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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第1章 始まりの地
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 薄暗い闇の中に多くのディスプレイが淡い光を放っている。

 表示されている情報はどんどん更新されているが、それを確認する人間はどこにもいない。


「全プレイヤーのログインを確認。これよりステップ2に移行します。管理者の覚醒を要請。……要請は受諾されました。覚醒まで残り……」


 誰も居ない空間に合成された無感情な声が響く。

 熱を持っているかと錯覚するような強烈な光が突如発生し、闇を散らしたそこは15メートル四方の部屋になっていた。

 何に使うのかわからない機械が壁や床に設置されていた。大きなものも小さなものも数え切れないほどである。

 

 機械が溢れるその部屋の中央には巨大なクリスタルが青白く輝いており、辺りの機械から伸びたケーブルをつないだ土台が支えていた。

 

 ごぽり、と音がした。気泡を吐き出す濁った沼のようなそれは、光り輝くクリスタルからもたらされたものであった。










 

 早めに夕食を取ると僕は部屋に戻ってすぐにログインする。

 昨日、ログアウトしてから情報をいくつか調べてみた。すると、あの村から次の町に行くポータルがあるということだった。

 そしてもう1つ。町に行くまでが初めのチュートリアルらしく、村に残っているプレイヤーは恐らくいないということ。


「話を聞いただけで疲れてログアウトなんて僕くらいだったのか……」


 その情報を知った時に独り言が零れてしまったのもムリはないと思う。

 町ではスキルを学べたり、武器防具を売る店など、RPGには欠かせない要素が詰まっているようだった。

 

「なんだか遅れてるみたいだから今日は頑張ってみるか」


 目を開けるとそこは昨日ぶりの村の風景が広がっていた。

  

 

 村の家々は円形に15軒程度が建てられていて、そのどれもが木造住宅。小屋とまではいかないが平屋建てで、言うなれば江戸時代の長屋に似ている。

 そして村の中央には少し古びた噴水が設置されている。

 井戸から水を汲むような生活をしていると思っていた僕はちょっとだけ驚いた。水を生み出す魔力石が埋め込まれているというのは村のおばさんからの情報。

 村を囲むように堀と木製の柵が作られていて、入り口はあのおじさんが守っている。冷静に考えるとそこらのモンスターじゃ攻めてこれないな。

 

「鉄壁の防御、とは言えないけど十分だよね」


 ぼうっと考えていたのでつい口から漏れてしまった。辺りを見回すと誰も聞いていないようで安心する。独り言を聞かれるのってすごい恥ずかしいからね。


 そういえば、この村にある施設は食材店と無料の宿屋、武器らしいものを扱う店の3種類だけだった。

 武器らしい、というのは金属は扱えないから武器屋じゃないという頑固な店主のこだわりだ。弓と杖、木刀がいくつか売られていた。


「みんなすぐ町に飛んでいったのかな。村長さんに聞けばすぐ案内してもらえるらしいけど……。少しここで頑張ろう」


 ちなみに村で一番大きな建物が村長の家のようだ。まだ行く気は無いので関係無いけれど。

 ログインして10分程度で最初の目標が変わってきたような気がする。いや、戦闘に慣れたり、杖を買うための資金集めとかいろいろ頑張るんだよ。

 誰に言い訳してるのかわからないけど、とりあえずはそんな言い訳で納得し、村の入り口に向かった。





「おや君はこの間の。こっちにはポータルは無いよ。村長の所へ行くといい」


 おじさんは変わらず入り口に立っていた。ゲーム内の時間は現実の時間より早く進むため、おじさんは「昨日」ではなく「この間」と言ったみたいだ。

 しかしプログラムがすごいな。本物の人間を相手にしてるみたいだ。ロンバルディアテクノロジー侮りがたし。


「こんにちは。今日は少し戦闘に慣れようと思って。武器屋っぽい店のおじさんから杖も買いたいですしね」


「はは。武器屋っぽいか。モーガンは変なこだわりがあるからね。彼がいない所では武器屋でいいさ」


 おじさんは爽やかに笑って答えてくれた。ますます人間くさい。あの店主はモーガンっていうのか、覚えておこう。


「しかし戦闘に慣れようとはいい心がけだ。他の冒険者はすぐに町に行ってしまったからね。町の周りは少し強めのモンスターもいる。苦労していなければいいが……」


 他の人の心配までするなんて本当に良い人だ。いや、良いプログラムか。情報も教えてくれそうだし村にいた方が良いかもしれない。


「ではちょっと行ってきますね」


 村から出て行こうとした時におじさんから呼び止められた。


「待ちなさい。危なくなったらすぐ戻ってくるんだよ。そうだ、名前を聞いていなかったね。私はドレイクと言う。君は?」


「僕はケイスケと言います。ありがとう。ファングに会ったら全力で走ってくるので助けてくださいね」


 少しだけ仲良くなれた気がして軽口が出てしまった。なんだか現実より気が大きくなっているかもしれない。

 でもドレイクさんはそれを聞くと、また笑って送り出してくれた。


「ケイスケか、良い名だね。ファングならこちらも大歓迎さ。みんなのご馳走になるよ。いってらっしゃい」


 頭にポーンと音が響いた。これは昨日のアナウンスの時と同じだ。今回は何をしたんだろうと思っていると答えが聞こえてきた。


「クエスト『ドレイクと友人に』を達成しました。称号『ドレイクの友』を取得しました。村での知名度が上がりました」


 そんなのがあるのか、とすぐにステータスウィンドウを立ち上げる。すると称号欄に変更ボタンが新しく現れていた。

 もちろん変更しようとボタンを押してみると、知らない情報がそこにはあった。



 現在の称号:見習い

 

 獲得称号:見習い ドレイクの友



 ドレイクの友を選ぶと説明文がウィンドウに表示された。


「ドレイクから名前を聞かれ友人となった。村周辺のみドレイクの歴戦のオーラが助けてくれる。攻撃力、防御力が上がる」


 称号ってそんな効果があるのか! 説明書には好きな称号を付けようくらいしか書いてなかったのに。見習いもあるのかと思って説明文を見る。

 

「冒険者になった証。これをつけている間はまだまだ人には認められない」


 

 ……メリットは全く無しですか。すぐに付け替え、外へ向かって歩き出した。

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