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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第4章 兆候
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「うはははは! 危ねぇ!?」


 何度か休憩しながらも狩りを続け、エクスプロージョンを連続で使えばだいたいの敵を倒すことができるわかった。そのため、シンさんが数匹の敵を引き連れて攻撃範囲内に戻ってくる、いわゆる釣り行為を買って出てくれた。現在も1メートル近い蜂を3匹、少し遅れて灰色熊が1頭、シンさんを追いかけて俺のキルゾーンに入ろうとしている。


「甘ぇんだよ昆虫が! そんな攻撃当たるかっての!」


 腹を見せ、その先にある腕ほどもある巨大な針で突き刺そうとした蜂だったが、シンさんは攻撃を横っ飛びで避けてすぐにこちらに向かって走り出している。あと数メートルで範囲内だ。休憩したばかりで魔力は十分、さぁいこうか。



「爆ぜよ 虚に包まれた罪深きものよ 断罪の光を浴びるがいい エクスプロージョン!」


 後ろの熊が範囲に入った瞬間、連続魔法を発動させる。詠唱したので威力減退も無い完全な発動だ。足元にシンさんがビーチフラッグの選手ばりに飛び込んできた。さすがに攻撃に巻き込まれては叶わないと思ったのだろう。俺も巻き込みたいとは思わないし。


 白の閃光がモンスターたちを包み込み、爆音と共に弾ける。同時に炸裂したおかげで目も眩みそうな光の奔流だ。爆風が顔を舐めていき、砂埃が巻き上がる。ようやくモンスターの影が見えるまでに収まると、炭化した蜂の成れの果てが3つ、大の字に倒れた熊がぷるぷると震えながらもその体を起こそうとするところだった。

 もちろん、それを黙って見ている俺たちではない。


「さよなら○ーさん!」


 どこぞの蜂蜜好きな熊の名前を叫びながら、大剣を頭に振り下ろす。ダメ押しの爆発で完全に息の根が止まったようだ。……つか例のクマさんは灰色熊じゃないですよ、たぶん。

 

「ふぅ! 効率的にはかなりのもんじゃね?」

「ですね。フルPTで狩りしてる人たちはこんな感じじゃないですか? って俺たちいつフルPTになるんでしょ?」

「あー、でも今までこれでやってきてるし、それなりのやつらならもうクラン入ってるか固定PTあるみたいだしなぁ」

「傭兵みたいな人を入れるか諦めるかって話ですか」

「ほら、アイテムの振り分けとかメンドイからさ。ムリしなきゃやれるんだしそのうち考えるべ」

「そうしますか。っと、素材取らなきゃ!」


 倒したモンスターに触れて消滅させ、素材を回収する。毛皮に蜂蜜、薄羽が今回の報酬だった。茶色のベストはさすがに無いよね。ほっとくと消えるから魔力と体力の無駄遣いにならないように気をつけないと。これってマナポーションとスタミナポーションを使いまくれば超効率になりそう。


「ポーション使えばもっといけそうですよね」

「そりゃそうだけど、安定した収入が無いと厳しいぜ? それなりの値段するんだから素材もかなり集めないとな」

「ここだと布系素材に食材っぽいですね。後衛が防具の耐久減らすのは珍しいし難しいかなぁ。金属あれば良かったんですけどね」

「だな。戦士武器なら鍛えなおすにも新造するにも素材はいるんだし。金属ならやっぱ鉱山だけど……」

「……鉱山ですか」


 ちらりと言い辛そうにシンさんが話してくる。鉱山と言えば魔法が役に立たなかった記憶に杖が壊れた記憶という、ある意味トラウマになりそうなものしかない。ゴーン鉱山の敵が魔法効き辛いだけだった、というならいいんだけど……。


「他に鉱山って見つかってないんですかね? もし普通に魔法効くモンスターがいるならそこでも良さそうですけど」

「あるっちゃあるけど、レベル上げにはあんま良くないってさ。放棄された鉱山らしいけどゴブリンとかリザードマンが住み着いてるとか」

「なるほど。まぁ目的はレベル上げですしやめときます。砂漠にも素材はあるでしょうしね」




 釣り、爆撃、たまに休憩を繰り返していると日も暮れてくる。さすがに夜の狩りは辛いので町に戻ることにした。

 素材をギルドで売り払うと、6万パール近くにもなった。それを半分ずつ分ける。お互い、武器の耐久値が減っていることもあって、そのままギルドで直してもらうと残ったのは2万ちょっと。まぁ十分な額だ。

 魔道師や弓使いの防具のうち、頭装備はイヤリングやバンダナで、それぞれ魔力上昇や速度上昇の効果が職人が作った物ならどんな物にも付加されている。必要な素材も他の部位と比べて多くなく、そのおかげで頭装備はかなりの安値で売られていた。そのことを思い出し、金属職人の工房で売られている安めのイヤリングを買うことにした。


 

 外に出るともう完全に日は落ち、道を歩く人もまばらになっている。皆、宿で休んだり酒場で食事をしているようだ。俺たちも同じように食堂に入って好きなものを頼むことにした。



「今日は楽しかったなぁ。地走りも決められたしお金も増えたし良いことづくめだった」


 擬似アルコールがなみなみと注がれたジョッキを持ちシンさんは上機嫌でそれを飲む。もちろん俺も同じ物を飲んでいる。


「分業するとかなり良かったですね。まぁずっと同じだと飽きちゃいますけど」

「そだな! やっぱり戦士なら攻撃してなんぼだしな!」


 レベリングが好きな人なら効率を求めるだろうけど、俺たちは自分が楽しみたいという気持ちが大きく、さっきも途中でシンさんが暴れだしていた。それを見ながら、零れたモンスターを掃除するのも楽しい。というか何でも楽しい。ずっとここに居たいという気持ちになってきた自分がいた。



「つかお前、夏休み終わったらさ、生徒会に入れよ。なんか気が合うし、学校楽しくなるぜ」

「それもいいですね。休み中ほどはログインできないでしょうし、話が合う人が学校いたら楽しそうです」

「そそ。ま、それもあるけど生徒会の仕事ってやりがいもあるしな。叩き込んでやるから一緒にやろうぜ。んで俺卒業したら会長な。やっぱクランマスターで会長って呼ばれてるならやっぱ生徒会長になっとかなきゃ」

「うへぇ。ま、まぁそれは追い追い……。つか生徒会なんてそんな簡単に入れないでしょ?」

「いけるいける。俺が入れるから心配すんな。これ決定事項だからな」




 そんな話をしながら楽しい食事は終わり、近くに宿を取った。

 残念ながら今日の狩りでは炎魔法がLv9になることは無く、また、サラさんもいろいろと用事があるそうでまだ動けないと言っていた。2、3日あれば終わるそうなので、それまで俺たちもここに残ることに決めた。


 ポーション用の素材を集め、金属素材や布素材を集め、ついでに朝から夕方までぶっ通しの狩りを満喫したりと、城塞都市ソラリアでの最後のひと時を過ごしていた。 





プレイヤー名:ケイスケ

職業:魔道師

称号:扇動者


装備一覧

武器:赤熱の妖杖

頭:職人のイヤリング

体:布の服

腕:一角獣のミトン

足:クロコ革のブーツ

他:染色された職人のローブ


スキル:炎魔法Lv9 水魔法Lv3 雷魔法Lv4 魔力上昇 高速詠唱 連続魔法 炎属性強化Lv4(+1) 空き


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