら握り、もう片方の空いてる手で二人の手を覆い被せるように握ってくる。


「少しだけ……こうしてても……良いかしら」

 

 どこか怯えるような、か弱い女の子の声だった。

 クラミはそれに返事をせず、優しく抱きしめるように、リトスの頭を撫でる。


「ありがと」


 一言つぶやき、小さな寝息が聞こえてくる。


「おやすみ、リトス」


 クラミも誘われるように寝息を立てていく。


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