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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第5章 零れ落ちるもの
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 森を隔離していた光が次第に消えていく。

 2人とも疲労困憊といった様子だ。生命力を示すバーは満タンだったが、格上の敵と戦ったことで発生した精神的な疲労だろう。俺もできるなら早く宿屋に戻りたい。

  

「倒したはいいけどよ、どうやってこれ戻んの? 確か始まりの村ってポータル消えたろ?」

 

 そうだった。何故かウルの村に戻る手段が無くなったことで、初心者武器が一部のプレイヤーの嫉妬の元になったのだ。攻略掲示板が荒れ放題だった記憶がある。現在、俺達はその戻ることが出来ないはずのマップにいるということだ。


「でも、さっき戦う前にアナウンスがあったから、どこかで戻るタイミングがあったと思うよ。ゲームのイベントに組み込まれてるってことなんだし」


 俺たちが悩んでいるとサラさんが助け舟を出してくれた。

 そういやそうか。恐らくレベルが上がって強力なボスが出てくる辺りで解放する予定だったのかもしれない。まだ見ぬ廃神様たちがそのレベルまで到達していてくれたら彼らが倒したってことで何とか誤魔化せるかも。頑張っててくれよ。


「だといいんすけど。武器も無いし、今モンスターに会ったら確実に死ぬからなぁ」

「いやいや。そんなフラグ立てないでよ」


 死亡フラグじゃないですか、やだー。だが戻る手段が見つからない以上、死に戻りしかないのは確か。この場合、どこに飛ばされるんだろう。最後に立ち寄った町なのか、一番近い町なのか。どっちにしても早く帰りたい。

 

 この森は、そんな俺の願いを聞き入れてくれたようで、木を揺すりながらモンスターがやってきた。

 真っ赤な肌をした、口元から覗く牙がチャームポイントの鬼。ファンタジーには欠かせないオーガってやつだ。もちろん、アクセサリーも忘れずに持っている。丸太を削って作ったような巨大な棍棒。荒削りなのが素材を活かしていた。そんな鬼がぞろぞろと4体現れる。俺たち3人は思わず顔を見合わせ、互いにサムズアップして突撃していった。




 暗闇から解放された俺の目に飛び込んで来たのは抜けるような青空。

 ここは砂漠のオアシスだった。オアシスの中心の泉の前に倒れていた。死に戻りは最後に立ち寄った町に飛ばされるようだ。ふらふらと立ち上がると同じように頭を押さえる2人がいた。


「ケイスケ一瞬だったな。人は飛べるんだって感心したよ」

「弾丸ライナーだったねぇ。地面と平行に飛ぶなんて真似、なかなか出来ないよ」


 そう。死に戻りを選択し、オーガに突っ込んで行った俺たちはそのまま棍棒でオアシス送りにされたのだ。俺は、棍棒が腹部にめりこんだ時点で意識が反転したためにその後どうなったのかはわからなかったが、今の発言でなかなか愉快なことになっていたようだ。装備が悪いとかそんなレベルの話ではなかったらしい。


「ま、それはいいとして次はソフィアか。武器も壊れたし調達しないとな。もう金なんて持ってる意味も無いし、ここで売ってる最高の装備で行くとするか」

「ですね。俺が洞窟に行った時は魔法で殺されたんで、できるなら魔法防御が上がる装備とかにした方が良さそうですよ」


 黒いユニコーンの攻撃を思い出す。氷だったからあれは水魔法だ。ゲームに組み込まれている以上、そのルールは守られているはず。しかし、もう宿屋で眠りたいと体が訴えている。ちょっと夜まで休んでからにしたい。

 

「とりあえず、夜まで休みませんか? その後に装備を探してみましょう」


 2人も疲れが抜けないようで俺に同意したので、ひとまず夜まで休憩を取ることにする。

 宿に入るとベッドに倒れこみ、すぐに夢の世界に落ちていった。




 ノックの音で目が覚める。もう外は真っ暗で、部屋を照らすのは備え付けの小さなランプの光源だけ。その光を頼りにベッドから降りてドアを開けるとそこにはシンさんの姿があった。


「おはようさん。露店は数が少ないからギルドの委託販売で探してみるってことにした。サラ姉は先に工房に行ってポーションを作れるだけ作るってさ」

「了解です。余ってる素材とかも全部売り払っちゃいますか」


 それがいいな、とシンさんもインベントリの中身を確認していた。俺もインベントリ情報を確認していると、折れた杖の一部が入っていることに気づいた。素材にもなりそうに無いので、捨てようかと思ったがどうせ空っぽになるのだし、1枠くらい埋まっていても問題は無いかと放置しておくことにした。


  

 ギルドに着くと受付で現在販売されている商品の一覧をもらう。この中から魔道師用だけを抜き出し、使えそうな物を吟味していった。


「耐久高い大剣に水耐性付きのマントにプレートアーマーっと。頭もイヤリングで魔法防御上げとくか」

「金属兜も一応残してた方がいいかもですよ。物理攻撃と魔法攻撃のどっちが強いかわかんないですし」

「だな。お前はもう決めたん?」


 自分の商品一覧にチェックを入れながらシンさんが俺の手元を覗き込んできた。


「イヤリングの付加能力を魔力上昇から魔法防御上昇付きに変えて、体は魔法糸を編みこんで魔力を上昇させるマナクロースってのが売ってたんでそれにしようかと。んで残り全額で炎属性強化がついた火炎のグローブで終わりですね」

「ほー。かなり良さそうじゃん。……本当にさ、これがただのゲームだったら良かったのになぁ」

「……」


 俺も同じ気持ちだった。

 あんな真実を知らない方が幸せだったのかもしれない。何より、まだ頭のどこかでこれが実は騙しイベントでした、と運営が発表してくれるのではないかと夢見ていた。ステータス画面を開けばログアウトを選択できる。製作者ならログアウト不可にするのも出来るはずだ。もちろん批判に晒されることは確実だろうし、そんな危険なゲームだと知れば誰もやらなくなるだろう。ここまで考えて、ドレイクさんの顔が浮かんできた。彼の目を見た時にそれがただの妄想であるとは思えなかった。信じてしまう何かがあったのだ。


「んじゃ、さっさと購入してサラ姉待ちか。つうか、すぐに終わりそうもないよな。馬探しは明日になるかなぁ」

「夜間戦闘は厳しいですね。あの洞窟は太陽が射してたから明るかったんで、今行くと暗闇で戦うことに……」

「よし、装備だけ整えて休むか! サラさんにメッセージだけ送っときゃいいだろ」


 慣れた手つきでウィンドウを操作していく。ソフトキーボードを呼び出してメッセージを書くと役目を終えた全てのウィンドウが消える。俺たちは受付で購入する旨を伝え、代金を払うと宿に戻ることにした。





プレイヤー名:ケイスケ

職業:魔道師

称号:扇動者


装備一覧

武器:赤熱の妖杖(炎属性強化+1・魔力上昇)

頭:マジカルイヤリング(魔法防御上昇)

体:マナクロース(魔力上昇)

腕:火炎のグローブ(炎属性強化+1)

足:クロコ革のブーツ

他:染色された職人のローブ(炎耐性)


スキル:炎魔法Lv10 水魔法Lv3 雷魔法Lv4 魔力上昇 高速詠唱 連続魔法 炎属性強化Lv5(Lv3+2) 空き


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