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「さて、町に戻るか」
シンさんの声で俺たちは立ち上がり、来た道を戻ろうと歩き始めた。
だが、ドレイクさんから渡された『ラーズグリーズ』が輝き、俺たちをまたあの空間へと連れていった。
「おかえり。アイテムは手に入れたようだね」
ドレイクさんは俺たちを見てすぐにそう判断した。まぁ必要なアイテムを手に入れたら戻ってくるように設定されていたのだろう。
「この『AnotherWorld』という魔法は、発動した本人さえその世界に縛り付けるという制約がある。つまり、ファルバウトを倒すにはプレイヤーとして武器を持つことが必要というわけだ」
そう言ってサラさんから剣を借りると、刀身に手をかざし始めた。ぼんやりと光を放つ剣が少し雰囲気が変わったような気がした。
「だが抜け道があってね。我ら精霊が直接攻撃することは出来ないが、プレイヤーの持つ武器に力を込めることで間接的に攻撃することが出来る。プレイヤーはファルバウトに攻撃することは出来るが、絶対的な存在である管理者の前にすぐ消されるだろう。だが私の加護を付加することで、一時的にシステムからの離脱、管理者の干渉を防ぎ精霊同士の力をぶつけ合うって寸法さ」
右手を掲げると、村で見た懐かしい槍が出てきた。初めて村に来た時にファングを貫いた槍だ。その槍はぐねぐねと曲がり、1度ボールのように姿を変えると光に包まれ、新しい姿を現した。
真っ白な刀身に金の紋章が描かれた大剣。鍔にはサファイヤのような青い宝石が埋め込まれ、すぐ横に出現した鞘も縁に金の装飾が施された純白の鞘だった。
「これは君に。持ち主に勝利を約束する聖剣だ。名を『ティルフィング』という」
シンさんが受け取ると、近づき耳打ちをしていた。ドレイクさんが離れた後、険しい顔をしていたシンさんが気になった。
「何でもない。まぁ使いこなせないって言われたからイラついたのかもな」
尋ねると、シンさんは軽く素振りをしながらそう教えてくれた。それなら仕方ない。もう少し誠意ある対応をお願いしたいもんだな。ところで俺の武器はまだかね?
「それで、ケイスケ。君の武器なんだが、宝玉と……最初に渡したあの杖の欠片を持っているね?」
そういえば金にもならないし別にインベントリの圧迫するわけでもないので入れたままだった。よく知っていたな、と思いながら2つを取り出してドレイクさんに手渡した。
両手に持ったそれを重ね合わせるように近づけていく。お互いが溶けるように混ざり合い、赤い炎へとゆっくりと姿を変えていく。1メートル程度にまで伸びた炎の中から出てきたのは確かに魔道師の持つ杖だった。
杖から零れている魔力はそれ自体に熱を持っているような気がした。先端に赤い宝玉を飾りつけた杖はゆらゆらと陽炎を作りながら空中に浮かんでいた。
「さぁ受け取ってくれ。全てを焼き尽くす魔杖『レーヴァテイン』だ」
手に持つと、その魔力に圧倒された。杖から流れ出す魔力が俺の体に染みこんでいく。体の芯から熱を帯びていき、魔力が体中で暴れている。やがてその嵐のような時間が収まると、杖はぴったりと手に吸い付いていた。
「……受け入れられたようだね。不完全な解放になったヒトばかりだったが、ケイスケなら大丈夫そうだ。その力の使いどころを間違えないようにするんだよ」
俺の手の中でじんわりと温かいレーヴァテインが、返事をするかのようにその先端にある宝玉を反射させる。意思を持っているような気がしたが、精霊たちが大元になっているとか言っていたし、その名残があるのかもしれない。まぁ深くは考えないでおこう。とりあえずは今の装備を変更しようと情報ウィンドウを見て、その性能に驚いてしまった。
「うわぁ……。マジすかこれ。半端ないですよ」
そう、レーヴァテインを装備することで得るものは『炎魔法+4』『無詠唱』『炎属性強化+3』『消費魔力増加』という恐ろしいスキルたちだった。デメリットもあるが、それが霞んでしまいそうになるメリットがある。さすがはユニークアイテムだ。極め付けに、ユニークスキル『ラグナロク』という聞いたことの無いスキルがあった。
「この、『ラグナロク』ってスキルどんな効果なんでしょう? 説明も無いしいざという時困りそうです」
「神々の時代が終わった後、世界を浄化したという炎を呼び出す。レーヴァテインは破壊と創造、その2つを司る神炎を封じているんだよ」
さらりとドレイクさんは答えてくれたが、かなりの驚きがあった。おぉう……。それってどんなオーバーキルですか。想像つかんぞ。神さまが本当にいたらしいし、もしかして個人としての火力は最高なんじゃないか?
「ちなみにそのスキルは1回きりだ。1度放たれた神の炎を再度封じることは、精霊でもない君たちヒトには不可能だからね」
むう残念。本番までお楽しみにってことか。……いやいや、そんな楽しみとかいう話じゃないな。もう遊びじゃなくなったんだし。これもあの魔法の影響なんだろうか。自分の性格を変えられたような気がしてるんだけど、それも気のせいなんだろうか。これは良い影響だったと言えるのかな?
「そうそう、ラーズグリーズを解放して同士討ちができないようにシステムを変更しておいた。この程度ならば感づかれることはないだろう。あくまでシステムに則ってファルバウトを倒すんだ。おそらく精霊として降臨するだろうが後は我々で対処する。これが最後の休息になると思う。ゆっくり休んでいてくれ」
ぼーっと考えていた俺にドレイクさんの声がかかった。そうか、最後なんだな。
あたりを見回してみると、今まで何も無かった殺風景な空間に、大きめのベッドが3つ置かれていた。
きちんと用意してくれていたらしい。真っ白なシーツを見るのは久しぶりだった。どれくらい現実に戻っていないのか。だがそれももうすぐ終わる。自分の部屋で自分のベッドで眠ることを夢見て、今はこの世界のベッドに潜り込んだ。
プレイヤー名:ケイスケ
職業:魔道師
称号:ラーズグリーズ(計画を壊すもの)
装備一覧
武器:レーヴァテイン(炎魔法+4・無詠唱・炎属性強化+3・消費魔力増加)
『我らに仇なす全てを焼き払おう たとえそれが世界だとしても』
頭:マジカルイヤリング(魔法防御上昇)
体:マナクロース(魔力上昇)
腕:火炎のグローブ(炎属性強化+1)
足:クロコ革のブーツ
他:染色された職人のローブ(炎耐性)
スキル:炎魔法Lv15(Lv11+4) 水魔法Lv3 雷魔法Lv4 魔力上昇 無詠唱 連続魔法 炎属性強化Lv9(Lv5+4)消費魔力増加 空き




