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1-4

「二人して何の話をしていたんですか?」

「アルがここに来た頃の話をしていたのよ。昔は泣き虫だったのにね」


 おばちゃんシスターはクラミとの話しをはぐらかすつもりなのか、アルモニアを茶化すように口を開く。


「昔の話しじゃないですか! 今は違いますよ!」


 普段はおっとりとした彼女が見せる慌てた姿に、クラミは思わず苦笑を浮かべ、それに気付いたアルモニアは頬を真っ赤に染めて否定する。

 ワイワイと賑わっている中、イリニ一人だけ浮かない顔で三人のやり取りを見ていた。


「お姉ちゃん、どうかしたの?」


 様子のおかしい姉に気付いたアルモニアが声を掛けるが、イリニは腰まで届く金色のツインテールを左右に揺らして言う。


「アルは泣き虫だったんだね?」

「お姉ちゃんまで!」


 姉にまで茶化されたと思ったアルモニアは頬を膨らませ、明後日の方向に顔をそむけ拗ねる。

 

「なんか今日のアルさんは子供ぽいですね」


 精神年齢が幼くなっている事を指摘すると、おばちゃんシスターは同意するように笑い出し、アルモニアは益々機嫌を損ねていく。

 クラミは(まずい、やりすぎたかな?)と、内心で焦りつつ、彼女の機嫌を直す方法を求めてイリニに視線を向ける。


「泣き虫だったんだ……」


 おばちゃんがシスターが話していた昔のアルモニアの事を噛み締める様に、小さな声で呟く。騒いでいる二人には聞こえていない様だが、たまたま意識を向けていたクラミにはハッキリと聞こえていた。

 

「どうかしたんですか?」


 悔しそうな――いや、悲しそう――何とも言えない表情のイリニを見ると、口が勝手に開く。

 

「……なんでもないの。うん、なんでもないの」


 頭を横に振り、顔をそむけるイリニ。そんな彼女をほっとけずに手を伸ばし、肩に触れそうになると同時に、手を叩く音が食堂に響く。

 

「さてと、そろそろ仕事をするよ」


 そう言いながらおばちゃんシスターが椅子から立ち上がり、出口に向って歩き出すと、アルモニアとイリニもつられて立ち上がり移動を開始する。

 完全に気を逸らされたクラミも席から離れ、おばちゃんシスターの後を追う。

 

 アルモニアと一緒に並んで歩くとイリニの身長の低さが目立つ。髪の色や顔のパーツは結構似ているので二人が姉妹だとみて直ぐ分るが、アルモニアの肩程までしかない身長のイリニはどうしても姉には見えない。などと思いながら見ているとアルモニアが楽しそうな表情でイリニに話し掛ける。

 後ろから見ている限りではアルモニアが一方的に喋り、イリニはただ黙って話しを聞いているだけだ。



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