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1-3 ③

「今から十年以上前の話だね、夫がまだ冒険者として生きていた頃だから。

 当時の夫は冒険者としてエライオンの街と鉱山都市オリキオを行ったり来たりして稼いでたのよ」


 おばちゃんシスターはお茶を手に取り一口啜ると、ため息を漏らしながらカップの中を覗く。

 波紋が幾重にも揺れ重なり、歪んだ自分の顔をみて「年も取るはずだよ」と、自分に言い聞かせ、話の続きをする。


「鉱山都市オリキオから帰る途中の街道で運悪くオーク五匹の群と遭遇したみたいでね、真面に戦って勝てないと判断したらしく、森の中に逃げたって言ったわね」

「森にですか!? かえって危険じゃ……」


 ソフィアと一緒に薬草採取のため森に入る際、さんざんと森の危険性を教えられたクラミは、おばちゃんの夫が取った行動に首を傾げる。

 当時のことを事を思い出すおばちゃんシスターは、苦笑いを浮かべて言う。


「夫曰く、『死中に活あり』だそうよ」

「そんなもんですか?」


 両腕を組んで首を傾げるクラミ。


「話が逸れたわね。それで森の中に逃げ込んだ夫は、最初は浅い部分で様子を見ていたけど、オークが諦めずに探し回っているのを知ると、慌てて奥へと逃げたそうなの。

 初めて入った森で目印などを残さなかっために、夫は見事に遭難したみたいでね」


「それは、それは。でも、仕方ないですよね。私でも同じ事になっていたと思います」


 恥ずかしそうに夫の話をするおばちゃんシスターに、クラミはすかさずフォローを入れる。

 温くなったお茶を飲み干し、自分のカップにお茶のお替わりを淹れながら口を開く。


「クラミちゃんはしっかりしていると思うけど……まぁ、ウチの旦那はしょうもないから。

 あら、また話が逸れたわね。ええとね、遭難した主人が森で彷徨っていると、不思議な女の子二人組にあったそうなの」

「森の中でですか?」

「そう、森の中で」

「それが……」

「アルモニアね」


 先ほども言った通り森の中は危険だ。そんな中で少女が二人でいるなんてあり得ない。と、言いたげに顔を歪めるクラミ。

 おばちゃんシスターもクラミが言わんとしていることは分かる。

 最初は主人の言っている事を信じ切れずに、どこからか誘拐してきたのかと問い詰めたほどだから。


「まぁ、とりあえずアルさんが森にいたとして、もう一人がイリニなんですか?」


 その問いにおばちゃんシスター首を横に振る。


「それが分らないのよ。主人は森で二人組の子供を見つけると、『オークが迫ってくるから逃げろ』と言ったそうなの。

 でも、子供の一人は『大丈夫。モンスターは私達を襲うことができないって、皆がいってるの。おじさんもこの子の近くにいれば安全なの』って言い残して消えたそうよ。」

「幽霊ですか!?」

「どうなんだろうね、少し目線を逸らした隙に逃げられたらしいんだけど、残った子供を置いていくわけにも行かないので――」

「連れてきたと?」


 無言で肯くおばちゃんシスターを見てクラミは押し黙る。

 

「まぁ、その消えた子が言った通り、森の中だというのに一回もモンスターにで合わずにすんだってアルを紹介しながら言われたわね。

 身寄りもなさそうだし、そのまま家で預かっているんだよ」


 アルの意外な過去を聞き、クラミは「もしかして、アルさんも幽霊!?」などと妄想していると、子供達がドタドタと勢いよく玄関目掛けて走って行く。

 唐突な出来事にクラミの意識も玄関へと集まる。


「あれ、クラミさんじゃないですか! いらっしゃい」

「クラミ、いらっしゃいなの」


 丁度噂をしていた事物達が帰ってきた。


リトスがメインヒロインのはずが……。

会話文多めです

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