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2-4

書き直すかも?

「ふぅ……緊張するな~」


 ため息をつくクラミは椅子の背もたれに体を預けて、天井を仰ぐ。

 彼女は執事のドリフォロスに客間に案内された後、明日行なわれる顕彰式について軽く説明された。


『とくにクラミ様が何かするわけではございません。ただ、名前を呼ばれたらリトス様の元へ行き、剣を受け取り、一礼して元の場所へ戻るだけです』


 さらっと言いのけた執事だが、衆人環視に晒されながらというのがクラミにとって問題だ。

 リハーサルもなく、ぶっつけ本番でやれといわれても――ため息しか出ない。

 そんな彼女に苦笑を浮かべたソフィアがベッドに腰掛けて言う。


「大丈夫だよ。うん、大丈夫」

「そうですかね……はぁ」 


 何の説得力もない気休めの言葉だが、取敢えず肯くクラミ。頭をがしがしと掻きむしり、二度目のため息をついて、明日のことを諦める。


「もう、仕事はいいのですか?」

「うん。ドリフォロスさんが休んでいいって」

「そうですか――」


 現実逃避のため、目の前のソフィアと話しに花を咲かせようとするクラミ。しかし、彼女の言葉を遮って客間のドアが開かれた。

 不意の出来事に二人の視線は自然と音の鳴る方へと振り向く。

 

「こんばんは」


 部屋に入ってきたのがリトスだと確認すると同時に、ソフィアはベッドから飛び跳ねるように立つ。

 それに対してクラミは肩を跳ねて驚くが、直ぐさま笑顔で迎え入れる。


「お疲れ様です、リトス様」


 クラミから労いの言葉に笑顔がこぼれそうになるリトス。けれど、ベッドの側に居るソフィアが深々と頭を下げて、クラミの後ろに控えるように立つ姿を見て思わず言葉をこぼす。


「お邪魔だった……かしら?」


 街の領主、女伯爵といった威厳も雰囲気もなく、ただの少女。そんな顔で言われれば、クラミは慌てて首を振りながら言う。


「そんな事ないです! ね、ソフィア!」

「は、はい! 大歓迎です!」


 いきなり話しを振られたソフィアは大きく目を見開いて、何度も肯く。時折、『私に話しを振らないで』と、言いたげな視線をクラミに向けながら。


「そう……それなら、よかった」

 

 クラミの対面の椅子を引き、腰掛けるリトス。

 言葉では歓迎されているが、自分が入ってきたことでギクシャクした空気になったことは分かる。分かるが、出て行く気はサラサラない。


「ソフィア、お茶をお願いしてもいいかしら?」

「は、はい。畏まりました」

「三人分ね。私とクラミと……貴女の分」


 深々と頭を下げてソフィアは部屋を出ていった。

 その姿を見ながリトスは再度、自己嫌悪に陥る。

 体良く部屋から追いだしたことに、そこまでして自分は何がしたいのか……。

 リトスは小さく息を吸い込み、クラミをマジマジと見つめる。


「どうかしたんですか?」


 無言で見つめてくるリトスに、クラミは鼓動を高鳴らせながらたじろぐ。

 吸い込まれそうな青い瞳には、しっかりと自分の姿が映し出されており、どうしていいのか分からないでいると、リトスの手が伸びてきた。


「……ねぇ」

「はい……」


 リトスが問いかけてきたので、返事をするが、彼女から言葉は返ってこない。

 無言で頬に指を添えて、親指で唇をなぞる。

 女性にしては硬いゴツゴツとした指。けれど、不快で無い。 


「わたし……」

「…………」


 唇をなぞり終えた親指が名残惜しそうに口元から離れると、リトスは立ち上がりクラミの首元に腕を絡ませて抱きついてくる。

 急な出来事にバランスを崩して転げ落ちる二人。

 クラミは床にお尻を打ち付けたが、ベッドが近くにあり背中は無事だ。


「あの、リトス様?」


 床に座っている状態でもリトスは抱きついたままだ。

 痛みよりも戸惑いの方が強く、クラミは空いている両手を床に打ち付けたお尻をさるのではなく、リトスの両肩に置く。

 彼女の高まる鼓動を全身で感じるリトスは、少しだけ体を離す。お互いの顔と顔を見つめ合える距離まで。


「リトス様?」


 潤んだ瞳で見つめてくるリトス。彼女は瞳をそっと閉じて、顔を近付けてくる。

 

 ――が、肩に置かれた両手がそれを拒絶する。


 別にリトスが嫌いだとか、そういった理由ではなく、済し崩し的な――雰囲気に流されただけの行為を止めるべく、クラミはリトスの肩を押さえた。

 そんな気持ちは彼女には分からない。

 結果でいえば、拒絶。自分の思いは断れたのだ。


「ごめんなさい」


 顔を俯かせて、ぼそりと言葉を洩らすリトス。

 彼女はゆっくりと立ち上がり、クラミに顔を見せないように足早に部屋を後にする。

 そんな彼女を追おうとするが、掛けるべき言葉が思い浮かばずに躊躇していると、ソフィアが帰ってきた。


「……ええっと。何しているのクラミ?」

 

 倒れた椅子に、地べたに座るクラミを見て首を傾げるソフィア。彼女に今さっき起きた出来事を言えないクラミは、愛想笑いを浮かべるだけであった。


リトス・ザ・情緒不安定。


リトスとソフィアの仲が難しいです。

最初から二人が仲の良い設定なら楽だったのですが、それだと二章が成り立たず。

今の状態だと、リトスがクラミの事を好きだとソフィアが知ると、相手は貴族だから賢い選択を選んで身を引く事に。

二人をどうにかして友人レベルにしないと……ハーレムって難しいですわ。

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